プレイしてみた「腐り姫」の感想&供与者(「かるま」氏)への独断と偏見に基づくレポート。総評より下はネタバレしています。尚、18禁です。
評価(5段階中):3.9
シナリオ完了順:一本道(ただし最低二周は必要)
「行殺新撰組」などで有名なを制作したライアーソフトの作品。父と妹が謎の死を遂げ、揚げ句記憶喪失になった主人公が、義母につれられて訪れたふるさと「とうかんもり」で蔵女(くらめ)と呼ばれる、深紅の着物の少女と出逢った。妹に似ている、と言うこの少女は........
ホラーです。
○総評
また難しい作品なんですけどね。
絵、音楽、キャラクター、設定、シナリオなど良くできていると言う評価が下せます。絵は雰囲気がかなり重視されており、「寂れた山奥の田舎町」の雰囲気を非常に良く出しています。音楽はこれにあっていて、非常に良いと言えるでしょう。かなり良くできていまして、知る限りでは間違いなく上位に入る物があります。キャラクターは個性がきっちり確立されていまして、誰であっても「あぁ、こいつだ」と言う感じにさせてくれるのは良いでしょう。
設定は良い感じです。「赤い雪」に関するのはなかなか良いかと思います。繰り返される4日間、と言うのもなかなか良いです。
シナリオは個々の部分が繋がって「一つ」にまとまるような感じになっていますが、個々の部分が良くできていると思います。ある程度のパート(ヒロイン毎というか?)に分かれますが、それぞれちゃんと作ってあるといえるでしょう。蔵女の役割などは非常に良いというか、「ホラー」としての「追いつめ」方はなかなか不気味で良い感じです。
ただ、「まとまる」部分でちょいと失敗した観があるような.........サイトを巡ると、各所で「これでも良い」というのを見かけるのですが、個人的には評価は高くありません。理由は後述しますが、屋台骨としてのシナリオでそう感じた、と言う事で評価が落ちています。
この部分、もう少ししっかりやってくれていれば合格というか、オススメ出来る点数まであげたんですけどね.......本当にもったいない。
あ、あと近親相姦があったりとちょいとインモラルです。
個人的にはあまり好きじゃないですね、そういう部分は......
○シナリオ以外の細部の難点
- システム
大きな不満が一つ。
何かというと、未読処理に関して。「記憶を失う」の後に、かなり同じ部分が重複しますけど、そこが飛ばせなくなるのはもう少しどうにかして欲しいですが。これはストレスになりましたので減点対象です。
#アップデータかけると修正されますけどね.......
#忘れていたよ(- -;
- 誤字・脱字、ファクトチェック
なんか微妙にありましたねぇ........「てにをは」が重なっていたりとか。
まぁ、いつもの事ですが「商品」ですのでもう少し。
- 矛盾
ここではシナリオ的なものではなく、なんか.......家の構造おかしいくありません?
一階から二階を見上げている部分と、二階から見下ろす部分の構造が頭の中で一致しないんですけど........(^^;
- アップデータ
「行殺新撰組」でもそうでしたが.......もうちょい「きっちり作って」から出荷して下さい、ハイ。
初回出荷がCDとフロッピーってねぇ......減点対象。
尚、これは減点対象にはしませんが......
