夏が終わっても暑いと思っていたら、いつの間にか急に冷え込んで、薄着をしていると風邪をひきそうな気候ですね。
TVなどの光の混色に適用されるのは加法混色、印刷物などの反射される光の混色に適用されるのは減法混色という誤解をしていました。TVなどの光も、印刷物などの反射される光も同じ光であり、この減法混色の考え方は間違っています。
正しくは、「反射される光の混色に適用されるのは減法混色」ではなく、「光の吸収が加算的な混色に適用されるのが減法混色」です。
誠信書房の心理学辞典では減法混色は「色素や顔料などを混ぜ合わせるときや色ガラス、フィルタの重ねる場合」と記述されています。この「色素や顔料などを混ぜ合わせるとき」は、印刷物などの反射される光の混色に適用されるという誤解を生む表現だと思います。
減法混色で最もわかりやすい例は、色ガラスやフィルタを使ったものです。色ガラスやフィルタを重ねていくと透過する光はどんどん吸収されて黒に近づいていきます。話を簡単にするためにRGBの光だけに注目すると、例えばY(イエロ)とC(シアン)の色ガラスを重ねると、Yの色ガラスでは補色のBを吸収し、Cの色ガラスでは補色のRが吸収され、二つの色ガラスを透過した時点では加算的にBとRが吸収され、結果的に透過する光は吸収されたBとRの補色のGとなります。
色素や顔料でも同様に吸収が加算的になる状況が必要で、例えば微小なYCMの色紙を並置すると、吸収が加算的にならないので、加法混色が適用されることになります。
印刷の場合には、網点の小さいハイライト部分を並置加法混色、その他の網点が大きく重なる部分を減法混色と呼んでいるようです。
当然のことながら、加法混色も減法混色も物理世界の理論ではなく、知覚世界の理論だということは忘れてはならないでしょう。
[2000/10/22]
人間の視覚は、RGB(赤緑青)のそれぞれの光に反応する細胞から構成されているので、物理的に黄色い波長の光も、TVで使われているようなR(赤)とG(緑)の混じった光も、共にRに反応する細胞とGに反応する細胞を活性化するため、これらの光の違いを区別することができません。黄色いものを見ても、それが「本当の黄色」なのかわからないのです。
ところで、色彩の人間への影響の学問である色彩心理学も、人間の視覚のメカニズムに基づいています。赤い光の中では血圧が上昇、心拍数が減少し、青い光の中では血圧が下降、心拍数が増加します。オーラ・ソーマのようなカラー・ヒーリングや、カラー・パンクチャのようなカラー・セラピーも色彩心理学の応用と言えます。
しかしながら、鍼で使うツボに色のついた光をあてるカラー・パンクチャは、不思議なことに目ではなくツボという皮膚に光をあてます。確かに、皮膚にも光の受容体があり、色は生体に影響を及ぼすと言われているものの、皮膚の光の受容体はRGBのそれぞれに反応する細胞には分かれていないはずです。
と言うことは、色に対する反応の仕方は目と皮膚とでは異なるはずで、「視覚の色彩心理学」を皮膚に適用すべきではなく、新たに「皮膚感覚の色彩心理学」というものを考える必要があるのではないかと思います。
例えば、TVの焚き火の映像では炎がオレンジ、RにGが少し混ざったものとして表現されます。
これは視覚のメカニズムに基づいた焚き火の表現であり、皮膚のメカニズムに基づいた表現があるとすれば、焚き火は赤外線を含んだものとして表現されるべきでしょう。
「皮膚感覚の色彩心理学」では、赤外線や紫外線も「色」と同列に扱われると思います。
[2000/10/22]