からむこらむ
〜その224:2006年新春与太話〜
まず最初に......
こんにちは。新年も始まりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
いやぁ、今年はどういう年になるでしょうか? よい年となる事を願いますが。
さて、今回のお話ですが。
で、今回は久しぶりの「からむこらむ」ですが.....さすがにこうなるとお客さんも減っていますけど(^^; まぁ、でも着てくださる方もいらっしゃいますのでがんばろうとは思っているんですがね。
そんでもって、とりあえず「やろう」と思っているものもあるんですが、その前に軽いネタでも久しぶりにやろうかと思いまして、与太話でも一つ、と思います。
それでは「2006年新春与太話」の始まり始まり...........
最初に.......
- 注意事項
- これはフィクションかもしれません(話によっては脚色、誇張が含まれているかもしれません)。
- 過去・未来の「からむこらむ」にこの話が出た/出るかもしれませんが、気にしないで下さい。
- 色々と話が出るかと思いますが、悪意は一切ありませんので、御留意を。
以上の点、よろしく御願いします(^^;;
では、久しぶりに始めてみましょうか。
- 「摂氏」:水の沸点は0度?
日本にいると「温度」と言えば言うまでも無く皆「摂氏」。つまり「セルシウス温度」が試用されています。
この「摂氏」、意外と由来は知られていませんが、もともとはスウェーデンの物理学者であり天文学者であり、ウプサラ天文台長であったンデルス・セルシウス(Anders Celsius)の提唱によります。この人は実は18世紀の人物でして、死ぬ2年前の1742年にこれを提唱しており、それゆえに割合を示す「°」と彼の名前の「C」が組み合わさった「℃」が摂氏の記号として使われています。
では、その基準は何か?
小学生でも知っていると思われますが、基本的には「摂氏0度」と言えば水が凍る温度であり、「摂氏100度」と言えば水が沸騰する温度です。この間を100等分し、これを延長したもの(つまり沸点以上、凝固点以下にも拡張して使う)が現在使われていまして、日本では非常になじみ深いと言える。つまり、摂氏0度は「凝固点」であり、「融点」で、摂氏100度は沸点と言う事になるでしょう。
ところが、これは本当にそうだったのか?
一説によればセルシウスの定義では「雪の溶ける温度が100度」であり、「沸騰している水が0度」と定義していたと言う話があります。つまり現在と逆。これがいつの間にか入れ替わったと言う事らしいのですが......もっとも、同国の博物学者で著名な植物学者であり、二名法を発明したカール・フォン・リンネ(Carl von Linné)がこの基準を唱えたと言う「説」もあるそうですが。この場合、リンネは最初から凍るほうを0度、沸騰するほうを100度としていたと言う話もあります。
ただし気をつけなければならないのは、現在は色々と絶対温度の関係と水の三重点が基準となったために、水の沸点は「厳密」に言えば「99.974℃」となっていたりします。まぁ、もちろん普通に使う分には「100℃」で全く問題はないのですが。
- 「絶対温度」:君の名は?
さて、熱力学などをやると物質は全て「振動」している事になっています。つまり、温度が高いと分子は「振動が大きく」なり、温度が低いと分子の「震動は小さい」事になる。つまり、温度を下げていくとその分子の運動はやがて完全に止まる事になる......と言う事は、つまり温度には「最低」が必ず存在している事になりましす。その時の温度を「絶対零度」とする温度の基準があります。
これを基準とした温度が「絶対温度」でして、この温度は摂氏で表すと-273.15℃となっています。つまり摂氏0度は絶対温度では273.15度と言う事になる。見ている方で記憶にあるかは分かりませんが、高校生で標準気体に関連した各種方程式(「シャルルの法則」とか「理想気体の状態方程式」など)で温度に絡み、「273+t」(tは摂氏)が出てくるのは、摂氏を絶対温度に直す為です。
この絶対温度、単位は「ケルビン」が使われており、記号では「K」と表されます(これは単位であり、他の割合のような「°」は不要)。定義では「1 ケルビンを水の三重点(固体・液体・気体の三つが同時に存在する状態)の熱力学温度(0.01℃)の 1/273.16 倍」としていますが、もっと早く言えば1Kの割合は1℃と等しくなっています。
ま、こんな小難しい話はともかく。
ところで、この絶対温度を定義したのは19世紀のウィリアム・トムソン(William Thomson)と言うイギリスの物理学者です。熱力学の分野で大活躍した偉大な学者なのですが、この人の「名前」から「ケルビン」と言う単位が使われています。
さて、では名前のどこに「ケルビン」があると言うのか?
