日々の雑感 [2002/1-3]

そろそろＨＰのリニューアルをしたいと思うこの頃です。

ガウディ・ミステリー：未来の音が聴こえる

今日はＴＶでガウディの特集「ガウディ・ミステリー：未来の音が聴こえる」があった。
やっぱりガウディは凄い、高校生のときにグエル公園のデッサンを見てガウディを好きになった。
番組では、サグラダ・ファミリアの鐘塔を題材にして、ガウディが夢想していたサグラダ・ファミリアの鐘によって奏でられる音楽を解明しようというものだった。
発想もアプローチも面白かったけれども、最後にシミュレーションによって奏でられた音楽には、期待していただけにちょっとがっかりした。
やはり空間を響かせる音楽はＴＶでは体験できない。
しかし、ガウディのグエル公園やカサ・ミラなどの建築物が細かく紹介されていて、これには涙が出てきそうになった。
また、ＣＧの表現力には疑問を持っているものの、完成時のサグラダ・ファミリアのＣＧの映像は、動画の部分は少し粗が気になるものの、ＣＧの素晴らしさを感じさせるものだった。
とにかく猛烈にスペインに行きたくなってしまった。
[2002/3/25]

江渡＆杉原「alt.web展」

原宿のEX'REALMに国際メディア研究財団の江渡浩一郎と杉原聡によるインターネット上の情報表現の新しい可能性を探る「alt.web展」を見に行ってきた。

杉原さんの「東京ローカルWeb景：The Air Side of Web Site」は、「東京の町の風景にうめこまれたWebページを見渡すブラウザ」で、例えば渋谷のハチ公前から見た景色の中のサーバーのある場所に、そのサーバーに存在するウェブページが３次元ＣＧで表示される。展示では、天井から吊るされ、角加速度センサの付いた液晶ディスプレイを回転させると、ハチ公前からの360度の景色を見回すことができた。
通常はインターネット上のバーチャルなものと捉えているウェブページを、実際のサーバーの場所に表示するのは面白いが、サーバーの場所への表示で「そこに何らかの人間の営みがあることを表現」するにはちょっと弱いと思えた。

江渡さんの「Living Web Browser」は、「Web上にある情報を抽象的な形態や動きによって表現するWebブラウザ」で、ウェブページの様々な構造に対応した抽象的な図形が表示され、その図形はマウスの動きによって変化する。
現時点ではウェブページの構造を直感的に把握させるフィルタといった感じであった。マウスの動きという身体性によってブラウザのインタフェースが変化するのは面白いが、マウスの動きという意識的な身体性を扱っている部分が物足りなく思った。
ただ、江渡さんはウェブページの単純なフィルタではなく、「マラルメの詩やカンディンスキーによる絵画を表象」するような新たなウェブページの表現にも思いを馳せているらしい。
しかし、マウスの動きによって生成されるサウンドがなかなか楽しい。自分のページを見てみようとしたときに、タイプミスで「not found」になってしまったが、このときにマウスをぐるぐる動かした音響にはまってしまった。
[2002/3/22]

Stan Brakhage:"Film at Wit's End"

Stan Brakhageの"Film at Wit's End"(1989,McPherson & Company)を読んでいる。半分は英語の勉強でもあるのだが、８人の前衛映画監督について書かれている。Jerome Hill, Marie Menken, Sidney Peterson, James Broughton, Maya Deren, Christopher MacLaine, Bruce Conner, Ken Jacobs。しかし、Maya Derenがブードゥー教にとりつかれていたにせよ、こんなに激しい女性だったとは知らなかった。持っているMaya Derenの映像をちゃんと見直しておきたいと思う。
[2002/3/17]

下條信輔：「<意識>とは何だろうか」

下條信輔の「<意識>とは何だろうか：脳の来歴、知覚の錯誤」（１９９９、講談社現代新書）は、知覚や認知の錯誤を手がかりに、意識と無意識を含めた心の全体像に迫ろうとしている。個々のトピックはなかなか面白いものの、全体の論旨の流れがわかりにくい。ただ、一番面白かったのは、知覚の錯誤である錯視は、実空間内での長さや大きさを正しく判断する「環境への適応メカニズム」であり、それがある特殊な状況で起きる現象であること。錯視図形が含まれている現実の絵が興味深い。後半の知覚や認知は脳の来歴（先天的（遺伝）＋後天的（環境））に依存するという「脳と環境の相互依存性」の部分は十分に理解できるものの、そこからの展開の説得力はちょっと弱いと思う。

