からむこらむ
〜その39:『買ってはいけない』検証(5)〜
まず最初に......
こんにちは。「天高く馬肥ゆる秋」であります。 皆様、如何お過ごしでしょうか? 管理人はへろへろ気味です..........(T_T) なんつぅか、身体の内部から...........(~_~;;
#違和感..........
さて、今回も前回からの続き...........ですが、そろそろ長丁場なので、簡潔にやってみたいかと思います。 このままじゃキリがないですので(^^;;
#それだけ「問題」が多すぎ、ってこと(^^;;
ま、そういうことで、今回で食品関係は終りにしようかと思います。
それでは「『買ってはいけない』検証(5)」の始まり始まり...........
ハイ、それでは前回の続きから..............今回で食品に関しては終りにするつもりです。
簡潔にやろうかと思います。
●グルタミン酸ナトリウム
某マンガでも良く取り扱われるヤツです。
この本の中では、「神経毒物」と称されており、その「毒性」をあげて更に犯罪に使われる、と言うことだそうですが...............
まず、グルタミン酸ナトリウムの構造をあげておきます。
構造の右隅にある「・H2O」は単なる水です。実際には水和物の様です。
1948年に「コンブの味」と言うことで指定されたことから始まります。たんぱく質の主要構成成分........つまり、アミノ酸であるグルタミン酸のナトリウム塩であり、海外では「MSG」と略されています。 LD50=16.2g/kg(マウス、経口)となっていまして、通常使用量による毒性は..........あるの、これ?(^^;; ただし、使用基準はありません。 もっとも、一日摂取許容量は120mg/kg(=0.12g/kg:体重60kgの人の場合、7.2g)という数値がありますので、ここら辺は考慮されていると思われます。日本人の1日平均摂取量は天然+合成品で合計1.11gとされています。 一般的に、「だし」の成分の一つであり、また「うま味」という味覚の成分となっているとされています。
#もっとも、「うま味」という「味覚」としての認知は結構学者でも分かれる様です。 大学の研究室が同じ先生でも意見が分かれていましたので........(^^;
さて、この本の中ではお約束のデータ不足で何とも言い様がないですが...........
まず、「神経毒」となっていますけど、これはありえます。なぜならばグルタミン酸は神経伝達物質の一つです。よって、これの過剰摂取による神経系のかく乱という事は十分起こりえる事態であり、乳幼児の過剰摂取は特に慎むべきとは考えられるんですけど...............通常の健常な人はどうでしょう? 急性毒性という観点では、上記データを単純に人間に当てはめて見た場合、体重60kgで972gも食わなければなりません。 現実的ですか? また「中華料理店症候群」ってのが有名な事例でありますけど...........これは、一種の中毒事件なのですが、この本の中では数字は書いてありませんね。説明しておきましょう。過敏な体質の人が空腹時に大量に(3〜5g)この物質を食べた後、15分〜25分を経て灼熱感、顔面圧迫感、胸痛が起こり、約1時間以内に治まるという症状です。 ちなみに、主観的一過性のものです。 そこら辺の説明は、お約束でありませんね。
また、「MSG加熱で強い発ガン性物質も生成される」って書いてありますけど、そんなモン別のアミノ酸起こるし、他のケースでも知られている事項ですので、お約束ながら何言っているの?と言わざるをえない部分があります。 そもそも、天然の食材中にグルタミン酸(塩)は存在しているわけで(生体の構成に必要なアミノ酸の一つですし)、「MSGが悪い」なんて一方的な決めつけを行うのならば、「コンブは食うな!」という言えるのはおろか、「飯食うな!」という結論にならざるを得ないのであって.............
結局、過剰な使用はやはり控えて然るべきものですけれども、実際には「ちょっと味が足りない」という時に一振りするだけでも違いますし...........逆に言えば、適度に使用すれば、相応に美味いものが食べれる、という利点があると見たほうが良いのではないでしょうか? 通常使用ではっきり言って毒性を心配するほどとは思えませんし。
ま、料理の工夫次第で、使用する・しないは変えられますけどね(^^;
あぁ、長くなりそう(^^;;
ちょっと駆け足でやりますね。
●OPPとTBZ
コイツも某マンガで扱われましたか。
この本の中では「アメリカに屈して使用することとなった発ガン性物質」として扱われています。 毒性データをのっけてはいます。が、規制値に関してはやっぱり欠如しています。
本当に...........こう言うのを記載せずに、どうやって毒性評価するのか、本当に疑問なんですけどね............
