からむこらむ
〜その205:生存競争と毒〜


まず最初に......

 こんにちは。やっとこさ梅雨明けしましたね。皆様如何お過ごしでしょうか?
 さて、やっと夏本番ですが.......管理人はギャップに体が追いついていないようです(- -; まぁ、熱中症にはお気をつけを。

 さて、そう言うことで今回の話ですが。
 前回まではペニシリンの発見の話をしました。この物質は同時に抗生物質の発見でもあるわけで........とりあえず、今回は抗生物質というものについての話を中心に、ペニシリンの話をしようと思います。
 ま、定義的な物だけでもよいのですがね。しかし、ペニシリンはその契機ですし。しかしペニシリンの作用や構造だけで延々と、というわけにも行きませんので(^^; 両方まとめて、という事になります。まぁ、色々とあるんですがね。
 それでは「生存競争と毒」の始まり始まり...........



 前回はペニシリンの発見までの話をしましたが。
 さて、よく知られる通りこれはいわゆる「抗生物質」の登場として有名な話でもあります。

 ところで、抗生物質(antibiotics)とは何か?
 普段良く聞く名前だと思いますが、皆さんは「どういうものであるか」と説明ができるでしょうか? おそらく専門的な教養が若干ないとここら辺は難しいのではないかと思いますが。
 抗生物質、というものを説明すると、簡単に言えば「ある微生物が他の微生物の生存を邪魔するために出す物質」であるといえます。どういうことかというと、微生物の世界においては競争というものは激しく、「いかに自分の勢力を大きくするか」というのはきわめて重要な問題になります。
 では、どうやって大きくするか?
 微生物にも「個性」がありまして、繁殖の速さや向く条件などが変わりますが、ある程度の条件があれば成長はできます。しかし相手の成長が自分より早ければ競争に負けてしまう。
 では、どうするか?
 ここら辺は「ルールのない」争いが展開されることとなりまして......結論から言えば「相手が成長できないようにしてやれ」となります。もっと端的言えば「邪魔だから殺せ」ということなんですが。物騒極まりない表現ですけどね。
 では、具体的にはどうやるか?
 もちろん、微生物ですので包丁や拳銃というものはなく、腕で殴るということもできません。ですが生物である特性を活かし、「物質を生産」することでこれをやることとなります。つまり、われわれの世界で言えば「毒を作って身を守る/積極的に妨害する」という手段に出ます。まさに今回のタイトル通りの物となりますが。
 実はこういった物質が「抗生物質」となります。
 「抗生物質(antibiotics)」の命名は1942年(1941という資料もありますが)、後にストレプトマイシンの発見をするワクスマンによりに行われました。つまり新しい言葉であると言えますが、彼による定義は「微生物によって生産され、微生物の発育を阻止する物質」とされました。ペニシリンはまさにそう言った物といえます。
 この名称と定義は広く使われるようになるのですが........ですが、現在では「抗生物質」というとかなり幅広い物でして、ワクスマンの定義は狭義的な意味として使われます。現在では「微生物が作る抗菌、抗ウイルス、酵素阻害、免疫修飾、細胞毒、あるいは制がん作用のある物質」(理化学辞典第4版)とされています。
 これは抗生物質の研究とその利用が拡大した事によって定義が変わったことによります。

 さて、抗生物質にも色々とあります。
 その代表格が上に触れたペニシリンです。その機構は後述しますが、他にも回復の難しい結核の治療に大貢献をすることとなったストレプトマイシン(streptomycin)など、そういったものが教科書に載るような「代表例」であるといえます。これらの物質は皆さんはおそらく聞いたことがあるでしょうし、またお世話になった方もいらっしゃると思います。
 ただ、こういった医療に役立つものだけが「抗生物質」ではありません。
 たとえば、生体に必須であるたんぱく質の生合成を阻害するピューロマイシン(puromycin)という抗生物質もあります。これを生産する微生物以外の微生物はもちろん、動物にとっても有害です。
#余談ながら、手塚治虫の『時計仕掛けのりんご』ではこれを用いたクーデター計画の話がありますね.......
 つまり、抗生物質というと一般には医療用で使われるものが想起されやすいですが、そういうものばかりではない、ということになります。また、様々な微生物が様々な抗生物質を生産しており、医療用に使われるのはその一部でしかなく、他にも農薬や獣医畜産といった分野にも使われており、非常に重大な活躍をしています。
 もっとも、ヒトにとっては「使えない」抗生物質も、たとえば研究用に用いられるなどといった使い道はありまして、たとえばピューロマイシンはたんぱく質の合成のメカニズムの研究に使われるなど(専門注:tRNAにくっつき、転写を邪魔(途中で切り離してしまう)する)、研究分野での活躍があります。
 ま、結局は「使い方」ということになります。