実はこの人は19世紀の終わりの頃に叙爵されていまして、「Baron Kelvin of Largs」となっています。つまり「ラーグスのケルビン男爵」でして、通称は「Lord Kelvin」。だから「ケルビンさん」を探しても見つかりません(笑)
- 「華氏」:212度で水が沸騰
日本ではなじみが無く、欧州も既に使われなくなった単位を頑固に使い続けている、と言う事が結構多いアメリカ。アメリカでの温度表記はやはり日本と違いまして、彼の国では摂氏も使うものの基本的には「華氏」と言う温度の単位を使っています。
#SI単位じゃないのにいいのかなぁ?
この「華氏」、非常に日本ではなじみが無いものですがアメリカでは普通に使う温度でして、「ファーレンハイト温度」と言います。これは人名から取られたもので、17世紀の後半に生まれたポーランドのガブリエル・ファーレンハイト(Gabriel Fahrenheit)から取られていまして、職業は物理学者......なんですが、ガラス職人だったようです。
自前の温度計で色々な物質の沸点を測るなどしていたようで、そういう言う意味では物理学者なのでしょうけど。
この華氏、記号では「°F」と書くのですが、水の凝固点が32度、沸点は212度となっています。非常に面倒ですが......一応、摂氏に変換するには、華氏温度から32引いて、これを5/9すればでますが。
では何でこんなに面倒なのか?
実は水と塩化アンモニウムを混ぜた寒剤の最低温度を華氏0度、水の凝固点を32度、血液の温度を96度とすると言うよく分からない基準になっています.....何でこうなったのか(^^; なお、実際には諸説ある様ですので調べてみると面白いのですが、どちらにしても摂氏の方が体験的に便利と言う気もします。
以上をふまえると、映画や小説で「今日の気温は50度」と言っても、摂氏に直せば10度。やっぱりピンときませんが(^^; ちなみにレイ・ブラッドベリの著名なSF『華氏451度(Fahrenheit 451)』は紙が燃え上がる温度となっていますが、摂氏に直すと233℃となっています。
なお、どうして「華」が使われるかと言うと、ファーレンハイトの中国語の音訳が「華倫海」でしてそれが日本に輸入された為のようです。
- ラヴォアジエの嫁
中世の「錬金術」から「科学」としての近代化を行った人物を挙げろ、と言われれば管理人は間違いなくラヴォアジエを挙げるでしょう。
この人物、詳しい事は過去の記事を見ていただく事としまして、徴税請負人をやったり、他にも自ら設置した火薬監督官など多数の仕事をこなす(兵士へのタバコの支給もあったか)など色々と忙しい役人でした。ちなみに、ラヴォアジエの科学への貢献は多数ありますが、その中には単位にも関わっており、実はメートル法の推進をしていたりもしています(上述の温度は関係しなかったようですが)。
ところで、彼には同じく徴税請負人の娘を妻としてめとった事は過去に書いていますが。同じくダヴィッドによる夫妻の絵も描かせていたなどとも書いていますけど。
この妻の名はマリーと言います。実は彼女はダヴィッドから絵の手ほどきを受けていた為に、夫の科学実験の図を描くなどしています。そして、彼女は夫が断頭台に送られた後も、未亡人として生き延びています。
さて、彼女はその後どうしたか?
彼女は「後家に花が咲く」と言う事か、社交界で人気となりまして、やがて米国出身の政治家で独立戦争では英軍側についたベンジャミン・トンプソン(Benjamin Thompson)と結婚します。このトンプソン、火薬の研究で名を成し、そしてバイエルン選帝侯に仕えて様々な改革などを行った為に、やがて神聖ローマ帝国の伯爵として「ランフォード伯爵」を名乗る事になった人物です。さらには、熱と仕事の関係を研究して「ランフォード・メダル」と言う、イギリス王立協会が熱と光のすぐれた研究に与える賞に名を残しています。
そして面白い事にランフォード伯爵の熱の研究は、ラヴォアジエの物とは対立したものでした。
その内容は、ラヴォアジエは「フロギストン(燃素)」は否定したものの、実は「熱」の正体に関しては「熱素」と言う「元素」が存在すると考えていまして、ランフォード伯爵は「熱」とは「物質の取りうる状態である」としていました(つまり今で言えば上述の分子の運動と言う事)。
つまり、ラヴォアジエの妻だったマリーは、元夫の説を否定する学者に嫁いだと言う事になる。
ちなみに、性格の不一致で彼らは離婚している、と言うのは皮肉でしょうか?
