からむこらむ
〜その52:被曝というものの認識(6)〜
まず最初に......
こんにちは。やっとこさ1月も10日が終わりました...........長いですねぇ..........1月だけは(^^;; 皆様いかがお過ごしでしょうか?
さて、今回は49回からの続き.......つまり、「被曝」関係についての締めを行いたいと思います。 まぁ、書き足りない所が非常に多いのですが、非常に高度な専門知識が関与する部分でもありまして...........まぁ、長くもなりましたし今回で「被曝」に関しては締めたいかと思います。
で、今回の締めは何をするかと言いますと..........放射線関連施設の事故で「最大の被害」という物について触れておきたいと思います。 それは何か........?
それでは「被曝というものの認識(6)」の始まり始まり...........
放射線については「被害」、という部分をよく強調されるのを聞かれるかと思います。
さて、では予告通り「最大の被害」という物について今回は触れてみましょうか...............
さて........ここをごらんの皆様はチェルノブイリを覚えていらっしゃるでしょうか? まぁ、大半の方は覚えていらっしゃるかと思いますけど..........
さて、この事故では御存じの通り、世界で始めてメルトダウンを引き起こし、そして初めて外部に大量の原子炉内で出来た、放射性物質.......一般的には「死の灰」をまき散らした事故でした。 周辺の住民は強制疎開をさせられ、成人男性は原子炉内へ防護服無しで消火活動をさせられ............
ま、ここら辺は良く聞くので省略しましょうか。
#まぁ、この事故の影響で余り聞かない部分を言うならば、チェルノブイリ周辺は非常に良質の土壌の為、大穀倉地帯でしたが..........という部分もありますね。
さて、このときの報道を覚えてれば..........この日からしばらくはニュースはこの事故について大幅な時間を割いていたかと思われます。 そして、世界中に放射性物質が云々.......といっていたのを覚えているでしょうか? そう、風に乗って数千キロ離れた各国へ放射性物質が.......としきりに報道していたかと思います。 また、同時に影響について大きく叫ばれていましたが............ そう、例えば? ヨーロッパ各国の作物が汚染されて食べられない、とか? チェルノブイリで被曝した人達の子孫はずっと障害を持つ、とか? 偏西風に乗って日本に放射性物質が降りてきて色々な被害が、とか............
あれから十数年経ちました。
では、聞きましょう。
「結局あれらの報道はどうだったのでしょうか?」
あの事故以降、さまざまな評価をしている人達はいます。しかし、専門家達ですので少数の人達、と言えます。学会などでもその追跡調査の結果が発表されていたりしています。 が、普通の人達は............? そりゃ、たまにはニュース関係が触れることもあります。チェルノブイリに住んでいた人達は今何をしているか、とか。 でも、やはりドキュメンタリーであって、科学的なものであるとは残念ながら思えません。
では、結局あの憶測で占められていた報道は正しかったのでしょうか?
ちょっとここに触れてみましょう。
手元の資料によりますと.........チェルノブイリ以降、ヨーロッパでは推定十万人以上にも及ぶ胎児が中絶により死亡した、と言われているそうです。 何故か? そう、チェルノブイリの事故はヨーロッパに近い地域で起きた事故です。当然ながら放射性物質の降下が考えられます。報道では深刻な事故と言われている......... そういうことで............「この子供はもう駄目だ」と悲観した親達が中絶措置(ガチガチのカトリック圏内だと大変そうですが)を取った、と言われています。 また、早産や新生児の体重が有意に軽くなった、という統計データがあるそうです。
さて、資料によれば、ヨーロッパ東域の、チェルノブイリの事故による放射性物質の降下による初年度被曝量は、チェルノブイリのあった白ロシア(現在のベラルーシ)で0.2ラド.......換算すれば(1rad=0.01Gyより)0.002Gy=2mGyだったそうです(もちろん、原発近辺はのぞく)。 その他周辺地域では概ね1mGy以下で距離が遠くなる毎に減っていきます。 ちなみに、日本では0.0006ラドだそうで、換算すると0.000006Gy=6μGyとなりますか...........
