最近は新しいことに目を向けることが少なくなって、ここにも書くことがなくなってきていて、これではいけないと思い始めているところです。
ラ・ポールとは、医師やカウンセラなどと患者の間に築かれる信頼関係のようなものです。ラ・ポールとまでは行かなくとも、人と人の間には自然に好悪の関係が生じてしまいます。しかし、このような好悪の関係はラ・ポールのテクニックによって簡単に変えてしまうことが可能なのです。
以下は石井裕之の「コミュニケーションのための催眠誘導」(光文社カッパブックス)と高橋慶治の「NLP
神経言語プログラミング」(第二海援隊)からの主にラ・ポールに関するまとめです。
催眠療法家の石井裕之の「コミュニケーションのための催眠誘導」は、実践的に導き出した部分も多く、ちょっと胡散臭いところが多いです。ここではラポールの形成とは、潜在意識レベルでの同調であり、そのためには観察が重要であると述べています。
1)視線
人は無意識のうちに様々なイメージを空間的に配置する。
ある人が良いイメージをどの方向に配置しているかを理解し、その方向に視線を向けているときに、何らかの方法で自分をアピールして、潜在意識のレベルで自分を良いイメージに関連付ける。
2)呼吸
呼吸の「位置」と「深さ(速さ)」の観察が重要。例えば「希望」は胸部での呼吸、「安心」は腹部での呼吸。
呼吸の「位置」と「深さ(速さ)」を相手に合わせる、特に相手の感情表現時の呼吸を観察して合わせる。また、相手の呼吸に合わせて発話する。
息を吐ききって吸いに入る直前は非常に無防備な状態なので、相手の吐く息に合わせて発話すると潜在意識に訴えやすい。
高橋慶治の「NLP
神経言語プログラミング」は、理論が統一的でないのと、章などの構成が不十分なので読みにくいです。
結論としては、相手が使っている優先的表象システム(後述)を用いることにより、ミラーリングやペーシングなどのラポールの形成のための技術による同調感の効果を高めることができるということです。
なお、相手の優先的表象システムは、会話に用いられている用語、およびアクセシング・キュー(後述)から判断できます。
1)表象システム
外界を自分の内面に投影するモダリティ。視覚、聴覚、身体感覚(触覚)など。人はそれぞれ、優先的に用いる優先的表象システムを持っている。
2)アクセシング・キュー
自分の内面の情報へのアクセスの仕方は身体に表れる。アクセシング・キューの観察によって優先的表象システムがわかる。
●視線
基本的に左は過去、右は未来、上は視覚、水平は聴覚、下は自身。
1)左上:記憶された視覚イメージ
2)右上:構成された視覚イメージ
3)左水平:記憶された音
4)右水平:構成された音
5)左下:心の中での対話
6)右下:身体感覚
●呼吸
a)視覚:胸での激しく浅い呼吸、呼吸の一時停止
b)聴覚:長く吐く息を伴う胸全体か横隔膜での呼吸
c)身体感覚:深いゆっくりしたお腹での呼吸
●筋肉
a)視覚:肩と腹部での筋肉緊張の増加
b)聴覚:筋肉緊張、細かいリズミカルな動き
c)身体感覚:動きの増加、筋肉の弛緩
●声のトーン
a)視覚:調子が高い、鼻にかかった、緊張したトーン
b)聴覚:正確な、はっきりとした、反響するたくさんの変化のあるトーン
c)身体感覚:低く深いトーン
●声のテンポ
a)視覚:言葉の速い噴出、一般に速いテンポ
b)聴覚:リズミカルなテンポ
c)身体感覚:長い中断のあるゆっくりとしたテンポ
[2001/6/24]
NHKの「未来への教室」でJames Turrell(ジェームズ・タレル)が取り上げられたらしい。「取り上げられたらしい」と書くのは、本放送はちょっとした手違いで後から知り、楽しみにしていた再放送は国会中継で中止になったからです。
Turrellは大好きなアーティストの一人で、人間の知覚の特性を利用したTurrellの光を扱った作品は本当に素晴らしい。番組ではアリゾナに現在建設中の"Roden
Crater"が取り上げられたらしい。"Roden
Crater"はクレーターの地下に部屋をつくり、上部に穴を開けて天体の光を取り込む作品です。本来ならば、そろそろ完成しても良いはずなのだが遅れているらしい。しかし、Turrellから特別授業を受けることができるなんて、なんという幸せな小学生達だろう。もちろん"Roden