 そうそう、余談になりますけど.......お酒のアルコールであるエタノールもある意味これになるでしょうか。
 実はエタノールというのは微生物にとっては非常に有害なもので、殺菌用に用いられます。ですので、エタノール発酵を行なう菌は他者の成長を妨害するためにエタノールをばら撒いている、といえます。もちろん人間はそれを「おいしい」といって飲むわけで、そういった点は面白いといえますが。
 エタノールを酸化して得られる酢酸もやはり同じであり、酢酸を作る酢酸菌はそうやって身を守っているといえます。
 もちろん、こういった微生物は自ら生産した物質に対してある程度の抵抗性を持っています。そうでなければ、自分で毒をつくってそれにやられる、というじつに間抜けな事となりますので。


 さて、ペニシリン=抗生物質の登場は、その後の世界に大きな影響を与えます。
 感染症を防ぐことに成功したペニシリンは、大量生産されて各地で非常に良く使われることとなりました。これは非常に大きな影響を与え、多くの死に行く運命にあった人たちを救うこととなります。
 更に新規の薬剤の探索は、その後に続くたくさんの抗生物質の発見の契機となりました。これにより、たくさんの抗生物質の発見とその研究が進むこととなります。特に土壌中の微生物より得られる抗生物質は注目され、一時期(1970年代辺りだったか)は微生物系の研究室はこぞって土壌中の微生物より抗生物質を探すこととなります。
 この成果は色々とありまして、現在の抗生物質はかなりの割合で土壌中の微生物由来となっています。余談ながら、多くの抗生物質の名称に「〜マイシン(mycin)」とありますが、これは土壌微生物である放線菌「Actinomycetales」に由来するものを示します。
 そして、各抗生物質は研究されて様々なメカニズムなどの解明が行なわれました。そして、一部の薬剤は人工的に手が加えられ、改善されて活躍することとなります。
 以下にいくつかの抗生物質の構造と名称を示しておきましょう。


 ペニシリンGは代表的なペニシリン類の抗生物質で、セファロスポリンCも非常に有名な抗生物質です。テトラサイクリンやクロラムフェニコールは医療分野で活躍をした事で名を残すものです。ピロールニトリンは水虫に有効な薬剤として注目され、実際に使われています。ストレプトニグリンは抗がん作用がある抗生物質で、ブラストサイジンSはイネのいもち病に有効な農薬となっています。
 これら抗生物質はすでに数千種は知られており、その類縁化合物(人工合成含む)を含め数万以上存在しています。上に示したものはそのわずかな物でしかありません。
#天然物に興味があると結構面白いんですが......
 ちなみに、大分専門的ですが、抗生物質はその効果の対象により分類もされます。例えば「グラム染色」という微生物を分類する染色方法があるのですが、これの陽性菌に有効だったり、陰性菌に有効、あるいは両方に有効と言うケースがありますし、またウイルスに有効、リケッチアに有効、カビ、原虫に有効、といった具合にそれぞれに「効果のある」物が決まっています。
 ま、適材適所という事になりますね........と、そうそう。「殺す」物ばかりに目が行きやすいですが、臓器移植では必須の免疫抑制剤「シクロスポリン」(これは土から分離された)といったものもあります。相当に幅が広い、というのは頭に入れておくとよいと思います。
#シクロスポリンも非常に面白い発見話と活躍の話がありますが、それは別の機会に。

 こう言った抗生物質の作用機構は様々です。
 代表的なものは細胞壁の生合成阻害があります。これは後述するとしまして、他にもたんぱく質の合成を阻害したり、エネルギー生産の阻害、DNAに作用、あるいは細胞分裂の阻害など非常に多くあります。専門的には、おおまかなカテゴリとしては4つに分けられるようです。一応、専門向けですが表にしますと

