PARTS


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※:これは、ゲストブックの「過去ログ35」の2000/06/17 13:56より、引用です。


プレイしてみた「PARTS」のレポート。

評価(5段階中):3.6
 シナリオ完了順:コエダ→マキ→ナミ

 結構前に出た(?)ビジュアルノベル。友人より供与。18禁。

 高校生である主人公が父親から引き受けたアルバイト。それは、父親の働く宗教団体の施設で「神の子」と呼ばれる子供達の面倒を2週間見ることであった。
 引き受けた主人公は、宗教団体の施設「ファーム」で2週間、二人の「神の子」の相手をすることになるが............

 という話。
 基本的には主人公の視点による第一人称で話が進行。Oneに近いタイプのシステム。 基本的には朝→午前→昼→午後→夜と1日は進行します。キャラクターによっては複数のエンドがありますが、バッドエンドも待っています。

○難点
 最初に難点から。

・システムの作り込みが甘い
 何となく不便だったり、微妙にストレスが溜まったりしました。
 例えば、メッセージスキップでは「もうちょっと早くならない?」という部分が。キャラクターの描き換え速度も遅く、スキップ中でもゆっくり描き換えしています。 未読処理もありませんので結構面倒です。
 余韻を残したいんでしょうけど、結構イライラする部分もありました。
 後、止まる事も結構ありましたね。あるバッドエンドで何押しても反応せず、という所もありました。
 減点対象です。

・シナリオのつくり込みが甘い
 数ヶ所矛盾点が生じています。「昨日」はそんな事していないのに、「昨日○○した」とか言っていますし............ また、安易だと感じる部分も少し見受けられました。
 後、シナリオによってはもうちょっと上手く昇華しても良かった部分もあるように思えます。良い部分もあったのでもったいないです。
 減点対象です。

・科学
 科学が関与する部分がある話なのですが、歴史とそのバックグランドに関する部分に無理がある部分があります。普通は気付きませんが、知っている人間からすると減点対象です(これは運が悪いかも)。
 また、ちょっと誤解がある(ないしは与えるような説明がある)様に思える部分がありますね。科学知識に。
 減点対象です。

・音楽
 音が悪いです。 また、音量調整ぐらいは上手くやりましょう。と言うのは、エンディングでは歌が入っているのですが、音量を上げないと何も聞こえませんでした。
 減点対象です。

・誤字/脱字
 なんか.......間違ってない? って部分が結構。
 ちょっと大目。減点対象です。


○感想と評価
 ま.......OneとかPhantomとかを先にやったのがある意味不運なのかも知れませんが..........先にこっちをやっていればまた評価が変わったかも知れません。もっとも、こっちを先にやらないで良かったとも思いますが。
 この話は完全にストーリーが個人の好みに左右されますので、好きな人は更に評価が高いでしょうが、嫌いな人は更に評価が低くなる、というタイプです。おそらく両極端に別れやすい話ではないでしょうか? 基本的に非常にダークなストーリー。「救いようのない」という部分が非常に強く、かなり残酷さがある話です。
 個人的にはこう言うのだと「救いようのあるラスト」の方が好きなんです。後味が悪くて釈然としない様なのは趣味ではありません。ま、大分例としては違うんですけど........「One」のトゥルーエンドの「Fin.」の後の部分削ってそれが「本当のエンディングです」って言われたらすごく気持ちが悪いでしょ? あれは最後に主人公が戻ってくるから救いようがあって良いじゃないですか。 でも、PARTSの場合は残酷の方に話が忠実なんですね.......
 で、話の中ではインパクトのある台詞もあったり.......... シナリオの順番によっては、色々と「先の見える不吉さ」が増してきます。
 もっとも、それ故に色々と、考えさせられた部分もあったのと、「残る」部分がありましたのでそれ相応に点数はあげておきました。
#関東軍防疫給水部とか、オフィシエンチムとかを調べていたのを思い出しますが............
 後、スタッフが頑張って、真面目に作っているという部分を感じました。この点も評価しておきます。 もっとも、不完全燃焼で終わっているように感じる部分がちらほらと..........(苦笑)

 ま、結構話に嫌な部分があったのですが、一応冷静・客観的考えるようにして3.6です。結構悩んだんですが(もうちょっと下げようかとも)、色々と考えてこのポイントを与えることにします。
 まぁ「名作」には及びません。上限で考えて「佳作」ぐらい、ですかね。
 とにかく、人によって評価が分かれるのは確実です。

