からむこらむ
〜その59:生命のアミン〜


まず最初に......

 こんにちは。寒かったり暖かかったり、そして花粉が飛んだりと非常に体に負担の多い時期ですね。 皆様、いかがお過ごしでしょうか?
 管理人、旅から帰ってきてから今一つです(^^;; やっと風邪は直ってきたんですけどね.............

 さて、今回は旅先から帰ってきての復帰第一弾。 ま、「リハビリ」先での持ち帰りの仕事やその他色々とありましてちょっと練る時間がないのですが、取りあえずビタミンの話でもしてみようかと思います。
 ビタミン.......まぁ、過去にやった「必須栄養素」の一つなのですが...............
 それでは「生命のアミン」の始まり始まり...........



 過去にその28で五大栄養素の話をしたのを覚えていますか? ま、大分前なのでお忘れの方も多いかと思いますが.........(^^;;
 この時、五大栄養素として「炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、無機質 」を挙げました。
 .........一応、確認をしておいて下さいね。

 時は19世紀後半。化学が大きく前進して著しい発展が見られた頃。
 このころ、炭水化物(糖とか)、脂質、たんぱく質、無機質などの栄養素(当時はこの「四大栄養素」であった)は食品から純粋に取りだすことが可能となり、これらを使った研究.........生体に関する研究などが化学的な観点から行われ発展していっていました。
 さて.......この様な流れの中、スイスのバッセル大学では純粋な栄養素の組み合わせだけでネズミの飼育を行う、という実験を行います(この考えは当時としては画期的だった)。が、しかし..........これらの純粋な栄養素を混ぜた飼料では、飼育していたネズミが成長しないという事を知ります。 はて? 栄養素(知られている4種)を混ぜたのに.........?? と、当然なるわけですが............
 さて、この当時。ヨーロッパ各国の植民地であった東南アジア各国の米食を主とする地域では、現地の言葉で「ベリベリ」(beriberi)と呼ばれる病が流行していました(関節障害を示し、徐々に麻痺が広がって呼吸困難を起こして死ぬ病)。この病の原因を追及すべくヨーロッパ各国の研究者達は原因究明をしていたのですが........... こんな中、オランダのエイクマンはオランダ領東インドのバタピア(現ジャカルタ)でこの研究を行っていました。彼はコッホに細菌学を学んだ医師であり、この「ベリベリ」の原因(彼は「病原菌」がいると考えた)を追及すべく実験を繰り返していたのですが全て失敗しました。が、彼が飼育していたニワトリの中にベリベリ症状を示すものを発見します。 これを追及してみることにして調べると...........全て病院の残飯の白米で飼育したニワトリであることを知りました。色々と研究してみた結果、彼は「白米に由来する毒素が原因」と結論します。が..........しかし、研究はこのままでは終わらず続づいていき、そして彼の弟子であるグリインスにより次のように結論は修正されます。「白米の中に欠落している成分がある」...........これは、米糠を与えることでベリベリの症状改善が出来た為であり、そして「欠けている成分」は米糠にある........彼らはそういう推論を建てました。
#ちなみに、日本でもベリベリは存在していました..........いわゆる「脚気」の事です。
#グリインスの研究報告を元に日本でこの「成分」の研究が進むのですが、それはまた別の話..............
 グリインスとエイクマンの研究報告によって、世界でこの成分の追及が進むのですが、そんな中イギリスにおける(おそらく最初の)生化学者ホプキンスは「たんぱく質・糖質・脂質・無機質の混合飼料でシロネズミは成長しないが、2〜3mlの乳汁を与えると動物は成長する」という事を見いだし、学会に対し「たんぱく質・糖質・脂質・無機質の混合物では生きることは出来ない」という報告を行います。この事から彼は乳汁の中に含まれる、何か他の栄養素..........「副栄養素」があるのでは、と考えました。
 以上の様な結果を踏まえて研究は尚進み...........ついに1911年(明治44年)、米糠の成分から西はフンク、東は鈴木梅太郎によってほぼ同時期にこの抗ベリベリ作用を持つ物質を抽出し、フンクはこれをアミン(単純に言えば「窒素含有化合物」)の一種と考え「生命(vita-)に必要なアミン(amine)」という事で「ビタミン」と。鈴木梅太郎は「オリザニン(最初は「アベリ酸」と命名)」と命名。
 ここに、当時知られていた、「タンパク質・炭水化物・脂質・無機質」の四つの栄養素の他に、新しく生命の維持に必要な「栄養素」が発見され、これがやがて「ビタミン学説」となり研究が進みます。
 ま、実際には両者が発見したものは、現在「ビタミンB1」として知られている物質で、徐々に研究が進んで言った結果、フンクの「ビタミン」はたくさんの「新ビタミン」の発見によって「総称」として用いられる事になるのですが.............

 ちなみに、余談ですが.........フンクと鈴木梅太郎。両者とも上記の通りビタミンB1をほぼ同時期に発見したのですが、「どちらが先か」が今もって議論されています(^^;; もっとも、両者ともビタミンの発見に基づくノーベル賞を受け取ることは無かったのですが..............(エイクマンとホプキンスが受賞しました)。


 さて、まぁ、以上が簡潔な「ビタミン」の、「一番最初の」発見まで話です。
 フンクの「ビタミン」は現在では上記の、そして現在でも用いられている通り「総称」として用いられています。 ま、今では全部が全部「アミン」では無いことは知られていますが..............
 では質問。

「ビタミン」は何種類あるでしょうか?


