からむこらむ
〜その57:結晶〜


まず最初に......

 こんにちは。やはり2月は妙な天気が多いですね(^^;; 相も変わらずやられ気味の管理人です。 皆様、いかがお過ごしでしょうか?
 そう言えば、学生はそろそろ暇になるんですね...........(一部除く(^^;;)

 さて、今回はなかなか決まらず悩んだのですが、取りあえず「結晶」について触れてみたいと思います。 ま、結晶って言っても色々とありますから。今回は概念というか。ま、与太的にやろうと思います。
 ま、ここら辺触れておくと色々と、宝石とかそういうほうにも持っていけますので...........(^^;;
 それでは「結晶」の始まり始まり...........



 さて、結晶のお話ですが.........
 まず、最初にお聞きしましょう。

「結晶」って何ですか?


 ..........結構本質的な質問かと思いますが..........(^^;;
 具体的に、出来たら科学的に説明できるでしょうか? もし無理なら..........ま、そうですね。身近なところでどういった物が、「結晶」であるか、答えられるでしょうか?

 まぁ、何となく分かるような気はされるかと思います。
 そうですね、身近な結晶を挙げてみますと........そうですね。台所の辺りにありそうなものをやってみましょうか?
 まず...........「食塩」、これは結晶ですね。で、「砂糖」。コイツも結晶になります(「氷砂糖」なんてのは最たるものです)。 まぁ、ここら辺は簡単ですが......... 身近なものだと更にありますね。まぁ、なじみの物をもう一個挙げておきますと、「水」の結晶...........そう、「氷」ってのもありますね(ついでに言うなれば、「雪」も結晶ですね)。 では、「コショウ」ってのは結晶でしょうか? 固形コンソメってのは? 「カレー粉」や(折角ですので昨日大量に売れた)「チョコレート」なんてのもありますが............ これらは結晶でしょうか? 答えは「違います」。結晶ではありません。
 では、何が「結晶」と言われるのでしょうか?

 「結晶」という物を科学的に、しかも簡単に説明してみますと、実は非常に簡単に言うことができます。
 上記に挙げたもので注目してみますと...........「食塩」「砂糖」「氷」の三つに共通して、「コショウ」「コンソメ」「カレー粉」「チョコレート」の四つに共通するものを考えてみますと..............何となく分かりますかね?
 前者について考えてみましょう。 「食塩」は基本的には「塩化ナトリウム」、つまり「NaCl」で表記されます。「砂糖」は基本的には「ショ糖」と呼ばれる二種類の糖が結合したものでして、その化学式は「C12H22O11」と表記することが出来ます。 「氷」は水から成っていますので、御存じ「H2O」で表記することが出来ます。  後者について考えてみましょう。 「コンソメ」ってのはちょっと台所から持ってきまして、その裏を見ると........「原材料名:食塩、乳糖、砂糖、調味料(アミノ酸等)、食用植物油脂、香辛料、酵母エキス...........」と、まぁ.........まだずらずらと並んでいます(結構入っていますね(^^;)。 「カレー粉」や「チョコレート」「コショウ」なんてのも似たような感じになるでしょう。
 何となく分かりましたか?
 前者は(多少の不純物はあるでしょうが)基本的には化学式で表すことが可能です。 しかし、後者は? 後者の場合は「それだけでは」化学式で表すことが不可能です。いわゆる「混ざり物」.......「混合物」という事になります。

 つまり、単純に言ってみた場合、前者の様に化学式で表すことが出来る固体を「結晶」と呼んでいます。


 では「結晶」と言うものは、深く見てみた場合どういう具合になっているでしょうか?
 結晶というのは、特殊な機械.........例えばX線での解析機を使用してみた場合、「規則正しく」並んでいる事が知られています。 例えば.......そうですね。単純、かつポピュラーな食塩を例にとってみましょうか?

 食塩.......つまり塩化ナトリウムは非常に単純な物質でして、塩素とナトリウムのイオンから成立しています。
 食塩の場合、ナトリウムイオンは陽イオンでして、「+」の電荷を持っており、塩素イオンは陰イオンでして「-」の電荷を持っています。食塩は、この両方のイオンが結合して(イオン同士の結合なので「イオン結合」と呼んでいます)いる物質です。
#注:ナトリウムイオンだからと言って必ず「陽イオン」、塩素イオンだからといって必ずしも「陰イオン」とは限りません。
#↑特に、大学で化学をやる方は注意しましょう(特に塩素イオンは大学の化学で陽イオンだったり陰イオンだったりすることがありますので)。

 さて.......では、X線による解析を行ってみた場合、実際に食塩はどうなっているのかと言いますと..........
 まず、平面的に考えてみましょう。中央にナトリウムイオンがあるとします。では、塩素イオンはどうなるか、と言いますと...........その隣にあります。が、塩素イオンやナトリウムイオンはまだまだたくさんありますのでそれの配置も考えてあげる必要があります。
 中央にナトリウムイオン、右隣に塩素イオンがあった場合...........ナトリウムイオンの上下左は開いています。ここに塩素イオンが配置されます。さて、ナトリウムイオンが取り囲むように塩素イオンが配置されました。では、周辺を囲む塩素イオンの隣はどうなるかと言いますと、今度はここにはナトリウムイオンが配置されます。 そのナトリウムイオンの隣には今度は塩素イオンが配置され、その隣にはナトリウムイオンが.............
 つまり? ナトリウムイオンと塩素イオンが交互交互に配置されています。
 ま、上の過程を図示しますと.........

