からむこらむ
〜その43:それは多いか少ないか(2)〜


まず最初に......

 こんにちは。近所のケヤキ並木の葉が舞い散るようになってきました。すっかり秋ですね............ 管理人は、何か風邪がなかなか治らず........... 去年の今ごろも似たような状況だったので、ちょっと怖いです(- -;;
#で、年末年始にものすごく悪化して、2km歩けないという状態でした...........
 皆様もくれぐれもお気をつけ下さいませm(__)m

 さて、今回は.........全然前準備がまた出来なかった(というか「別件」が色々あり忘れていた(爆))のと、調子が今一つなのと、その他今後も鑑みて前回の続きにしようかと思います。 ま、与太というか.............気楽に読んで行って下さいませ。
#やはり、上記理由で今回も文章が組み立てられるかが心配(爆)
 それでは「それは多いか少ないか(2)」の始まり始まり...........



 さて.......日付とかは忘れましたが、つい最近の朝日新聞夕刊にはアメリカである装置が完成した旨の記事が掲載されていました。 この装置、大きな原子同士をぶつける、という装置なのですが................. ある記者が「あること」に気付いて質問しました。「もし、大きな原子同士をぶつけたら、下手をしたらブラックホールを作り出すのではないか?」。この質問に対し、科学者は「その可能性はある」と答え............その結果、彼の国では「ブラックホールを作り出す装置」として騒ぎになり、そして段々とそれが大きくなっていって結果、大騒ぎになったそうです(^^;;
 ま、科学者ってのは通常で考えれば「起こらない」という事でも、「確率的に」見て起こる可能性がある場合はそのように答えてしまうものなんですけどね(^^;; このケースもその「小数点以下に0が目茶苦茶たくさんつく」程度の可能性だったのですが............(^^;;
#記事、取っておけばよかった..........
 それはさておき、この装置。記事によれば金原子同士をぶつける実験を行う、と書いてありました。大体、金原子が400億個程度使用となるそうです................


 さて、上記実験の詳しい内容・目的は別としまして、ここで出てきた数字「400億個」............金原子400億個............ぜいたく? まぁ、取りあえずこの数字、ちょっと考えてみましょうか。
 というわけで質問。

金原子400億個ってどれぐらいでしょうか?

 まぁ........「億」って単位は通常の生活ではそう簡単には見るものじゃぁないですよね.............せいぜいがお金の単位とかでですけど.......1円玉が400億枚? 1000円札が4000万枚? 10000円札でも400万枚..............うへぇ............見てみたい...............(^^;;
 ま、取りあえずそれは置いておきまして..........どうでしょう。この数字は大きいでしょうか? それとも少ないでしょうか? どちらにしてもどれぐらいの量ですかね.........? トン単位? キロ単位? グラム単位? ミリグラム単位? マイクログラム単位?.............. まぁ、物理学、化学をやっていたり、または高校での化学の授業を覚えている方は何となくわかるでしょう。 この量、実は..........単純計算すると、その量、実に1.3×10-11グラム.............え〜と.........13ピコグラムかな? まぁ、金1グラムは大体1200〜1300円ぐらいでしたっけ............. ま、この際お金はあんまり意味ないですか(^^;;
 そう、この実験ではせいぜいこの程度の金しか使わず、「金を使う=豪華」な実験では無いんですね(^^;; ついでに、この程度でブラックホールを作り出すことなんかは..............(^^;;
#ブラックホールの前状態であるとも言われる中性子星は、サイコロの大きさで目茶苦茶な質量数になりますしね。

 さて、何故原子は400億個「も」あるのに、「たった」これだけしかならないのでしょうか? これは..........単純に言えば、「アボガドロ(アヴォガドロ)数」と呼ばれる定数と「モル」と呼ばれる単位などが絡んでくるからです。
 高校の化学でもこれらはやるのですが、やっていない方もいらっしゃるでしょうし、記憶の彼方へと去っていった方もいらっしゃるでしょうし、これが原因で化学が嫌いになった方もいるでしょうし.................というわけで、ここで簡単に説明をしましょう。