Crater"は完成したら見に行く予定。
[2001/6/13]
アートラボ第5回プロスペクト展、Michael Saup(ミヒャエル・サウプ)の「R111?仮想から物質へ」を南青山のスパイラルガーデンに観に行ってきました。
"R111"では会場の観客の動き、インターネットからアクセスする参加者、インターネットを検索するウェブロボットの3つのインタラΓ碍晒Γ碍桟Γ碍紫Γ碍雌による「波動」を表現しているようです。特に面白かったのは、四角いステージの上方にプロジェクタとカメラを設置して、ステージ上の観客の動きに合わせて、プロジェクションされたCGの波や音が変化するものです。この上でダンサーを踊らせてみたら面白いだろうなあと思っていたら、Michael
Saupはフランクフルト・バレエのWilliam Forsytheの"EIDOS:TELOS"(1995)の振り付けに使った"Binary
Ballistic Ballet"でコラボレーションしたようです。("EIDOS:TELOS"自体はForsytheの作品の中で好きな方ではないですけど)
また、フランクフルト空港の通路内のインスタレーション"Tunnel"(1997)もたまたま観たことがありました。これは空港利用者の通過や気候の変化によって色彩やサウンドが変容していくものらしいです。
[2001/6/2]
5月25日の金曜日の夜にドイツ文化会館で、Markus Poppによるレクチャーとシンポジウムを聴いてきました。
開始時間の10分前ぐらいに、ドイツ文化会館に向かっていると、それらしき人の流れがあり、200名収容の会場の椅子は既にいっぱい。Markus Poppって人気があるんだ。私は数日前にHotwiredの過去の記事を読んで興味を持ち、CDNOWでいくつかの曲を聴いて気に入って、数枚のCDを注文したばかり。
Markus PoppはOvalという名前で音楽活動を行なっており、OvalprocessはMarkus Poppが開発した音楽制作のためのプロセス(ソフトウエア)で、Markus Poppの開発したプロセスを使うことで「誰もがOvalになることが可能」であり、リスナーがユーザになることで「音楽を人々の手に取り戻す」新しい音楽のあり方への道が開かれるということのようです。
しかし、このような人間とのインタラクションを想定したオープンなシステムの考え方は、メディア・アート(インタラクティブ・アート)やインタラクティブ・サウンドでは普通の考え方になっています。
従来のアートでは、アーティストが最終形態としての作品を制作し、人はその作品を鑑賞するという静的な形態でした。これに対してメディア・アートでは、アーティストは作品のシステム(プロセスとインタフェース)を制作して、人(体験者)はインタフェースを通してその作品にかかわり、そのインタラクションの結果として作品が現れます。
最初のMarkus Poppのレクチャーは、同時通訳者のせいもあると思いますけれども、難解でした。
シンポジウムの参加者は「OvalprocessをLinuxのようにオープン・ソースにして、ユーザがOvalprocessを利用するだけでなく、Ovalprocessを開発できるようにしないのか?」という質問をしていました。これは新しいアートの方向性を示した非常に面白い意見だと思いましたけれども、Ovalprocessの開発者はあくまでもMarkus
Poppであるという感じで明確に否定していました。
会場のスクリーンにプロジェクションされたOvalprocessの画面では、左上にあるサンプリング音源から適当なものをドラッグして画面上に配置すると、画面の左端から何本かの縦線が動いてきて、そのタイミングで音源が再生されているようでした。
スパイラルホールの入口にはOvalprocessのオブジェが展示してあったらしく、来週の月曜日以降はしばらくドイツ文化会館に展示しておくようです。
「新しい音楽のあり方」を問うにしては、Ovalprocessのコンセプトはちょっと弱いように思えます。コンセプトだけではなく、サンプリング・ミュージックとしてのアルゴリズムに特徴があるようにも思えるので、そちらの説明も欲しかったところです。
しかし、Ovalprocessから生み出される音楽は魅力的です。
[2001/5/27]