作用機構と薬剤の分類
機構薬剤の種類
細菌細胞壁合成阻害ペニシリン系 セファロスポリン系
細菌細胞質膜透過性阻害ポリエン系 ポリペプチド系
細胞質内たんぱく質合成阻害アミノグリコシド系 テトラサイクリン系
クロラムフェニコール
など多数
必須代謝系阻害サルファ剤
イソニアジド
など多数

 となります。細胞壁合成阻害は後述するとしまして、細胞質の透過性が変わると物質の輸送に障害が生じて細胞が生きていられなくなります。たんぱく質は生体の必須成分ですのでこれの阻害は致命的になります。必須代謝系というのは生命の維持に必要な代謝を阻害するタイプで、例えばエネルギーの生産といった物がこれになるでしょう。エネルギーの生産を阻害すれば当然生命としては維持が出来ません。更にDNAの情報などを邪魔すれば異常を持った細胞が出来ますし、また細胞分裂も微生物では極めて重要ですが、それを邪魔すれば仲間の増加は困難になります。
 医療で考える場合では、これはその143で触れた「選択毒性」が関与しまして、ヒトに害が「少ない」物が選ばれることとなります。例えば、たんぱく質の合成では実際に合成をする細胞内器官であるリボゾームの形状が細菌とヒトでは違い、「細菌には作用するが、ヒトのリボゾームには作用しない」物があればそれは安全性が高い、という事になります。
 もっとも、必須代謝系でもエネルギーの生産の阻害は青酸の話でも触れたように、選択毒性が生じにくいケースも多いので医療用としては使いづらいものがあります。


 さて、ここでペニシリンに話を戻しましょう。
 世の中に登場したペニシリンは、第二次世界大戦後も大きく活躍をします。研究も進み、混合物であったペニシリンの中から見つかった有効な成分ペニシリンG(ベンジルペニシリン)は世界中で医薬品として使われることとなりました。これはグラム陽性菌、グラム陰性球菌などに有効で、関連した病原菌(ブドウ球菌、肺炎球菌、連鎖球菌、淋菌、髄膜炎菌、ジフテリア菌、梅毒)の除去に用いられます。もっとも、大腸菌(グラム陰性菌)や緑膿菌、チフス菌などには有効ではなかったのですが。
#事実、梅毒治療に使われていたサルバルサンはペニシリンに代わります。
#そう言えば、映画「第三の男」もペニシリンが絡んだ話でしたね.......
 しかし、1955年に発見されたペニシリンの構造に似た抗生物質セファロスポリンCが発見(汚水から発見された:水の自浄作用を調べたら行き当たったという話があります)すると、この状況がまた変わります。セファロスポリンCはペニシリンよりも広範囲の抗菌スペクトルを持ち、ペニシリンが有効でなかった菌にも利用できることが判明するとこれも医薬品として活躍することとなりました。
 両者は構造にβ-ラクタム環と呼ばれる構造(窒素「N」のある四員環)を持っていることから「β-ラクタム抗生物質」と呼ばれます(有機化学の素養があれば分かるでしょう)。
 更に構造がそれぞれ分かってくると、化学的に手が入れられて構造が修飾されることとなります。これは薬剤のもつ欠点、例えば酸に弱く、経口投与では胃酸で分解され、更に注射でも速やかに排泄されて長時間の効果が見込めないといった点の改良に一役買うこととなります。

 尚、日本では第二次世界大戦中の1943年に初めて公に知られたようです(当然敵国の情報はそれ程入ってこない)。
 その後、日本の研究者達も戦争の中で研究を行い、1944年に不純物が多いながら分離に成功し、同年11月に新聞に陸軍が発表します。12月にその色から「碧素(へきそ)」と命名(ペニシリンは英語=敵性語)されて量産に入るのですが、さすがに量的に厳しかったようです。
 ちなみに、命名者はペニシリン研究の助手もしていた学生で、褒美は羊羹一本だったそうですが.......
 戦後は医薬として広く知られまして、その後の日本での医療の改善に大きく役立ったことは言うまでもないでしょう。ついでに、日本は抗生物質探索・研究の分野でその後大きな役割を果たすことになります。

