からむこらむ
〜その74:食い倒れと食中毒〜


まず最初に......

 こんにちは。 真夏日越えたり梅雨寒だったりと目茶苦茶な天気ですが、皆様お過ごしでしょうか?
 管理人、ふらふらです。サバイバルが続いています........(~_~;;

 さて、今回は........「食い倒れ」。とは言っても「いくらまで食べられるか」という話ではなく、タイトルの後半にある通り「食中毒」の話です。
 ま、最近色々と.......また病原性大腸菌の話が出始めており、部分部分では良く語られますが、意外と「食中毒」という全体の部分は知られていない、というかピンと来ないようです。
 今回は、そういった概念などについて、色々と話してみたいと思います。
 それでは「食い倒れと食中毒」の始まり始まり...........



 最近は色々と高温多湿な気候になってきましたが............
 最近のニュースをちょっと見てみますと、徐々にある事件が目立つようになってきました。例えば? そうですね.........3年ぐらい前に大規模に起きた騒動の原因である、O157による事件が老人ホームや海外で発生している、という情報がちらほらと出てきています........つまり、いわゆる「食中毒」という物が起き始めてきました。

 さて、「食中毒」という言葉。特定の時期になると特に良く聞くことかと思います。そして、ある程度の定義は御存じかとは思いますが.......意外と実体はピンと来ないのではないか、と思われます。 例えば? どういった「食中毒」があるのか、と問われてすぐにあれこれと言える方はそう多くないでしょう。タイプなどの分類、と言う点では実は知られていないのではないか、と思われます。
 そういうわけで、今回はこう言った部分の、概要についてお話したいと思います。


 では、質問。

「食中毒」って何でしょう?


 というのは、基本的ですかね? ま、簡単に答えてみると大抵は共通していると思いますけど.............
 この解答は概ね共通しているでしょうが、学術っぽく言うとこうなります。「飲食に起因する急性(または亜急性)胃腸炎を主症状にする健康障害」。もうちょっと砕いて言うと、「食べたり飲んだりすることによって急性(または亜急性)に起こる消化器官の健康障害」、になります。まぁ、「中毒」ってのも入るんですけど........... この「飲食」と言うのは「食中毒」という物では重要なキーワードになります。 まぁ、大体の場合は想像されている通りだと思いますけど..........「○○を食べたら急に腹が痛くなって.........」と言うのはある種典型的な「食中毒」のイメージになるのではないかと思います。
 ま、ここら辺は問題ないとは思いますけど.........

 さて、この食中毒。かかった場合は大半の場合は(気付かないほど軽いとかそういうこともあるかもしれませんけど)病院に行くこととなる訳ですが...........実は「食中毒かかりました(^^;;」なんて軽く済ませる物ではなく、その報告に関して届け出る義務があります。食中毒が確認された場合、担当医師によって保健所へ「直ちに」届け出て、そこから更に地方行政組織(都道府県)へ。そして厚生省へと報告されます。この結果は厚生省が取りまとめて「全国食中毒事件録」としてまとめられ白書なり色々な形で国民への報告になります。
 結構、そこら辺まで大掛かりになる、とは思われる方は少ないかと思われますが.............少なくとも「風邪引いたので薬もらって終わり」、程度では無いものがあります。この報告は結構重要でして、原因の傾向を調べたりしますし、そしてある特定のタイプが急増すればそれに対する警告を発する(突然大きく扱われることになったO157などはそうでしょう)、という事にもなりますので........... ただし、実際には病院に行かずに済ます、というケースもかなりあるとされていまして、報告されている数の数倍は起きているのではないか、と言われています。
 尚、この届け出た記録は厚生省によって取りまとめられる、と書きましたがこれはかなり細部にわたっており、「原因物質別」「原因食品別」「原因施設別」という具合に分類されていきます。

 さて、食品を介して「食中毒」と言う疾病が起こるわけですが、この原因物質には様々な種類があります。どういった種類がありますか? と聞かれたら大半の人はおそらく.........微生物による物を思い浮かべるかと思います。しかし、実際にはそれだけではなく本当に様々な種類があります。
 食品を介して起こる疾病(=生理的異常現象)の原因という物を挙げてみると........細菌、ウィルス、真菌、原虫、寄生虫と言うものから植物性自然毒、動物性自然毒と言った自然毒。更に有害化学物質などがあります。ただし、この生理的異常現象のうち、物理的・機械的障害、栄養障害、消化器伝染病、ウィルス、真菌感染症、寄生虫症に関しては「食中毒」としては除外されて別の疾患として扱う事になっていますので、結果的に食中毒の原因物質としては細菌、自然毒、有害化学物質という物に分類されるという事になります。そして、行政的にもこの三種類の分類が使用されており、「細菌」「自然毒」「化学物質」に分類されています。