 と、なります。
#余談ですが、ナトリウムイオン〜塩素イオン〜ナトリウムイオンの距離は摂氏20度で5.628オングストロームであることが知られています(微小すぎて訳分かりませんが)。
 以上は二次元での説明ですが、実際には三次元的な空間ですので.........更に立体的に、上下左右のみならず「奥、手前」にナトリウムイオンと塩素イオンが交互交互に並んでいる状態となります。 また、三次元的な空間で考えてみた場合、いわゆる「格子状」に配置されているのは分かるかと思います。これはこう言った規則正しく配列されている為であり、こう言った構造を「結晶格子」と呼んでいます。
 立体的な部分を図示しますと、以下のようになります(注:都合により、イオン表記が出来ませんでした)。


 これが........つまり以上の様な物が結晶における基本構造、となっています。 実際には色々な種類、パターンがあるのですが、こう言った基本構造を少し発展したものですので、結晶を考えるのには塩化ナトリウムの例は好都合であったりします。

 尚、実際にはイオンのみならず、有機化合物や金属なども結晶になるとこのような、多少の違いはあっても「規則正しい」構造を持っています。
#二酸化炭素の結晶化したドライアイスも然り、氷も然りです。
 そして.......一部の結晶の場合、自然の「いたずら」が待っていることもあります。 それは、過去にその23その24で出てきた、分子の向き、という部分が出てくることがあります。 例えばその23で触れた、パスツールの酒石酸の結晶の例などは最たるものですし、また、一部の方はお好きかもしれない「宝石」の仲間である「水晶」にも向きがあることは有名であったりします。
 余談ですが、水晶には向きがあるのですが、アクアマリンといったような物には左右の向きが存在しません。 意外と鉱物界にはこう言った「左右」の向きを持つものは多くないそうです。 ついでに書いておきますが、向きのある水晶ですが、基本的にはどちらも割合が同数だそうですので、「右向きの水晶を持っているから珍しい」って訳ではないようです(^^;;

 あ、そう言えば、「結晶」も「水晶」もCrystalですねぇ...........(笑)
 ちなみに、鉱物(宝石含む)というのは「結晶」になります。 宝石などに絡む科学というのは、結晶についての科学、とも言えます。
 ま、ここら辺はいずれやりましょう。


 さて、最後に解析機のお話でも。
 結晶の構造解析には良くX線が用いられています。放射線の利用例の一つとなっているのですが..........この機械は極めて重要な役割を果たした例が多くあり、最近では良く、生体の巨大な分子(分子量で数十万にもなるたんぱく質等)の構造解析によく使用されます。 特にこの分野で重要な研究として、DNAの構造解析があり、この構造解析のヒントになったのはX線写真によるもの、とされています。
#DNAの二重らせん構造を見いだしたワトソンとクリックは、DNAのX線写真を見て首をひねって考えていたそうです。
 基本的に強力なX線であればあるほどより高度で複雑な構造の解析が可能です。
 尚、世界でも最大規模の解析能力を誇るX線解析機は日本の、播磨学園都市にあります。山陽本線で兵庫県の一番西側の駅である上郡の近くにある施設でしてSp-ring8(「エスピーリングエイト」。一般的には「スプリングエイト」と言われる)という施設です。非常に大きい施設ですが(^^;; 最近は特に複雑である生体内の分子の解析に役立っているそうです。
 ちなみに、X線照射で出てくる結果はコンピュータが処理するのですが、基本的にはワークステーション以上のクラスが使用されています。数台並べて一日ぐらいで現在は出てくるのですが(もちろん物によりけり)、昔は数日かかって出てきた数値を再度入力して再計算させ.........ってなことをやっていたそうで、極めて大変だったとか(^^;; しかもコンピュータは非常に高価なものでして..............(^^;; 結果が出るまで数ヶ月、なんてのはザラだったそうです。
 ここら辺は、50代、60代の科学者の方から良く聞くことが可能ですね(^^;;
#というか、何回も聞かされました(爆)


 さて、まぁ.......以上が取りあえず「結晶」についてのお話となります。
 難しい所は色々とあるのですが、取りあえず省きまして.............

 以上、ということにさせていただきます。




 まぁ、即興の割には.........できたかな?
#今週も変わらず体調不良

 さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか?
 まぁ........色々と悩んだ揚げ句、結局宝石の話もいつかしたい、と思いまして..........で、取りあえず手を出しておきました。
 何となく分かっていただけたでしょうか? まぁ、化学式で表せる固体で規則正しい、ってのが分かっていただければOKです(^^;;
 ふぅ.......いや、微熱気味ですので.........(~_~;; はぁ..........

 さて、今回は以上です。
 御感想、お待ちしていますm(__)m

 来週はまだ決めていません。一応、旅に出る前になりますので軽いものにでもしようかと思います。
 ま、折角ですので宝石でもやりましょうかね? 調べないといけませんが(^^;;
 来週をお楽しみに..........

(2000/02/15記述)


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