・シナリオ
 何となく笑わせてくれるシーンもあるのですが、途中からダークになります。個人的には「あり」だとは思いますが、決して好きではありません。ただ、人によってはこういう話で感動できる人もいるでしょう。ま、ある程度はキャラクター毎でそこら辺は触れましょう。
 設定に関しては「閉鎖的な宗教団体」というものを上手く利用したように思えます。若干安易に感じる部分もありますけど、この設定の利用はしっかりとシナリオに合うようにできてました。評価します。


○各キャラクター毎(プレイ順)
 書きたい部分もあるんですが、そこを書いてしまうとネタバレになってしまうので書けません。ちょっと謎情報が多いかも知れませんが.........

・コエダ
 ファームで育った自閉症の少女。10代前半ぐらい? いつも胸にカブトガニ(だったか)のぬいぐるみ(「香澄」という)がいます。 感情の一部がかなり欠けています。
 彼女の話はルートが二つ。両者とも救いようがないです。が、泣ける人は泣けるかと思います。 最初にやったルートとしてのインパクトとしては十分でした。自閉症の子相手ですので、当然「心を開かせる」というプロセスがありますが良く出来ているでしょう。印象に残るシーンもあるのですが、ラストが個人的には後味が悪いです。両方とも。
 う〜〜ん............

・マキ
 ファームで育った少女。主人公と同い年ぐらい。ファームの「神の子」としてはかなり例外的なほど活発で好奇心おう盛。明るく、感情を素直に出す。また、天才的頭脳の持ち主で、一回本を読めばほぼ一字一句覚えてしまい、応用もできます。
#これって一種の記憶障害じゃねーか?(^^;
 ルートは一個だけみたいです。色々と楽しいエピソードが多く(生き血入りカレーとか(笑))ありますが、この作品の特性上嫌な話もあります。 ただ、唯一救いようのある、と感じるラスト。 このルートが総合的に唯一気に入っています。 この子がいなかったら、更に評価落ちていました。
 こういう方のが良いです。話的には。

・ナミ
 シスターS037と呼ばれています。主人公より若干年下ぐらい。主人公の世話やら案内やらしてくれます。 毎朝起こしに来てくれますが..............起こし方にはなかなか笑わせてもらいました。っつぅか、命がけで危険なものがあったりしまして、印象的です(笑)
 最も分岐ルートが多い人物。バッドが多いです。と言うか、とんでもねーバッドエンドがあります。 ネタバレになる部分が多くてあんまり書けないんですが........ラストの辺りは..........トルゥーエンドも悲しいぐらいに後味が悪いです。
 .........う〜ん............


 以上、です。
 話的には「あり」だと思います。でも、個人的には好きではない話です。ラストが特に。 後は捉え方と話への好みの問題でしょう。
 ですので、個人的にはお奨め出来ません。ポイントはあれだけあげましたけど、個人的感情を大分入れると下りそうですから。 ただ、考えさせられた部分もありましたので...........
 難しいところです。

・供与者への謝辞
 ま、良い経験はさせてもらいました。ありがとう。>かるま氏
 でも、次に何かやらせるつもりならばもうちょい救いようのある話を頼む(^^;;



以下ネタバレ関係
(追加分)




























●ネタバレ入りの個人的解釈、感想、与太。
 まぁ、点数はこんな感じですが、結構気になる作品ではありました。実は。 っつぅか、肝心なところ書いちゃうと全部ネタバレに直結するんで書けなかった、というのがありまして、そういうわけで上の方の、ゲストブックに最初に書いた感想は結構控えていたりもしました。
 ただ、如何せん..........話のダークさが上回りました。特に、生物化学なんかもやっていた人間としては考えるべきところと、嫌悪的な物がありましたしね。 後、実は科学の点での失点がでかかったりするんです。これは、運が無い、とだけ書いておきます。
#ある程度の無茶は良いのですが、気になった点がやっぱり(^^;;