- 南極の隕石
某大学での話........かも。
南極は極寒の土地、と言う事ですが実は南極の観測隊に「南極の氷の上に落ちている石を持って来い」と言ったある日本の研究者がいました。この研究者、なぜ南極の氷の上の石が欲しかったか、と言うと実はかなり「賭け」でして.......つまり、南極は大陸の上に氷が乗っかっている構造となっていますが、その氷の上に理論上石は落ちていないはず。
では、落ちている石があれば?
この研究者は「それは多分隕石だろう」と判断します。それは実は正解でして、これによってしばらく南極では「石拾い」が展開されたと言う話があります。
ところで、この「石」。報告がされているのですが、記念すべき第一回の報告にはその石の重さの報告は「小数点以下一桁、あるいは二桁」だったとか。それ以降の報告は全て下4桁まであったと言う事だそうです。
では、なぜ一回目はそこまで正確でなかったのか?
「一説によれば」その時重さを量った助手が、「まぁ、隕石ってこたーねーだろ」と細かく測らなかったから、とか云々.......
さて、本当かどうか?(笑)
- 南極の鉱物
南極大陸で発見された新鉱物(とは言っても結構前ですが)にアンタークティサイト(antarcticite)、和名で言えば「南極石」があります。
この鉱物、実は日本人が発見したものでして......ドライバレーと言う地域にはいくつかの湖や池が存在するなかで、「ドン・ファン池(Don Juan Pond)」と呼ばれる場所があり、ここでは極寒の地であるのにも関わらず氷結をしない。つまり多量の塩が入っていてその為に凍らないと言う.....これに気づいたのが越冬隊長をした事もある鳥居鉄也で、これを持ち帰って他の研究者とともに解析した所、高純度の塩化カルシウムの六水和物(CaCl2・6H2O)であることが判明(他にかなりの種類の微量元素があるようですが)。では、と命名の申請を採取した場所から「ドンファン石(Donjuanite)」として国際鉱物学会に提案します。
さて、「ドン・ファン」と言えば実在したかはともかくプレイボーイの代名詞。しかもこの命名の元となった池、実はいわゆるこの、プレイボーイの「ドン・ファン」からではなくて、ドライバレーの地形図を作るためにヘリコプターで調査をしたパイロット二名(Donald RoweとJohn Hickey)から取られていたと言う。しかし、「ドン・ファンでは」と言う事でクレームがつく。
で、仕様がないので「南極石」になったとか。
#しかも、紆余曲折がまだあったらしい.....
- 新しい物を買うために1
とある所での話とか。
今どきは「重さを量る」と言えば基本的には電子天秤があるので、かなり楽になっていますが。昔は当然上皿天秤や、もっと上等の天秤を使って計測していました。
ところで天秤に使う分銅は、当然酸化などしてしまっては重さが変わってしまう。ですから、高級なものは分銅を金メッキしてこれを防ぐと言う事になります。
さて、ある研究室で金メッキの分銅を購入をしようとした所、これを無駄遣いと判じたのか経理係よりクレームが着たとか。曰く「何で金メッキの分銅を購入するのか?」 つまり、金メッキをする理由が分からないと言う事になる。
経理係への説明が面倒だったのか、返答は「純金製の分銅は高過ぎるから」と返したとか云々。
まぁ、確かに純金製だと高いけど......
- 新しい物を買うために2
いつの時代も「新しいもの」ってのは欲しいと言うか、そういうものですが、当然金もかかるし色々とあるので「物は大切に」と言う事になる。ですが、「必要なもの」が欲しいのに手に入れられない、と言うのは困った事になる。ですが金を握っている部署からは理解されず「工夫しろ」とか「不要」と判断されるものもある。
ま、これは企業でもどこでも、と言う気もしますけど。
さて、ボン大学にケクレがいた頃。
助手のユリウス・ブレットはショウノウ(樟脳、カンファー)の研究をしていました。彼に割り当てられた部屋は、大学の教室の屋根裏だったのですが、ここには避雷針が無い。ブレットは心配性かよく分からないのですが、落雷があったら自分は怪我をすると考えまして、これをボスのケクレに訴えるものの、全く相手にしてくれない。
さて、ブレットはどうするか?
