からむこらむ
〜その3:「危険」な添加物?〜


まず最初に......

 こんにちは。ここのところ体の調子が悪く、風邪のぶり返しの傾向があって少し悲しい管理人です。ついに親に「入院したら」とか言われてしまいました。そこまでしたくないってば。そこまで悪くもないし.........(たぶん)

 さて、前回までは取りあえず「毒性」の基本的な部分を二つほど御紹介しました。二つともかなり重要度が高いので外せませんし、今後もおそらく絡むと思いますので、なるべく頭の隅っこに残してておいてください。
 さて、今回は本当は今までの続きをしようとも考えたのですが、ちょっと趣向を変えて比較的「具体的な」ネタでやろうと思います。そういうことで今回は世間一般で良く使われている「添加物」のお話です。「天然」ものと「合成」ものがある添加物。その実態は、世間で考えられているような物とはかなりかけ離れたものであるように感じます。
 では、「『危険』な添加物?」のはじまり、はじまり.........



 最近ではそれほどやかましくはなくなりましたが、一時期「人工」物の入った食品を(完全では無いにしても)否定する「運動」(と言うほどではないが)がはやっていたことは記憶に新しいと思います。たとえば、「有機野菜」等というのは最たるもので、他にも「合成添加物(合成保存料とか)」を否定し、無添加物を称賛していたのも結構ありました。主に一部の主婦を始めとしてマスコミがあおり、「天然のものなら安全」とか、「人工のものだから発がん性が云々」.......... しかし、管理人に言わせると「あなた方、どこまで分かってその言葉使っているの?」という点があります。それでは今回は「食品添加物」について触れてみようと思います。

 まず最初に、このコラムを読んでくださる(貴重な)少数の読者の方にお訪ねします。普通に生活している一般の方が、ガンになる要因は何でしょうか(遺伝は除く)?
 今、手元にある資料があります(「暮らしの手帳」第25号 1990年)。これによると、主婦に聞いた「ガンの原因」は次の通りです。
  1. 食品添加物 43.5%
  2. 農薬 24%
  3. たばこ 11.5%
  4. 大気汚染・公害 9%
  5. おこげ 4%
  6. ウィルス 1%
 .......以上の原因を挙げました(残りは「その他」)。基本的にこの順位、原因は大して変わっていないと思います(「ダイオキシン」とか「環境ホルモン」と言う人は出てくるでしょうが)。トップは「食品添加物」、2位は「農薬」.......この二つで67.5%と「がん」になる原因はこれらが占めている........そうお考えのようです。
 では、本当に食品添加物は「ガン」の原因となり、そして「有害」であり、「不要」な物でしょうか?ちょっと検討してみましょう。

 食品添加物の定義には食品手衛生法第2条で「添加物とは、食品の製造の過程において、または食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するもの」とあります。ぶっちゃけた話、「食品を作る過程や、保存のために加えるもの」ということです。そして、大きく分けると2種類あります。その一つは「天然添加物」、そうして残りの一つは「合成添加物」、いわゆる人工物があります。
 では、実際にどういったものに使われているかを示してみましょう。
  1. 食品の製造に必要なもの.......豆腐用凝固剤、かんすい、膨張剤、製造用剤
  2. 食品の鮮度保持や食中毒予防.......保存料、防カビ剤、殺菌剤、酸化防止剤、被膜剤
  3. 食品の品質向上......増粘剤、結着剤、乳化剤
  4. 食品の嗜好性の向上......着色料、発色剤、漂白剤、酸味料、甘味料、調味料、香料
  5. 栄養素の強化.......栄養強化剤
 .......だいたい、こういったものに使われています。何気なく「食品添加物」と言っても、こんなにあるとは結構気づいていないと思います。一応、これを頭に入れておいてください。