さて、この量を考えてみましょう。 人への害を及ぼす放射線量は、過去にやった事を考えれば1Gy以上は大抵必要だったはずです。その49では、マウスの胎児に0.2Gyの被曝では影響がほとんどない、と書きました。 この事故でまき散らされた放射線の影響は、ヨーロッパではその1Gyの1000分の1の量程度の被曝量でした。 さて、この程度で影響を出したか、と言うと.........まず、「無い」と言えます。 以上の事から、この堕胎の措置は...........?
では、体重の低下は何が原因か、と言いますと.........これは、母体の心理的影響、と言われています。
現在は? 気にする人はまずいませんね............
チェルノブイリの後、ソ連軍から数十万人が放射性物質の除去の為に、0.25Gyを限度に動員されたのですが、動員解除後に病気になり、被曝のために不治の病になったと思い込んで自殺した人達が結構いた、と言われています。 0.25Gy.......胎児の様に活発に細胞分裂している生体でも0.2Gyで影響がほとんど無いと言われています。ましてや成人ですが.................
チェルノブイリ周辺地域では当然さまざまな作業に駆りだされて急性障害などで死んだ人達がいるのは御存じの通りです。 緊急隊員として駆りだされた人達の内、134名が急性障害に見舞われました。が、0.21Gy以下の死者は0(/発症人数41)。0.22〜0.41Gyで1(/50)。0.42〜0.64Gyで(/22)、0.65〜1.6Gyで20(/21)の計28人が死亡したそうです。が、これ以降、生き延びた人達はどうなったのでしょう? と言われると、調査の結果放射線による健康影響は出ていない、と言われています。
チェルノブイリ周辺の子供たちに、小児白血病が有意に増加したのは御存じの通りです。これは、原子炉内で多量に作られるセシウム137が一般に主原因(白血病のみならず、土壌汚染でもこれが深く関与します)と言われています。さて、これが報道されて「今後も増加するのではないか」と言われていた事もありましたが、実際にはどうなったかというと...............事故後、八年間の調査で結局小児白血病が増えることが無かった、と言われています。
ま、まだありますけど、取りあえず以上で良いでしょう。
結局、「報道」ってヤツは何をしてくれたのでしょうか? この構図、基本的にはその7で触れた、ダイオキシン報道に対するものと基本的にはなんら変わらない物です。 確かに、色々と被曝した人達の悲劇等を描いてきたりはしてきました。それは確かに事実ではあります。目を背けたくなるような映像もたくさんありましたし、また非常に苦痛な内容を映像化して伝えたりと、色々と報道されてはいました。 しかし時として、その内容が「ドキュメンタリーとして一流でも、科学的には論外」という部分が多くあり、その弊害が出ているのも事実です。
「弊害」? ピンと来ない方、いらっしゃるかもしれませんが、事実のわい曲・誇張や、知識の無い人達による勝手な憶測やデマ。そしてそこから生み出される風評被害が、時としておそろしいまでの被害を引き起こします.........それが上記の例であり、そして最近の東海村の例にもなります。
東海村の例を挙げてみましょうか? 放射線漏れを起こした施設からかなり遠くでも「被曝するから」、といって宿泊キャンセル。 別のところでとれた魚を東海村で売ったら「被曝しているだろう」という事で買わない。 村を電車で通るのも「危険だから」でやめる。 揚げ句の果てに、北海道でマラソンなのに、招待選手が「東海村で事故があったから」キャンセル.............
類似を挙げたらキリがないですね。
事実のわい曲やデマに至ってはもうキリがないぐらいあります。
少量でも死ぬ? わずかな被曝でもう駄目? この手のわい曲で有名なのは「放射線はどんなに微量でも毒である」という考えについてでしょうか。どうもこれは広く喧伝されていて、真実と思われているようですが...........実は、確かに研究者達の間でこの言葉はありますが、実際には、放射線を取り扱う人間の「信念」としての合言葉です。 それを勝手に「もう、本当に微量の放射線でも駄目だ!」と勝手にわい曲されているのが現状です。実際には、最初のほうで触れたように、体内には放射性物質を含んでいます。また、微量の放射線で健康増進の例がありますよね? 温泉とか..........(この効果を「放射線ホルミシス」、または「放射線ホーミシス」と呼んでいます)。
#大体、微量で毒だ言っておきながら、ラドン温泉は良い、って積極的に案内しているのは寒すぎると思わないのでしょうかね?