文字スキップがコントロールキーで出来ますけど、これを多用するとメッセージウィンドウの表示が行きなり出来なくなる(一端メッセージを戻していくと表示されるが、新規表示は出来ない)のが少し。これはVPC上で起こる問題か不明ですので、とりあえず保留しておきます。
#解決法は一端セーブしてロードで治る。
○シナリオ以外の評価
- システム
上にある未読処理をのぞけば基本的に悪くないです。繰り返すたびに増えていく家財も良いでしょう........郵便ポストとかあるのが謎ですが(笑) 基本的なセーブ・ロードなども普通で問題なし。選択肢に戻る、と言う機能があるのも良いです。シーンの再生でさまざまな、転機となるシーンの再生がちゃんとあるのは、この作品においては良い点だと思います......途中で抜け出すことが出来ればもうちょい良かったんですけどね。
- 絵
雰囲気、非常に良いです。設定上では「とうかんもり」は昔鉱山があったが、現在は閉山して寂れている、という様な感じになっていますが、その雰囲気が非常に良く出ています。山の中で不便な土地、というと「あぁ、こういう感じだよなぁ」と。これはかなり評価していますね。
また、いわゆる「立ち絵」が独特のものになっていますが悪くないです。風景の中にキャラクターを出していくのも良いでしょう。オープニングで蔵女が町中を移動してくあの感じは結構好きです。
- 音楽
これも高い評価です。雰囲気を損なわない上、比較的素朴で情感のある音、と言うのは良いです。今までやった中でもかなり上位に位置しているといって過言ではないでしょう。結構気に入っています。
#VPC5.0xの問題できっちりリピートされないのが残念ですが。
- マニュアル
素敵な観光案内です。えぇ、素敵ですとも。
「大丈夫だ。三日以内には外に出る」とか、期待を裏切りまくる様な解説文とか(笑)
- 盲点
さすがライアー........(^^; これが無いと単なる重苦しい話ですけどね。
単なるギャグだけでなく、作品へのヒントを含んでいるのは評価出来ます。個人的にはこういうの好きです。
- 狐の嫁入り(=全裸ファイト)
はじけすぎ(^^;
これだけ見たらきっと「これはどういう作品だ?」という事になるでしょうが........終わった人間だけの特権ですね、これは。これ、評価しています、一応(笑)
○シナリオおよび設定に関する評価
ひたすらに繰り返される毎日となりますが.......「赤い雪」に関する設定や「ループしていく」毎日、戻りそうで戻らない記憶に、取り巻く人間のわだかまり。そして追いつめていく蔵女。いずれも良くできていました。基本的な設定に関してはなかなか.......というか、最初「伝奇ホラー」だと思ったんですけど、まさかSFとは.......(^^; 良い意味で裏切られました。まぁ、そういう意味ではなかなか面白い。特に記憶を取り戻そうと断片をつかんでいく苦悩や、家族、そして周囲の苦悩、蔵女の悲しみ、と言うのは良く表現されていると思いました。また、怖いと言うか複雑な感情にしてくれるのが「”どのような形であっても”満たされれば赤い雪と消える」という部分。本人は幸福ですけどね.......でもねぇ、と。複雑だよなぁ、と。
キャラクターもいずれも個性派。話も笑えたりぞっとしたりと、良くできています。
ま、そういう意味で「個々の」部分に関しては良くできているといって良いでしょう。まぁ、ちょいとからみシーンが多かったり、インモラルだったりしますが.........ここら辺はちょいと好きじゃないんですけど。
#とは言っても、結局主人公と樹里、あるいは父親との関係はきっちり明記されていないんですけどね.........
#樹里か蔵女かだんだんはっきりしなくなる事で余計に曖昧になっていきますが。
ただ、難点が上にかいたようにラストというか、重要な部分というか。
何が「評価できないか」というと、見た限りのサイトで指摘されていた「やや唐突に話が飛ぶ」と言う点もあります。が、それだけでなく「まとめていく」にはちょっと情報が足りなさすぎたのではないか、と。蔵女の存在の設定とかそういうのは良い。主人公の記憶の真相(これも全ては明かされていませんが)も良い。でも、パラドックス(典型は「最初はどれで終わりはどれ?」)が多い上、時間軸にX、Y、Z軸作ってしまったような感じでは、「赤い雪」に散ったきりこ、芳野、夏生はその時間軸でも「抜け殻」なのか? とか。ちょっと複雑化しすぎてまとまりに欠いたのではないか? また、狐坂もいきなりでてきて「はぁ?」と。
とりあえず、「謎がある」「読み手に解釈は任せます」と言うのがあるのは別に良いです。それは文句はありません。ただ、もう少し「提供すべき情報があったのではないか」と思います。せっかく「最後の選択」の部分(「閉じた環からの解放」の選択)とか良かったのに.......えぇ、あれは非常に印象に残るものでしたが。
多分、こういうことでラスト部分(未来編、蔵女編)の評価が分かれているんだと思いますけどね........唐突感の改善と、「何が起こっているのか」の補足をもう少し。それだけで間違いなくもっと高い点数を上げたんですが。個人的には現状では万人に奨めにくく、奨めるにも人を選ぶ必要がある、と思います。
あぁ、もったいない........せっかく主題でもある「人の罪、死ぬこと、忘れること、愛すること」というのをうまく浮き彫りにし、更には音楽も絵も評価できるのに、と思いますね。
尚、ひたすらに謎が多いシナリオですけど(結構「明記している」つもりで明記していなかったり)。
え〜.......個人的な解釈としては、あの話では最初から主人公は死んでいるもの、と解釈しています。つまり赤い雪云々無関係で、既に心中した時点で死んでいるのではないか、と。潤も「あんたはもう死んでいるんだ」って言っていましたしね.........では、蔵女は? ある種の「死神」かなぁ、と。人の心に入り込めるわけですし......まぁ「異星からの死神」かもしれませんが。ま、魅せられた蔵女が死んだ主人公に......というか。まぁ、個人的にこれで納得できそうな気もするなぁ、と。
もちろん、真相はこのままだと分かりませんけどね........
