Phantom -Phantom of Inferno-
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※:これは、ゲストブックの「過去ログ34」の2000/06/08 13:56より、引用です。
プレイしてみた「Phantom -Phantom of Inferno-」の感想&供与者へのレポート。
評価(5段階中):4.6
シナリオ完了順:クロウディア→アイン→美緒→キャル
比較的最近出たらしいビジュアルノベル。一応、18禁。血にまみれた裏世界の話。 主人公の視点と、第三者の視点で話が進行していきます。 三章構成ですが、一部二章の構成になっているシナリオもあります。
一応、余り流通量が無いせいで有名じゃないらしいのでストーリーから。
○導入部分とストーリー紹介
主人公がふと目を覚ますと、謎の倉庫の一室。ここで、外国人三人に囲まれている事に気付く。 その中の、同い年ぐらいの女の子が前に出てきてナイフを渡し何も分からぬまま突然戦わせられる............ 彼女は「インフェルノ」という組織の最高の暗殺者「ファントム」であった。
「知ってはいけない」事を知ってしまった事から記憶を奪われた主人公が、「インフェルノ」の暗殺者として生きる羽目になってしまったが..........
数々のサバイバルに陰謀をかいくぐり、暗殺者として生きることになった主人公の結末は?
#導入部分がOneとは180度正反対の出だしであると思いついて笑ってしまいました(^^;;
で、評価
○難点
今回も最初に持ってきます。
・セーブデータ
言いたか無いですが最近やった中では最低ですね。日付・時間のデータが全く反映されません。 おかげで複数のセーブデータからバッドエンドの分岐点を探そうとして結構悩ませてもらいました。
こういうところで手間かけさせるのはいけないでしょう。 また、文章のスピードの保存もされません。
アップデータも出ていますが、この点の改善が無いのは更に減点です。 これが最大の欠点というのが残念です。
・用語
気合い入っているのですが、一部分かりにくい用語があります。もうちょい補足加えてもらっても良いのではないかと思います。
だって、いきなり「プローンから射撃」って書かれても「伏せ」って瞬時に分かる人ってそう多くないと思いますが........... 一応、難点として。
・誤字/脱字
数ヶ所。製品ですから...........ま、それほど大きくないです。
○評価
・話(シナリオ)がしっかりしている。
これ、しっかり出来ていて感心しました。 また、文章の表現が上手くできています。 重さと、疾走感、躍動感を感じることが出来ますね。 緩急の付け方も上手く、一端「のんびりになったなぁ」と思ったら突然血なまぐさい現実に引き戻される、など。 全体的にハイテンションで推移します。 しかも、引き込み方が上手いのでやめるタイミングが難しいです(笑)
一番上手いなぁ、と思ったのは、主人公の視点と第三者の視点を上手く使っていること。 第三者の視点で「主人公のあずかり知らぬところで........」という部分を出して、プレイヤーにいくつかの「パズルのピース」を提示。でも全部は分からない。しかし、主人公には更に分からない........で、話でその「パズル」が全部埋まると、主人公もプレイヤーも「げっ!??」となる。と同時にプレイヤーには「なるほど、そういうことだったのか」となる。 これゆえ更に先が気になる...........(^^;;
........「一端止めるタイミングが掴めない」って難点に入れたくなるな.........ってぐらい先が気になりました。 ついでに、ストーリーの「沸騰具合」とラストの穏やかさのギャップもけっこう大きくて凄いですが。
ま、「やめるタイミングが掴めない」というのは物語に送る言葉としては褒め言葉かと思います。
#注:いつでも保存が出来るのにも関わらず、という点で褒めています。FFの様に「セーブポイントが延々と見つからない」では無いです。
ついでに。18禁なんで、からみがあるんですが、全く印象が無いです(笑) 「要らないんじゃないの?」って思うような部分もありましたけど。 それはともかく他の部分の緊張感と迫力、勢いが食っています(^^;; っつぅか、いっそ上手く置き換えて非18禁で売ったほうが良かったんじゃないだろうかなどと考えなくも無いですが(^^;;
#私だけかな?
・絵と音と文章の噛みあわせ。
これは実際にやらないと分からないかも。
オープニングムービーでも、話の最中でもそうなのですが、絵と音と文章のタイミングが絶妙に合っています。 これにより臨場感の盛り上げとプレイヤーの引き込み、というか「引きずり込み」に成功しています。 上手くフラッシュ(というかストロボというか)効果を使っているシーンもありましたね..........
・キャラクターがしっかり出来ている。
主役を張る以外の、「助演」的キャラクターまで非常にしっかりしています。 それぞれに割り当てられた役割を忠実に、確実に演じている、という感じになるでしょうか。 悲劇的なヤツもいますけど..............
