からむこらむ
〜その55:オゾン層〜


まず最初に......

 こんにちは。まだまだ寒暖の差にやられている管理人です。っつぅか、悪化気味です。 皆様いかがお過ごしでしょうか?
 今日から2月ですが........... 気温変動激しいんですよねぇ...........(~_~;;

 さて、今回も環境科学ネタ。前回と同じ気圏についてのお話ですが............最近は一般的になってしまったせいか、あまりうるさく聞くことがなくなったオゾン層破壊についてのお話。 まぁ、良く聞きはしますけど、科学的には意外と知っているようで知らないネタではあると思います。
 それでは「オゾン層」の始まり始まり...........



 昨今の地球環境問題の気圏についてを取り扱った物の代表として、地球温暖化といった物を前回行いました。 今回は温暖化についてと同じくらい有名な問題であるオゾン層破壊、という物に触れてみましょう。

 さて、本題...........の前に冒頭から質問。

オゾン層ってなんでしょうか?


 冒頭でも述べたように、地球環境問題が叫ばれる中の一つにこの「オゾン層破壊問題」というものがあるのは皆さん御存じかと思われます。 でも、いくら「オゾン層が破壊されるから、原因物質はいけない」とは言っても「オゾン層」という物について知らなければ「全く」意味がありません。
 さて、そういうわけで上記の質問には考えていただきたいのですが..............
 まぁ、もちろんそういう物に興味・関心があって調べて知っている方もいらっしゃるでしょう。が、普通はそれほど詳しい事を御存じの方はそう多くないでしょう。 大抵は「有害な紫外線から身を守る為に必要なもの」というようなイメージかと思われます。確かにそれは正解なのですが..........実態についてはどうでしょうか?
 では、話を進めましょうか................


 「オゾン層」と言うものは、その名の通り「オゾン」からなるものです。 昔から「からむこらむ」を読まれている方で覚えていらっしゃるかも知れませんが、過去に数回出てきています。
 では、「オゾン」とは何かと言いますと...........構成する元素は一つ。酸素だけです。 酸素が二個くっつけば「酸素分子」となりますが、この酸素が三個くっつけばこれは「オゾン」と言われる物質になります。 そう、過去にその8で触れた「同素体」の一種となります。 尚、酸素四個で「カルテット」というのもあるそうですが、極めて不安定ですのでまず存在しません(^^;;
 ちなみに、「オゾン」の性質ですが..........非常に反応性が高いために極めて凶悪な物質です。 例えば、大学クラスの有機化学の教科書や実験書をひも解くとさまざまな化学反応...........主に酸化反応に使用されています。が............酸化反応に使用される場合は、「色々な物質で酸化反応を試みたけどなかなか出来ないので、強力に酸化反応を引き起こせるオゾンを使いましょう」って使い方をすることがよくあります。 つまり? 裏を返せばこれは生体に対しても非常に有害な物質となります。
#分かる人向け注:二重結合を含む化合物にオゾンを作用させると「オゾニド」を形成した後、結合の壊裂を起こします。これで生成した物質を分析すれば、構造不明物質の構造解析に役に立つことになります。
 ちなみに、オゾンの化学反応は.........酸素三個が酸素分子(酸素二個)と酸素原子一個に別れます。 この「酸素原子一個」の物質は、いわゆる「フリーラジカル」(その15参照)、いわゆる「活性酸素」となり、これが片っ端から反応を起こすために、生体には有害となります。 ま、これは後で詳述しましょう。

 さて、では生体には有害、と書きましたが...........では、何故地球にはオゾン層があるのでしょうか?
 これはまぁ........ある種進化の過程と生物の長期的な戦略が絡んでいるようでして.............良く言われるし御存じかと思いますが、オゾン層は紫外線を遮り、地球に降り注ぐのを防ぎます。 ではちょっと考えて頂きましょう。大昔、人類がまだ存在せず、海洋にのみ生物がいたころ...........まぁ、全てが推測で成り立ちますが(当然我々が大昔を見ることは、タイムマシンでもないかぎりかないませんので)、陸上はある種の「地獄」だったと思われます。何故か? それは地上には有害な紫外線が絶え間なく降り注いでいたから、と推測されます。つまり、海洋生物が陸上に移動して進化をしていった、という話は聞くと思いますが、その上陸へのさまざまな障害の一つがこの紫外線だった、と考えられています。
 では、どうやって上陸を果たせたか? というと..............この点に関して言えば、この有害な紫外線を遮断すれば良い訳です。と言うわけで自然が生み出したシステムが「オゾン層」という物だったと言うことが出来ます。

 さて、このオゾン層ですがどこに位置するか御存じでしょうか? 意外とこの点は御存じ無い方が多いかと思うのですが...........
 色々と「オゾン層」と言われるので、「厚さ○mで高度○○kmに位置して地球をぐるりと囲んでいる」、って想像をされる方もいらっしゃるのですが、実際には違います。 どういうものかと言いますと...........地球の大気の層で、大体高度10km〜50km以上を通常は「成層圏」と呼んでいます。 この成層圏のある20〜30kmを中心に上下10〜50kmの範囲(季節、時刻で変わります)にオゾン層は広がっています..........って書くと「すげ〜分厚い」と思われるかも知れませんが、実際にはそれほどではありません。 「は?」って思われるかも知れませんが................
 では、このオゾン層。高空では当然気圧が低い(=空気が薄い)ですので尚更ピンと来ないでしょうけど、全てのオゾン層を地上の気圧、つまり1気圧下に持って行った場合その厚さはどれくらいになるかと言いますと.............. 驚くなかれ、ずばり3mmになります。 これに地球上の全陸上生物は有害な紫外線から保護されている、ってことになります。
 しかも.........このオゾン層を作るのに要した時間は膨大なものでして、大体20億年以上をかけて作った、とされています。
#そう考えると、人間の生きている世代なんてのは本当にわずかなものと思い知らされるわけですが............(^^;;
#いわゆる「最初の人類」と言われている「アウストラロピテクス」でさえ400万年前に誕生したわけですから..........


