からむこらむ
〜その54:GHGs〜
まず最初に......
こんにちは。最近寒暖の差にやられている真っ最中の管理人です。 皆様いかがお過ごしでしょうか?
最近は色々と修羅場の季節ですが............皆様、気を付けてお過ごしをm(__)m
さて、今回は前回に引き続いて環境科学の、特に前回のラストに触れた「GHGs」、つまり温室効果ガスについてのお話をしようかと思っています。 一般に言われて久しくなりましたが............実際にどれほどの認知があるのかちょっと微妙な気もしないわけでも無いんでよね(^^;
それでは「GHGs」の始まり始まり...........
さて、今回は...........前回のラストで話した「GHGs」、つまり「温室効果ガス」と、今現在問題になっている「温暖化」の絡みについてやりましょうか。
では、いきなり質問。
温室効果ガスを知るかぎり挙げてみて下さい
最近また、色々な方面で平均気温の上昇が叫ばれ、そして色々とこの「温暖化」の原因となる「温室効果ガス」についての抑制が叫ばれていますけど........... ハイ、その正体をどれほど御存じでしょうか?
さて、「温室効果」のシステムは前回話した通り、簡単に言えば「太陽から来るエネルギーを地球が吸収した後、放出するが、その一部がまた地球に戻ってくる」というシステムです。で、この「一部の戻ってくるエネルギー」の要因は大気中にある物質、つまり「温室効果ガス」による、というのは前回話した通りです。 もし、この温室効果ガスが無ければ、ひいては温室効果が無ければ、理論上地球の温度は-18度になります。
ま、これは前回の復習ですが............
あ、ちなみに前回やりませんでしたが、補足として一つ。 この温室効果の為の「再放射」が気候に重要である、と提唱したのは19世紀半ば、イギリスのチンダル(化学をやっていれば聞いたことのあると思われる「チンダル現象」で有名な人です)によるものです。
で、今まで以上の温室効果ガスの存在による「更なる温室効果」と言うものが、昨今の「温暖化」という言葉に集約される地球環境問題になっています。 まぁ、この点については問題ないかと思いますが...........(^^;;
さて、最初の問い。考えていただけたでしょうか?
一般に上がるのは大抵はCO2、つまり「二酸化炭素」を挙げられる方は多いかと思われます。 まぁ、これは非常に良く叫ばれているものですし、ニュースでも「温暖化」の原因としてこれが代表格として挙げられています。 大体これが挙げられれば問題はないです。
では、他には何があるでしょうか? 実は色々とあるんですけど.........まぁ、後はいくつか挙げてみればCH4、つまり「メタン」(一般には「メタンガス」でしょうか?)、N2O(「笑気ガス」として有名)、フロン11、フロン12といったものがあります。 他にもまぁ、水蒸気とか、オゾンとか農薬として使われていた臭化カリウムとか、色々とあるのですが.......... まぁ、「疑わしい」ってのも結構あるので.........(^^; 取りあえず以上のようなものが温室効果ガスの代表選手と思って下さい。
さて、以上に挙げた温室効果ガスですが、実際にはそれぞれには「性質」があります。例えば、それぞれの大気中での寿命と言うものもありますし、将来への影響という部分を考えてみた場合にはその増加率等も問題にされます。 まぁ、「からこら」で所どころ触れられている毒の「性質と量の関係」の様な問題がこれにも適用されるような物でしょうか?
