沙耶の唄
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プレイしてみた「沙耶の唄」の感想&供与者(Aoxさん)への独断と偏見に基づくレポート。面倒なので大きくネタバレしています。尚、18禁です。
評価(5段階中):4.2
ルート:選択肢による3つのみ
爛れてゆく。何もかもが歪み、爛れてゆく
交通事故で生死の境をさまよった匂坂郁紀は、
いつしか独り孤独に、悪夢に囚われたまま生きるようになっていた。
彼に親しい者たちが異変に気付き、
救いの手を差し伸べようにも、
そんな 友人たちの声は決して郁紀に届かない。
そんな郁紀の前に、
一人の謎の少女が現れたとき、彼の狂気は次第に世界を
侵蝕しはじめる。
(Nitro+公式サイトより)
あれこれ書くとネタばれするのでこの程度で(笑)
ちなみに、VirtualPC6.03で稼働させています。MacOS9で稼働させないと音楽は辛いです。動画やアニメーション、声などは極力切っています。
○総評
いやぁ、噂にたがわず「純愛物」でしたね。
主人公を襲った異常と、そして現れてきた沙耶。彼らが中心となって、周囲が巻き込まれていく.......ホラーと言えばホラー。面白いと言えば面白い。ですが、「楽しく」は決してなく、でも「純愛物」であったと.......ただし、「ある意味」と言う言葉がその前に付きますが。
クトゥルー物だそうですが、見事にSAN値チェックが要求される作品。そして、やはりNitro+らしく銃が登場(笑) 更にNitroらしさとしては「これでよかったのだろうか」と思わせる、何処か後ろ髪ひかれる話.......大分短い作品ながら、コストパフォーマンスの良さとその話の良質さ、と言う事で合格点の4.2をつけておきます。
グロいのが大丈夫ならお勧めです(^^;
以下ネタばれ
○難点
取りあえずシナリオ等の評価の前に数点。
- 誤字・脱字、ファクトチェック
なんか少しあったかな?
基本的には短いですしそんなにあれこれと挙げるようなものもありませんかね.......
- 矛盾点・整合性
少しだけ気になる部分もありましたか。
いや、郁紀の見える世界とのギャップと言うか。異様な恰好になる訳で、手足云々と言う識別はどうなるんだろうかとか色々と。沙耶の「現実世界」での挙動と言うか、そういうものを見る限りは色々と微妙なものも感じるんですがね.......
○シナリオ以外の評価
- システム
良好ですが、ややVPCでは負荷が大きかったかも。
MacOS 9側でないと音の関係が辛いかもしれません。また、ログの参照などがVPCでは重いと言うのが現状でしょうか? それを除くと全く問題なかったです。
もっとも、映像などは耐性があるのでぼかしなどは加えなかったんですが、やったらもっと重くなっている可能性がありますかね。
- 音楽
Nitro+物と言う事で全く心配しませんでしたが、案の定良かったです。
良いですね、雰囲気出てて.......
- 絵
とにかく「グロい」のでこれで分かれるでしょうか?
Hello,Worldの様な物とは異なり、鬼哭街の様な絵です。あれをホラー(内臓系)を背景にして狂気を+αした感じと言う。良くできていました。よくでき過ぎているので、免疫が無い人は辛いんだろうと思われます(^^;
○シナリオ感想総評
とにかく主眼は「狂気の純愛」と言う事でしょうか?
個人的な所感としては、行き着いた先は「腐り姫」の樹里が主人公に持った愛情に近いようなものを感じましたが。「自分の愛を阻むものを全て壊し、愛の対象となるものを狂気とも言える領域まで愛す」と言う。そして狂った感覚が描く世界、と言う......ここら辺は見事に描いていたかと思います。
とにかく主人公の内包する狂気と、沙耶の盲目的なまでの愛、そして更に膨らんでいく狂気は見事ですかね。そして、巻き込まれていく人達の背景も良くできていたと思います。個人的には丹保の「背景」がもう少しあるとより狂気に近づけていけたような気もしますが、SAN値チェックがどんどん酷くなりそうで何と言うか(^^;
ま、Nitro+らしい「本当にこれで良かったのだろうか」と考えさせられる部分は見事です。後は銃(笑)
取りあえず、「小粒でも」と言う作品でしたかね。
読みごたえはかなりあると言うか。見てみたほうが早い、と言う世界と言う気もします。
○主要キャラクターの人物評
- 匂坂郁紀(さきさかふみのり)
主人公。医学部の学生。交通事故により、最新技術を使った手術を受けて奇跡的に蘇生。しかし、彼が認知する世界が狂う事になる。
いや、もう......精神的にもろいと言う訳じゃないとは思うんですが。狂った世界に救いの手が来れば沙耶だった、と言う訳で狂気一直線と言う事になるんですが、なんとも不幸な人物と言えば人物ですね.......本人は満足のようですけど。
まぁ、しかし精神病棟隔離ルートに行った時の沙耶とのやり取りが良いですね.......多分、姿を見せても何も変わらなかったのだろうと思われますが。そして、世界に種子がばらまかれるルートでは彼はその後の世界をどう生きたのかも気になる.......彼自身は「変質」しなかったのか? あるいは沙耶の願いを受けて支配者の様になったのか.......?
