からむこらむ
〜その68:生体の応答〜


まず最初に......

 こんにちは。 なんというか.........最近、徐々に夏っぽい雰囲気が出ていますね。 徐々に梅雨になって、夏へとなるのでしょうが.........
 気候変動の時期なんですよねぇ..........(- -;;

 さて、今回は大分悩んだのですが............ちょっと「概念」に関係する話にしたいと思います。何故かというと、これを語らずして生体の話というのはやりにくいものでして.......... ある意味「当たり前」の部分なんかがあるとは思いますが、そういう場合は改めて認識していただければ充分です。
 ま........具体的に話が進むようになればピンとくる、と言うことで今回はその「前準備」的位置づけとしようと思っています。
 それでは「生体の応答」の始まり始まり...........



 今回は、ちょっと当たり前のような話をしてみたいかと思います。

 え〜、今このページを見ている方は...........100%「生物」であるかと思いますが.............(^^;;
 さて、生体(body)ってものは色々と細かいもので構成されているということは皆さん御存じの通りだと思います。 とは言っても、結構ピンと来ないかと思いますけどね。
 そうですね.........最初にちょっとこれを触れておきましょうか。
 生物の「基本単位」として良く用いられるのは「細胞(cell)」という物があると思います。まぁ、生物もピンキリですので「単細胞生物」と呼ばれる細胞一個の生命体、と言ったようなものから、人間の様に約60兆個だったかの細胞で構成されている生命体ってもいるわけでして。ま、そういう意味では基本単位としての細胞、という物は生体を考える場合にはある種重要であったりします。
 では..........この細胞は何で構成されていますか?、と聞かれたら皆さんはどう答えますか? ま、あっさり答えてしまえば、生物化学などをやれば「オルガネラ(細胞小器官:organelle)」と呼ばれる、細胞を構成する器官が存在します。これの例は........例えば遺伝情報を持っている「核」や周りを保護したり輸送などに関与している「膜」、エネルギーを生産する(そして、もともとは全く独立していた生物であった)「ミトコンドリア」、酵素を一杯持った「リソソーム」など.........そう言ったものが存在しています。 では、このオルガネラは何で構成されているか? というと、たんぱく質や核酸、糖類と言った「生体分子(biopolymer)」と言ったもので構成され、更にこれは「分子(molecule)」で構成。分子は「原子(atom)」で構成され、原子は更に「素粒子(elementary particle)」と言ったもので構成されています。 ま、これ以上細かいと訳分からない世界になりますので、取りあえず(^^;;

 さて、細胞を構成しているもの、を簡単に触れてみましたが.........では、逆を考えてみましょうか。
 細胞はどういった物を構成していくでしょうか? って聞かれたらなんて答えられるでしょうか。 ま、ピンとくる方はそう多くないかも知れませんが............
 細胞という物が集合するとこれらは「組織(tissue)」と呼ばれるものを形成します。ま、単純に言えば皮膚なんかの「上皮組織」や筋肉を構成する「筋組織」なんてのが挙げられるでしょうか? では、この組織が集合するとこれは何になるか、というと今度は「器官(organ)」という物を構成します。これは御馴染みなもの、というかピンとくるものが多く例えば「肝臓」「腎臓」「心臓」「脾臓」「胃」「脳」「睾丸」「小腸」等々........ま、解剖してよく見るものの代表みたいな物でしょうか?
 では器官は更に何を形成していくか、と言うと今度は「系(system)」と言うものを形成します。 どういうものかというと..........そうですね、医者の分野なんかを想像されると分かりやすいかと思いますが、「消化器系」「泌尿器系」「循環器系」「呼吸器系」「内分泌系」「生殖器系」「筋肉骨格系」「神経感覚系」という........「系」を「科」に変えれば病院になります、と言うとピンとくるでしょうか?
 そして........生体、という物はこう言った系によって構成がなされています。

 そう、良く考えると実はある意味当たり前、って思われる方も多いでしょうが...........生体という物を考える際にはこの概念は重要となりますので、確認をして下さい。