このような「性質」などから温室効果ガスが温暖化へ与える影響........つまり「寄与率」というものがあります。 ちょっと古いデータなのですが、それをこちらに表記してみたいと思います(ちょっと古いデータで恐縮ですが)。
GHGsの温暖化への寄与率(IPPC 1990)
| 大気中濃度 | 年増加率 | 年吸収効率 | 温暖化寄与率 | 大気中の寿命 |
CO2 (二酸化炭素) | 353ppmv | 0.5% | CO2=1 | 68/100 | 50〜200年 |
CH4 (メタンガス) | 1.72ppmv | 0.9% | 21 | 19/100 | 10年 |
N2O (笑気ガス) | 0.31ppmv | 0.25% | 206 | 5/100 | 150年 |
CCl3F (フロン11) | 280pptv | 4% | 12,400 | 3/100 | 65年 |
CCl2F2 (フロン12) | 484pptv | 4% | 5,800 | 6/100 | 130年 |
※:温暖化寄与率は、四捨五入の関係から100とはならない。
※:IPCCは「気候変動に関する政府間パネル」の事。1988年11月にUNEPとWMOの共催により、地球温暖化に関する科学的側面をテーマとした初めての公式の政府間の検討の場として設置された。
さて、ちょっとデータへの解説が必要ですね。
大気中濃度ですが、ppmv、pptvなんて単位が使われていますが、単にその42でやった、ppmとpptに「Volume」(=容積)を表す「v」をくっつけた物です。「100ppmvのガス」と表記されていれば、1m3あたり100ppm、つまり1m3あたり100mlのガスがある、ということになります。 具体的な量は、後は化学で散々やった、1molあたり22.4lの大気、ということを考えを利用すれば具体的な量は出てきます(面倒なのでやりませんが(^^;; 受験生には良いかもしれません(^^;;)。 「年増加率」はそのままですか(ちょっと古いデータですので、今は多少違うでしょうけど)。 「年吸収効率」は前回書いた、地球から反射してくるエネルギーを温室効果ガスが吸収して再度地球に放射するわけですが(厳密には地球に向けて、のみではなく、360度に向けて放射するのですが)、そのエネルギーを吸収する割合を、二酸化炭素を1とした相対的な数で表しています。 「温暖化寄与率」はそのままですね。 「大気中の寿命」もそのままですか。
尚、上記三つ(フロン以外)は全て自然に存在する、ということを覚えておくと面白いかもしれません。
さて、これを見ていただければわかる通り、昨今の温暖化の寄与には(テレビなどで言われている通り)二酸化炭素が大きく関与していることが理解できるかと思います。 注目すべき点として、年吸収効率が表中を見ればわかる通り、他よりも低いのにもかかわらず温暖化寄与率が高いのは一つにその量が大きいと言えます。
しかし、他にもメタンのように量的には二酸化炭素の量よりも200分の1しか無いのにもかかわらず寄与率が19もある、という物もありますので、こう言った、比較的量が少ないにもかかわらず吸収効率が高いものもバカにできない、ということが言えるかと思います。
取りあえずデータが出たところで、二酸化炭素に注目してみましょう。
二酸化炭素の濃度が近代になって劇的に増加していることは御存じの通りかと思われます。 きっかけは何か、というと........歴史的に見れば産業革命をきっかけに大きく変わっていることが知られています。 産業革命前の二酸化炭素の大気中の濃度は280ppmvであったとされているのですが、産業革命をきっかけに化石燃料(石炭、石油)の使用による急激な二酸化炭素濃度の上昇があり、現在に至っています。 一応、上記データでは353ppmvとなっていますが、10年経った現在では更に高いです。
#すみません、データ持ってくるの忘れたんです((((((- -;;
現在の予想ですが、もし、このままの割合で増加が続いた場合、2030年には600ppmvになる、と予想されています。 さらに、もし、現在の二酸化炭素濃度が2倍になった場合の予想、という物も出されており、この場合の影響は
- 平均気温 1.5〜3.5度上昇
- 海面上昇 2〜3m(異論多い)→モルディブ、バングラディッシュ、ナイル河口で損害の発生
などが特に言われています。 更に、気温上昇などの影響から大気中の水蒸気の増加(気温が高くなる→蒸発する水の量増加)により温室効果が更に強まり、雨・雪の増加の影響も言われています。 また、雪氷の増加からアルベドの増加(白なので反射率が高くなる)も起こりうるのではないか、とも言われています。
ちなみに二酸化炭素量が2倍になった際の日本での影響ですが、耕作には当然影響が出ます。 気温は七月・八月の平均気温が日本各地で、北海道の先端でも20度以上となり(現在、理科年表によれば北海道は七月の平均気温は概ね20度以下(高いところもある))、また対流性降雨(つまり、前線によらない降雨)が増加、これによる集中豪雨化と土壌浸食への影響といったことが心配されています。
抑制は......もう、単純に二酸化炭素排出量を減らす、と言うことと、後は二酸化炭素を吸収する(つまり、植物などの増産)につきますね...........技術、といった部分のほかにもまた、色々と関与するものがあるのが難しいですが...........