第１章：錯誤とは何か
第２章：脳の来歴　－　錯誤から浮き彫りにされるもの
第３章：心とからだと他者　－　連動する脳と世界
第４章：意識と無意識のありか　－　心の全体像
第５章：人間観と倫理

[2002/3/17]

ちょっとした時計と指輪

珍しく雑誌を眺めていたら面白いものが２件ほど。

ひとつはKOOL TIMEという香港の時計。香港の時計デザインの賞を取ったらしいが、なかなかデザインが面白い。

もうひとつはTRUE RINGという感情によって色が変わる指輪。
「ストーンの中に含まれる、高純度リキッド・クリスタル（液状化水晶）が、人の体温と汗腺から出てくる微妙なエネルギーを感知し（察知し）、人の感情を感じとって色を変化させる仕組み」と書いてある。
どうやら体温による温度の変化と、発汗による湿度の変化から、感情（情動）の変化を検出するらしい。確かに発汗は嘘発見器にも使われているように覚醒(arousal)の度合を示す。しかし、体温の変化は微妙だから、指輪のように外部に露出したものでは、感情による影響よりも外気温による影響が大きいと思う。それに「リキッド・クリスタル（液状化水晶）」とは液晶のことだから、温度と湿度によって色が変わるというのは変だし、体温も発汗も個人差が大きいので、通常は色と感情とはうまく対応しない可能性が高い。
しかし、ある意味ではウェアラブルな感情表示デバイスというところが面白い。
[2002/2/25]

オプティカル・フロー

「ブラッケージ・アイズ」のオプティカル・フロー(optical flow)がわかりにくかったようなので解説。

オプティカル・フローとは光の流れのこと、心理学では光学的流動と言って、網膜上の光学的配列の変化のことを言う。例えば壁に近付くときには、網膜上の壁は徐々に大きくなり、注視点から周辺部に光（壁の上の点）の流れが生じ、逆に壁から離れるときには、周辺部から注視点に光の流れが生じる。心理学者のJames Gibsonはアフォーダンス(affordance)という考え方を提唱し、人間や動物を取り巻く環境世界は単に知覚されるものではなく、意味や価値などの情報を直接的に提供（アフォード）するものと考えた。Gibsonは環境世界が生み出す光学的流動を包囲光(ambient light)と呼び、包囲光が空間認知などのための情報を持つと考える。

環境世界が直接的に意味や価値などの情報を提供するというGibsonの考え方は極端過ぎると思うが、知覚してから判断して意味や価値を見出すという従来の考え方に対するアンチテーゼとしては重要だと思う。実際に無意識レベルまで到達した移動は、環境世界のオプティカル・フローと身体運動の相互作用に近いものだと言えると思う。
[2002/2/25]

James Turrel: Backside of the Moon

関心空間をTurrellで調べてみたら、直島コンテンポラリーアートミュージアムにTurrellの"Backside of the Moon"という作品があることがわかった。
直島は瀬戸内海にある香川県の島で、家プロジェクトのひとつの「南寺」は、お寺の跡地に安藤忠雄が建てた家の中にTurrellが作品を作ったもので、直島通信No.5に詳しく載っている。
同じく家プロジェクトの「角屋」には宮島達男の作品があるらしい。
[2002/2/11]

青い粉

青山のHOLISで青いSodaliteの石の浄化に使った綺麗な青い粉は、Ronald Bard Magic Scentの"House & Office"であることが判明。
[2002/2/10]

ブラッケージ・アイズ

渋谷のアップリンク・ファクトリに「ブラッケージ・アイズ」のAプログラムとBプログラムを観てきた。
Brakhageは二十数年前に観て、それから数年前にビデオを手に入れて観て以来である。アップリンク・ファクトリは小さなスペースで、そう言えば二十数年前も同じように小さなスペースで上映されていた。

