からむこらむ
〜その5:与太話「運命の糸を断ち切る女神」〜


まず最初に......

 こんにちは。月末から体調の良くない管理人です。医者に行ったら「風邪が治ってすぐまた風邪を引く」状態だそうで.......う〜む。とにかく、肝臓が原因のようです。しかし、管理人の「リハビリ」よりも医者に行く方が疲れるのは問題ですな.........(ガクッ)

 さて、そういうことで、管理人の体調はよくないのですが、「からこら」だけは書きたいと思いました。が、体調と気力があまり良くないので、今回はちょっと短い「与太話」をさせていただきます。完全な雑学(で済むかは分かりませんが)で行きたいと思います。気楽に読んでいってください。
 今回はその与太話として「神話」から名付けられたものを選んでみましたが.........
 それでは、「与太話『運命の糸を断ち切る女神』」のはじまりはじまり.........



 「中世ヨーロッパ、ある地方でのお話。
 あるところに、男........KN氏としておきましょうか、KNと言う若者がいました。彼は元気な若者です。さて、ある日のこと、KNは散歩先で何やら植物を見つけました。何やら黒い実がついていて、赤い花をつけた植物でした。何となくサラダにしてみようと思ったので、KNはこれを家に持ち帰り、そうしてサラダにして食べてみました。すると........やがてKNは興奮し始め、何やら幻覚が見えてきました。そうこうしているうちに、徐々に呼吸が苦しくなり、意識がもうろうとしていき.........そうして倒れてしまいました。数日後、友人......仮にIQ氏としておきましょうか。IQがKNの家に出かけて見ましたが、反応がありません。何とかこじ開けて部屋に入ると、食卓のそばにKNは倒れていて、すでに体は冷たくなっていました.........」
 上のお話、これはおそらくは実際にあったと考えられる話です(似たような話が結構あるようなので.........)。さて、彼はいったい何を食べたのでしょうか?

 ヨーロッパに植生する植物の中に「ベラドンナ」と言う植物があります。ナス科の多年草で、黒い実をつけ、ヨーロッパに育つ植物です。別名を「deadly nightshade」と呼ぶこの植物の成分の中には「アトロピン」と言う成分が入っています。これが今回の与太話の主役であり、KNの「運命の糸を断つ女神」であったのです。

 さて、この「アトロピン」ですが、「ベラドンナ」のみならず、「チョウセンアサガオ」や「ハシリドコロ」というナス科植物に含まれている「アルカロイド」です。
 「アルカロイド」とは植物に含まれる「塩基物質」の事で「植物塩基」とも呼ばれており、構造中に窒素を含んでいます。また、人に対して生理・薬理作用をもちます。このアルカロイドは結構身近にあり、カフェイン、ニコチン、モルヒネなどがその代表で、「毒物」も多いですが、「薬」としても(もちろん化学的に構造は変えてあることがありますが)よく使われています。効果が比較的短時間で出てくるものが多いです。

 話がずれました。さて、「アトロピン」ですが、これは中世のヨーロッパで色々な物に使われました。毒殺等にも良く使われましたが、同時に薬としても使われています。中枢神経への作用があり、多量に投与をすると最初は興奮・瞳孔散大・幻覚を引き起こしますが、この後は「麻痺的」に働き、昏睡・不整脈・体温の降下・呼吸麻痺をおこし死に至ります。
 しかし、薬用として用いると、体内の分泌作用を抑制し、更にけいれんを止める作用があります。更に心臓への刺激剤として使われているようです。この薬用としては昔、ベラドンナの葉と根を煮出してアトロピンを取った事から「ベラドンナエキス」として売られていたようです。

 さて、このアトロピン、中世のヨーロッパでは御婦人、令嬢方に非常に重宝されました。何故でしょう?
 アトロピンは、「瞳孔散大」と言う作用があると書きました。この「瞳孔散大」とは早い話、「瞳が大きくなる」ことです。さて、当時のヨーロッパにおける「美人の基準」は具体的には分かりませんが(その頃の「絵」を見ると何となくは分かりますけど)、確実にあったものとして「瞳が大きい」という物があったようです。さて、そういうことで、当時の女性達は自らを「美人に見せる」ために「瞳を大きくする」手段として.......このアトロピンの入った「目薬」を目に差していたそうです..........
 ......古今東西問わず、女性は「美人」に見せようと躍起になる方は多いですし、その心境も分からなくもないのですが........いやはや.......女は怖い........(ぽつり)

 最後に、ここまで来ておいて「運命の糸を断ち切る女神」のタイトルの意味が分からないと思いますので、その説明を。
 大きい辞典で「Fates」または「The Fates」と言う単語を調べてみると、「Clotho」 「Lachesis」 「Atropos」と言う名前が出てくると思います。これはギリシア神話で「運命の三女神」と呼ばれる女神達で、Clothoは「運命(生命)の糸を紡ぐ女神」で、Lachesisは「糸の長さを決める女神」、そして最後のAtroposは「その糸を断ち切る」女神です。
 今回の中心の物質となった「アトロピン」は英語で「atropine」と書き、その名の由来を上記「Atropos」から取っています。どうも中世ではこれで死ぬ方が多かったようで.............(だから「Atropos」の名を冠されたのでしょうね..........)


 あぁ、だるい.......(-_-;;
 今回の「からむこらむ」いかがでしょうか?今回は管理人体調不良のため、このような「与太話」にしてみたのですが.......... 気軽に読んでいただけたかと思います.........多分。機会があれば、またこのような話をやろうと思います。
 そうそう。結構科学と言うのは「神話」から名前を拝借している事が多いです。たとえば(懐かしい?)元素周期表があれば、ちょっとそれを眺めてみてください。結構あると思いますよ、神話から取っていそうな名前が..........
 後、3女神ですが、間違っても某「FSS」とは違うと言うクレームはなしにしてください。こちらの方が正しいので........

 後もう一つ。すみませんが、反応がほとんど無いのが少し悲しいので、出来ましたら管理人メに何か御感想でもおいていってください。お願いします。m(__)m

 さて、次回はもう少し「実の入った」ものにしたいと思います。お楽しみに。

(1999/02/02記述。)


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