あ、ここで思い出したので大気絡みでの余談ですが..........
酸素の最大の供給源を森林と思われているようですが、最大の供給源は「海」です!!(^^;; だからといって森林をないがしろにしてよいわけではなく、酸素供給量は当然多いですし、また自然の生態系などの問題から当然森林の増加というのは非常に重要な課題になります(森林が他の動植物に与える影響を考えれば、ないがしろにしてよいものでは無いのは自然とわかるはずです)。
もっとも、最近は海洋汚染も馬鹿にならないんですよね..............
さて、結構書きましたが...........後はメタンの方にも少し触れておきましょうか。
メタンガスの発生源について少し書きましょう。 世界での発生量は1992年で509Tg(テラグラム)、つまり509Mt(メガトン)となっています。 その内訳は以下の通りです。
- 自然湿地 23%
- 化石燃料 18%
- 反すう動物 16%
- 水田 12%
- 埋め立て地 8%
- バイオマス燃焼(焼き畑等) 6%
- 産業廃棄物 5%
となっています。
基本的にメタンガスは最も構造の単純なアルカン(その18参照)で、微生物などによって自然発生し、結構色々な場所で存在しています。 特に、最初は沼地で発生したのを良く知られたので「沼気(しょうき)」とも呼ばれています。 余談ですが、自然発火などが起きる際の原因物質の一つですので(燃えやすい)、「人魂」の原因の一つ、とも言われていますが(^^;;
ま、ともかく「沼気」と言われるだけあって、自然湿地におけるメタンガスの発生が割合としては最大と言われています。また、微生物関係で産廃や埋め立て地などからも発生があり、また燃焼による発生も多いです。 比較的発生しやすい物、とも言えるでしょうか。
注目すべきは反すう動物と水田。両者とも人間が食糧生産の為に行っている活動から出ている、という点でしょうか。
で、ここでこれに絡む余談ですが.......というか、怒り半分なのですが..........
どことは言いませんが、某国(肉食圏内)の「環境保護団体」と称する団体の主張はキテレツなものがありまして.............. 彼らはこんなことをいってくれます(全て実話です)
「焼き畑は、地球温暖化に寄与するからやめろ!」
「米を作るとメタンガスが発生するから作るな!」
ふざけんな!!!
牛はいいのか?(-_-メ)
いや、環境問題に取り組む、ってのは重要だと思うんですよ。そりゃ当然の事ながら。 その解決と文明という部分である種のあつれきが生じているわけなんで当然のことながら文明の恩恵を受けている人間としては難しい問題なわけですよ。 それについて色々と意見が出るのは良いんですけど...............
まぁ、そうそういるとは思いませんが、お願いですからこういう馬鹿な発言はしないで下さいね。 いや、本当に。
単なるエゴと偽善の押し付けですから。
#似たようなケースは一杯..............
え〜.......取りあえず怒り、もとい余談は以上です。
はい、取りあえず元に戻しましょう(^^;;
...............あ、長くなっていますね。取りあえず締めくくりに入りましょうか。
ともかく、このように将来への温室効果ガスの影響、と言うものはかなり深刻に、笑えない事態として人類に突きつけられています。 現状では色々と、工夫と努力により、さまざまなアイデアが出てきていますけど.......... ただ、まだ問題が多かったり(原発なんてのはその代表みたいなもので)、また将来人口が増えることは明らかですし(次は、アフリカとインド、中国(ここは微妙な部分がある気もしますが)で人口爆発の予想が出ています)、それにともない当然工業生産が向上する訳でして..........(更に、発展途上国だと当然の事ながら「効率優先」でまた公害なんてのも出ますし..............)