リズィ、ギュゼッペ、志賀、梧桐なんかは助演的役割にも関わらず良いです。
・未読処理
読んだ文章は飛ばすことが出来ます。
読んだ/読んでない、の判別はちゃんとしてくれるので、安心して読み飛ばすことが可能です。この部分が良く出来ていました。
ストレスの軽減に地味ながら大きな貢献をしています。
・こだわり
上記以外にも製作者側のこだわりが分かります。
銃器・車両に関しては完全に気合いが入っています(笑) Optionで銃器は解説を見ることが出来ます。 また、プレイ中に保存などを行うメニューでは銃撃のターゲットだったり、保存時の画像も銃器。「OK」でオートマチック拳銃のスライドを引く音とか、細かい芸にこだわりが見えます。
細かいんですけど、こう言うのって好きです(笑) だから評価に入れておきます。
以下、シナリオ毎の感想(プレイ順)。
・クロウディア
「悪女」の一言に集約されるキャラクター(笑) この人が上司・部下・同僚・恋人。いずれになっても嫌です(^^;;
飛んでもなく戦略的に頭が切れます。それ故、の話になりますね........... ものすごく血なまぐさい、悪鬼羅刹の修羅道まっしぐら、と思わずにはいられないエンディングですが...........(^^;;
最後の二択。どちらを選んでも、ですかね。 でも、見る価値はあるでしょう。 個人的には好きじゃないですけど「アリ」だと思います。
・アイン
メインのヒロインになるのかな? 年齢出身地本名不祥(記憶を抹消された)の初代ファントム。主人公に暗殺術を教えた張本人。戦術的な才能は天才の領域。 氷の様な顔と正反対の演技が印象的。
上手く出来ています。個人的に一番気に入ったシナリオ。ひたすら翻弄され、そこから吐露される感情..........良く出来ていると思います。 一番重いのかな? 屍を乗り越えて、という部分が大分あるシナリオ。
そう言った話が続いた蓄積の上でラストの表情があれですから........いや、あぁ言う表情って現実でも良い顔だと思いますので。
印象的でした。
・美緒
唯一まともな一般人。引っ込み思案だが気立てが良いとか、そういうキャラ。 ただ、飛んでもなく突拍子もない行動も取っていますが(^^;;
このシナリオでは、本人よりも周りのキャラクターの役割が大きい結果映えてくる、という感じかも。志賀などの他のキャラクターによる役割が非常に大きく、彼らのおかげで美緒が浮き立ってくる、という感じの話。
最も主人公達が血を流さなくて済むエンディングです。 穏やか、ですねぇ..........
・キャル
天才。見様見まねで機械をばらし、組立て、行動をコピーし、更に応用が出来る。料理も舌で覚えれば忠実に再現が可能という、絶対に道を誤っているようなキャラクター(^^;;
このシナリオも良く出来ています。話的にはアインとは対照的となるシナリオなのかも知れません。
エンディングは何というか........らしいというか(笑) これから、って時に気の抜ける会話で、らしいなぁ、と思いました。
以上、ですかね。
実際にやらないと魅力が伝わらないですが.........(^^;; ともかくもあの引きずり込み方やスタッフの心意気は充分です。
数が少ないのですが、発見し次第興味があれば確保されることをお奨めします。
楽しかったです。
・供与者への謝辞
非常に楽しかったです。ありがとうございましたm(_ _)m>Aoxさん
以下ネタバレ関係
●ネタバレ入りの個人的解釈、感想、与太。
あ〜〜.......認知度が低いのが本当に残念です。この作品。
○印象に残ったシーン
シナリオ毎、ですが、基本的にはほとんどのシーンが印象的で..........書ききれないんですが、強引にピックアップ(^^;;
・クロウディアのシナリオ
この人の最大の見せ場って、個人的にはオープニングでも出ている「銃を突きつける」シーンの様な気がします。 あの絵が妙に印象的です。
あ、後はフェラーリ使いこなすのも大したものかも(^^;; 結構ヘリコとの追撃シーンは迫真に迫っていて好きだったりします。
しかし.........怖いよ、この人(^^;; ほら、弟も殺すし。リズィは生かすけど平気で裏切るとか、主人公も売り飛ばすし.......ま、ラストはその迷いがさすがに出ていますけど。
本当に「悪女」ぶりを発揮ですな。
・アインのシナリオ
このキャラクターは、「本当の表情を出す」時が好きですね。印象的で。
第一章では.......やはり最初の「おいおい!??」って部分。次にアインが空の弾丸を撃つシーン。なんか嫌な、というか............. 次に強烈だったのは、二人でやる共同作戦。アインの表情と主人公の台詞.......「いや、落ち着け! 締め落としているわけじゃない!」ってのは笑いました.........が、その後にアインが突然いつもの状態に戻る、って所。 正直、「ぞっと」しました。っつぅか、引きつったというか。 後は........やはりこの章のラストを締める一連の、元訓練所からのシーンですかね。
そうそう、一個だけ謎なのは、最初にナイフで右腕をアインが怪我しますが、どうやってすぐに回復したんですかね? いや、訓練は行ったら包帯がもう消えていましたし(笑)
第二章では、実は対戦車ライフルを持っているアインは妙に記憶に残ります。オープニングでもある絵ですけど。 後は、感情を吐露する場面ですかね。
第三章ほぼ全般ですな。 中でもキャルと銃を突きつけあうシーンとかは実は物すごいインパクトでした。絵の表示タイミングが良く測ってあるんですよね.........二人の顔が一瞬出て、次の瞬間に左手で持った銃で相手の顔に突きつけあう.........すごく緊張した記憶があります。
後はオーラス。上に書いた通り、です。 ここで、第一章で語られるアインの夢「青、白。波打つ緑」の意味が分かるんですねぇ............