#分かっていないんでしょうけど。
さて、まずこれら物質ですが...........構造は以下の通りです。
OPPは「オルトフェニルフェノール」の略、TBZは「チアベンダゾール」の略です。 両者とも防かび剤としての使用が許可されており、OPPは柑橘類の、TBZは柑橘類、バナナに使用が可能となっています。
OPPですが、柑橘類に変敗を起こさせる真菌類の成育抑制効果があります。ナトリウム塩(OPP-Na)の物も使用されています。 日本では柑橘類にのみ使用が許可されており、残留許容量は10ppm。アメリカ、EU諸国では果実、果菜に対して広く使われています。 LD50はラット経口で2.7〜3.0g/kg、ネコ経口で0.5g/kgとされています。 ラットでの経口投与では投与量の90%が尿中に排泄されるとされていますが、OPPおよびOPP-Naを13〜91週間エサに混ぜて投与させたとき、腎症害および膀胱ガンの発生を認めた、という報告もあるようです(量が不明)。
TBZですが、幅広い抗菌スペクトルを有しており、128種類のカビ類に有効なことが知られています。多くの植物の病気抑制(カビによる作物被害)や人間・動物の駆虫剤としての使用もあるようです。世界的に良く使われてている防かび剤になるでしょうか。FAO/WHOによる残存勧告値は柑橘類で10ppm、バナナ全体で3ppmで果肉では0.4ppmとなっており、これに準じた規制が日本でも行われています。LD50はマウス経口で2.4g/kg、ラット経口で3.6g/kg、ウサギ経口で3.85gとなっています。 ヒトに投与すると48時間後に約90%が尿から排泄されるというデータがあります。 ラットの飼育試験によると、1日40mg/kg、160mg/kgの2年間投与実験で、後者に体重増加率の低下、ヘモグロビン値などの低下が認められ、前者では雄の成長がやや抑制された、というデータがあります。が、他の動物には異常が認められていません。発がん試験も特に異常はないのですが、マウスの腹腔内投与で染色体異常の有意な増加があったことから変異原生物質として認められています。
規制値ですが.........両者ともかなり厳しく、OPPで0.01kg/kg以下の残存量、TBZで柑橘類は0.01kg/kg以下、バナナで0.003g/kg(3mg/kg)以下、バナナの果肉で0.0004g/kg(0.4mg/kg)以下となっています。
さて、以上を踏まえますと.........
彼らが採用している東京都立衛生研究所のデータとしてOPPを1.25%をネズミ(ラット? マウス? ドブネズミ? 記述無しですが、おそらく上記データの実験と思われます)に食べさせると腎症害、膀胱ガンが発生したという話ですが、この数値は..........12500ppm? 1kg辺り12.5gという数値です。 規制値を考えると?
また、TBZに関しては「毎日ネズミに体重1kg当たり0.7から2.4g食べさせたところ...........」というデータもありますけど.........何のネズミ使ったか全く記述無し、どの試験群に対しての障害が発生したかも無いという信頼性0のデータを書いてくれていますね。 これ全部の試験体で出たのでしょうか? 評価できないんですけど(^^;;
一つ言えることは、使用法としてはワックスに混入してコーティングさせたりする事が多いので、皮を食す方法(マーマレードとかか?)に関しては確かに「お勧めする」、とは言えませんけど、果肉食べるぐらいならそれほど気になるような物、とは思えないんですけどね...........
逆に気にしすぎれば、欧米でも両者とも幅広く使われていますので、そっちへ行ったら更に果物関係は食べられないと思うんですけど? そちらの方で問題になっている、という話を余り聞かないのも現実ですが。
そこら辺の考慮は一切なされていないのがこの本らしい所です(^^;
●合成着色料
ま、この本において、実際には「タール色素」として扱われているでしょうか?
この本の中では、「発ガン性物質」として良く取り扱われ、「タール色素は化学構造からみてすべて発ガン性や催奇形成が疑わしいのだ」とひとくくりされていますね..........
ま、個人的にはあの不自然な着色は嫌いですけど............ま、取りあえずどういう物でしょうか?
タール色素は現在12種類あります。一種の合成染料です。 ま、「合成のは嫌だ」ってんで「天然物」が流行る傾向がありますが、そちらも結構うさんくさいのが多いとされ、また毒性データが不足していたりしますので、「合成だから」「天然だから」は短絡的と思っていたほうが良いです。
で、合成物ですが、合成の過程で不純物が混入する可能性があるので純度規格が定められています。これに関する製品検査が義務づけられており、合格した証紙の張ってあるもののみ使用が可能です。 が、アスパルテームと同様に使用量に関する規制が無いという重大な問題があります。 もっとも、アスパルテームの時と一緒で、そういうことに関する記述が無いのですが!
穴だらけですね〜
#どっちにしても、それほど使う様なもんではないんですけど。
さて........この本で最も主張されている「発ガン性について」ですが..........著者の一人がいう「化学構造から見てすべて」について「発ガン性や催奇形成が疑わしい」というのは余りにも短絡的です。 と言うか、本当に調べたんか? 「タール系=発ガン性」と言う「決めつけ」は残念ながら大間違いです。 実際には、「アゾ系」「キサンテン系」「トリフェニルメタン系」「インジゴイド系」に別れています。「タール系」と言うのは単に「石油からとれる芳香族炭化水素を主要な原料」としているだけでなんですけど? ちゃんと分かって使っているか謎ですね。
#大体、「タール系=発ガン性」って決めつけしていいのなら、前に出した「最強の発ガン性物質」である「アフラトキシン」は「ステロイド系」。しかし、ステロイド系でもビタミンDやら女性ホルモンやら色々とありますので、こいつらも取っちゃいけないって事に..............(まぁ、いずれも過剰にあると有害(発がん性あり)ですが)
毒性ですがLD50を見ると、各種類概ね5g/kg以上、最小で2g/kg以上であり、最大で20g/kg以上という具合になっています。実際に使う量を考えると..........非常に少量しか使わないので(それでかなりの着色効果がある)現実的には「?」ってなるんですけどねぇ.............
