やっと涼しくなってきた。一時期の低迷を抜け、公私共に張り切っているこの頃。
人生を変えるものはないかと、色々なものに触れてきたけれども、「変えるもの」と言った時点で、それは遥かに遠ざかっていく。
「変えるもの」とは「変えてくれるもの」、自分で変えることが必要なのだが、変えるためには自分で方向性を示さなければならない。
しかし、価値観が相対的だとわかっている者に、その方向性を示すことはできない...
[2002/11/25]
東京ドイツ文化センタで行なわれた"Dialogue in the Dark"に行ってきた。
新しい知覚の体験を期待していたものの、色々な暗闇に行って慣れているせいもあって今一つだった。
暗闇と言えば、James Turrellの「自らの光」を見る"Blind Site"、暗順応を利用したapertureの作品群、それに荒川修作の養老天命反転地の「切り閉じの間」、中野純の「暗闇を歩く」という本で紹介されている様々な場所。
確かにワインは良い香りで美味しかったし、生のバイオリン演奏も良かったけれども、屋内でしかも安全性を考慮してコントロールされ過ぎていた。
もっと外で自然を感じてみたかったし、もっと自由に動き回ってみたかった。
ただ、いつもはほとんど一人で体験することが多いので、ひとつ面白かったのは精神的な対人距離だった。
今回の体験では全く知らないはずの人達との距離がすごく近く感じられた。
通常の視覚中心だと人との距離をとることができるが、視覚なしで聴覚や触覚に依存すると、すごく近いかすごく遠いかのどちらかになりそうに思う。
アテンドの視覚障害者の人に聞くと、適切な距離を保てていると言われたものの、それは我々の使っている視覚の距離よりも近いのではないかと思う。
しかし、Turrellの"Blind
Site"でも見えていた「自らの光」の紫(バイオレット)が目の前にもあもあと広がるのは楽しかった。
[2002/11/24]
六本木の国際文化会館で開催されている石黒猛作品展の最終日に行ってきた。
作品は屋内の"Soap Screen"と屋外の庭園に設置された"Smoke
Ring"。
その名のとおり、"Soap Screen"は石鹸の膜でスクリーンを自動的に作る作品、"Smoke
Ring"は煙の輪を自動的に作る作品。
お目当ては知人から面白いとメールで教えてもらっていた"Smoke
Ring"。
風の強い日は面白くないということで、少し風が吹いていたので不安だったが、下の左の写真のようにきれいな輪ができていた。
下の右の写真は作者の石黒猛さんと装置。
装置の中で煙をためて、白い丸い蓋が開き、中央に穴の開いた板が装置の中で落ちることにより、煙が穴から押し出され、最後には煙の輪となって空に上がって消えていく。
気流の具合によって形やその変化は様々であり、庭の芝生の上に座って、青空に消えて行く煙の輪をぼーっと眺めていた。
見に行って本当に良かったと、ほのぼのとした気持になった。
加湿器への応用も考えているようだが、小さい方が輪を作るのは簡単なものの、すぐに消えてしまうので難しそうだ。
部屋の中にこんな小さな輪が漂っていると思うと楽しそうだ。
[2002/11/4]
特命リサーチという番組で「人間の持つ不思議な能力『気配』の正体を解明せよ!」というのをやっていた。
気配というと、昔に北大の伊福部さんが聴覚による気配の解析をやっていて、視覚障害者は足音の反射によって壁などの気配を感じている、というのを読んだことがある。
しかし、番組では人間が歩行などによって常に帯電や放電を繰り返し、これが他の人間にアンテナと同様な原理で伝わり、体毛から放電するときに皮膚の深部の感覚器を刺激することにより、皮膚感覚による気配を感じるらしい。
以前にオーロラの音を聴くツアーに参加したことがあるが、オーロラの音や流星の音も、人間が帯電して耳の中の有毛細胞から放電するときに感じる音らしい。
[2002/11/3]
"Dialog in the Dark"だけでなく、11月は面白そうなイベントが目白押し。
タバコの煙で輪を作るのがあるけれども、それを作品として空に向かって大きな煙の輪を上げていく石黒猛の展覧会が、六本木の国際文化会館の庭園で11月4日までやっているらしい。
ただし、風がない日でないと面白くないということで、なかなか行くチャンスがない。
人間の無意識の心理のメカニズムなどに関する面白い本を書いている心理学者の下條信輔さんとタナカノリユキさんらによるルネッサンス
ジェネレーション '02、「メモリ・イン・モーション:未来記憶」というイベントが11月23日の13時半から18時まで草月ホールであるようだ
[2002/11/2]
例の真っ暗闇の体験"Dialog
in the Dark"が、11月の後半にドイツ文化会館であることを、10月24日に知り合いからメールで教えてもらって、すぐに11月25日分を申し込んだ。
後で人にも教えてあげようと思って、HPを確認したら26日に既に満員になったそうだ。
日本の"Dialog in the Dark"は案内の視覚障害者が世話を焼き過ぎるという話を聞いたことがあるが、今から楽しみだ。
[2002/11/2]
エヴァンゲリオン、と言ってもほとんど観たことがないのだが、以前にたまたま見たときに「人類補完計画」とか、人が溶けてひとつになっていくところが印象に残っていた。
その人が溶けてひとつになっていくところの意味が分からず、ユングの集合的無意識とかと関係があるのかなと想像していたのが、ウェブで調べてみてだいたいの意味が分かった。(天野、「新世紀エヴァンゲリオン論説」)
「人類補完計画」はキリスト教の一派であるグノーシス主義と関連があるらしい。
グノーシス主義は1世紀に興ったが、その主義が「正統的」なキリスト教と相容れず、3世紀にカトリック教会から厳しい弾圧を受けてほとんど抹殺された。
「正統的」なキリスト教では世の中の悪の原因を、アダムとイヴが神の意に反してエデンの知恵の実を食べたように人間の自由意志に帰属させており、信仰により完全なる神に一体化することで、この原罪を贖おうとしている。
しかし、グノーシス主義では世の中の悪の原因を、神の不完全さに帰属させており、自由意志を得て知恵の実を食べることによって、神の一部である人間は神をも超える可能性を持っているとする。
「人類補完計画」で人が溶けてひとつになっていくところは「正統的」なキリスト教の部分であり、最後に溶けきれずに元の人に戻っていくところはグノーシス主義の部分で、最終的には自由意志が尊重されたということになるのかな。
[2002/10/12]