からむこらむ
〜その38:『買ってはいけない』検証(4)〜


まず最初に......

 こんにちは。もう完全に秋と言ってよい感じになりましたね。 皆様、如何お過ごしでしょうか? 管理人は..........急激な気温変動ぉ〜〜〜〜..........(T_T) 胸の調子がまた、悪くなってきました(~_~;;
#春先と一緒

 さて、今回はやれ「東海村」だ、やれ「O-86」だ、ってなものもありますけど、取りあえずここら辺はもうちょっと落ち着いてからとしまして、取りあえず一連のシリーズの続き、『買ってはいけない』の中身について、管理人の視点からの検証をしてみたいと思います。
 今回も、本の中に挙げられている物質についてと、それに関するデータ等を挙げてみようと思います。今回は...........何種類いけるでしょうか?(爆) モノがモノなので、下手すりゃ1種類?(~_~;;
 それでは「『買ってはいけない』検証(4)」の始まり始まり...........



 それでは前回の続きから............


●亜硝酸ナトリウムとニトロソアミン、ついでに肉

 ほとんどペアで扱われているこのコンビです。
 この本の中では........まず、亜硝酸ナトリウムを取り上げてその毒性を書き連ねています。大体は「急性毒性が高い」って事でしょうか? で、その後に魚の卵やらの成分とくっついて胃の中でニトロソアミンが出来る、と書いてありますね.............. で、以上をもって亜硝酸ナトリウムは使うな!と言いたいようです。
 さて、ここで言いたいんですけど............亜硝酸塩とニトロソアミンの相関関係は確かに、非常に良く知られています(少なくとも、食品衛生の教科書レベルと言えます)。が、昨今の学者(=「アテになる」ってわけじゃないんでしょうけど)はそれほど大きくはフォーカスしているモノとはあんまり思えません。 また、本の中では相も変わらず「長期与えたらガンが発生する」とか具体性にかける表記も多いです。 ここら辺はどうなっているのでしょうか?

 まず、亜硝酸ナトリウムの構造を表記しておきましょう.......とは言っても、構造と呼べるようなものでは無いのですが(^^;;

NaNO2:亜硝酸ナトリウム
HNO2:亜硝酸
HNO3:硝酸

 ま、「酸」で有名な「硝酸」のお友達のようなモノです(とは言っても、物性は違いますけど)。 細菌や酵素により、硝酸は亜硝酸に変換される事があります。
 で、亜硝酸ナトリウムですが、資料によれば外見や味は食塩に似るとされており、時々間違えての中毒事故があるようです。 LD50=0.22g/kg(マウス、経口) とされています。ヒトの経口致死量は0.18g〜2.5g(体重1kgあたり)とされています。多量の摂取で血管拡張と血中の酵素運搬能力の低下をおこし、血圧下降、昏睡、呼吸麻痺を起こすとされ、少量の場合には機能を回復するが、乳児は特に敏感に反応する、とあります。
 使用用途は「発色剤」ですが、実は抗菌作用(ボツリヌス菌や嫌気性芽胞菌に有効)もあり過去には「保存料」としても用いられていましたが、現在の日本では「保存料」としての使用は禁止されています。が、ヨーロッパなどではベーコンなどに保存料として使用されているようです。 発色作用ですが、食肉の色素である肉組織中のミオグロビンというタンパクや、血中のヘモグロビン等のタンパクと反応してその「色」を安定させます。
 毒性に関する実験では、100mg/kg含有(100ppm=0.01%)の飼料水を毎日、全生涯3世代に渡っての投与をラットに行った所、軽度の成長抑制と生存期間の短縮があったもののその他の異常は確認されず。発ガン性の実験では有意の発生は認められなかった、とされています。 また、食品中に食品成分と反応してニトロソアミンが検出された、という報告もあります。

 さて、規制値ですけれど.........
 資料によりますと、基準値は結構厳しく(それだけ毒性が高め、といえる)食肉製品や鯨肉ベーコンは亜硝酸根としての残存量として0.07g/kg以下、魚肉ソーセージや魚肉ハムでは0.05g/kg以下、いくら、スジコ、タラコでは0.005g/kg以下、となっています。
 さて.........亜硝酸ナトリウムで死ぬにはどれぐらい必要でしょう?(笑) 確かに本での指摘にあるように、急性毒性は高めの物質です。が、それゆえに規制値は厳しくされています。 これで計算すると、最小を考えて0.18g/kgとした場合、体重60kgで10.8g? で、また単純には言えませんけど一番量の多い食肉製品を考えてみますと、0.07g/kgの規制値ですので、10.8gに相当させるには........154kg? 比較的敏感な体重60kgの人100人集めた時、その中の50人を亜硝酸ナトリウムで殺すには154kgもいるんですね(^^;; え〜と.......せいぜい人が食える肉って、一回にどのぐらいでしょうかね? 近所のハンバーグ屋で1ポンド(=450g)食べるとさすがに何も食べられませんが................154kg? 食えるか!