原爆関連でも、当然放射線障害も大きく取り扱うテーマなのですが、実際にその死者は熱線と爆風に因るものが7割以上(実際には戦術的な使用法でこれは上下しますけど)であるのに、どうも放射線や被曝が全て、または最重要、という傾向がありますし..........
#核兵器を使っちゃいけないのは、放射線障害が怖いから、じゃないでしょう? 戦争の愚を繰り返してはいけないから、でしょうに...........
ま、ともかくきりが無いのですが、実際に焦点を当てるべき所に当てず、しかも誤った知識が多くないか、と思える部分があります。
#事故と言ったって、例えば閉鎖した施設での事故と外壁を吹き飛ばした事故でその評価は大きく変わりますし、半減期や飛び散る物質だってまた違います。 原子炉事故だって、生じる物質がどんなタイプの炉かで生じる物質に差があるのですが............こう言った評価は絶対にしませんしね。
管理人は別に核関連施設の事故は安全である、と言っているわけではありません。 また、放射線は全く問題ないものだ、と言っているわけではありません(それは今まで主張している通りです)。 厳重に扱う必要のある物質ですし、その事故は絶対に起こしてはならないのは当然ですから。 ただ、余りにも知識が無さ過ぎる人間が報道を行い、そしてある種の「憎悪」をあおっているように思えます。 実際には、さまざまな局面で放射性物質を使っていて(別の機会にこれはやりましょう)、それを有効に利用しているのにもかかわらず、そして、生物が多少の被曝には耐性がある、というのにです。
皆さんも色々と、意見はあるでしょう。核開発の是非諸々も含めて、非常にわかれる所だとは思います。
しかし、是だろうが非だろうが、放射線について語るならば、ちゃんとした知識をベースとして議論をして欲しいのです。 少なくとも、生物は多少の被曝ではどうって事はありませんし、常に環境中には放射性物質がありますし.......比較的身近にある、という事を知って欲しいのです。
そうすれば.........より正しい方向で、こう言った問題を見られる、と思いますから。
さて、長らく続いた「被曝」に関するこのシリーズも今回が最後です。
書き足りない所はたくさんありますが、取りあえず今シリーズは以上で終了したいと思います。
次に放射性物質関連をやるとしたら.........その利用法、という事にしましょう。
さて......どうにか無事に締めた、のだろうか..........(^^;;
#文章も不安ですし.........
さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか?
今回は、取りあえず放射線関係の、「被曝」に関するシリーズの締めを行いましたが.........まぁ、重いものになってしまったような気が.......(^^;; でも、真剣ですし、重要な事項だと思います。 特に関心があるのならば尚更.............
まぁ、本当は書き足りない所がかなりありますが、取りあえず長くなるのもナンですし、己の器量不足もありますし............ えぇ、まぁ切りが無い部分ではあります。
でも、取りあえず言いたいことがわかっていただければ幸いですm(__)m
#ちなみに、2週間気楽ネタだったので、どこまで書いていたのか忘れていたのは極秘です(爆)
ま、取りあえず被曝関連は今回で終了ですが、核関連ではまだやっていない部分があります。その内、今度はRIの利用法についてやりたいとは思っています。 これはこれで結構面白い、というか意外なところに意外なものが、という部分がありますので.........(^^;;
さて、今回の「からむこらむ」は以上です。
次回は........未定です(^^;; しばらくは核関連ネタはやる気が起きません(当然か(^^;;)。 何か考えますね(^^;;
御感想、お待ちしていますm(__)m
来週をお楽しみに..........
(2000/01/11記述)
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