からむこらむ
〜その14:数と名前〜
まず最初に......
こんにちは。ついに新年度になって浪人になった管理人です。(^^; 皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私の友人は花見で潰されて崩壊しています(^^;; 皆様も気をつけてくださいね。
さて、今回は実はずっと前に黒川春姫さんからリクエストがあったのですが、これが結構難しく、時間をかけて熟成していた物になります。その一つの「一部」となる(一回じゃ終わらないんです、本当に)物........つまり化学物質(有機化学になりますが)の「名前」についての「雑学的」なものを今回はしてみたいと思います。さぁ、うまくいくか?(現在、書きだす前(^^;)
と言うわけで、「数と名前」の始まり始まり..........
では皆さんに質問です。
「数を数えてみてください」
.......え? 馬鹿にするな? ごもっとも。普通は当然「いち、に、さん、し、ご.........」となりますよね。しかし、中には「ゼロ、いち」を繰り返す人もいるでしょうし、「きゅう」の次に「A」ときて、「F」で区切る人もいるかも知れません(まぁ、いないでしょうけど)。
じゃぁ、目の前に「林檎がいくつかあります」と言われてそれを数えたら? そう、「林檎が3個」とか「林檎が6個」とか.........まぁ、そう数えますね。
しかし、化学(私の場合、有機化学中心になってしまいますが).........では、「1,2,3,4,5........」と言うのは、数では無いんです。この場合、化学式で書いている元素の右下に小さくついている「あれ」とはちょっと違いまして、成分表なんかに書いてある「物質の名称」として書かれている「1,2,3,4,5........」についてです。 では、化学ではどうやって「数を数える」のでしょうか?
おそらく皆さんは次の言葉を聞いたことがあるでしょう、「トライアングル、テトラポッド、ペンタゴン」................まぁ、挙げれば他にも結構あるんですけど、取り敢えずこの三つにしてみましょうか。
「トライアングル(triangle)」とは何か覚えていますか? そう、楽器でありましたね。小学校の頃なんか使った記憶があるかと思いますけど。三角形の「あれ」です。
では、「テトラポッド(tetrapod)」とは何か覚えていますか? あの海岸にある奴です。そう、「手」が4つ出ていて、波の威力を抑えるためにたくさんおいてあるコンクリート製のやつです。
じゃぁ、「ペンタゴン(pentagon)」は? 某国国防総省の建物で、五角形の建物です。
さぁ、上記三つに挙げた物の中で共通するものは何でしょうか? それは「数」になります。一応、それぞれの後に英語をいれておきましたが、「tri」は「3」を、「tetra」は「4」を、「penta」は「5」を表します。
実はこの「tri,tetra,penta」といったものが、化学では「数を数える」のに必要な物となります。
では、「数」はどういう言い方になるのでしょうか? 以下に1〜20まで、実際に書いてみます。
数の数え方
数 | 英語 | 読み方 |
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1 | mono | モノ |
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2 | di | ジ |
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3 | tri | トリ |
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4 | tetra | テトラ |
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5 | penta | ペンタ |
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6 | hexa | ヘキサ |
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7 | hepta | ヘプタ |
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8 | octa | オクタ |
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9 | nona | ノナ |
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10 | deca | デカ |
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11 | undeca | ウンデカ |
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12 | dodeca | ドデカ |
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13 | trideca | トリデカ |
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14 | tetradeca | テトラデカ |
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15 | pentadeca | ペンタデカ |
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16 | hexadeca | ヘキサデカ |
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17 | heptadeca | ヘプタデカ |
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18 | octadeca | オクタデカ |
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19 | nonadeca | ノナデカ |
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20 | eicosa | エイコサ |
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どっかで聞いたことがあるでしょう? 実はこれはギリシア語の数字の表し方で、基本的には高校の有機化学をやるときには必ず習う物です。 そして、日常生活に上記の数字が「どこかで」入り込んでいたりします。 ただし、その名称の基本は「英語」なので分かりにくかったりします。
では化学ではこれは「どのように」使うのでしょうか?