ある日ボン大学を暴風が襲います。さて、ブレットはこれ幸いと研究室から金属ナトリウムと金属カリウムをとり出し、これを紙に包んで大きな防火用水槽に放り込みました。
化学の知識があると分かりますが、金属ナトリウムや金属カリウムを塊で水に放り込むと大きな音を立てて、場合によっては金属が燃え出す事になります。
当然この場合も同様でして、水槽に放り込んだ金属ナトリウムとカリウムは大きな爆音を立てる事となる。そしてブレットは一目散にケクレの所へダッシュで向かい、走り込んで曰く「先生! 雷がついに落ちました!!!」
ケクレ、納得して避雷針をつけたとかなんとか.......
なお、これをまねて池なんかに金属ナトリウムなどを突っ込むと大目玉を喰らうので、学生諸氏はくれぐれも気をつけるように(^^;
#研究室で見てみたければ、シャーレに水を少量入れ、極く小さい塊の金属ナトリウムを入れましょう。
#心配ならドラフト内が無難かも。
- 伝統ある研究室の法則
「伝統ある」研究室ほど「伝統ある」、「謎の」試薬がある。
- 伝統ある研究室の法則 追加1
もちろん、そういう試薬に見覚えのある学生はいない。
- 伝統ある研究室の法則 追加2
しかも、その様な試薬ほどラベルがない。
- 伝統ある研究室の法則 追加3
当然、教授(主任)も分からない試薬である。
- 伝統ある研究室の法則 追加4
そのような試薬の辿る道は、「放置」か「見なかった事」にされる。あるいは、廃液入れに(こっそり)入れられる事もある。
- 伝統ある研究室の法則 追加5
そのような試薬を見付けてしまう学生ほど、さらに余計なものまで見付けてしまう。
- 伝統ある研究室の法則 追加6
見つかる余計な試薬は、やっぱり同じようにラベルがなく対処に困る。
- 伝統ある研究室の法則 追加7
このような試薬・薬品でラベルがあっても、そして未開封でも純度が怪しまれるので使われる事は少ない。
- 伝統ある研究室の法則 追加8
「発掘」された試薬・薬品は、ラベルがあっても対処に困る薬品である事が多い。
- 伝統ある研究室の法則 追加9
しかも、一般には法的に使用・製造禁止になるような薬品だったりするケースがある。
- 伝統ある研究室の法則 追加10
しかも、そういう物ほど大量に残り、大瓶に複数本残っている事がある。
- 伝統ある研究室の法則 追加11
そして処理されず封印された試薬は、いつの日か歴史が繰り返される事になる。
- 伝統ある研究室の法則2
危険な合成の為に作られたはずの防爆壁(爆発時に保護する事となる壁。簡易のものは板もある)は「大活躍」する事はほぼ無い。
- 伝統ある研究室の法則2 追加1
しかも、ずっと後になるとむしろ邪魔者扱いされてしまう。
- 伝統ある研究室の法則2 追加2
そして実際、邪魔になる事が多い。
- 伝統ある研究室の法則2 追加3
最終的に掲示板が置かれる宿命になる事が多い。
- 器具乾燥機の使用目的
合成系はおろか、ガラス器具を使う研究室には必須の器具乾燥機。
文字通りの使用目的ですので、分からないと言う方はいらっしゃらないと思いますが.......文字通り使用したガラス器具等を早く乾燥させるのに使いまして、非常に重宝します。
ところで、こんな器具乾燥機ですが、基本的に置かれるのはガラス器具と言った物体が普通。しかし、物体は物体でも「最大級で意味不明」の物もある。
とある人物、ある朝研究室に向かうと何かがおかしい。どうにもにおいに違和感がある。はて、どこから? と言う事でにおいを辿るとなぜかこの乾燥機からにおう........と言う事で行って見ると、そこには謎の星形物体。
なぜかヒトデがおいてあったそうで。
ちなみに、研究室でヒトデが必要な実験方法があるのか、管理人は知りません(笑)
さて、久しぶりの「からむこらむ」は如何だったでしょうか?
ま、与太ですけどねぇ(^^; 真剣にあれこれ、と言う話ではありませんけど。まぁ、三が日で暇、と言う方の多少の暇つぶしに、あるいは年の最初から研究室で過ごす羽目となった様な人の暇つぶしにでもなればと思います。
えぇ、まぁ時間が経過するのが長いですからね。
そういう事で、今回は以上ですが。
次回は...とりあえず早めに一つ出そうかなぁ、と思っています。与太ではなくてまじめなほうですけどね。うまくいければ出したいと思いますが。
まぁ、今年も不定期ですが、うまく出していければと思います。リクエストや感想があれば是非。励みにしたいので。
そう言うことで、今回は以上です。
御感想、お待ちしていますm(__)m
次回をお楽しみに.......
(2006/01/01公開)
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