 さて、しかしながらですが..........
 この『買ってはいけない』でもありますように、亜硝酸塩はある問題があります。それは、食品成分中の物質と反応して「ニトロソアミン」という物質を生成することです。 これは、摂取した亜硝酸塩と食品成分中の第二級アミンと呼ばれる物質により生成するものです。

 上の反応式がその化学反応式です(実際には、更に水(H2O)が抜ける)。R1、R2には「その20」でやったアルキル基が(メチル基、エチル基など)がそれぞれ入ります。
 具体的に経路を上げてみますと、まず食事をとります。と、食品中に存在する第二級アミンと食品中の添加物である亜硝酸ナトリウムが体内で混ざって反応(酸化条件下)し、上記のニトロソアミンを生成するとされています。

 ニトロソアミンの毒性ですが............強力な発ガン性が知られています。代表的な物質で、構造のわずかな差によってその発がん部位が変化することが知られています。 長岡田正志博士という人物の研究によれば、それぞれR1、R2に入るアルキル基(実際にはアルキル基以外も)によってその発がん部位は変化し、その構造によって肝臓、食道、末梢神経、脳、脊髄、胃、膀胱、そして場合によっては白血病なども引き起こすという事がわかっています。
 では、これでは『買ってはいけない』はかなり正しいのではないのか? という疑問が出てくるかもしれません。確かに、「この部分だけ」ではあっています。 が、あの説明だけだと片手落ちどころか両手落ちというのが実際だったりします。

 さて、ではここで考えてみましょうか。
 第二級アミンの存在はどういうところにあるでしょうか? これは一般に肉類、特に魚肉類に多いとされています。そして、その含有量は加熱により増えることが知られています(焼きサンマで生の約17倍、焼きサバで約8倍)。 では、亜硝酸は? 実はここがキモになります。
 亜硝酸塩ですが、最大の補給源はどこでしょうか? 『買ってはいけない』では食品添加物がその根源と言わんばかりに書かれていますが.............. 実は最大の供給源は何かと言いますと、野菜になります。 実際には、亜硝酸としての量はそれほど多くはないのですが、中にある硝酸塩が問題になります。何故か? それは............まず、こう言った野菜を食べますよね? そうすると、体内で細菌や酵素の働きにより還元という反応を起こして、硝酸塩は亜硝酸塩へと変化していきます(全部が、というわけではないです)。 例を挙げると硝酸塩を多量に含む白菜(大体1500〜2500ppm程度)を100g食べた後の唾液には通常の5〜10倍もの亜硝酸イオンが出てくる、という報告もあるそうです。 実際には白菜やごぼう、サニーレタス、チンゲンサイ、菊菜、ほうれん草等。そして漬物には硝酸塩・亜硝酸塩は多く含まれています。
 こう考えると............これから美味しい鍋のシーズン。飲み屋に行って鍋をつついて野菜を食べて、酒飲んで魚食べて............ いや、昼に定食を食べに行って焼き魚にお新香で.............  そう..........これっていわゆる「食べあわせ」ってヤツの一種になりませんか? つぅか、典型的な日本食食べたらニトロソアミンで死んじゃうって事になりませんかね?
 ..........実際にはそうではないですよね?

 さて、では何故これがそれほど大きな問題にならないかと言いますと、食べあわせ程度で出てくるニトロソアミンの量がたかがしれているという事があげられます。まぁ、亜硝酸・硝酸は多くても第二級アミンの量以上にはニトロソアミンは絶対に出来ません(そして、魚は第二級アミンのみで出来ているわけではありません)。実際には、発がんを誘起できるほどの量は出来ないというのが現実のようです。 そして、これが重要なのですが.............体内でニトロソアミンが出来ても、ビタミンCやリシン、アルギニン、グリシンと言ったアミノ酸によりニトロソアミンは破壊されてしまいます。つまり、ニトロソアミンの生成を抑制することが可能となります。 ま、食事のバランスをしっかりとれという良い例示でしょうね(^^)
 っていうか...........普通、ニトロソアミンとこの話は良くコンビで出てくる話のハズなんですけどねぇ? 何故彼らはそう言った所には触れないんでしょ?(笑) ちゃんと調べたのか、極めて疑わしいですね? それとも情報操作?(笑)