まず、有機化学の「基本」として必ず習う........そして、絶対に必要な物として「炭化水素化合物」という物があります。これは「炭素と水素」で出来ているもので、これをベースに有機化学が成り立っています。
炭化水素化合物の基本として「アルカン」(または「飽和炭化水素化合物」ともいう)という一群の化合物があり、これは化学式が「CnH2n+2」(「C」は炭素、「H」は水素)という式で表せる化合物です(更に言うなれば、「炭素が鎖のようにつながって、まっすぐ延びている構造を持つ。図を参考)。
では、この式「n」に「5」を代入してみた物を入れてみましょう。その式は「C5H12」となります。
ではこの化合物の名前は何になるでしょうか? 「アルカン」という化合物は、その名前の最後に「-ane」という物をつけることが「約束」としてあります。 「C5H12」という化合物の炭素数は5個です........つまり上の表を見ると「penta」に当たります。そして、この二つを合わせてみると.......... 「penta」+「-ane」=「pentane」 つまり、「pentane(ペンタン)」という名前になります。
ただし例外もありまして、炭素数が1〜4のアルカンに関しては名称が「昔から使われているもの」を継承しています。
炭素が1個のアルカン「CH4(1個の場合は数字は省略)」は上記の方法では「mono」+「-ane」=「monane」になるのですが、普通は「methane(メタン)」になります。 同様に炭素が2個のアルカン「C2H6」は上記の方法では「di」+「-ane」=「diane」になるのでしょうが、普通は「ethane(エタン)」、炭素が3個のアルカン「C3H8」は「triane」ではなく「propane(プロパン)」(「プロパンガス」の成分)、炭素が4個のアルカン「C4H10」は「tetrane」ではなく「butane(ブタン)」となっています。(全部最後が「-ane」になっているのに注目!)
実は、有機化学はこの「炭化水素」をベースとしている学問であると同時に、名称も「炭化水素」をベースとしています。
例を挙げてみましょうか。
一時期「オゾン層破壊物質」として有名な「フロンガス」と言うものが非常に問題視され、これの段階的削減を経て現在は一部を除いて使用禁止となっているのは周知の通りです。この「フロンガス」は結構単純な構造をしているものなのですが、この一つを挙げてみますと、「CF2Cl2」という物があります。
これは、炭素1個に「F」、つまり「フッ素」が2個と「Cl」、つまり「塩素」が2個くっついた構造になっています。では、これの名称をつけてあげるとしたら、どうやってつけてあげるのでしょうか?
この化合物を考えるとき、化学をやる人間はまず炭素を見てみます。すると、「炭素が1個」..........ここで化学をやっている人間は「CH4」、つまり「メタン」からの誘導体として考える様にしています。
全然違う?いいえ、「メタンの水素4個」が「フッ素2個と塩素2個に置き変わった」と考えるのです(ここで上記、「名称も「炭化水素」をベースとしています」という事を思い出してください)。では、ここで考えましょう。「フッ素が2個」という表現はどうやって表しますか?
名称の優先順位と言うものが実はあるのですが、ここではその説明は省略しまして書きますと、今回の物質は「メタン」ベースの化合物ですので、「〜メタン」と言った名称になります。この「〜」の部分には「塩素」と「フッ素」を「接頭語」という形にしてつけてあげるのですが、「塩素」の接頭語は「クロロ-」、「フッ素」の接頭語は「フルオロ-」と言います。では、「フッ素が2個」という接頭語は何になるか.........? 上の表を参考にしてみると、「2」は「di-」.......つまり「ジ」になります。つまり、「フッ素が2個」と言うのは「ジフルオロ-」という表現になります。同様に「塩素が2個」というのは「ジクロロ-」という表現になります。
これらを考えて総合すると、「CF2Cl2」という物質の名前は、「ジクロロフルオロメタン」となります.........分かるでしょうか..........?