 さて前置きが長くなりました。それではまず、「天然添加物」について触れてみましょう。これはいったい何者でしょうか?
 天然添加物とは、いわゆる「天然のもの」から抽出などで取った物質を添加物として使うものです。たとえば栄養素の強化として一種のアミノ酸を「自然のもの」から抽出し、これを食品に混ぜればこのアミノ酸は「天然添加物」となります。
 では次に、「合成添加物」について触れてみましょう。
 合成添加物とは、いわゆる「化学的に合成」をして得られた物質を添加物として使うものです。たとえば、甘味料として使われる「サッカリン」は化学的に合成して得られた甘味料で、砂糖の約500倍の「甘さ」を持ちます。これは天然では得られないので、合成して作り、これを食品に使えば「合成添加物」となります。

 さて、ここで問題です。良く酸化防止剤としてビタミンCが用いられますが(本当はこれも色々とあるのだが.....省略)、これは自然界に広く存在します。が、合成でも得られることが出来ます。さて、合成で得られたビタミンCを食品に使った場合、これは「天然添加物」でしょうか?それとも「合成添加物」でしょうか?
 ...........正解:「合成添加物」となります。つまり、どんなに自然に存在しても、「合成」して作ってしまえば全部「合成添加物」になります。まずここで世間の勘違いが非常に多く存在しています。
 では、何故動植物などから抽出しないのでしょうか?答えは簡単です。「コスト」の問題です。自然から抽出する手間や量をよりも、合成した方が圧倒的に安くつきます(第一、抽出の手間を考えたりしたら、そのまま食品に回したほうが良いケースが多い)。


 さて、次に毒性の話をします。
 食品添加物は基本的に厚生大臣の認可を受けないと使用することは出来ません(例え海外で使われたとしても、厚生大臣の認可が無いかぎり使うことは出来ない........薬も一緒)。この認可を受けるには、「からむこらむ」の「その1」「その2」でお話した「急性毒性試験」や「慢性毒性試験」を受けて良好な結果を出さなければなりません(実際には更に「亜急性毒性試験」とか、「特殊毒性試験」と言うものがあります)。さて、ここで断っておきますが「食品添加物」は「天然」も「合成」も入っています。よって、両者ともこの試験を受けて「認可」を受けなければなりません。ここで認可が下りなければ「天然」であれ、「合成」であれ、使用は不可能となります。
 ここで一つお話をしましょう。過去のお話になりますが、「天然添加物」が結構使われている時期がありました。これは、もともと長い食経験から規制は無く、「毒性が確認されたもののみ」禁止にしていました。しかし、その実態は年々禁止品目が多くなり、ついには「食経験の無い動植物から抽出される物質」が使用される危険性が出てきたため、平成8年から厚生大臣の指定制度に移行しました。
 では、一方現在使われている合成したほうの物で考えてみると........何かがあるとすぐ「あーだこーだ」言われる昨今、うかつなものは作れません。本当に.........(もっとも、着色料ではかなりグレーなものが存在しています.......メーカーの「良心」からか、使っているところはほとんど無いようですが.......)


 さて、それでは、「添加物」は「不要」な物でしょうか?長くなるので一つだけ例を出して考えてみましょう。
 皆さんは「肉」を買うときにその成分表をご覧になったことがあるでしょうか? その中で良くあるものに「ソルビン酸」というものがあります。これは、早い話「菌の増殖を抑える」物なのですが.........これは特に「ボツリヌス菌」への対策をしています。このボツリヌス菌は非常に繁殖が早く、そして神経毒を出すために、中世のヨーロッパでは「肉を食べてボツリヌス菌で死ぬ」と言う、全く洒落にならない事件が良く起きていたとされています(だから、これを防ぐために保存法.......薫製や塩漬けが発達するわけです。が、それでも良く死ぬ人が多かったようです)。その例として、運の悪いことに、ある肉屋で買ったソーセージを食べた客が皆ボツリヌス菌にやられると言う事件もあったようです。これは現代でも一緒で、普段流通の過程を経てハムやらを食べられるのは、この「ソルビン酸」が存在しているからと言えます(ある先生は、「これが入っていない肉は、ボツリヌス菌が怖くって食べる気が起きません」とのたまいました)。
 これは他の添加物でも同様であると言えます。コンビニでの食品にお世話になっている人は、このような保存料が存在することで食べれたりします(そうでなければ、毎日のように食中毒患者が出ます)。
 尚、余談ではありますが、「ボツリヌス」の語源を調べてみると..........非常に面白いことが分かります。