『FIRE OF WATERS』はこんなんだっけ、という感じ。
映画に没入することができず、これは何だろうと問い掛けられているようだ。
象徴的な画像が、脳に蓄積された記憶の断片のように、時間軸にばらまかれ、その画像を繋いでいくかのようなオプティカル・フローがスクリーンを流れていく。

『窓のしずくと動く赤ん坊』の映像は美しかった。しかし、出産シーンは痛そうで直視するのがつらい。

『MOTHLIGHT』の映像はひたすら美しかった。二十数年前もビデオもこんなに美しかった印象がないのはなぜだろう。

『自分自身の眼で見る行為』は死体解剖の撮影ということでかなり覚悟をして観た。いわゆるBrakhageのカメラワークとは違って固定されているが、前半はアップなどが多用され、人間として映っていないこと、後半は慣れてきたということもあり、なんとか最後まで観ることができた。
しかし、死んでしまえばただの肉の塊ということを再認識した。印象に残ったのは、太った人のお腹にメスを入れると、黄色い脂肪がさーっと見えてくるところ。

帰りに"Dog Star Man"の特集の映像実験誌のFs Volume 7を買った。
読んでみると、やっぱりBrakhageの映画をちゃんと理解していないなあと思ってしまう。

しかし、思うのはBrakhageとJames Turrellの類似性である。
人間が知覚するのは、世界そのものではなく、知覚によって構成された世界であるが、BrakhageもTurrellもそのことを強く感じさせる作品を作っていると思う。
Brakhageは通常の知覚による構成の仕方で映像を作るのではなく、直接的に目に映る映像そのもの、あるいは脳に蓄積された記憶の断片そのものとして映像を作る。
一方、Turrellは知覚のひとつである視覚のメカニズムを探求することによって、通常では用いられない知覚の構成を用いて、今までに見たことのない新しい知覚の世界を垣間見せてくれる。
[2002/2/6,8]

Stan Brakhage情報

Mistral Japanの情報によると、Brakhageの作品の上映とビデオの販売が行なわれるそうだ。

上映「ブラッケージ・アイズ」は、２月２日(土）から１１日(月祝)まで、渋谷のアップリンク・ファクトリで、料金は1,300円（１ドリンク付、リピータは1,000円）、プログラムは下記のように分かれている。

■Aプログラム

『FIRE OF WATERS』（1965年/7分）

『窓のしずくと動く赤ん坊』（1959年/12分）

『夜の前ぶれ』（1958年/40分）

■Bプログラム

『THE DEAD』（1960年/11分）

『思い出のシリウス』（1959年/11分）

『MOTHLIGHT』（1963年/4分）

『自分自身の眼で見る行為』（1971年/32分）

■Cプログラム

『DOG STAR MAN [完全版]』（1961-64年/78分）

土日祝は１５時（Ａ）、１７時（Ｂ）、１９時（Ｃ）の上映、平日は１７時と１９時の上映らしい。
死体解剖を題材にした『自分自身の眼で見る行為』は初めて観るので楽しみた。

ビデオ「スタン・ブラッケージ作品集：Brakhage Eyes」は２月２５日(月)にMistral Japanより全３巻、各巻4,000円で販売されるようだ。

BRAKHAGE EYES 1 （４０分）MJA-007

夜ヘの前ぶれ ANTICIPATION OF THE NIGHT, 16mm, color, 40min. (1958)

BRAKHAGE EYES 2 （４１分） MJA-008

FIRE OF WATERS, 16mm, B&W, 7min. (1965)

思い出のシリウス SIRIUS REMEMBERED 16mm, color, 11min. (1959)

THE DEAD, 16mm, color, 11min. (1960)

窓のしずくと動く赤ん坊 WINDOW WATER BABY MOVING, 16mm, color, 12min. (1959)

BRAKHAGE EYES 3 （３６分） MJA-009

MOTHLIGHT, 16mm, color, 4min. (1963)

自分自身の眼で見る行為 THE ACT OF SEEING WITH ONE'S OWN EYES, 16mm, color, 32min. (1971)

ビデオで持っていないのは"Fire of Waters"と『自分自身の眼で見る行為』だけだが、"Dog Star Man"と合わせて全部買ってしまいそうで怖い。
[2002/1/28]

