からむこらむ
〜その189:不安の機構〜
まず最初に......
こんにちは。今月、もとい今年も約1週間となりましたね。皆さま、如何お過ごしでしょうか?
え〜、世間様では赤白服の白ヒゲおやじが走り回る事となるのでしょうが、管理人にとっては「青朱白玄」の4周年となっています。いやぁ、離合集散の激しいネット上では長い部類になってしまいました。ちょっと驚きです(笑)
さて、今回のお話ですが、今回は不安に関する「小キャンペーン」のラストとしようかと思います。
前回でベンゾジアゼピンとGABA受容体の話をしました。そして、これらの研究から不安に関する機構がある程度分かってくるようになります。今回はそういった事と、現状について簡単に触れてみようかと思います。
それでは「不安の機構」の始まり始まり...........
前回はベンゾジアゼピン受容体のGABAとの関係から、存在と位置、不安と関連するという話をしました。ついでに、受容体の「復習」の話もしましたけどね。
では、前回の続きと行きましょう。
さて、ベンゾジアゼピン受容体が同定されると、更に具体的にこの受容体への研究が進む事となります。
そういった中で重要な事が分かります。それはバルビツール酸系の化合物、メプロバメート、アルコールといった鎮静催眠薬の作用機序の一部が解明した事です。前々回に書いたように、これらの薬物は全て同一の部位に作用する、と示唆されていましたが.........この解明はかなり大変な物でした。
どういう事か?
これらの薬物は実は受容体への結合力が弱く、しかも脳内での濃度が高くならないと作用が発現しない。こういう事から、今まで出たオピエートやその他精神に有効な薬剤で用いられた「低濃度で薬理作用を出す」タイプに用いられた手法が使えなくなります。こういった事から既存の手段以外での方法が色々と考える事となるのですが.......この突破口を開いたのがある薬剤でした。
その薬剤は何か?
ある分野にいない限り、まずなじみの無いと思われる薬剤に「痙攣薬」という物があります。これは言葉の通り痙攣を引き起こす物です。こういった薬剤の代表格にペンテトラゾールやピクロトキシン(ピクロチンとピクロトキシニンが1:1の混合物)があります。
痙攣薬は研究者にどうヒントを与えたのか?
これはバルビツール酸系の化合物などと痙攣薬が拮抗作用をもつ、という事がヒントになります。どういう事かというと、痙攣薬によって引き起こされた痙攣を、鎮静剤は効果的に抑える事が可能です。実際、鎮静剤は抗痙攣薬としても用いられるものがありまして、バルビツール酸系のフェノバルビタールは実際に抗痙攣薬として、てんかん発作を抑える為に用いられていました。つまり、痙攣薬の作用を鎮静薬等は邪魔をするという事になります。
なら、これらは受容体で同じ結合部位を巡り、前回触れた様な「座席のとり合い」が起きているのではないか?
こういった事もあり、研究者は放射性同位元素で標識した痙攣薬を用い、そしてこれが様々な鎮静剤を中心とする薬剤の存在かで、受容体との結合能力を調べました。つまり、受容体での「座席のとり合い」を調べた事になります。
その結果、バルビツール酸系の化合物、メプロバメート、アルコールの鎮静催眠薬は痙攣薬と「座席のとり合い」が見られた、つまり同じ受容体の部位に結合する事が分かります。こういった事から、この受容体は鎮静薬-痙攣薬受容体と呼ばれることとなります。ただ、この受容体はベンゾジアゼピン類とは直接的な競合は見られませんでした。
さて、バルビツール酸系の化合物、メプロバメート、アルコールはGABAの働きを増強する、というのは既に書きました。そして、ベンゾジアゼピンも同じようにGABAの働きの増強を行います。この事から、GABAとベンゾジアゼピン、鎮静薬-痙攣薬受容体とは何らかの関連性がある事は推測がされます。もっとも、鎮静薬-痙攣薬受容体にベンゾジアゼピン類は結合はしませんが、薬剤の働きとして見れば類似性は明確なものがありました。
では、この事と受容体というものをどうやって考えれば良いか?
この段階になると、様々な証拠から研究者達はかなり明確な「答え」を推測できるようになります。それは簡単でして、鎮静薬-痙攣薬受容体とベンゾジアゼピン受容体、そしてGABA受容体の三つが一つのタンパク質に存在しているだろう、という事です。更に、様々な特徴から、ベンゾジアゼピン受容体とGABA受容体が同一のサブユニット上に、鎮静薬-痙攣薬受容体が一つのサブユニット上に存在する、と考えられました。
つまり、GABA-ベンゾジアゼピン-鎮静薬-痙攣薬受容体複合体というものが存在するのであろうと考えられることとなります。
こうなると次にはその受容体複合体と働き、および薬剤はどういう関係があるのか、という点を調べることとなります。
最初はこの問題の根幹となるGABAがどうやって神経伝達の抑制作用を持つのか、という事が調べられました。これは神経生理学者が調べまして、GABA受容体にGABAが作用すると塩化物イオン(Cl-)チャンネルを広げる、という事が理解されます。
これはどういう事か、と言いますと......ま、ちょっと難しい部類になるんですが。シンプルに言えば、その73で触れましたが、神経の伝達は「電気」の刺激で行われます。電気信号は「+」、つまり正に荷電する事で「送られ」ます。しかし、こういう状態に負に荷電したCl-が入ると? つまり「+」が打ち消される事となります。よって、こうなると正に荷電させるのに手間(=信号が発しにくい)となりまして、結果的に神経の伝達が「抑制」される事になる。
つまり、GABA受容体は神経伝達を、Cl-を使って抑制をする為の機構という事となります。
ただ、ここまでは分かったものの、実際にはGABA以外にベンゾジアゼピン、鎮静薬-痙攣薬の各受容体がこのCl-とどうやって関連していくのかが最初は分かりませんでした。つまり、これらはどう相互に関係していくのか?