 以外と........難しいでしょう?
 まぁ、挙げられるのはいくつかあるかと思います。「ビタミン」を冠しているもの.........Aとか、C。Dなんてのもあります。上記ではBもありました。Bにも更にB1とかB2とか......... Eなんてのもありますが..............何種類思いつきますかね?
 まぁ、実際には色々と「あれもそうだ」「これもそうだ」とかあって意外と人・研究室・企業によってバラバラだったりするようですが(^^;; まぁ、取りあえず挙げてみますと、大体十数種類ぐらいあります。
 じゃ、どんなものがあるか挙げてみますと...........

 ま、こんな物でしょうか。構造はいっぺんに挙げると画像が重くなるので省略しますが.............(^^;;
 どうでしょう? どれだけ挙げられたでしょうか?
 結構薬とか、食品に入っていたりします。よ〜〜〜〜く見てみると..........例えば、全く同名ではないものの「何ちゃらチアミン」とかあれば、Vitamin B1の仲間と見ることも出来ます。 ビタミンCや、Eは食品に良く酸化防止剤として入っているでしょう。 スポーツ飲料を見てみれば、パントテン酸、葉酸なんかも入っていることがあります。
 機会があれば、良く食品関係の成分表なんかをのぞいてみて下さい。ビタミンは結構入っています。

 では、話に入りたいと思いますが............
 さて、上の表では、「グループ」とあえて分けています。最初にこれに触れておきますか。 これは何故かと言いますと...........
 化学的にこれらビタミンを見た場合、大別して「油に溶ける」グループと「水に溶ける」グループに別れる事が出来ます。グループ1に分類したものは「油に溶けるグループ」で一般に「脂溶性ビタミン」と、グループ2に分類したものは「水に溶ける」グループで一般に「水溶性ビタミン」とそれぞれ呼んでいます。
 実はこれ、非常に重要な分類になります。

 これはビタミンに限らず、生体と物質の関わり具合を考えるときに非常に重要な事なのですが、脂溶性と水溶性で体内での挙動が大きく変わってきます。例えば、脂溶性というものは体内の脂肪に溶ける、という性質がありますので一度摂取すると蓄えられ、(栄養素の場合は)必要に応じて必要な分だけ使用される、という特徴があります。一方水溶性という物の場合は、体内の水に簡単に交わりますので、一度摂取しても(栄養素の場合)必要があるもの以外は蓄えることなく尿中に排泄されてしまう、という特徴があります。
#これを考えると、脂溶性物質は体内の脂肪に溶けて蓄えられてしまい、いわゆる「生物濃縮」などの対象となります。 ダイオキシンなどは、これが問題になります。

 さて、改めてビタミンとしてこれを考えてみますと...........
 脂溶性ビタミンの場合、一度摂取すると取りあえず過剰な分は脂肪に蓄えられ、必要に応じて使用される事になります。が、裏を返すと........余りにも過剰にたまってしまうと逆にこれが仇をなす........いわゆる「過剰症」という事が起こってしまいます。
 例を挙げてみましょう。
 例えば、Vitamin Aは視力に関するビタミンで、これが不足すると「夜盲症」(いわゆる「鳥目」)や正常な成長の阻害、粘膜の異常、生殖機能の減衰などが起こります。 が、過剰に摂取すると肝機能障害や脳圧亢進症状、四肢痛などを起こすことが知られています。 これは、アラスカはイヌイット(エスキモー)などはアザラシを食したりするわけですが、この肝臓(油が一杯ある=脂溶性ビタミンの備蓄が多い)を食すことでVitamin Aの過剰症を起こすことが知られています。
#余談ですが、みかんの食べ過ぎで皮膚の色が変化することがありますが、アレも脂肪に溶けた成分が引き起こす症状だったりします。

 一方水溶性ビタミンの場合ですが、これらは摂取すると必要な分を体が回収した後には後は全て油に溶けることが出来ない=蓄えられない、という事ですので「余計なもの」となり、そのまま速やかに尿中に排泄されてしまいます。 ですので、過剰症は起きませんが蓄えられませんので適宜摂取する必要があります。
 ちなみに、これを証明する現象がありまして.............
 某社製の滋養強壮剤に「アリ○ミン」なんてのがあるのは御存じかと思います。この成分は見てみるとVitamin B類が色々と入っていますが..........飲まれた事のある方は経験があるでしょうが、摂取して数時間後にトイレで小用をたすと、尿が有意に黄色くなっていることがあると思います。 アレ、実はVitamin B2でして、体の中での要らない分が排泄されているのです。 本当に速やかに排泄されます。
#ですから、裏を返せば水溶性ビタミンがいくら「たくさん入っている」事をアピールしても、数時間後に要らないやつは全部排泄されてしまうわけで..........
#例え一本のジュースに水溶性ビタミンが1000mg入っていても数時間後にはパーなわけですな(笑)

 っと、ちょっと脱線しましたか(^^;;


 .......え〜肝心な話があるのですが............歴史と種類と言うことで(^^;;
 もっと本質的な脂溶性・水溶性の話や、各ビタミンの簡単な特徴・症状などがあるのですが、これ以上は長くなるでしょう。
 取りあえず今回はこんなもので.............次回に続きをしましょう。




 てなもんで、取りあえず(^^;;

 さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか?
 一応、ビタミンの簡単な概要ですが...........長くなりそうですので分割です(^^;; ま、今回は歴史と種類、という点ですかね..............
 ま、脂溶性・水溶性の肝心な部分に関してや、プロビタミン、簡単な生理作用等必要な部分にまだ触れていませんので、この手の、取りあえず重要なところは次回にやりたいと思います。
#旅だったり、風邪だったり、仕事だったりで忙しいものでして..........(~_~;;
 さて、今回は以上です。
 御感想、お待ちしていますm(__)m

 それでは、次回をお楽しみに.............

(2000/03/14記述)


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