 さて、ではちょっと話を変えまして..........
 オゾン層は言われている通り「有害な紫外線」からの保護、となっています。 では、「有害な紫外線」って何でしょうか?

 ここでちょっと物理学が関与しますが..........まぁ、簡単に言うと「光」というものは「粒子」であり「波」であるわけですが(これがわかるのに19世紀末から20世紀初頭まで大論争が起きたわけですが(^^;;)、この「波」で見た場合、その特徴を示すものに「波長」という物があります。つまり、単純に言えば「光」の長さを示すものです。 まぁ、取りあえず「こんなもんだ」程度で理解してもらえればよいのですが...........
 さて、この波長。太陽から地球に至るものを測定してみると、まず4000〜280nm(ナノメートル)の領域の物が地球に至ります。 では、この領域を見てみますと.........4000〜770nmは一般的にIR、つまり「赤外線」と呼ばれる物です。 で、770〜400nmまでの領域は「可視光線」と言われる領域でして、人間が見て、色を判別が出来る光の領域、となっています(これ以外の波長の光は、人間の目ではそのままでは「見る」ことが出来ません)。
 さて、可視領域よりも短い波長を調べてみますと............400〜100nmまでの領域は一般に紫外線(UV)、と呼ばれています。 まぁ、ついでに触れておきますと、紫外線より短いといわゆる「X線」になり(=γ線にもなる......その17等参照)ます。まぁ、ここまで来ると電離作用があって体に良いものではありませんが............
 ちなみに更に余談ですが、103〜102mの物を「長波」、102mを「中波」(ラジオなど)、10〜1mは「短波」、100mで「VHF」となり、10-1mで「UHF」、10-2mで「SHF」、10-3mで「EHF」となります。 ま、ここら辺は管理人より詳しい方は一杯いらっしゃるでしょうけど(ここら辺は管理人は詳しくありませんので)(^^;;
 尚、波長は短ければ短いほど「光の持つエネルギーは高く」なります。

 え〜若干脱線しました(^^;;
 さて、では紫外線に視点を戻しましょう。
 400〜100nmの領域を紫外線と呼ぶ、と書きましたが、実際には紫外線は更に分類することが出来ます。 どういった物があるかと言いますと、400〜320nmの領域の紫外線は一般に「UV-A」と呼ばれます。 320〜280nmの領域では「UV-B」と呼ばれ、280〜100nmの紫外線は「UV-C」と呼ばれています。 エネルギーは先ほど書いたように波長が短い程高くなるので、C>B>Aの順にエネルギーは高くなります。 また、先ほど書いた様に地球に至るのは280nmまでですので、実際にはUV-Cは地球には至らない、ということになります。
 さて、では「有害な紫外線」とは一体何なのでしょうか? と言いますと........これは「UV-B」のことを指します。つまり、地球に至る光の中で最もエネルギーの高い物です。 これが生体.......まぁ、人間に当たるとどうなるかと言いますと..........これは大量に当たれば「皮膚ガン」の原因となります。
 オゾン層は、この「UV-B」が地上に降り注ぐのを「保護」します。
#まぁ、これを逆手にとれば紫外線は「殺菌」に使えるわけですけどね............


 さて、ではオゾン層で、オゾンと紫外線がどういう反応するか、と言いますと........これは実際に化学反応式の出てくる世界となります。一般的には「Chapman Mechanism」という物が知られているので、以下に簡略にその式を示します。


 え〜.......解説しましょう。
 「O3」はオゾン、「O2」は酸素分子。「O*」で示したものは「酸素原子」(フリーラジカル)となります。 また、式中の「hν」は紫外線を意味します。
#実は、酸素原子に関してはもうちょっと説明があるのですが、難しくなるだけなので省略(^^;;

 さて、四段階の式ですが........
 一段階目は単純に、オゾンが酸素と酸素原子に別れます。 で、二段目は一段階目で生じた酸素原子は別のオゾンと反応し、酸素分子を作り出します。 さて、ここからが肝腎です。 三段階目ですが、二段階目で生じた酸素分子は紫外線とぶつかって反応を起こし、二個の酸素原子を生じます。この反応のために紫外線はエネルギーを失います(=つまり、オゾン層で「止められる」)。 こうして生じた酸素原子は他の酸素分子と反応してオゾンに戻ります(そして、また最初から繰り返す........)。
 以上がオゾン層が紫外線を遮断するメカニズム、となります。
 そういうわけで、もしオゾン層が無かったら.............そう、後は御存じの通り。紫外線を止めるものが無くなりますので、紫外線は地表に降り注ぐ、という事になります。


 さて、長くなりました。
 オゾン層の破壊、という点については次回に触れることにしましょう。




 あぁ、終わった......... こう、体の内部から痛いもんで...........(~_~;;
#今週も体調不良

 さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか?
 今回は、オゾン層について、その特徴についてやってみました。まぁ、確かに良く聞く事があるとは思うんですけど、意外と化学反応とか、波長に関してとかは知らない方もいらっしゃると思われますので...........(^^;;
 まぁ、再認識というか、興味を持ってくれれば嬉しいです。

 さて、今回は以上です。
 御感想、お待ちしていますm(__)m

 来週は今回を元としましてオゾン層破壊について触れておきましょう。さて、オゾン層破壊物質はどうやってオゾンを「破壊」するのでしょうか?
 来週をお楽しみに..........

(2000/02/01記述)


前回分      次回分

からむこらむトップへ