もう一つ例を挙げてみましょうか。
「アルコール」というものが世の中にはありますが、これは一般には当然「酒」になります。しかし、化学をやる人間にとって「アルコール」と言うものは炭化水素化合物に「-OH」という物がくっついたものになります。くっつけば、全部「アルコール」の仲間です(ちなみに、水酸化ナトリウムNaOHの「OH」とは性質が違います。水酸化ナトリウムはアルコールではありません)。 このアルコールは、名称として最後に「-ol」(「オール」)をつけるルールになっています(接頭語の場合もある。その時は「ヒドロキシ」となる)。
では、「CH3OH」という物質の名称は何でしょうか? これは、「CH4」、つまり「メタン」の水素一個が「-OH」に代わったと考えます。よって、「methane」+「-ol」=「methanol」、つまり「メタノール」となります(工業用。飲めない)。
では、逆に構造を誘導してみましょうか。 「飲めるアルコール」こと「エタノール」(ethanol)の化学式は? これは名称を分解してみると(ちょっと知識がいるが)「エタン」+「オール」となります。つまり、「ethane」+「-ol」です。と言うことは、「エタン」に「-OH」がくっついたものとなり、これから「C2H5OH」といった具合に誘導することが出来ます。
........難しいかな........? ちょっと主旨とずれてしまいましたか(^^;
では最後に、「数」という観点に戻して「雑学」を。
「ペットボトル」という物がありますが、「ペット」って何か御存知でしょうか? ペットボトル商品のラベル周りをよ〜く見てみれば分かると思いますが、必ず「PET」の三文字があると思います。
この「PET」は実はある物質の英語名から三文字とったものであり、その物質を「ポリエチレンテレフタラート(〜フタレート)」、英語で「PolyEthleneTelefutarate」と呼びます(専門的に言うと、エチレングリコールとテレフタル酸の重合物)。
ではこの英語にある「poly-」って何でしょう? 「ポリ」という接頭語ですが、これは「たくさんの」という意味になります。そして、ある(同じ)化学物質が非常にたくさん連なっている構造を持つものを「ポリマー(polymer)」と読んでいます。つまり、「ポリエチレン」という物質は「エチレンがたくさんくっついて連なっている物」という意味になります。
尚、この「ポリマー」を構成する物が一つを「モノマー(monomer)」と呼びます。つまり、ポリエチレンのモノマーは「エチレン」となるわけです。
この「poly-」という言葉、最近はゲーム関係の方は良く使っている方も多いでしょう。使っていない? いやいや、「ポリゴン」っていう言葉があるでしょう? あれは「たくさんの」を意味する「poly-」に、「角」を意味する「-gon」を組み合わせた造語なんです。最初に出した「ペンタゴン」は「5」を意味する「penta」に「角」を意味する「-gon」を組み合わせて「五角形」という意味なんです。それと一緒ですよ。
お気づきでしたか?
・追加与太話。
昔あった(一瞬で消え去ったが)「熱血飲料」というスポーツドリンクを覚えていらっしゃるでしょうか?(かなり前です) この熱血飲料のCFで叫んでいた(笑)「オクタコサノール」という物質は、今まで書いた物から簡単に推測できます。
オクタコサノールは英語で書くと「octacosanol」となります。まず、「-ol」という物からこれは「アルコール」であることが分かります。
次に、アルコールの構造が無い場合の基本骨格であるアルカンを推測します。すると、「octacosanol」-「-ol」=「octacosane」となります(「純粋」な数式ではなく、「分かりやすくする」為の式です)。では、「octacosane」というアルカンの炭素数はいくつでしょうか? 「octacosane」の炭素数を知るために、アルカンの接尾語「-ane」を除いてその数字を推測すると、「octacosa」になります。では、「octacosa」とはいくつか? 最初が「octa」なので、一の位は8になります。のこる「〜cosa」は「20台」の意味になりますので、この「octacosa」は「28」となります。
つまり、「octacosanol(オクタコサノール」」という物は炭素数28のアルコールという事になります。
結構面白い......でしょう?
あぁ.......終わらせてみれば.........難しくしてしまったような気が........... ぶ.......文章力..........(へこみ気味)
さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか? 今現在、「やべぇかな?」という思考が7割近く占めていてちょっと怖いです。難しいかな........基本的に高校の化学の知識が残っていれば楽かも知れませんが......... 苦情、お待ちしています(^^;;;;;;;;;;(いや、出来たら感想を.......)
基本的に、化学をやっている人間は「名称から構造」を完全では無くても、ある程度を出すことが出来ます(どんなものがあるか」という点で)。今回はその基本をやってみました。脱線気味ですが....... 全体的に「難しい」かも知れませんが、何となく分かって頂ければ嬉しいです。
尚、こういった部分から始めてうまくいけば........楽しい構造のお話が将来的には出来るのですが...........
次回は........どうなることやら(^^;; 今回の感想で進めるかやめるか考えています。是非とも御感想をお寄せくださいませ。
それでは花見、歓迎会と続くシーズンですが、皆さんお身体には気をつけてお過ごしください。
(1999/04/06記述)
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