 さて、非常に簡単ではありますが、以上が「食品添加物」の実態であります。本当は、色々と書いてみたかったのですが、あんまり書くと収拾がつかず(実際、この話は3回書き直しました。それでもまだちょっと........中途半端(-_-;;)、いつまでたっても終わらないので、簡単に収めてしまいました。本格的に1回で収めると、この数倍の長さになります。そこまでやるのは本意ではありません。あぁ、文章を打つって難しい.........

 では、締めくくりとして一番最初に訪ねたお話、「ガンの原因」を学者が考えたデータを示しておきます。
 ・学者の考える「ガンの原因」
  1. 普通の食べ物 35%
  2. たばこ 30%
  3. ウィルス 10%
  4. 性生活・出産 7%
  5. 職業 4%
  6. アルコール (同点で)放射線・紫外線 3%
  7. 大気汚染・公害 2%
  8. 食品添加物、医薬品、工業生産物 各1%
 実は、一番の危険性はなんなのでしょうか?


1999/01/26 補足
 上記で触れた「着色料」ですが、特に問題が起きたのはタール系の着色料です。具体的な物は忘れましたが、「赤何号」とか、「青何号」の様な物の一部に使用されていました。タール系の一部は発ガン性が高く、海外の一部の国での使用が現在禁止されています。海外で禁止されている物でも、日本では使用許可が下りているものがあります。が、メーカーがあえて使っていないケースも多く、あまり見ません。

 サッカリンについてですが、これは過去に「発ガン性がある」との理由から使用禁止になった経緯があります。しかし研究の結果、発ガン性を有するのはサッカリンに含まれる「不純物」が原因であるとし、サッカリンそのものは「白」になりましたので、現在でも使用は可能です。しかし、現在の合成甘味料は「アスパルテーム」が主流となりつつあるようです。ただ、アスパルテームは幼児が多量に摂取してしまうと、フェニルケトン尿症という病気になりますので、しっかりと注意事項が示されています。

 次にボツリヌス菌(Clostridium botulinum)について上で触れましたが、「ボツリヌス」の語源はソーセージの事です(ラテン語......だった様に思います)。その毒素によりA〜G型が存在し、それぞれ地域に別れています。その毒性は「もっとも強い」部類に入ります。原因は海外ではA,B型による野菜、肉類の缶詰、瓶詰による中毒、ソーセージによる中毒が良く知られています。日本ではE型が主流で、北海道・東北地方の郷土保存食「いずし」や、琵琶湖産「ハスズシ」による中毒が報告されたことがあります。このE型は低温でも毒素を生産するために特に、注意を要す菌です。

 ふぅ.......
 今回は、予告していたものとは違ったものになってしまいました。これは、管理人が「あれもこれも」とやっているうちに収拾がつかなくなってしまったためです。すみませんm(__)m 文章を書くって難しい.........
 さて、今回は「食品添加物」について簡単にお話させていただきました。本当はもうちょっとやりたいのですが、そうすると収拾がつかなくなるぐらい広範囲にわたってしまうので、結局このような形に収めました。個人的には少し不満ですが........ 皆さんいかがでしょうか?ちょっとした教養の足しにしていただければ幸いです。御希望がありましたら更に触れていきますが........
 次回は.......何をやるか相変わらず考えていません。今回の続きでも良いですし、別の話にしても良いですし........なんで添加物に走ったんだろう?
 とにかく、次はしっかりやりたいです。

(1999/01/24記述。1999/01/26追記)


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