 まず、「モル」の説明を簡単にしましょうか............
 って、これって全然実は難しくないんです。周期表には「原子量」ってのがありますよね? また、分子の場合にはその量を示すのに「分子量」ってのがありますよね? ハイ、あの数字分のグラム数の原子または分子..........それだけの物質があれば「1モル」となります。 ですから......水「H2O」で考えてみますと............水素原子「H」の重さは1です。で、水素原子「O」の重さは16です(単純に考えた場合)。 で、水はその構造式が示すように、「水素2個と酸素1個」で成り立っている分子ですので、その分子量は1×2+16=18となります。 という事は..........水1モルというのは18グラム、となります(1.8gならば0.1モル 180gならば10モル)。 また、空気中にある窒素の場合、窒素はN2という分子の形を取っており、またその原子量は14ですので、14×2=28.............つまり28グラムの窒素があればそれは1モルの窒素、という事になります。 更に言えば、純粋な鉄の固まりがあった場合、鉄:Feは原子量が大体56。という事は、56グラムの鉄があれば1モルの鉄、という事になります。
#当然ながら、巨大な分子になれば当然1モルが目茶苦茶な数字になる。
 ちなみに、この「モル」ってのは化学反応とか色々とやり始めると思いっきり絡んできます............ここを十分にやらないと化学嫌いになるんですよねぇ...............(^^;;
#教員免許所持者としての愚痴(爆)

 ちなみに、何故モルの概念が重要かと言いますと.........
 例えば化学反応式。「2H2+O2=2H2O」という、水が出来る反応式があったとしましょうこの場合、単純に考えると、「2モルの水素分子と1モルの酸素分子が化合(反応)して2モルの水分子が出来る」という意味になります。
 さて、そうすると........この反応に必要な実際の「重さ」が問われた場合、「水素分子:酸素分子=2:1」で出来る反応であるからと言って、「水素2グラムと酸素1グラム」を用意したのでは、水素分子(H2=分子量2)は1モル分(=6.02×1023個)あるのに対し、酸素分子(O2=分子量32)は約0.03モルしか存在しないことになります。そうなると、原子の数が全く合わない事となってきます。 もし、この化学反応式を行いたければ、水素分子2モル分と、酸素分子1モル分を用意..........つまり、4グラム(2H2=2×2=4)の水素と32グラム(O2=16×2=32)の酸素が必要となるのですが..........
 これは他の化学反応式でも全く同じことが言えます。この為、モルの概念がわからないと、例えば合成の時に「適当な」量の原料が用意できないこととなりうるわけです。
#わかっていない場合に書かれる化学反応式も凄そうですが..........(^^;;

 で、次に出てくる「アボガドロ数」という定数ですが..........
 この「アボガドロ数」という物は簡単に言えば「1モルの原子数・分子数」の数を示す定数でして、その数6.02×1023という数字になります。つまり、「どの物質でも1モル分あれば、6.02×1023個の原子(分子)が存在する」という事になるでしょうか。これは水素の様に軽い物であろうが、ウランの様に重いものであろうが、全く持って無関係です。 もっとも、厳密に、辞書的、というか理化学辞典にはこう書いてあります.........「質量数12の炭素の同位体12Cの12g中に含まれる炭素原子の数。6.0221367(±0.0000036)×1023 mol-1の値を持つ」 ま、こういう言い方をすると難しいですけどね(^^;; 単に「アボガドロ数は炭素を基準にしている」と思って下さい。
 ちなみに、この事を考えればわかるかもしれませんが、「炭素」12Cを基準として周期表の原子量が作られています(昔は、酸素16Oだった)。

 さて、以上を踏まえますと.........まぁ、早い話「物質が1モル存在する=その原子(または分子)は6.02×1023個存在する」という事になります。
 では、6.02×1023という数字。これを考えると..........これはつまり602,000,000,000,000,000,000,000という数字になりますね。え〜と........六千二十垓(がい)という数字になります。これは、「億」の上の「兆」、の上の「京(けい)」の上になります。 ちなみに、「垓」とは中国語で「国の果て、極土」の意味とされているそうです。 この数字がどれだけの物かと言いますと.........お金にすれば、現在の日本の国家予算の800万年分ですか? もっと「マクロ」に考えれば、宇宙に存在すると言われる星の数、またはそれよりも多いぐらい................(^^;; ですから、18g=18mlの水には、宇宙にある星の数と同じぐらいかそれより多い程の水分子が存在している、と言えます。