- 沙耶(さや)
異界の生物。奥涯教授により(?)この世界に登場。
いやぁ、なんとも「素晴らしい」と言うか「純愛ぶり」でした。主人公と自分がいれば後は良い、と言う感じの純愛ぶり。そして自らの能力に狂気......見た中では屈指のヒロインかもしれません。怖いけど(^^;
とにかく色々と怖さはありますが、純情ぶりも見事と言うか。全ルートのラストにおいて彼女の性格が、少なくとも主人公に対する愛情と言うものはよく出ていたと思います。精神病棟でのやり取りなんかの奥ゆかしさなかは特に.......まぁ、これも愛なのか?
種子をばらまいたルートでの、奥涯のレポートは色々とぞっとすると同時になかなか圧巻でした。
- 戸尾耕司(とのおこうじ)
主人公の友人。同じく医学部学生。本作品において全ルートで不幸を背負わされる男。
友情に篤い、と言うキャラクター故に不幸に遭ったと言うべきなのか.......なんとも不幸ですよね、彼は。全ルート共通で友人が消え、裏切られ、そして精神病棟ルート以外では自分が恐怖のうちに死に、あるいは自分以外が全て死んでしまうと言う.......哀れだ。
個人的に彼に関しては、やはり最後の選択肢で丹保を呼んだ時のルートでしょうか?
あのエンディング......終わらない悪夢を見続け、そして準備もしてある......彼自身が崩壊するのはいつなのか? かなりぞっとした話でしたね......
- 高畠青海(たかはたおうみ)
戸尾耕司の彼女。かなり手が早いタイプ? 友情には篤い。主人公の変質後の瑶を支える人物。
彼女、不幸でしたね.......キャラクターが非常に良い感じだったんですが、それゆえに沙耶に食われる運命......いや、主人公にも食われる運命となりましたか。
活躍できませんでしたね......
- 津久葉瑶(つくばよう)
主人公とつき合おうとしている女性。
主人公に完全に振り回され、揚げ句沙耶の陰謀に弄ばれてしまい、陵辱されてしまうと言う、こちらも不幸なルート.......哀れだ。そして友人の彼氏である耕司に殺されてしまうと言う。
何と言うか.......個人的には耕司の二番手ぐらいに不幸なキャラクターだと思っています。
#それにしても、肩が凝りそうな.......
- 丹保凉子(たんぼりょうこ)
主人公の主治医。奥涯によって狂気の世界に入り、奥涯を探し続けるパラノイア。沙耶とは違う「狂気の演出」の担い手。
耕司を井戸で救出するシーンから凄い事になりましたが(^^; まさかそういうキャラクターだとは思いませんでした。まぁ、裏はあるとは思ったんですけどね......裏の方向が違うと言うか。彼女が語る真相や行動がこの作品の「狂気」をどんどん増やしていっており、なかなか凄いと言うか何と言うか.......
あの凄絶な笑みを浮かべながら、沙耶に液体窒素を投げ、そして「自分が安心して寝る為」にソードオフ・ショットガンをぶっ放し......多分、ラストは確実に喜びながら死んでいったと思われますが。
彼女がいなければ、おそらくこの作品の狂気はもっと少なかった事でしょう。
- 奥涯雅彦(おうがいまさひこ)
死体のみ登場。沙耶の「父親」。学者。
彼の書斎に『Ars magna』なんてある時点でどうかとも思ったんですがね.......錬金術について調べた事がある人なら分かる「大いなる法」ですが、これ故に最初沙耶はホムンクルスかと思ったんですけど、実際にはクトゥルー神話だったと言う(^^; 彼の狂気が沙耶を生み、そして更なる狂気を増やしていった訳ですが。
彼の死はやはり狂気故だったのでしょうか?
他にお隣さんもいますが省略。完全な道化役ですし(^^;
以上、ですね。
真冬のホラーですが......狂気の表現がとにかく良かった作品だと思います。そして、短いながらも濃さがあり、パフォーマンスは良いと言う作品でしょう。Nitroらしく銃も出ましたしね(笑)
かなり満足できる作品でした。
・供与者への謝辞
どうもありがとうございましたm(_ _)m>Aoxさん
(最終更新 2004/08/12)
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