CROSS†CHANNEL
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プレイしてみた「CROSS†CHANNEL」の感想&供与者(Aoxさん)への独断と偏見に基づくレポート。面倒なので大きくネタバレしています。尚、18禁です。
評価(5段階中):4.7
シナリオ完了順:一本道?
夏。
夏休みの最後に行った、群青学院放送部の部員達。
主人公黒須太一は、バラバラになった部員達をなだめ、あるいはだまして無理に合宿へ。その結果は.......そして、合宿から帰ろうとすると?
Frying Shineのデビュー作品(?)。結構評判のようです.......っつぅか、この作品の紹介なんてネタばれ0では書けない(^^; あ、そうそう。会社のサイトの製品紹介見ても無駄です(^^;
なお、今回はVPC6.03+MacOS Xで進行。ムービーは小さくしてMacOS 9側でないとスムーズさは欠けます。描画・エフェクトはやはりMacOS Xでは辛いですが(^^; 音も少し途切れる事がある(エフェクト時)のですが、基本的にあまり気にしませんでした。
○総評
非常に不思議な作品、としか言い様がないですが。
最初は純粋に学園物と思ったんですが。思ったんですが、とにかく最初のオープニングにたどり着くまで「?」と。そして、そのあとはSFかファンタジー的な作品、しかもかなり強い物だと思ったというか。ある意味「腐り姫」を思いだし、そしてひょっとして主人公って吸血鬼? とかなんとかそういうような「裏」を色々と思い浮かべるというか。でも、話が進んでいくとなまはんかなものではないという事が分かり、非常に先が気になるという。
あぁ、なんともネタばれしないと紹介が出来ないというのがキツイ(笑)
ま、とにかく「話の運び方」は面白いというか、かなり上手。基本的には「パズルのピース埋め」で進行し、そしてそれを当てはめるたびに、色々と「うえ!?」と言う事が判明するという......そして、非常に重大な事に気付かされると同時に、主人公が動く。他の部員の思惑もあり.......とにかくほっとしたり息が詰まったり。そして、一瞬だけ現れる絵が「何なのか!」とずっと気にさせまくるという.......非常に話の展開がうまい。
まぁ、本当に話の展開はかなりうまい作品ではなかったかと。更に音楽が非常に丁寧で綺麗。そして悲しいと言うか。良くできていますね.......雰囲気が良いというのか。作品の根底にある何か、ある意味「孤独」であり、「虚無」であり、「絶望」であり、そして何かしらの暖かさと黄昏をちゃんと醸し出すような。
そして、味のある話に「メッセージ」。謎は残るけど、だけどそのメッセージもちゃんと残っていく。残ったものと残されたものの悲しみというか、なんというか。だけど希望もあるけど、と言うような。終わったあとの余韻も良い。
本当に不思議な魅力を持ち、そして印象に残る作品でした。
そんな訳でかなりお勧めできる4.7です。
もっとも、「心をえぐる」部分がキツイ人はやめたほうが良いですけど(^^;
以下ネタばれ
○難点
取りあえずシナリオ等の評価の前に数点。
- 誤字・脱字など
意図的なのかなぁ、よく分かんないなぁ、と言う誤字が結構あったような。太一の視点でわざわざ「誤字」を出しているケースだと、ちゃんと「解説」してあって良いのですが。そうなのかそうでないのかよく分からない誤字がありましたかね.......「大陽」ってわざと?(^^;
- 不具合?
別に意図して作っている訳じゃないでしょうけど。実は一回アンインストールしていまして、理由が「エラーがでる」と言う。アンインストールしてくれ、ってのもまぁ、仕様がないんでしょうけどね.......
- 速度
VPCでやっていたから、と言うのもあるとは思いますので微妙ですが。
セーブ、ロード、設定などの表示の切り替えがもうちょいスムーズだと良いかなぁ......「あれ、まだでない?」って少し思うような。エフェクトというか、ゆっくりフェードアウトしてフェードイン、ってのも悪くは無いんですけど。ここら辺がちょっと。
- 音のボリューム
もうちょい大きくしてくれるとありがたいんですが.......音量、かなり上げて普通に聞こえました。う〜む?