 さて、ペニシリンは活躍の一方でまた問題を引き起こすこととなりました。
 一つは抗生物質によるアレルギーでして、いわゆるペニシリンショックといったものが知られるようになります。これは10万人に10〜40人程度とまれなことと、更に体質的な問題もあるわけですが、しかし抗生物質に依存した体勢においてこの出来事はかなり大きな問題となり、抗生物質の慎重な使用が求められることとなります。
 そして更に、もっと深刻かつ大きな問題も出てきます。
 ペニシリンの大量使用はやがて「薬剤耐性」の問題を引き起こします。つまり、余りにもペニシリンなど数種類の薬剤に頼った結果、微生物が薬剤に耐性を持ち始め、そして耐性菌が急速に広まることとなります。
 この結果、ペニシリンの大量使用でも無効にする菌が各地に広まり、ペニシリンは有効な薬剤としての価値を急速に失うこととなりました。その後、より強い薬剤などが導入されていくのですが、しかし結果的には同じことの繰り返しとなっていきます。

 この耐性菌の問題は最近になって一層深刻化しています。
 その代表例を挙げればメチシリン耐性黄色ブドウ球菌、通称「MRSA(マーサ)」があるでしょう。黄色ブドウ球菌は普通に存在している菌でして皮膚の毛穴などに潜んでおり、通常の健康な状態では特に問題を起こしません。しかし、体力が弱まっている時には「悪さ」をし始める「日和見菌」として有名です。
 これは例えば手術後、体力の低下などから黄色ブドウ球菌による感染症が問題になるため、これを排除するために抗生物質を使ってきたのですが、しかし徐々に抵抗性をつけてきたために薬剤を切り替える。この繰り返しを行なった結果、非常に強い抗生物質である「メチシリン」も無効化してしまう黄色ブドウ球菌、MRSAが登場してしまいます。


#構造を見れば分かる通り、メチシリンはペニシリンの構造をかえたものです。
 現在、様々な手法でこれを抑えようとしていますが、しかし拡大は進行しているようです。
 そして、MRSAに対抗できるとして使われるようになった薬剤にバンコマイシン(VCM)があります(構造は非常に大きいので省略)。ですが、今度はこれに頼った結果、まずはバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が発見(VREは特に深刻な症状は出さない)されます。そして、結果的にはバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)も結局登場してしまいます。バンコマイシンは現在においては「最強」の部類の強さを持つ抗生物質なのですが(副作用も強いことが言われていますが)、VRSAの登場はこれすら無効化されてしまう訳ですので関係者の心配は相当なものとなります。事実、耐性菌は全体に広まってはいないものの拡大傾向であり、かなり警戒がされています。
 一応、VRSAへ対抗する「最終兵器」もありまして、日本では2001年4月に輸入許可がでて6月に販売開始となったリネゾリド(ファルマシアより「ザイボックス」として販売)があります。


 この薬剤、作用機構はたんぱく質の合成を極く初期の段階で阻害(専門注:50Sリボゾームに作用)するのですが、非常に大きな特徴として既存の抗生物質とは全く違う構造を持ち、完全合成により得られたものです。つまり、自然界に存在しない=既存の機構を応用した解毒がしにくいという事になります。しかし2001年4月の医学誌『ランセット』には既に耐性菌の出現が報告されています。もちろん、まだ広まっているわけではないのですが。
 こう言ったこともあり、ザイボックスの添付文書には「耐性菌の出現を防ぐため、使用に気をつける」旨が赤字で警告されています。

 更に、5年ぐらい前に問題になったのを覚えていらっしゃる方もいるかと思いますが。
 この頃、結核に感染した、特に老人の死亡が続出した件が問題になりました。これは、一つは結核が「過去のもの」ということで見分けられる医者が少なくなっていたこと、そして病院で抗生物質等の薬剤を大量に用いた結果、結核菌が抗生物質に対する抵抗性を発達させたことが問題になります。
 これは過去に大量の死者を出した結核の将来の台頭の可能性を示すものであり、いろいろと問題になっていますが......
#結核はその内に触れようと思いますが。