ルガノ秘密報告

あるＭＬで推薦されていたスーザン・ジョージの「ルガノ秘密報告：グローバル市場経済生き残り戦略」を読んだ。
この本は架空の報告書の形式をとっており､グローバル市場経済を守るために人口削減が必要であり、経済的価値のない第三世界の人々を征服・戦争・飢饉・疫病によって殺す方法について書かれている。

しかし、その中で気になったのは肉食にすると､その肉を作るために家畜に穀物を与える必要があり､菜食で穀物を食べるよりも遥かに多くの穀物が必要で､その穀物は第三世界への食糧援助から削られるため、結果的に第三世界の多くの人々が飢えて死んでしまうということである。
生きものはできる限り殺したくないので、肉食は避けたいと思うこの頃だったが、こういう点でも肉食は問題が多そうだ。

しかし、雪印食品の牛肉は処分する必要があるのか。
単に豪州産を国産と偽ったものなら食べることには問題がないはずだ。その牛肉のために多くの牛が殺され､その牛のための穀物のおかげで、第三世界の多くの人々が飢えて死んでしまうというのに。
[2002/1/26]

最後の晩餐

次の日に死んでしまうとしたら、最後の夜には何を食べたいか？
昔から食べることはあまり好きではなかったけれども、以前なら何が良いかと悩んでいた。

でも、今だとはっきり言える。
何も食べない。

生きるためには多くの生き物を殺さなければならない。
最後の夜ぐらいは何も殺さないで生きてみたい。
[2002/1/13]

多様性について

多様性というものはそもそも直接コントロールすべきものではないかもしれない。

まず、多様性を認めるという立場が主義として成立するかは怪しい。
多様性を認める立場はそれ自身を強力に推進することはできない。
なぜなら強力に推進することによって、多様性を認める立場がマジョリティになると、主義としての多様性が保たれなくなるからである。

また、多様性を認める立場は、多様性を認めない立場を多様性の観点から認めることができる。
しかしながら、多様性を認めない立場には、多様性を認める立場を排除するような、多様性を排除する考え方があるかもしれない。
多様性を認める立場が、この多様性を排除する考え方を多様性の観点から認めれば、多様性を認める立場が排除されてなくなってしまうかもしれない。
これを防ぐためには、多様性の観点を捨てて、この多様性を排除する考え方を排除しなければならないかもしれない。
しかし、これは多様性を認める立場だと言えるだろうか。

さて、環境の視点から多様性を眺めてみると、多様性は自然界の本質だろうか？
ドーキンス流に言うなら、利己的遺伝子は自身がマジョリティとなるように環境に適応して進化していく。そこには多様性の観点はない。
多くの種が環境に適応してマジョリティになろうとするせめぎあいの中に多様性は生まれていく。
しかし、多様性に最も大きな影響力を持つのは環境の変化である。
恐竜のように、ある特定の環境に最適化された種が登場して、マジョリティとなったとしても、環境の変化によって滅びてしまう可能性がある。
環境はそれ自身変化していくし、環境は種をも含んだものであるから、ある種がマジョリティになることによって、環境が変化していくこともある。
環境の変化に適応していくために、多様な種が生まれ、ひとつの種の中にも多様な適応能力が生まれていく。

このような観点に立つと、現在の環境を守り維持して行こうという方法では、その環境に最適化された種がマジョリティとなり、種の多様性を維持できなくなるのは当然ではないだろうか。
多様性を維持しようとするのではなく、環境の変化のダイナミズムを維持することが重要ではないかと思う。
[2002/1/8]

タレル「光の館」本

ＮＨＫ教育テレビで放映された「未来への教室スペシャル」で知った新潟県川西町にあるジェームズ・タレル(James Turrell)の宿泊可能な作品「光の館」の本があったのでAmazon.co.jpから購入した。
現代企画室から出版されている「ジェームズ・タレル House of Light(光の館)―大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ2000」である。
「光の館」の構想のもととなった谷崎潤一郎の「陰翳禮讃」の文章に、タレルの「光の館」の写真が付け加えられている。
印刷は今ひとつというか、そもそもタレルの色は視覚に依存しているので、印刷などの色として出そうとするのは無理がある。
「光の館」の利用案内のパンフレットも同封されていた。
[2002/1/8]

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