第59回メンタルケアのスペシャリスト養成講座基礎課程修了レポート


◇設問1および設問2について、各々8百字程度(原稿用紙2枚以内)に、あなたの考えをまとめてください。

設問1:次の2問の内から1問を選択してください。

  1. 「人を癒す」
  2. 「私の死生観」

設問2:メンタルケアのスペシャリストとして、あなたの知人であるAさんと対応する際の要点について。


「設問1」人を癒す方法は多数存在するものの、人が人を癒す方法として最も効果的なものは傾聴だと思う。傾聴の二つの効果としてカタルシス(浄化作用)と自己客観視があるが、癒しに関係するのはカタルシスである。そして、傾聴によって相手がカタルシスを得るためには、繋がり感と完了感が重要である。話すことによって、相手に承認され深く繋がっていると感じる繋がり感と、自分の思いをすべて吐き出したと感じる完了感である。傾聴は言語的なコミュニケーションであるものの、特に深い繋がり感を得るためには、非言語的かつ無意識的な部分が重要である。我々がコミュニケーションを行うときに、良く気が合うとか肌が合うとかいう言葉を使う。これは人と人との関係性において、言語や論理以外の要素の重要性を示している。そして、精神対話士のように様々な人に接しなければならない仕事には、言語や論理以外のコミュニケーション能力が求められている。さて、このような能力は先天的なものだろうか?確かに、生まれながらにして、すべての人と良好な関係を築いてしまう人もいる。しかし、ここで注目すべきは、カウンセラとクライアントとの関係におけるラポールの構築である。著名なカウンセラはすべての人と瞬時に良好な関係を築くことができると言われている。しかし、その過程の分析の結果、著名なカウンセラはペーシングやミラーリングといった様々なテクニックにより、相手の無意識に非言語的なメッセージを送っていることが知られている。このようなテクニックを実践的に磨くことによって、傾聴において相手に深い繋がり感を与えることができ、大きなカタルシスによる深い癒しを与えることができるのではないだろうか?


「設問2」Aさんにとっての最も大きな問題は対人関係の問題である。Aさんを分析すると、この対人関係の問題のために親しい友人ができず、いわゆるソーシャルサポートがないために、ストレスを非常に受けやすい状態にあった。また、お母さん子であったために、母親に対する依存心が強く、母親の愛情を得るために、常に母親の評価を気にしていたと思われる。これが社会に出たときに、人の評価を過剰に気にするとともに、その評価を自分の行為ではなく、自分自身に対する評価だと取り違える傾向に繋がっている。つまり何らかの失敗で叱られた場合に、それが自分の行為の失敗とは考えられず、自分自身の全存在に関する失敗のように感じやすい。従って、Aさんの解決すべき課題は、問題を引き起こした自分の信念や行為と自分自身を、Aさん自身で分離できるようにすることである。これは認知療法の「問題の外在化」と呼ばれる手法で、分離したAさん自身は受容して、分離した問題を引き起こした自分の信念や行為を変えようというものである。Aさん自身の受容に関しては、傾聴のカタルシス効果を利用して、Aさん自身を承認することが必要である。また、この分離したAさん自身に母親が愛情を注ぎ承認することも重要である。問題を引き起こした自分の信念や行動を変えることに関しては、傾聴の自己客観視を利用して、Aさん自身の判断により問題の解決へ導いていくことが必要である。このようにして、Aさんの問題の外在化の能力を上げていくことで、Aさんのストレスに対する耐性を上げていくことができるとともに、相手の言葉によってストレスを受けることも少なくなり、親しい友人も増えてくると思われる。そして、親しい友人が増えてくれば、それがソーシャルサポートとなり、何かあったときに話したり助けを求めることによって、ストレスを和らげることができる。


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