#不明な点が多すぎて.......
ただ、ラストはどう捉えるか人によって違うと思いますけど。個人的には「繰り返し」ではなく、別の方向へ、となる........と思っています。でないと不幸なまんまですのでね、彼らが。あり得ないわけではないです。なぜなら、時間軸が複数ある世界の話ですからね?
まぁ、人によって多分それぞれの「解釈」が相当に存在する話だと思います。
そうそう、気に入ったシーンについて列挙。
「オープニング」「蔵女との出会い」「祭りの時の幸せな記憶(具体的な部分)」「母親の指し示す先と、蔵女との再開」「とうかんもりを見下ろす二人と選択」とか。橋に腰掛けて消えるところなぞ、なんとも言えませんが。また、最後の最後に出る「四つ目の選択」はかなり「Lien」の柚ルートのラストをほうふつと........
いずれも、かなり個人的にヒットしています。
ついでに、ある意味「名言」と思ったのは「下品なギャルゲーなどいらん」「上品なエロゲーなどいらん」です(爆)
○メインの登場人物評
かなりのメンツのキーワードが「後悔」「孤独」と言うのがなんとも........
- 簸川五樹
主人公。良いヤツで優柔不断........でもなぁ。それが全部の不幸を呼んだとしか言い様が無いよなぁ(^^;
ま、家庭環境も複雑で色々とあった事は分かりますけどね.......にしてもねぇ........ある意味不幸だったのかも? 樹里にある意味依存しすぎたのかも知れませんが。もう少し自分を持ちましょう、というか.........ある意味世間知らずだったのか?
しかし、彼自身結局何者だったのか? シナリオは何も答えてくれませんね.......
- 蔵女
孤独な異星出身の死神(?)とは思いませんでしたが。
人の心に入り込み、(たとえ単なる幻想であったとしても)欲望を満たしてやり、対価として赤い雪とさせる........恐い存在ですけどね。まぁそれゆえに「求められるだけ」であったがために孤独だったのかも知れませんが。「独り、去りゆくときは、いつだって独り」と言う言葉が全てを表しているといえます。ま、そういうのもあって五樹を求める事となったのかも知れませんが。そして、最後の邪気の無い印象的な顏になるのかもしれなせん。
まぁ、良い役回りというか........恐い存在でもあり、悲しい存在でもあり、と。ラストは極めて良い役回りだったといえるでしょうか。
結構印象深いキャラクターです。
- 簸川樹里
恐っ!!Σ( ̄▽ ̄;;
- 簸川芳野
良き母になり、良き妻になろうとして......物腰が柔らかく、結構好きなキャラクターだったんですが。赤い雪と散りましたねぇ.......
まぁ、でも五樹の記憶の中の部分ではかなり悲しい役回りというか、孤独というか。この人も不幸ですが........まぁ、それが結局蔵女に振り回される結果になったとしか言い様が無いですけど。赤い雪になる時は幸せ、と言う事で本人は良かったのかも知れませんが。でも、五樹の「でも、僕を見ていない」と言う点が悲しい.......
ところで、樹里の首を絞めようとしているシーンがありましたけど。あれ、朱音が死んでから兄妹心中までのどの位置で起きた出来事なんでしょう? あれの時間の順番が良く分からないんですよね........