○科学的なものについて
 この作品、おそらく現代なんでしょうけど..........50年前、って下り。実はミスというか無理があるんですよ。 何故かというと、記憶によれば1950年代にX線による結晶解析が発達し初めて、それからしばらくの悪戦苦闘があって1960年代にワトソンとクリックによるDNAらせん構造の解明が出来るんです。 その1950年の前後にいくら天才とは言えども無理がありますね...........あと、当時は「遺伝子工学」なんて言葉は無いです。
 あと、良く調べてあるんですが、ゲノムと遺伝子の区別がちょっと不安ですね。あの文章だと。「クローン」も色々とあるのですが........ また、技術に関する知識も不足していますね。誤解与えるような部分も散見しました。 考えますと..........多分コスト換算するとクローンつくってやるよりは臓器だけ作ったほうが効率的だったりします。また、「将来の病気の予見」も出来る部分もありますが、結構環境での大きな差が生じますので精度としては話の中で語られる程の精度で行けるかは「?」です(両親ともガンだ、って事ならまだしも...........)
 もっとも、これ書いちゃうとこの話って成立しないんですが(爆) もちろん、そういう情況を理解した上で楽しむ、ってのも重要なんですが、「アルマゲドン」見て「物理法則がぁ.......」という感じのモードに入っちゃいましたので。

 ついでに、上に「関東軍防疫給水部」とか「オシフィエンチム」って書きましたけど、前者はいわゆる「731部隊」を指し、後者は「アウシュビッツ」の事です。 過去に真剣に調べたりしたので、そっちの光景、描写、出来事、写真を思い出しました。この話で........... だから、正直そういう部分がなるべく冷静・客観的に見たとしても残ってしまったのは事実です。「嫌なこと」という部分で。

○システムなど
 これは、OneとかPhantomをやったのが本当に不幸としか(^^;;
 やっぱり作り込みが甘い感じがします。 Oneだとテキスト飛ばすと途中でキャラクターの表情が変わるときとかの途中の描写が省略されますし、Phantomでも軽快に飛ばしてくれるのですが............ なんか「だらだらと」って感じなんですよねぇ......... 表示止めるのもわざわざ右クリックして指定しないといけませんし。
 バッドエンドでフリーズも結構嫌でした。
 もうちょい、完成度の高いものを望みます。

○シナリオ
 まぁ、矛盾点とか上記の「嫌悪感」を除けば実はそこそこの評価しています。だから「あり」だとも書きました。 でも、シナリオによっては完全にやっつけになっている部分もありましたし.........そうなるならばいっそ省略すれば良いような気もするんですが。
 まぁ何はともあれ、コイツは詳しいのが書けないんですな、ネタバレ無しだと(苦笑) まぁ、話の気分はOneの茜嬢の逆パターンというか.........(^^;; 自分の無力さをあおり立てるがごとく、というシナリオでしたね...........
 取りあえず、宗教を逆手にとった「産業」のアイデアは上手いですね。小さいころから「教育」していって「ラ・ニーニャ」「エル・ニーニョ」なんてものにして「神の世界」を上手くたたき込ませるわけですから。これは大したものでしょう。 「供養だよ」って言われるとぞっとしましたけど。 また、結構「上手い」と思ったのは羊を数える時の下り。「そうか、あれはクローン羊なんだ」ってヤツ。 まさか後で、って感じがしましたし。
 あと、最も大きいのはこれですか。「『人間』の条件」ってヤツ。 人工的に生まれた、少なくとも生物学的に「生命」と認められるものは所詮は「道具」なのか..........? これ、将来的に出てくる可能性のある問題として良く考えるのですが.........この部分、大分動かされ、そして考えさせられました。
 そういう意味では結構良かったんですけどね.............. 他で失点を稼いでしまったのが残念でしょうか。
#だから「名作」扱いではないのです。

 そういうわけで、以下に各シナリオに関してのコメント。

・コエダ
 コエダが心を開く過程が上手かったと思います。っつぅか、カウンセラーでも目指せ(笑)>主人公 また、「香澄」を上手く利用したと思っています。
 従容として死んでいくパターンと、逃走の末に死んでしまうパターンがありましたけど..............
 前者のパターンが最初に選んだシナリオなんですが...........残酷極まりないというか...........気分は特攻隊を送りだす人、と感じるシナリオでした。最後の微笑みが尚更浮き立たせます。 何故あっさり従容として死んだのか? 全ての選択肢が主人公から抜け出ていく、ってのはやはり悲しいものですが...........でも、救いようが無いですね。
 後者のパターン。歌の「神田川」に「One」の主人公がみさおを送るような気分ですが、徐々に最悪の方向に見えるのがなんとも。 最後は多分「桜になって還ってきた」という様な感じの話なのでしょうが........やっぱり、従容として死ぬパターンの最後の最後の桜のシーンで言われた「桜の下には〜」から、この桜の下にはコエダの死体が埋まっているんですかねぇ.............などと想像してみたり。
 ..........ま、何とも言えないやるせないシナリオでした。
#でも、最後の最後の「やっと一緒に........」ってのはちょっと謎に感じるんですが..........