 では、この分類について触れてみましょう。
 上記の行政的に分類された三種類.......「細菌」「自然毒」「化学物質」は更に分類することが可能です。 その分類は次の通りになります。

 ま、各種具体的なものは独立してやる価値があるものもありますので、その機会に行うこととしまして...........
 一般に思われるのはやはり細菌性の食中毒かと思われます。が、そちらのイメージが強いのか自然毒や化学物質による食中毒、という物はちょっと忘れられる傾向にあるようです。 ただし、データ的に見てみると平成10年のデータでは報告された食中毒の総数3059件(内、原因判明の物は2953件)のうち細菌を原因とする食中毒は全体の96.5%を占め、自然毒で1.2%、化学物質では0.5%、その他1.8%となっていまして、その大半は細菌性の物となっていますので分からない訳でもありませんが.........(統計データは、財団法人 厚生統計協会の『国民衛生の動向』の1999年第46巻第9号より)
 ただし、平成10年の食中毒による死者9名の内、細菌性の物は4名。自然毒による死者が5名となっていますので、発生事例が少ないとはいえど自然毒での致死率の高さは侮れないと言えます。

 さて、各種簡単に解説を。
 細菌性の食中毒と言うものは上記の通り3種類に分けられています。いずれも食品中で菌が増殖したものを摂取した場合に起こります。
 「感染型」は食品とともに摂取して、腸管に定着後に腸炎を起こすようなタイプで、細菌性の中では発生頻度が高い物です。大半の食中毒ははこのタイプで起こります。 「毒素型」は食品中に毒素を撒いて、それを食べることで毒素による食中毒を起こすタイプです。かなり怖いタイプが多く、最も凶悪なボツリヌス菌(その3でも少し扱いましたが)はこのタイプです。 「中間型」は摂取して腸管内に菌が定着して増殖してから毒素を発生して腸炎を起こすタイプ(だから感染型と毒素型の「中間」)でして、病原性大腸菌などはまさにこのタイプとなります。
 最も警戒され、そして報告されるのはこの細菌性のもの、となります。
 尚、過去にも主張していますがボツリヌス菌は本当に危険な菌でして、その語源をラテン語の「ソーセージ」とする様に肉を介して発生しました。その致死率50%とも言われていたそうです。日本では(ちょっと古いデータですが)1951〜1994年までの間に106件、501人の患者を出して死者113名(致死率22.6%)という数字が残っています。様々な安全基準はこの菌をかなり主眼においたものが多く、保存料やコンビニ弁当などの消費期限などはかなりこの菌を意識しているという事は覚えておいても損はないかも知れません。
 また、O157などは大腸菌ですのでこのタイプに分類されます。

 自然毒の食中毒は上記の通り二種類に分類されます。
 植物性の物は主にキノコ中毒である事が知られており、圧倒的な数を占めるとされています。これは多雨の地域では洋の東西を問わず多く発生しているようです。一番多いキノコ中毒はツキヨタケによる物が半数以上を占めています。
 他には上記の通りジャガイモの芽にあるソラニンという毒性物質の中毒(これでヨーロッパでは「悪魔の食べ物」扱いされた時期があったとか)や、ワラビ(灰汁抜きをしないと食べられない)、保険金殺人で有名になったトリカブト。他にも青い梅を食べて起こる青酸中毒や、チョウセンアサガオやバイケイソウ、心臓障害を起こすジギタリスやセリの仲間であるドクゼリ、オゴノリ(灰汁抜きをしないと食べられない)などによる食中毒も報告されています。 特徴的なのは、冬場には報告が少ないのですが、秋の「収穫」の時期になるとこのタイプの食中毒の発生件数が急増することが知られています。
 動物性の物は水産動物に限られています。一番有名なものはフグでしょうか。美味ながらその卵巣などに含まれるテトロドトキシンというフグ毒による死者は昔から多くあったようでして........江戸時代にはこの死者が多かったことからか「フグは下賎の魚である」として武士達のフグ毒による死者を防ごうとした、なんて話があります(それでも収まらなかったそうですが(^^;)。 他には貝の毒や魚卵、イシナギの肝臓による中毒などが知られています。
 余談ですが、フグ毒。この構造解明は日本人が大きく関わっており、ドラム缶数十本分のフグからテトロドトキシンを単離した、なんて話が残っていますが、これはまた別の機会に。