極めて難しい、構造的にも困難な部分がすでに予想されています。
これをどこまで解決できるのかは(人口抑制とか)極めて重要な問題になりますが.............
#「英知」ってのを信用したいんですけどねぇ.........
ただ、温室効果ガスには興味深い話もありまして...........
昨今の二酸化炭素濃度の急増による気温上昇が言われていますが、この数値、実は二酸化炭素濃度にある程度は連動してはいるものの、計算・予想値よりも高かったりと、どうやっても説明がつかず色々と謎が多い部分があるようです。 もちろん(特に環境団体が言いたがるでしょうが)他の物質や人間などの活動もあるでしょうけど............. この一因、前回やった様な地球規模での活動(そして、宇宙からの影響)が大きな影響を出しているのではないか............
管理人は、そういう気がします。
#何でもかんでも人間のせい、工業のせいにするだけでなく、地球・宇宙の活動による影響は極めて大きいことは理解して欲しいんですけどね.............
#↑時々、目茶苦茶な極論を聞くもので。一応。
ま、これをきっかけに、もう少し踏み込んだ環境問題に興味を持ってくれれば嬉しいです。
今回は取りあえず以上にしましょう...........
・補足
『平成11年版環境白書総説』に比較的新しいデータが掲載されていましたので、そちらのデータを掲載します。
- 温室効果ガスの濃度上昇(1994年時点)
- 二酸化炭素:358ppmv
- メタン:1720ppbv(1.72ppmvと同じ)
- 笑気ガス:312ppbv(0.312ppmv)
- 産業革命以降人為的に排出された温室効果ガスによる地球温暖化への直接的寄与度(1992年時点 IPCC(1995)による)
- 二酸化炭素:63.7%
- メタン:19.2%
- 笑気ガス:5.7%
- CFCおよびHCFC(フロン):10.2%
- その他:1.2%
以上となっていました。やはり若干違いますね.......本質的にはさほど変わっていませんが。 推移に関しては、二酸化炭素、メタンは現在においても顕著な増加傾向があります。
また、世界の平年気温の推移を見てみると、1955年頃を基準に1880年では約-0.5度、現在では約+0.3度となっています。 つまり、約100年で0.8度の温度上昇があった、という事が言えます。
もちろん、人間の活動が主力ですが、自然の変動(前回やった様なもの)も大きな影響を与えていますので、そう言った要因も考慮してデータを見なければなりません。
ふぅ........へぇ..........
#体調不良
さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか?
今回は、温室効果ガス、特に二酸化炭素とメタンについてと温暖化について少し触れてみましたが.........如何だったでしょうか?
まぁ.........大きな問題の「一角」ですので何とも難しいですけどね............ まぁ、取りあえず、温暖化は二酸化炭素の抑制にかかる、という部分を頭に置いて頂ければ、そして社会的なシステムなども絡むと言うことを認識して下されば嬉しいです。
#後、ろくでもねー団体もいることも。
ここら辺、エネルギー問題、というか、現在の文明全体との絡みで極めて難しかったりします............. 是非、頭の隅に残しておいて下さいね。 将来、必ず遭遇するわけですから。
#おそらく、10代後半から50代ぐらいまでの方が多いと思いますので...........
ま、取りあえず以上です。
御感想、お待ちしていますm(__)m
さて。来週は今回収まらなかったオゾン層破壊について触れておきましょう。 こちらも気圏の話ですので、十分つながりがあるのですが..........
来週をお楽しみに..........
(2000/01/25記述 同01/28補足)
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