・マキ
 一番良かったシナリオ、として評価しています。 が、この娘だと選択肢無くなりますね。他のが(^^;; バッドエンドとか無いですし。
 そういう意味じゃ、ある意味メインの娘なんでしょうかね?
 生き血入りカレーとか、多彩な知識など色々と楽しめますが.........四つ子の話以降が本当のメインなのでしょうか? 正反対というか何というか、ですが...........
 で、ラストの部分。この娘も従容として去っていきますが.........最後の問答の末に麻酔かけられているときの夢、ですが完全に残酷に感じました。 夢、何ですけど内容が如実にその残酷さを浮かび上がらせていましたし.......って、手法としては良い、という事になりますが。 で、オーラスのネタ。こう言うの、実は結構好きだったりしますし、他が全部暗いなかで「唯一」の救いようがあるラストでしたので結構印象が深かったりしました。 ま、上手く浮き立った、という感じですかね。
 ま、こういう話の方が個人的には好きです。 安易な「大団円」は嫌ですけどね(^^;

・ナミ
 S037。主人公の妹のクローンですね。 最も分岐が多くて面倒でした(爆)
 毎朝起こしてくれる、ですが実は結構受けてみたり(笑) でも、殺しかけていますし(爆) 常識的なんだかどうなんだか...........(^^;;
 この娘さんの葛藤の話は良く出来ていると思いました。禁じられた「何故?」に悩むわけですけどね............ 後は夢の中での回想シーン。完全に「One」の「みさお」の話を思い出します。
 しかし........分岐が本当に多過ぎ(^^;; 一番嫌だったのは「親父発狂」ですかね。怖いというか何というか...........S001は完全にぶっ飛んでいるし、ラストの落ちが怖すぎるし。
 あと、従容として「神の世界に行きます」というシナリオ。あれ、トゥルーエンドか個人的には謎なんですけど..........でも、エンディングは歌つきでしたし。 うぅむ........結構後味悪いし..........
 で、おそらくはトゥルーエンドと思われるシナリオ。まぁ、親父の手引きによる逃走ですけど、あっさり死んでしまい........でもそのおかげで主人公は生き延びた、となっていますけどやっぱり後味が.......... それを浮き立たせるのは4年後、って部分。ファームが崩壊した後を歩く主人公とその寂しさですね..........追憶、ですか。 思い出とホログラムがその寂しさを浮き上がらせ、スケッチブックで更に寂しさを募らせる........... 一番やるせないエンディング、でした。 「ぽっかり」と「パーツが足りない」というか。 ま、上手いと思います。
 ただ、何度も言うように「あり」だと思いますが、救いようが無いんですね。ことごとく。


 まぁ、そういう点を踏まえて点数を出しました。
 もう少し救いようのある話があったら(内容によって、ですが)点数上げるんですけど........... 怖いというか何というか。
 他の点で触れてみると、科学的な部分は個人的にでかい失点です。いや、話が成立しなくなっちゃうのは分かるんですが、ある程度は知っているわけでして(^^;; もうちょっと年代とか工夫すれば、と思いましたし。 後は作り込みの甘さ(ストレスがたまったり、誤字があったり、音だったり)、が大きいです。 そういう点をがよければ4.0前後ぐらい上げても良かったんですが.........
 で、そういう点を踏まえたうえで結論すると「名作」ではなく「佳作」なんですよねぇ......... 良かった部分も多いので、残念でした。

※:2000/09/01追記
 この作品を終わってからしばらく後にある歌を知ったのですが........その歌がかなりこの作品を思い出させるもので結構ぐさりときたり(^^;;
 一応紹介.......しますと........Origa、という女性歌手の歌で「Maria」という曲。歌詞についてかなりこの作品のラストを思い浮かべさせます(^^;;
 ま、この作品が気に入っている方は聞いてみると良いかも知れません。



(最終更新 2000/06/23 09/01追記)

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