 化学物質による食中毒は色々とありまして........
 最も多いのは食品中のタンパクが分解して出来る「ヒスチジン」というアミノ酸が更に微生物によって出来るアレルギーの原因となるヒスタミンによる中毒は多く報告されています。また、最近は日本ではあまり報告が無いようですが、「飲めるアルコール」と勘違いして 飲めないアルコール」であるメタノールによる食中毒もこれに分類されます。メタノールによる中毒は日本では少ないにしても各国では結構な数があるようで、古くは禁酒法時代のアメリカで、最近では旧ソ連でメタノールによる失明・死亡事件があるようです。
 他にもこのタイプでは重金属の混入や、農薬、更に(添加物などで)禁止物質の混入による食中毒などもありますが、事例はそう多くないようです。 尚、一時期ワインに入っていたエチレングリコール混入(甘味が出るが禁止物質)による事件もこれに該当します。

 こういった食中毒に対しては、「同じ対処で全部OK」という訳ではなく、原因となる物によって適宜対処を取らねばなりませんので、医療関係者の高度な専門知識が要求されます。例えば、テトロドトキシンは前回触れた軸索の伝導を阻害する働きがあるとされているため、これに拮抗する作用を持つ薬品(この場合は硝酸ストリキニーネとアドレナリン)の投与で多少の改善が可能、となっています(余り有効ではないそうですが)。神経伝達を阻害するタイプの、例えばサリンのようなタイプの農薬ならばPAMと呼ばれるような薬品の投与で回復を図る事が可能です(絶対ではないですが)。また、細菌性の感染型のものならば抗生物質の投与などで改善出来たりします......が、毒素型では意味がないです。
#また、変に抗生物質使うと腸内細菌のバランスが崩れてまた大変なことにもなる。
 まぁ、民間療法などもあるようですが根拠の無いものも多いことが知られており、結局はタイプ別による対処を要求されるので非常に難しいです。
 最終的には、大半の食中毒は「体力勝負」である部分は否定できず、抵抗力の無い子供や老人、病人の場合では食中毒による死亡事件が起こりやすい(老人ホームで起きるO157による死亡事故などが代表)のでこういった人達のいる施設では「食中毒を起こさない」為の衛生管理がかなり重要な要因となっていたりします。


 と、原因物質がやはりメインになりますが.........最後に原因食品と原因施設について触れて今回は締めましょう。
 原因食品ですが、報告からするとその6割は実は「不明」というデータがあります。原因が判明している物を見ていると、魚介類が原因となるものが多く、次に菓子類が多い、というデータが出ています。魚介類は「痛むのが早い(=微生物の繁殖が多い=細菌性の食中毒が起きやすい)」という事を考えればある種当然なのかも知れませんが。
 原因施設は判明している中で圧倒的に多いのは飲食店。次に仕出し所、旅館となっています。ただし、死者が出るのは老人ホームの給食施設と家庭となっており、こういった所での衛生保持が重要である事を示しています。


 ハイ、長くなりました。
 今回は以上、という事で。
 別の機会にそれぞれ細かい部分をやっていきたいと思っています。




 ふぅ.........微熱気味だったんですが大丈夫かな?
#結構ふらふらだったり(爆)

 さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか?
 今回は最近シーズン柄増えている食中毒の概要について触れてみました。ま、結構詳しく分類、という事になるとやはりピンと来ないケースが多いと思いましたので........結構参考になった、となると嬉しいのですが。
 とにかくも、その種類の多さと、原因に大して対処法が違う、という様な部分を理解していただければ嬉しいです。
 ま、何であれこれからのシーズン。本当に食中毒が多いのでお気を付けを..........m(_ _)m

 さて、今回は以上です。
 御感想、お待ちしていますm(__)m
 次回は........決めていません(^^;; ま、O157にちなんで病原性大腸菌とか触れても良いのですが...........ま、適当に考えます(^^;

 それでは、次回をお楽しみに.............

(2000/06/27記述)


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