 さて、ではここで冒頭に戻りまして.........400億個の金原子を考えてみましょうか。
 金という物質は、原子番号79、元素記号「Au」という物質で、その原子量はおおよそ197です。 つまり、「金1モル分」は純金(=24金)197グラムにあたり、この中に6.02×1023個もの金原子がある、という事になります。 さぁ、それでは考えてみましょうか。
 1モル=6.02×1023個ですので、400億(=4.0×1010)個という数字は何モルになるかと言いますと、4.0×1010÷6.02×1023という計算ですので.........6.64×10-14モルになりますか.......... で、これに金の原子量をかけてやれば実際の重さが出てきますので、6.64×10-14×197=1.308×10-11グラム............(^^;; 前回やった様に、10-12g=1ピコグラムですから、大体13ピコグラムになります。
#計算合っているかな............


 ま、こう色々と考えますと...........原子そのものは基本的には壊れませんので...........こんなにものすごく多い数字ですと、人が一生の間に関わってくる原子・分子の量は...........おそろしい程の数字になるかと思います。そう考えれば..............もしかしたら、我々が口にするものの中には、古代の英雄なんかの飲み食いした物や、恐竜やらが摂取した中の原子が1個ぐらいは最低でも入っているのかもしれませんねぇ..........



※余談:江戸時代の単位
 「垓」という単位を出しましたが.......江戸時代にはものすごい数の単位が考えられていた事が知られています。基本的に4桁で区切っていっています。実際に書いてみましょうか。

 「一」→「十」→「百」→「千」→「万」→「億」→「兆」→「京」→「垓(がい)」→「じょ(禾偏に「予」。漢字見つからず)」→「穰(じょう)」→「溝(こう)」→「澗(かん)」→「正(せい)」→「載(さい)」→「極(ごく:中国数詞の最大値。無限大、究極、宇宙の果て)」→「恒河沙(ごうがしゃ:仏教語「ガンジス川の砂のごとく多数」)」→「阿僧祇(あそうぎ)」→「那由他(なゆた)」→「不可思議(ふかしぎ)」→「無量(むりょう)」→「大数(たいすう)」

 大数以上はありません(^^;; また、「恒河沙」以降は後世より付加された単位です。「那由他」「阿僧祇」はインド数量の単位だそうで、前者は「那のみでも大きい(=きわめて大きい数の意)」、後者は「きわめて巨大で数えきれない」という意味。「恒河沙」「不可思議」「無量」は仏教語より来ているそうです。
 この数詞を整備したのは吉田光由(よしだみつよし)という数学者によるもので、寛永年間(1624〜1644年:3代将軍家光の頃)にはほぼ完成されていたとされています。

 以上、余談でした(^^;;




 さて.......今回も文章、ちゃんと出来たかな?

 さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか?
 今回はまぁ、最初に書いた理由でこうなりました。まぁ、モルとかアボガドロ数とか、そういう話も出来たんで良いかなぁ、って気はします。ま、いつかやらなければいけないので........(^^;;
 で、今回は前回と比べれば全く正反対。「ものすごい大きい数」をやってみました。どうでしょうか? 「大きい数」の割には、その量は小さいのですが...........(^^;; いや、極小の世界というか、極大の世界というか...............凄いものです。
 ま、こういう与太も面白いかと思います。
#で........文章になっています?(爆) 本当に忘れていたので...........

 さて、取りあえず今回は以上です。
 次回は.........まだ未定です(爆) いや、いい加減核関連やろうと思うんですけど、忘れていたり忙しかったりで............... いや、何とか時間見つけたいかと思います。


 御感想、お待ちしていますm(__)m

 さて、それでは今回は以上です。来週をお楽しみに..........

(1999/11/09記述)


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