実はこの他、「整合性」と言うのもあるんですが、これはこの作品の特性上「整合性」がある/ないといって良いのか微妙なので、ひとまずおいておこうかと思います。
○シナリオ以外の評価
- システム
表示が遅い(間を持たせすぎと言うか)他はよくそろっているといえるかも。
結構あれこれと設定が決められるので、そういう意味ではVPC使っていてもありがたかったかなぁ、と思います。インターフェイスも合格点。そういう意味では色々と親切な設定ではなかったかと思います。
- 音楽
格段に合格。
でしゃばらないタイプの音楽ですが、ものすごく雰囲気が良い。例えば通常時の独特の寂しさや柔らかさ、絵や話とちゃんとマッチしていて良くできていると思います。結構感傷的な、黄昏時に似合いそうな曲が多いですけどね......でも、でしゃばらない。ちゃんと分をわきまえているというか。だけど、きっちり「仕事」しているようです。
良いですねぇ。
- 絵
違和感はありませんでした。良くできているというか。枚数は結構大目? 柔らかめの色彩に表情。ちゃんと出来ていたと思います。
○シナリオ感想総評
もうとにかくこれ。「ピースの埋め方」の絶妙さが本当に良くできていました。
とにかく練り込まれていた感じがしますね......最初に与えられた情報の少なさから「単なる学園物」と思う物はあったんですが、しかし初めてオープニングにたどり着く前の放送「生きている人、いますか?」で「!?」となるという。そして、スタートして出てくるキャラクター達といつの間にか生じていた確執と、それぞれの理由。それぞれの過去の問題や、群青学院にまつわる「適応係数」の意味。そして崩れ去った世界とその秘密に、トリックスターの役割をする七香の存在。
いやぁ......凄いなぁ、と。
何もないと言うか、明らかにされていない世界に、徐々に徐々に形を与えていくのが本当に上手かったと思います。主人公と曜子の過去の問題に、新川、霧の関係。正常に見えた連中が、「群青」に行っている理由とか。結構インパクトが強いんですよねぇ......主人公の壊れっぷりは本当に衝撃的な物がありますが。とにかく、関係を見せておきながら、更にもう一つも二つも裏が存在していたりとか。
この話の「世界」の特質上、矛盾の様な物が出てきたりしましたが、まぁそれも気にならないぐらい良くできています。
そして、更に出来ているのがキャラクターの「問題」。
他者に依存したりしすぎたり、正義感が強過ぎて社会に必要な妥協が出来なかったり、色々といましたけどね。それぞれの問題がうまく解決したり、あるいは消え去ったり、あるいは爆発したり。どんなに頑張っても「また来週」。しかし、からくりに気付いた主人公が、最終的に彼らを送還していく過程で見せていく、「らしさ」と言うか。主人公のあがきと、それぞれへ残していく「課題」というか、問題解決というか。ここら辺は良くできていたなぁとも思います。
全部は書ききれず、もちろん色々と謎は残っていますが、しかしちゃんと魅力的に見せていって、それなりの「何か」をきっちり描いていたというか。
そして、主人公のチョイスと、全員を送還したあとの激しい葛藤。七香の正体(の一端と言うべきか)と.......味があったなぁ、と言うか。
舞台となる「世界」は本当に不思議でしたが。
祠を除いては時間が延々とループする世界......どっちかというと、ONEの「えいえんの世界」に近い物もあるのかなぁ、と思う物もありましたが。七香の存在も色々と気になりますね。もう少し、七香の「役割」と言うかそういう物も出していくと面白かったのかなぁ、と思う物もあります。っつぅか、気になる(^^; 意外と、この世界に引きずり込んだのは七香だったり? 母子だけの閉じた世界、とか.......
まぁ、川の流れに杭を立て、その後ろで渦巻く流れがありますが。世界としてはそういう物なのかなぁ、と。そして、やがて消え去るのか......主人公の放送は、その渦が消えるまで続くのか、と思うとまた色々と思う物もありますが。「らせんの世界」かな?
ま、とにかく「何かが残る」作品ですね。良い意味で強力な「何か」。
ヒロインなど、主人公が送還した連中は「あぁ、良かった」と。だけど、主人公に関しては......「本当にこれで良かったのか?」。で、流れていく放送。それまでの話から出てくる、短くも印象的な「メッセージ性」。
昨今の御時世を考えると、より色々と考えられる物があります。更にタイトルの「CROSS†CHANNEL」の意味が色々と、ちゃんと存在していて納得できる物はありました。と言うより、最後の部分は本当に表題の物なんだろうと思います。交差すれど一方的、ではありましたけど。
ま、とにかくシナリオの出来が極めて優秀。その他の総合力も高いと、非常に良くできた作品でした。
文句なく合格点です。
○登場人物とシナリオ、人物評
- 黒須太一
主人公。
いやぁ......もう、凄いですね。「人を演じる」ために苦労をしていて、もろい理性であがいていて.......他者から見ると躁状態だけど、でも実際には壮絶な過去が、と言う。
ま、とにかく陰陽の強烈な差を発揮していたキャラクターでしたね。「陽」の部分は本当に躁状態のような、だけど面白いというか。不思議な魅力を持っていてと言う。しかし「陰」の部分が強烈な生い立ちと、壊されていった精神と。それを押さえつける理性の少なさがまた様々な問題を起こすというか。
最初は全くそんなことは思いませんでしたけど.......徐々にそういう部分がちゃんと描かれ、そして明かされていく。そして、送還の場面になって、本当に色々とあがいていくという。更にその送還後は? 毎週続ける「部活」に.....伝えていくメッセージ。
いや、本当に色々と強烈な主人公だったと思います。
主人公としては多分忘れられないレベルのキャラクターなんですが、最初はコイツ、「実は吸血鬼と言う設定?」って思っていたんですよ。えぇ、みみ先輩が怪我した時のシーンで血を見て理性が飛んでいた時とか。名前からも何となく、と言う。でも実はきっちり人間でそして......まぁ、背景がと言うか。
しかし、彼はいつまでメッセージを発し続けていったのか? 世界が終わるのはいつだったのか? それを思うとなかなか切ないですね.......