 さて、では。タイトルにもなっている「応答」って部分についてちょっと考えてみましょうか。
 「応答(response)」ってのは何か? って聞かれたらなんて答えますか? まぁ辞書的に考えてみれば「問いや呼びかけに答えること」ってなるでしょうかね? 今、私の質問に解答を考えて下さった方は見事に「応答」してくれた、という事になるでしょうか。 では、「生体の応答」って言うとどんなのを思いつきますかね?
 ちょっと、考えて欲しいのですが...........まぁ、「生きている」と当たり前の事ばかりがこれに該当するわけで結構ピンと来ないように思えますけど。
 辞書的な意味で先ほど応答の定義を「問いや呼びかけに答えること」と書きました。では、「生体の応答」を考えてみた場合、これは「生体に対する問いや呼びかけに答えること」となります。「生体に対する問い掛けや呼びかけ」、という事は? これはすなわち、「外界からの刺激」という事になります。 では「外界からの刺激」という物を考えてみると.............膨大です。 そうですね、単純に考えてみますと.........「光」「音」「香り」「温度」「接触」............なんてのが挙げられるでしょうか? もちろん他にもたくさんありますけどね。
 で、こう言った外界からの刺激に対して生体が反応して何らかの動きをすること、を「生体応答」と一般には呼んでいます。 この「動き」は第三者的にみて明らかに体の動きとして認めるものがあれば、認められないものもあったりします。

 では、「生体応答」の例を少し挙げてみましょうか?
 例えば.........何らかの原因で外気温が上昇したとしましょう。その中にあなたがいたら? まぁ、冬着のまんまで35度なんていう所に行ったら..........汗がすごく出てくるでしょうね、普通ならば。 これは当然のことながら正常な反応(生体の応答)であって、体温の上昇に対して汗をかくことによって体温を下げよう、という働きが起きている、と言えます。
 では、反対に。「外の気温は35度なのでランニング一丁」って状態で冷蔵庫の様な場所に行かされたら? 今度は体が震えてきて、鳥肌が立つ、そして普通は自分の体を抱きかかえるような格好になる...........なんてのが一般的な反応かと思います。これも正常な反応でして、体温を逃さないようにするための動きをしている、と言えるでしょう。
 もし、あなたが風邪を引いたら? まぁ、結構重い風邪だったりすると...........熱が出て安静状態にする必要があるかと思います。水分を多く取って栄養のあるものを食べる......... では、何故熱が出るのか? というと、一般的には風邪の菌を抑えてこちらの免疫が働くのに適した体温、と言われています。 これは、体が侵入してきた外敵から守る、という動きにでていると言えます。
 ま、こんな堅い話でなくても.........例えば食事をしたとしましょう。 食べてみたら「美味しかった」、なんて事があるでしょう。 これは「味覚」への刺激に対する応答、と言えます。 物をつかんでみると、「堅い」「柔らかい」なんてあるでしょう。これも「接触」への刺激に対する応答とも言えます。 音も破壊音があれば何かと反応しますし................

 この様に、生体応答というものは非常に、生きていくうえで密接に関与しているもの、と言うことが出来ます。

 では.........上記の生体に対する外界からの刺激に反応する、という行動はどういった事からなっているのでしょうか?
 一般に、何らかの外界からの刺激を受けた場合、生体はこれに反応して必要な系や器官等に対して「伝達」を行っています。 どういうものがあるかというと、一般的には神経系の「神経による伝達」、という様なもの。それにもう一つ内分泌系の「ホルモンによる伝達」という物があります。