 なお、ペニシリン耐性菌は今もって多く存在しており、そう言った菌に対して使用しても効力は見込めません。もちろんこれは「使い方」に問題があったわけでして、たとえば必要もないのに抗生物質を使ったり、また一種類の抗生物質に頼り切るなど、基本的には依然触れた農薬などの問題とこの点は一致します。
 もちろん、現在は色々な手法でこれを防ごうと努力をしている研究者たちがいます。
 例えばバンコマイシンの場合、VREを使ってその作用機構と無力化の機構が調べられています。その結果、バンコマイシンの構造に手を加えることで有効になることが分かっています(専門注:二量体やポリマー化すると非常に効果的になるらしい)。もっともあれこれと改良をしても、菌の方が抵抗性を発達させるなど厄介な面が大分あるようです。
 現在このテーマは極めて重要視されており、多くの研究者が取り組んでいる問題となっています。これはかなり熱心でして、分子レベルでの抵抗性の研究などが行われており、うまく行けばまた「可能性」を見いだせる様ですが........ただ、楽観視は出来ない様です。
#抵抗性の厄介さを知っている人で楽観視できる人はいないでしょう。
 ま、抗生物質に関しては他にも問題は色々とあるのですが、ひとまずこの問題が現状では大きいものです。

 そうそう、参考程度ですが。
 1990年代後半の調査では、ペニシリンに耐性のある黄色ブドウ球菌は全体の98%。MRSAは32%。テトラサイクリン耐性の肺炎球菌は10%で、ペニシリンに耐性のある肺炎球菌は37%です。
 つまり、現状において黄色ブドウ球菌に対してペニシリンはほぼ無力。MRSAも増加の一途をたどっているので、将来的にはメチシリンも無力化という事になります。これらの菌は病院などで増殖して例えばヒトなどに付けば、世の中に出て行くこととなり、またその人が別の病院に行けば今度はそこで増殖することとなります。
 極めて深刻な問題と言えます。

 .......と、そうそう、これを忘れていました。
 ペニシリンの作用機構ですが、これは上にあるように微生物の細胞壁の生合成を阻害します。細胞壁は微生物では重要なもので、その体の保護や形状の維持に関わっているものです。これを形成する酵素をペニシリンは邪魔しまして、その結果微生物は細胞壁が作れず、その結果微生物は死ぬこととなります。この細胞壁への作用はセファロスポリンCやメチシリン、バンコマイシンも基本的に同じ物(色々と違いはありますが)となっています。
 では、何故ヒトには安全なのか?
 これには選択毒性が関与しています。つまり動物の細胞は細胞壁は存在していません。よって、作用のしようがないということで結果的に安全となります。
 ただし、耐性菌はペニシリンの骨格中のβ-ラクタム環を分解する酵素(βラクマターゼ)を発達させており、このためにペニシリンは分解されて無効化されます。最近の黄色ブドウ球菌はつまりほとんどがこれを持っている、ということであると言えるでしょう。


 さて、以上が抗生物質の定義的な話と、同時にペニシリンの発見後の話やメカニズム、そして抗生物質全体も含めた問題といった物の話になります。
 ま、色々なものが一つにまとまっていますがね。細かくやれば更に色々と出てくる物があるのですが、ある程度でひとまず抑えておきましょう。
 とりあえず、現在活躍している物質のルーツや、その後と現在の問題は認識してもらえればと思います。おそらく、関連してくる人も少なからずいると思いますので。

 それでは長くなりましたが。色々な抗生物質の細かい話は別の機会にまた触れることとしましょう。
 今回は以上、と言うことにしましょう。




 ふぅ...........

 さて、今回の「からむこらむ」は如何だったでしょうか?
 え〜、前回に引き続いた話になりますが。一応、ペニシリンを足がかりに抗生物質と言うものについて触れてみました。まぁ、色々と話はあるんですがね。一個ずつ挙げていくとまた切りがありませんし、とりあえず概要と言うことで挙げておきました。
 もっとも、最後の方にある抵抗性などの問題は「現在進行形」で、おそらく将来にも関わってくる問題になると思います。これは冗談抜きで認識しておいた方がよいと思いますが。
 まぁ、色々と研究がされている分野ではありますが。下手すると、「薬剤が効かない」物だらけで衛生環境が退化などという可能性もありますので。

 さて、そういうことで一つ終わりですが。次回はどうしましょうかね......
 一応、やろうかなぁ、という話はありますけど。まぁ、とりあえず考えることとしましょう。

 そう言うことで、今回は以上です。
 御感想、お待ちしていますm(__)m

 次回をお楽しみに.......

(2003/08/05公開)


前回分      次回分

からむこらむトップへ