からむこらむ
〜その10:18種類の「水」〜


まず最初に......

 こんにちは。(だいぶ前からなのですが)「リハビリ」代わりに親戚の手伝い(編集)していて、もうとっくに完成していなければならない原稿が、某社の写植ミスによってエライ目にあっている管理人です(「源の義朝」って何なんだよ!)。寒暖の差が激しいのもこたえます.........もうちょっとの辛抱.......かな?(爆)

 さて、今回は化学を知るうえで「重要な」お話、同位体についてです。全体的にはかなり「化学」色の強い話なので取っつきにくいとは思いますが、ここら辺を覚えていただければ、将来やる予定のものに役立つ可能性がありますので...........
 と言うわけで、「18種類の『水』」の始まり始まり.......



 突然ですが、質問です。

「あなたは『水』と言うものは何種類あると思いますか?」

 .......変な質問でしょうか? 「氷」とかの状態変化は除いてなのですが、普通の人は「何、この質問。水は水で一種類じゃね〜か」という方が多いかも知れません。では、本当に「水」は単純に一種類でしょうか?

 1934年、ノーベル賞受賞者4人の内、一人だけ化学賞を受賞した人物がいます。名をH.C.ユーリーと言うアメリカ人でした。
 さて、この当時は周期表は完全には埋まっていない時代ではありましたが、ほとんどの元素はすでに知られている頃でした。そして、当時は「水素」と言えば、「原子番号1 元素記号H 原子量1」の水素一種類のみ存在するものと信じられていました。が、しかし、このユーリーは1932年、何と、「水素」でありながら「重さが2倍」、つまり「原子量2」の水素を発見したのでした。そしてこの「重い水素」つまり「重水素」.........更に言うなれば「同位体」を発見した功績でユーリーは1934年、ノーベル化学賞を受賞しました..........

 さて、世の中の「物質」と言われるものは大体が「分子」からなっているとされています。そして、その分子は「原子」と呼ばれるもので構成されているのは皆さん御存じかと思います(一応、中学の理科レベルです.......)。
 では、ちょっと復習してみましょうか。
 元素周期表を持っていれば分かりやすいのですが、それぞれの原子には「原子番号」に「原子量」があります。さて、原子は更に「陽子」「電子」「中性子」で成り立っており、原子の「核」として陽子と中性子が、そしてその周りを電子が「回って」(実際にはこれは語弊がありますが........)いると学校で習ったかと思います。そして更に学校で「原子番号=陽子の数」、「原子量−原子番号(=陽子の数)=中性子の数」という事を習ったかと思います(高校「理科I」レベルか?)。
 ........思い出して頂けたでしょうか?

 さて、上記ユーリーの様な事があってからこういった研究が進み、今ではこの原子には中性子が「普通」より多い(少ない)ものが存在することが知られています。これは同じ原子でありながら重さ(原子量)が異なるものであり、こういった「変種」を「同位体」(または「同位元素」)と呼びます。例え重さが違っても原子周期表ではこれら同位体は同じ位置に存在します。 ちなみに英語では「isotope」(発音は「アイソトープ」)と書きます。これはギリシア語の「同じ(isos)」と「場所(topos)」から由来し、ソディというイギリス人化学者(1921年 ノーベル化学賞受賞)によって名付けられました。
 そしてこの同位体ですが、現在では天然の元素ほぼ全てにその存在が確認されており、普通は2〜3種類、スズ(原子番号50 元素記号Sn)に至っては十種類以上あったりします。天然に存在する元素92種類の内、この同位体が存在しないのは「毒の帝王」ヒ素(原子番号33 元素記号As)ぐらいのものです(これが「ナポレオン毒殺」に関わるのですが、それは別の話)。尚、原子量はこの同位体の存在比等を考慮してそれを平均化した数値が取られています。

 さて、本題に戻りましょうか。
 これは御存知かとは思いますが、水の化学式は「H2O」で表記されるように、水素原子2個と、酸素原子1個が化合して(くっついて)出来ています。
 では、ここで考えてみましょう。

 水素は「自然界には」3種類存在しています。
 以上の3種類が天然には存在しています(以下、「1H」を「H」、「2H」を「D」、「3H」を「T」と表記)。

 同様に、酸素を考えてみると、
 以上の3種類が天然に存在しています。


 さて、この3種類ずつ存在する水素と酸素を組み合わせてみると...........  となってゆき、そして最終的には、
 の計18種類の「水」が自然界には存在することとなります(現在は任意に作ることが出来ます)。

 しかし、水素におけるその存在比は99%以上が「1H」であることから、いわゆる「H2O」以外の存在は少なかったりします。実際には「18種類の水」の内、「H216O」が全体の99.76%を占めてもっとも多く、次点でも「H218O」の0.17%となっています。これ以外は0.1%以下で存在しています。

 尚、「天然の」同位体についてここでは述べていますが、実際には人工的に「4H」や「5H」といった物や(この二つは極めて不安定)、「14O」「15O」「19O」「20O」(これらも不安定)などと言ったものも作ることが可能なので、こういったものまで含めていってしまうと、ものすごい数の「水」が存在することが可能となっています(非現実的ですが)。


 さて、長くなってきたので、最後に水と生物に関する話で締めくくらせていただきます。
 動物は一般的に水をその生命の維持に必要としているのは周知の通りですが(人間の約70%は水。ただし、年齢が重なるごとに低下)、ある学者は動物を使って「複数種類の水」を飲ませて様子を見る実験をしてみました(確か、H216Oの他に、D216O等、それが100%の物を使って実験)。
 さて、その結果なのですが........まず、H216Oの水......つまり、そこら辺にあるもっとも「ポピュラー」な水を与えた動物は問題はありませんでした(当然か.......)。が、しかし、それ以外の「水」を与えた動物はことごとく死んでしまったそうです。

 やはり、同じ「水」でも、重さが違ったりする(性質も違うが)と生物はうまく使えないんですねぇ.......



 10回目が終了........って、10回目だったのね(^^;;

 さて、今回のからむこらむはいかがでしょうか?
 今回はちょっと(?)難しいかも知れない話にしてしました。これをした理由として、将来的に管理人の専門に関することも書きたいと思っているのですが、そういったことを理解するために、「化学の基本」部分に関わる事があるからです。今回は「水」を中心としましたが、それに絡んで「同位体」について書いてみました。いかがだったでしょうか?
 基本的には、今回は「高校の化学」程度と思っているのですが、皆さんはどうでしょう? もし、「難しい」とか「ここが分からない」と言ったことがありましたら、ゲストブックにでも書いてください。何とか対処してみたいと思います。

 案外、こういった事って良くないのかな.......?

 それでは3月、今これを打っている真っ最中は「目茶苦茶」寒くて、体へのダメージがちょっと怖いのですが、とにかく皆様、お体にはお気を付けて。

(1999/03/09記述)


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