#取材も大変だっただろうに(^^;;
・美緒のシナリオ
第三章.......厳密には二章にも出ていますか(声だけ(笑))。 影薄いですけど、志賀と早苗のおかげで浮くんですよね、この娘さんは。 最初のインパクトは実は、ロレックスの時計を取りだしたときだったりします(笑) いや、現実にいたら凄いだろう、と(^^;; 梧桐の遺品とは言え、大した慕い方しています。
彼女のシナリオでの、キャルの感情の吐露も結構印象にあったりしますね.........
そうそう。このシナリオでの礼拝堂でのエレンとキャルの決闘はまたインパクトありました。美緒が走り寄ってくるシーンよりははるかにインパクトがあるというか(^^;;
しかし........この娘さんも無茶するよな(^^;;
・キャルのシナリオ
最初はやっぱり、余ったハンバーガーですかね(笑) それにしたって、まっとうな道進んだら大出世できただろうに、と思いますわな(^^;;
第三章......2年でこんなに人間って容姿変わるか?ってのが実はインパクト強かったり(爆) いや、オープニングムービーの「決着をつけようぜ。誰が本当のファントムか」ってシーンがありますけど、「コイツはキャルなんかぁ?」って思ったりはしたんですよ。でも........まさか本当に、とは(^^;
美緒の監禁で泣いているシーンと、礼拝堂の決闘。後は学校での追撃戦は結構印象的でした。 って.......本当銃を一杯持っているというか(笑)
どういうアザラシの料理を作ったんでしょうね?(笑)
○脇役への賛歌
・リズィ
一番好きな脇役です。感情の起伏激しいわ、「ボケナス」と怒りますけど、基本的にいい人ですね。結構お人よしですし。 ちゃんと一般人との一線を引いてくれているのが良いですが.........でも、この人クロウディアには裏切られるわ、(クロウディアルートのエンディングで)インフェルノは目茶苦茶にされて主人公に不信感持つことになるわ、キャルには撃たれるわでロクな役回りがないですね(^^;;
しかも、キャルに撃たれた後に出番がなくなりますし............(^^;;
良いキャラクターなんですけどね。不幸ですねぇ...........
・ギュゼッペ
もう、見事な「悪役」でした。完全に「あっちに飛んだ」サイケな役回りでしたけど。 いや、すごく上手い「憎まれ役」だと思うんですよ。実際そういうことやっていますし。ロクなことしていませんから当然の帰結なんですけど。 ほら、変に「実は親切?」とかの悪役だったら半端ですが、コイツの場合そうじゃないので。
そう言えば、殺され方も全種類違いましたね、コイツは。 ファントム一杯に殺されたり(クロウディア)、エレンに屋上で357たたき込まれたり(アイン)、キャルに二発撃たれて即死したり(美緒)、エレンに花壇の周辺で殺されたり(キャル)...........ロクなもんじゃないな(^^;
・梧桐
実は結構好きだったりします。短気すぎですが(^^; いや、志賀への信頼と美緒への愛情が結構........ま「背負っているもの」を持っているキャラクター故の重さと言いますかね。
でも、短命でしたが(爆)
・志賀
美緒でのシナリオでやっとこさ存在感を出してくれましたが..........結構好きです。 の、割には彼の兄貴分である梧桐並に運が無いというか何というか..........
良い味を出していたんですけどねぇ...........
・マグワイヤ
コロンビアの麻薬王で、インフェルノの中心人物、ですけど..........
いや、ろくでもないエンディングで絡むんで何となく記憶に(^^;; クロウディアのエンディングではキャルに殺されたし、第二章で「皆殺し」を選ぶとこの人MP5で主人公に撃たれるし。
ま、ぶざまな絵は無いんですけどねぇ............. でも、それ以外の存在感はないですな(笑)
そう言えば、非常に車と銃器にこだわっていましたけど...........
ふと思い出すと、オートマチック拳銃での装填の話がもうちょっとあっても良かったかなぁ、とかちょっとだけ思ったり(^^;; いや、薬室に一発入るわけで、通常は弾倉に全弾詰めてから一発を薬室に装填。で、一端弾倉をとりだして一発だけ再装填するのが手順なんで......... 後、全弾打ち込まずに、一発は残しておく、とか。
ま、そこまでこだわっても仕様がないというか、意味がないというか(^^;;
いや、しかし良い作品でした。
こういう色々な要素を綿密にあわせていく作品ってやはりそう多くないですからね。 こういう「引きずり込んでいく」魅力を持った作品ってのは良いものです。
う〜ん.......やっぱり、自然と流通に制限がかかるのはもったいない............
そう思いません?>やった方々
(最終更新 2000/06/18)
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