 一般的な多細胞生物では刺激に対する応答をつなぐ「シグナル」が細胞と細胞の間で伝達されなければなりません。 これは非常に重要なことでして.........何故かといえば、構成している生体がある刺激に対して一致した行動がとれない........つまり、「本当はこうする必要がある」という時に点でバラバラに細胞が働いてしまうと生存が難しくなる、という局面に接しかねないからです。
 では、ホルモンと神経の伝達の違いはと言うと.........まず、一般に代謝の調整はホルモンによってなされています。 ホルモンによる情報の伝達と言うものは、「ホルモン」と呼ばれる少量で作用のある生体物質をある細胞(内分泌細胞)が血液にながして、目的となる細胞(標的細胞)に到達させ、情報を伝達させる、という「化学物質によるシグナル」といった方式をとっています。 しかし........この方法は遠く離れた細胞に対しては情報を伝達するのに飛んでもなく時間がかかる、という難点があります。 特に、運動や視覚情報などの伝達をいちいち血液に流していたら..........「とっさの反応」をする前に死んでしまう、なんて可能性が高くなってしまいます。
 こういった時間がかかる点を補うために、多細胞生物では「遠くの細胞に対して早く情報を伝達する」システムとして「神経伝達」という方法を採っています。つまり、神経細胞を発達させ、全身に張り巡らせて一般に知られるところの「電気的シグナル」といわれる方式で遠くの標的細胞に対して伝達を行っています。尚、この「電気的シグナル」の伝達速度は、人間では100m/sec.ほどの速さ、となっています。
 生体は、この電気的シグナルと化学物質によるシグナルを組み合わせて、効率的に、短時間で情報伝達を行っています。

 尚、この神経とホルモンによる伝達による最も重要な働きとして、「生体の内部環境の維持」という物があります。ま、生体応答の当然の帰結、という部分でもあるのですが........... つまり、常に生体での(一般的には代謝とよばれる物の)調整を行って、生体の「恒常性」、つまり「変化に対する対応」を行って常に一定の状態に保つ、と言うことが重要な働きとなっています。 まぁ、具体的には.......先ほどの「生体応答」の例を挙げましたが、そういった部分でしょうか。 また、ホルモンなどの伝達物質が一定以上の濃度でばらまかれたらそれ以上ばらまかれないように「フィードバック機構」という作用が働いてこれを抑制する、なんていうのも恒常性の維持に必要なものであったりします。

 この「恒常性」を一般的に「ホメオスタシス(homeostasis)」と呼んでおり、生体を維持するうえで非常に重要な概念となっています。 この考えは、19世紀にバーナードという人物の提唱した内部環境の「恒常性を維持する調節(homeostatic regulation)」という概念に基づいています。

 では、もし.......この神経とホルモンによる伝達機構が阻害ないし破壊されたらどうなるでしょうか?
 これは単純に考えれば分かる通り、恒常性の維持が出来ない、という事になりますので.............正常な生体の運営が出来なくなり、いわゆる「病気」の状態になります。 そして、場合によっては死に至る、という事にもなります。
 例えば、サリンといった化学テロがありましたが、これは神経の正常な伝達を阻害することで死に至らしめる物ですし、またホルモンの分泌調整がうまくいかず過剰に分泌ないし必要なのに分泌されなかったりすれば、当然のことながら正常な生体調整ができなくなり、病気/死に至る、という事になります。


 おっと........結構長くなりました。
 取りあえず今回は、「生体応答」の概念、という部分についてのお話という事にしまして.............
 今後、具体的な話をしていきたいと思います。




 ん〜〜〜...........大丈夫かなぁ.............

 さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか?
 今回は久しぶりに化学物質について触れずに、「生体」に対する話を。しかもその「生体応答」という部分の概念について話してみましたが..........まぁ、概念の部分なんでちょっと面白くないかも知れませんね(^^;; どちらかというと「再認識」をしてもらうとか、そういうような部分が大きいかなぁ、と思っています。
 ただ、この点について話しておかないと..........ちょっと厄介なんですよ。今後が。こういう部分を触れずにホルモンや神経の話しても、そしてそこから嗅覚とか味覚、ストレスについての話をしても「ちょっと違う」って部分があると思うんで。 まぁ、要点はある程度絞られてはいると思いますので.........多分(^^;;
 ま、頭の片隅にいれておいて下さい。

 さて、次回は...........取りあえず重要なことはやりましたので...........何にしましょう(^^;;
 まぁ、毎度のことながらどうにかします(^^;;

 さて、今回は以上です。
 御感想、お待ちしていますm(__)m

 それでは、次回をお楽しみに.............

(2000/05/16記述)


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