- 宮澄見里
みみ先輩。群青学院放送部部長。「みみみ先輩」という呼ばれ方は嫌う。島友貴の姉。現在両親は別居中で、父親(刑務所に収監中)についている。
普段は正確は温厚で、常に「放送部」を建て直そうと考えている人物。しかしもろい自分を硬い殻で守って、それが崩れそうになると自傷行為などに走ると言った問題行動を見せる。
群青学院で孤独だった主人公に最初に声をかけ、そして部員にした人物。
何と言うか......最初は「まとも」と思ったんですが、段々結構性質の悪い性格かもと思うようになり、と言うか。結局、硬いまま崩せなかった部分があるなぁ、と思ったんですけどね。ある意味心配、だけど何処かもろい中にも強さがあったような、そんなキャラクターでしたか。主人公も、おそらく「自分を救ってくれた人物」として見ていたんでしょうけどね。
ま、姉弟の確執の原因はやはり彼女だったのでしょうけど。不器用過ぎたと言う事か?
ともあれエンディング後、彼女はどこまで強くなれたのか? 気になるんですけど。まぁ、姉弟の確執を超えた部分もにおわせていましたので。それなりに、何でしょうかね......
- 桐原冬子
2年生。「孤高」のお嬢様。家は金持ち、時空を超えて刀を呼ぶ能力あり(笑)
とにかくもキーワードはこれ「もろい」。基本的には他者との交流を嫌う(少なくとも、現環境下において)が、一度理解すると、プライドをかなぐり捨ててまで依存的になる。かなり病的。
潜在的ストーカー? 主人公の「元彼女」。
いやぁ.....最初よく分からなかったのが彼女でしたが。
付き合っていたんだなぁ、と言うのは理解できたものの問題はそのあと、回想シーンで一瞬入るフラッシュバックがよく分からない。何か見えるのだけど、と言う......で、真相で思いきり引くと言う。「初期化に失敗しました」ってまさにそうだよなぁ、と言うか。正直ぞっとしましたかね、この徹底的な依存ぶりは。
それが結局群青行きになった理由なのでしょうが。
エンディング後、最も心配だったのはこのお姫さま。
主人公のメッセージを本当の意味で理解するのはいつの日か?
- 山辺美希
Flowersの片割れ。1年生。
「他人の感情に共感できない」故に群青行きとなる。主人公とはセクハラ攻撃も含めて上手にやり取りを出来る人物。群青行きで最初に交流したのが主人公。だが、結局はその群青行きとなった性格故にかなりの食わせ者。
頭はかなり良いかも? ストーリーの重要なキーを握る人物。
いやぁ......主人公とのノリノリの会話に、気の遣い方とか、なかなか面白い娘さんだと思ったんですが。彼女のシナリオに入って流れが一気に変わった様は驚きでした。
正直かなりの食わせ者と思いましたけどね......とにかく怖い。霧にうまく依存し、一方で利用し、そして「世界の真相」を知ってキープレーヤーとして暗躍......誰がこんな事を想像したか。そういう側面を知ると、彼女が、霧と主人公二人で街を見下ろす時に泣き始める部分がまた、色々と思うものを出してくれますけど。
たくましさもありましたし、彼女の(送還前の)シナリオで最後に見せた暖かさは良かったかと。でも、したたかさがとにかく強烈なインパクトを残すキャラクターでした。
しかしエンディング後、霧と分かれた彼女はどうなったのか?