- 簸川潤
義理の妹ですが。まぁ、人が良いわけですが結局損しましたね、この子も。
母親思いで良い娘さんですが。まぁ、作中では大半が怒っていたような気がする(^^; ま、目立つのは何といっても最後の方ですね。唯一蔵女を「殺した」キャラクターでもありますか。
面白いキャラクターでした。
- 簸川夏生
いとこですね。豪放なキャラクターですけど。
まぁ、結局この人も孤独だったというか.........もう少し器用に生きられんものかと思ってしまいますけど。でも、この人の話はちょいと強引に過ぎた気がしますが。まぁ、不器用で猪突猛進型の典型ですかね.......最後の散り際、本当につき物が落ちた感じでしたけど。
ま、面白い味を持っているというか。作中ではかなりアクセントを加えてくれたキャラクターでした。恋人にするには嫌ですが、友人にするには面白そう.......の前に巻き込まれるか?(^^;
- 伊勢きりこ
一途なキャラクターでしたけどね.........一途なんですけど、「狐の嫁入り」できっちり扱われているようにストーカーですか(^^;
まぁ、何ともかんとも........でもこのキャラクターも孤独。五樹に依存せざるを得なかったのだろうかとも考えてしまいますけど、まぁ赤い雪と散りましたねぇ.........しかも幻想の元に満たされて散ってしまいましたが。
........不幸? でも、本人は幸せか........
う〜む(^^;
- 山鹿青磁
部分部分の鍵を握るキャラクターでしたが。
まぁ、人との距離の置き方を誤ったがために後悔を生んでしまった、と言う........ニヒルにやり過ぎたというか? 夏生のコントロールも上手くできなかった部分がありますけどね。多分、相当に苦悩していたのでしょうが。
個人的には、もうちょい活躍して欲しかったかなぁ、と。あと、この人が関連するルートの「赤い雪」の世界の謎ももうちょい........
○脇役達への賛歌
しっかり活躍する者からちょい役まで、色々といましたか。
- 簸川朱音
五樹の母親でしたけど。
精神を病み、予知能力があり.......祭の幸せな記憶などでかなり重要な役割をしますが。ラストでの鍵を握る部分は良かったですね。あぁ、やっぱり母親だったのかなぁ、と。結構、この人の出てくるシーンは好きというか、印象深いものがありました。
- 簸川建昭
五樹の父親。
主人公の優柔不断はこいつ譲りか? ただ、もう少し周りに目をやっていれば.......なのでしょうけどねぇ。少なくとも、芳野や五樹を不幸にする事は無かったのではないかとか色々と思うのですが。でも、樹里がいるから結局駄目か?
- けーこ
だれが考えたか、グリル「ぎとぎと」の女主人。会津中将様じゃないのね、今回は(笑)
まぁ、何ですか。「強者」としか言い様が.......(^^; 少なくとも、ランチタイム3割り増し、ってのは初めてだ(笑) 客相手に恐喝というのも良いものです(?) 「潤ちゃ〜んの」........(^^;
- リカルド
話に柔らかみを加える良いキャラクターでした。
って、警官って外国籍でもOKなの?(^^;
- クロ
........で、結局クロの存在は?
いや、ある程度は分かれども........ただ、クロが「敵対」したのは「蔵女」か、あるいは「樹里」だったのか?
- 役所のジジイども(笑)
ある意味芸術的な「三馬鹿トリオ」(笑)
何を誘致するつもりだったのか.......(^^;
- 紅涙
学者先生。
色々な意味で「素晴らしい」ヤツです........特に「ぎとぎと」での夏生とのやり取りは傑作の部類ですな(笑) っつぅか、完全にセクハラ(^^;
- 鈴北
結局彼は何者?(^^;
- 朝霧 清香
謹慎中に旅行にきた刑事。
.........全開だな(色々な意味で)。
- 狐坂
.......で、結局誰?
盲点では出まくりますけど、本編では説明が無いままに肝心な部分を、というか........もうちょっと考えて欲しかった。
以上、ですね。
ま、ご覧の通り。「あぁ〜〜〜〜〜」という、非常に惜しい! 惜しすぎる、と言った所です。個々の部分は間違いなく良い部類に入っていたのに.......と言う事ですね。ま、本当にもう少し補えばそれだけで、と言う気もします。と言う事で、「良作になり損ねた佳作」という評価です。
でも、その個の部分が結構面白いですし、サービス精神はライアーそのもの、とも言えます。こういう部分はきっちり楽しませてもらったといえます。
・供与者への謝辞
どうもありがとうm(_ _)m>「かるま」氏
(2002/10/16 初アップ/最終更新 2002/10/23)