で、見ていた映画が「ファントム・オブ・パラダイス(Phantom of the Paradise)」。
1974年/92分/アメリカ。監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ、製作:エドワード・R・ブレスマン、音楽:ポール・ウィリアムス。スワン役にポール・ウィリアムズ、ウィンスロー・リーチ役にウィリアム・フィンレイ、フェニックス役にジェシカ・ハーバー、ビーフ役にゲリット・グラハム、フィルビン役にジョージ・メモリ。
ストーリー:謎の過去を持ちながら、多くのゴールデン・ディスクを獲得したデスレコード社の社長スワンは、ロックの殿堂「パラダイス」劇場を作るべく多くの才能を探していた。そして気が弱いものの天才的なロック作曲家のウィンスロー・リーチの曲がスワンの目に留まる。喜んだリーチであったが、実際にはスワンはリーチの曲を奪い、そして無実の罪を着せてリーチを刑務所に入れてしまう。リーチは脱獄してデスレコード社まで向かうが、しかしトラブルで顔を潰してしまう。なんとか生き延びたリーチは仮面を被り、スワンに復讐するために「パラダイス」に入り込むが.....
ということで、ネットでの紹介動画を見てなんとなくで買ったやつだったんですが。
じつはあまり期待していなかったんですけれども、まぁ短いからいいか、という感覚で見た作品だったりしたんですが、しかし実際の所「面白い」作品でしたかね、はい。ブライアン・デ・パルマというと個人的には「アンタッチャブル」なんですが、こういう作品も作っていたのかと驚きましたか。
とにかく、短いながらコンパクトに纏まっていまして、それでいてコメディだったりパロディだったり、あるいはちゃんとした復讐物語だったりするよくできた作品でしたか。ただ、作品を楽しむにはタイトルから推測できる通り、「オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)」と、ストーリーで一貫して出てくるゲーテの「ファウスト」は知らないとちと難しいかと思われます......そう、実はちゃんと楽しもうとすると教養が必須という作品となっています。まぁ、知らなくても割と勢いで楽しめるところはあるんですが、でもそうすると評価が数段下がる作品だと思われます。
で、ストーリーについては結構コンパクトなんですが、上述の通り割とガッツリ「オペラ座の怪人」と「ファウスト」が入っています。で、なんとなく笑いが入りつつ、後半にかけてはかなりシリアスになっていくというところがうまくできていまして、結構これがよくできていましたか。
いやぁ、契約のところとか「?」と思ったんですけれどもね......うまいことやったなぁ、と。クライマックスの謎解きとあの活劇が、本家「オペラ座の怪人」とまでは行かないんですが、なかなかにうまいこと魅せてくれたかと思いましたか。
そして演出はかなりうまいというか。70年代ロックを中心とする音楽やらステージというか、コンサートとかの雰囲気を出していまして、実際に「パラダイス」のこけら落としのコンサートの辺りはその時代の雰囲気がかなりよく出つつ、一方で結構良かったかと。更にはところどころなんですが、70年代のTVショーで見られるような、どこか安っぽい感じのセットにまたうまく雰囲気もマッチしていましたかね......これにメイクも結構よく、カメラワークの良さも相まって惹きつけるものが多い作品となっていますか。
で、役者陣がまた良いというか。
主役が二人でして、スワン役のポール・ウィリアムズは実際に音楽の大御所の人ですけれども、まぁ存在感があるというか、うまいというか。終わりの方は怪演の部類だったかと。実際に、まぁあの嫌らしさのあるキャラクターの演じ方がうまいというか、「悪辣プロデューサー」的な感じに(ストーリーも相まって)ふさわしかったですね。そして、もうひとりの主人公であるウィンスロー・リーチ役のウィリアム・フィンレイは「怪人」となる前の、どこか間の抜けた気の弱い男から、「怪人」となったあとの狂気を感じさせる怪演っぷりが本当に印象的でして、すごかったですか。メイクもすごかったですが、実にこれとマッチする恐ろしさがあるという。ヒロインであるフェニックス役のジェシカ・ハーバーも結構しっかりした演技で良かったですねぇ。
ま、予算的にもA級ということはないんですが、「オペラ座の怪人」と「ファウスト」を知っているとこれがまた良くできたパロディであり、そしてうまいアレンジであるという作品であったかと思います。時間的にも、また全体のサイズ的にも「ちょうどよい」という感じがある作品でして、中身も良いという、なかなかの良作というか、秀作であったのではないかと思います。70年代ロックとか好きな人にも良いでしょうか。
個人的には強くおすすめできる作品でしたかね、はい。