結構芯の強さは感じたんですけどね。霧がいたからこそ、と言う事かもしれませんけど。
- 佐倉霧
Flowersの片割れ。1年生。
「社会に真面目に向かい合い過ぎて、不正が一切許せない」故に群青行きに。新川豊のいとこで、豊を慕う。美希に依存。過去にあった確執から、主人公を避ける。かなり「キレイ好き」な性格か。
体育会系。
彼女のシナリオはかなり面白かったかと。主人公をめぐるカギとなる話でもあったと言うこともあるでしょうけど。
とにかく新川豊と彼女、そして主人公との関係とその変遷が非常に興味深い、と言うかよく描かれていたと言うか。豊は主人公と因縁がある事が示され、それを知った霧の反応・葛藤がよく描かれていたかなぁと思いますかね。もっとも、群青行きとなったその性格と、極めて的確な主人公の見極めから非常に困難な道となっていますけど。
彼女のシナリオと、送還編は非常に見ごたえがありましたかね.......主人公もよく自制と言うかコントロールできたと思いますが。
エンディング後、予想通り最も「正常に近かった」故に群青を出る事となりますが。
その強さで社会復帰できたのでしょうかね.......ま、主人公を思い出すたびに泣くのかとも思いますが。
- 支倉曜子
主人公と因縁の仲。「市原流くの一免許皆伝」。
万能にして寡黙。そして、狂気を秘めたキャラクター。話の核心をにない、主人公とはそれを共有し、そして最後の最後まで話のカギを握るキャラクター。
いや......最初の方はなんだと思ったんですけどね。
徐々に話が進んで過去の因縁が語られ、そして主人公をひたすらにサポート(?)し続け、そして彼女以外が全員送還された後の話の狂気の度合いが強烈で......徐々に徐々に、存在感を増してそして話の核心を明かしていく事となるキャラクターでしたか。
とにかく強烈。特に最後の最後、「弱虫」となるシナリオは凄かったですね.....大どんでん返し。ある程度「固まった」と思った話の内容を重大な部分で覆していくと言う真相。そして、その時に見せる、「完璧」と思われた彼女が崩れていく様は見ごたえがあったと言うか。
いや、もうシナリオ作った人の勝ち。
エンディング後、彼女はおそらく何も変わらなかったのでしょう......少なくとも外面的には。
しかし、変わっていかないと、と言う主人公のメッセージをどう受け取ったのか? 気になるんですよね........
- 島友貴
主人公の親友。2年。片足が不自由。みみ先輩の弟(母方に引き取られている)。
あまり多くは語らず、かな?
主人公との友情ぶりが良かったですが、同時に狂気ぶりもなかなか。実は結構闇を抱えている訳で、なるほど群青行きかと思う訳ですが。特に通信塔を破壊した時とか。
エンディング後、果たして彼は?
まぁ、姉との和解もあったようですが。比較的まともなので、復帰は出来たと思いますけどね.......
- 桜庭浩
主人公の親友。2年。金持ちでバカ(笑) 旅行好き。時々ふらりと放浪する。カレーパン狂。
完全な脇キャラのくせに、実は主人公との掛け合いが非常に楽しく、そして所々でキーマンとなっていたのが良いですか。ひょうひょうと言うか、何も考えていないように見えて、実はかなり友情に篤いところが良かったですか。
まぁ、もっとも送還後も誰も心配していないというのが凄いですけどね(^^;
実は結構気に入ったキャラクターです。
- 堂島遊沙
中等部。主人公とは近所。
端役でしたけど.......彼女、結局どうなったんでしょうかね.......?
- 七香
「世界」での重要なキャラクター。神出鬼没。
いや、もう最後でびっくり(^^; 意外でしたかね.......結局彼女は何者だったのか? いや、正体は分かる。けどやはり「何者」だったのかと言う疑問は残ると言うか。
最後まで主人公を見守っていたんでしょうけどね.......
ちなみに、七香 vs. 支倉曜子ってのがあれば是非見てみたかったんですが(笑)
- 新川豊
転入生。主人公とは因縁がある。
いや、最初に出てきた時は「へぇ」と思ったんですけど。段々過去の話が深まり、霧編に突入した時点でびっくりしましたがね。主人公の問い「何でおまえは生きているんだ?」がどれだけ突き刺さったのか?
この世界に出てこなかったのが不思議だったんですけど。あぁ、なるほどと........
彼自身はどれだけ幸せだったのか? 最後も幸せだったのか?
以上、ですね。
いや、もうお勧めですかね。とにかくその強烈なメッセージ性に、話のピースの埋め方、音楽も良かったですし。これは本当に名作に類するものと思います。
・供与者への謝辞
どうもありがとうございましたm(_ _)m>Aoxさん
(最終更新 2004/07/28)
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