特に赤色2号に関してですが...........本の中では「アメリカ食品医薬品局(FDA)が0.003〜3%の赤色2号を含む飼料をラット(実験用白ネズミ)に131週間投与したところ、高濃度投与群では44匹中14匹に、対照群では44匹中4匹に、ガンの発生が認められた。」ってのがあります。で、「日本の厚生省はこの実験データを受け入れなかった。」と書き、その根拠として「実験では期間中に動物の約半数が死亡したり、動物を混同するなどのミスがあったりといわれ、評価しうるものでは無いと判断したからだ」って書いて批判していますけど............ このデータ、補足しますと、0.003%、0.03%、0.3%、3%混入飼料で行った実験でした。で、結果は高濃度群でのがんを認めたとあるのですが..................記述の通り、実験者が大ポカしてものでして、実験動物の死亡・混同があったと言われています。
...............はっきり言いましょう、そんな実験データ提出するな!!! 学会でこんなずさんなデータ出したら笑いものです。恥をかくだけです。 なぜなら、信用性無いですから。 ミスによる実験動物の半数が死亡なんてのはもってのほかで、一体どんなミスしたのか気になるぐらいです。 言っておきますが、こんなデータ出して信用されるほど甘いもんじゃないですよ? はっきり言いますが、学者は誰も信用しません、こういうデータを出しても。 で、更に「日本の厚生省は」って書いていますけど、実際には「アメリカ以外では」というのが正しいです。 で、更に「しかしFDAは、ミスなどがあったことも考慮したうえで使用を禁止したのである」と評価していますが..........科学なめてんのか? 実際に信用できないずさんなデータを信用し、採用している時点でこの本の著者達が批判している「ニセ科学」という物に自分たちがなりかねないという事に何で気付かないのか、私には理解しがたいのですが?
何考えて「科学」なんでしょうかね? 彼らにとっては.............
●その他大要約
さて、長くなりました。
別個にやるのは取りあえず以上としまして、以下「その他」をひたすら短縮してやってみましょう。
・チーズにアフラトキシンありますけど? 「最強の発ガン性物質」ですけど、触れないんですか?
・キシリトールについて色々書いていますけど、虫歯のシステムとキシリトールの関係ってちゃんと分かっていますか? それよりも、ガムのベースとなる物に環境ホルモンとして疑われている物質が入っているんですけど、そっちには何故降れないのですか?
・カルシウムの話ですが、カルシウムの代謝はちゃんと理解して書いているんですか? 実際にはリン酸カルシウムの形でビタミンDの関与で摂取しないと意味ないはずですが? リンとカルシウムの割合も吸収には重要なはずですけど、そこら辺はちゃんと説明しなくっていいのでしょうか?
・etc、etc................
言っておきますが、実際には上記のものでもそれほど気にしなくて十分です。
●食品まとめ
以上、数回にわたり食品に関して触れてみました。
今までの事だけでも、この本が「ニセ科学と批判する割には根本的な科学的視点の欠如した本」という事が御理解いただけたかと思いますけど..........如何でしょうか?
実際には........何度も言うように、食品というのは「バランス」が重要です。 メリットとデメリットが交錯しているわけですが、バランスを取ることにより「メリット」としてとらえていくわけです。
「毒」は食品からとっているんですけどねぇ............
皆様もそういう事を理解していただければ、と切に願います。
長くなりました食品関係は、これにて終了としましょう。
次回からは農薬に関して1回か2回ほどやるつもりです。
長かった食品も終り!
さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか? 今回は食品関係を一気に終わらせてしまいましたが..............
ま、実際に関心を払うのは重要なのですが、その評価を変な視点からしてしまうと「全てが」おかしい物となってしまいます。そういうことに気をつけていかないと...........結局は「盲目」な結果となってしまうのですが。 『買ってはいけない』という本は「知るべき情報を出す」という点では良かったですし、ましてや身近な食品を扱ってもいるわけでしたが、その「扱い方」を根本的に間違った(「科学的では無い」ともいう)為に結果として「それじゃぁ何にも食べられない」という矛盾を生み出したわけですが............
.........最低な本かも(^^;
#というか、私から見れば「最低」なんですけど(^^;
さて、来週ですけど、最後に書きました通り「農薬」に関して1回か2回にわけて検証してみたいと思います。
実は長丁場で疲れてきているのでちゃっちゃとやりたいんですけどね(^^;;
#面白いっちゃ、面白いんですが、論法(=「フォーマット」)が共通していて.......(^^;;
ま、農薬は私の専門ですので、いずれ「それだけ」で本格的に取り扱いたいとは思っているんですけどね。
御感想、お待ちしていますm(__)m
さて、それでは今回は以上です。来週をお楽しみに..........
(1999/10/12記述)
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