 ただ、一応補足ですが.........
 日本やチリと言った国では胃ガンの発生が多いことが知られています。 これは実は両者ともに共通する部分がありまして..............チリはチリ硝石といった硝酸塩が良くとれるところです。昔は火薬の生成に必要だったためチリから硝酸塩を輸入している国が多くありました。こうした事情も関係してか、国民の硝酸の摂取は多いと言われています。 そして、日本もまた肥料などや栽培、食生活の問題からか硝酸の摂取量が多いと言われています。
 こういう点では結構硝酸・亜硝酸と胃ガンの発生には相関性があるとは言われています。
 ちなみに、日本での死亡原因の1番は「がん」ですが、その中でもトップはずっと「胃ガン」です。時点は「肺ガン」、その次は急増しているのですが「大腸ガン」となっています。
#もっとも、食文化に深く関わってきますので、簡単に食生活変えろ! っていうわけにもいきませんが。


 と.........こう書くとついでに『買ってはいけない』で出てくる肉の話もしなければなりません。
 『買ってはいけない』のなかでは肉は良く攻撃対象になっています。曰く「肉食自体もがんリスクを高めることは、今や常識」「大腸ガンなどの大きな原因」..............なるほど、つまりは世界で肉食文化の所に喧嘩売っているんでしょうか? 確かに、肉食文化圏内では大腸ガンは多く発生しており、日本でも近年急増している原因になっていると言えるかと思います。 事実、統計的には胃ガンによる死亡者数はほぼ横ばいにも関わらずここ数十年大腸ガンは急増しています。 でも? 論じ方が著しく悪いと思います。 何故か? 簡単です。上記に書きましたよね?日本食で生活していると、胃ガンが多いのも常識じゃないんですか? 大体、全部が全部ガンで死ぬわけじゃないでしょ?

 やっぱり彼らはわかっていないようですが............ガンのメカニズムは色々と解明されつつありますが、実際には本人の体質、生活環境、生活習慣、ストレスなどで大きく変わっていく事も常識だと思いますけどね.............?
 実際に皆さんが食べる食品を検討すると、どんなに「体にいい」って食品でも「毒物」が含まれていることは今は常識となっています。 また、調理法により「毒」でないものが「毒」に変化することも良く知られています。 例えば? 一部のアミノ酸(しかも、必須アミノ酸)は調理方法によって(大体は加熱)は強力な発ガン性物質に変化することが知られています。薫製や焼き魚、焼き肉からはたばこに含まれると言われる強力な発がん性物質「ベンゾ[α]ピレン」が含まれていることもまた、知られています(もっとも、コイツに関しては食品として経口的にとるよりも、たばこの様に経気道摂取の方が危険と言われていますが)。 どんなチーズでさえアフラトキシンは入っていますし、その他カビ毒にも発ガン性物質を産生するものがあります。

 で、肉に戻しまして........彼らはさまざまな疾患の原因として「脂肪」に焦点をちょくちょく当てていますが..........えぇ、確かに指摘されている通り「過剰摂取」は体に良くはありません。ただ、脂肪も体には必要なモノなんですけどね? 五大栄養素の一つですし。 リノール酸系の脂肪酸なんかを取り上げて「短命化、発がん促進、アレルギーなど、さまざまな悪影響が現れる」って書いてありますけど、実際には(相も変わらず)どれだけやったかは書いていませんし、ましてやリノール酸などの脂肪酸は生体内で必要な脂肪酸の一つで、ホルモン様の働きをする物質の合成など、重要な役割を担っているわけで、欠乏症まであることが知られているのも、生物化学で代謝をやれば常識だと思いましたが? 大体、脂肪酸を合成する経路が人体にもあるのですが、何故それが必要かも考えたこと、ないんでしょうかね?
 ま、考えていれば最初からこんな本書きませんか?(笑)


 結局は..........何度も言うように、「バランス」なんですけどね.............. 彼らのように一方だけをつついて断罪なんてのは、科学じゃないのは明白なのですが。

 では今回はこれ以上扱うスペースがありません。また次回に.............




 あぁ.........長い、まとまらない............

 さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか? 今回は複数種類を一括という感じになりましたが.................
 今回は、『買ってはいけない』の食品のところで目の敵にされている亜硝酸ナトリウムと、そのコンビのニトロソアミンについて、そしてがんつながりで肉について少し触れてみました。 まぁ、典型的な「食べあわせ」についての話も絡みましたか? ちょっと今回は濃度が高いかと思います(^^;;
 結局、食事で「あ〜だこ〜だ」言われるケースというのは本当に多いかと思います。が、結局のところ最終的に行き着くのは繰り返し、繰り返し言うように「バランス」です。この点を皆様が改めて認識していただければ嬉しいのですが..................

 さて、来週ですけど.........なんか長丁場になってきました(^^;; え〜と......そろそろ食品は終わらせて農薬とかやってみたいかと思います。 わかりませんけどね(^^;;

 御感想、お待ちしていますm(__)m

 さて、それでは今回は以上です。来週をお楽しみに..........

(1999/10/05記述)


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