これはCl-と各部位の影響を調べる形で進展しまして、徐々に明らかになってきます。そして、更にはこの受容体複合体 GABA受容体複合体の単離にも成功する事となります。これで研究者達の推測が裏付けられる事となりました。
さて、ではこの複合体は神経の抑制に関与するわけですが、Cl-と各受容体との関係はどういう事になるのか?
これは受容体複合体が分離されてから詳しく調べられました。詳しい物はいちいち挙げられないのですが、まとめてみると以下のような関係になります。
GABA受容体複合体と薬剤
GABA受容体 | ベンゾジアゼピン受容体 | 鎮静薬-痙攣薬受容体 | | Cl-チャンネルの開閉の強化 |
GABA (アゴニスト) | アンタゴニスト | ベンゾジアゼピン類 (アゴニスト) | アンタゴニスト | 鎮静薬 | 痙攣薬 | |
○ | × | × | × | × | × | → | 開く(I) 高濃度で更に拡大 |
○ | × | ○ | × | × | × | → | 拡大する(II) GABAの作用の強化 |
○ | × | × | ○ | × | × | → | 開く (GABAの作用の強化をしないだけ)
|
× | ○ | ○ | × | × | × | → | 拡大しない |
○ | × | × | × | ○ | × | → | 拡大する(III) GABAの作用の強化 |
○ | × | × | × | × | ○ | → | 拡大しない(IV) |
これを見ると大体の関係は分かるでしょうか?
このような関係が調べられ、明らかになると、今まで知られていた現象により説明がつけられる事となります。つまりGABA受容体とGABA、更に今まで薬剤の関係はもちろん、ベンゾジアゼピンと鎮静薬の併用の危険性(危険なほどCl-チャンネルを拡大してしまう)も分かる事となります。
さて、以上が不安とその薬剤に関する機構の話となるのですが。
実はこの話はこれで一通り終わってしまいます。というのは理由がありまして、「不安」についても統合失調症や躁鬱病の様に実は完全な解明が出来ていません。というより、統合失調症や躁鬱病以上に良く分かっていない様に見えます。それゆえ、現在でも発展途上の研究といえます。また、最近は不安に関して、例えばPTSDといった様なものが注目されているものの、これらについて脳内での変化などの詳しい説明などはまださほど出来ていません。更に、例えばベンゾジアゼピンと鎮静薬でGABAの作用を増加するのが分かっても、何故効果に差が出てくる(片方は抗不安、もう片方は鎮静催眠薬となる)のかもそれほど明確になっていないのです。
つまり、現状では文字通り「謎だらけ」の部分が多く、これからの発展が期待されている分野となっています。
とは言っても、それだけで終わらせてはいけませんし、その後も判明した事がたくさんあります。
一応、そういった事や書けなかったものなどや現状などを以下にまとめ的な物を書いておこうかと思います。
- 不安の分類
現在「不安障害」はかなり分類されていまして、その症状などから細かく分類がされているようです。
細かいチャートなどもあるようですが、ここでは省略しまして、どういうものがあるかというといわゆる「パニック障害」、「社会不安障害」「恐怖症」「強迫性障害」といったものや、適応障害というものまでかなり幅広く分類がされています。特にストレスとの関連するものは社会情勢などからも注目がされていまして、その代表格に「外傷後ストレス障害」、いわゆる「PTSD」などが知られています。
最近では、昨今の「ストレス社会」の反映か、特に社会不安障害の有病率が増加していると言われています。国によっては1割以上の有病率とも言われていまして、今後はこの問題を中心に「不安障害」への注目がされる事と思われます。ただ、最近は不安に関してでもある種の不安障害(「赤面症」など)は減っているとも言われています。
こういった事から、不安は時代・社会の反映とも捉える事も出来、またこういったものと大きく関連していると言えます。
しかし、「ストレス社会」から特定の不安障害が増えならがらも、余り対策がとられていないように見えるので、この傾向がこれからも続く可能性もあるといえます。実際、特定の障害の増加はかなりあるようで、Webサイトで相談を受けるというような事が大分増えているようですが、専門医やカウンセラーはその増加に追いつけるほど多くは無いのが現状です。そして、まだ理解はそれほど大きくないようにも見えます。
#人の「負」の部分を背負うわけで、カウンセラーも大変な上、簡単に解決できるものでも無いですし
よって、将来的にこういう部分でどうなるのかが気になるものはありますが........
#うつ病関係は大分ケアの方向に進み始めた様ですけど.........
- 「不安」の脳内の神経機構
現在、「不安はどうして起こり、どうやってどのような物が原因である」とシンプルに言え、断言できるような状況では残念ながらないようです。
脳と神経の研究が進んだ事から、現在は脳内において「不安」にはGABAだけでなく、様々な要因の関与が指摘されています。情動のコントロールをする大脳辺縁系でも、扁桃体や海馬、視床下部等といった部分が不安障害と深く関係するとされていまして、ここに関与する神経伝達物質から、GABAの他にノルアドレナリンやセロトニン、更にホルモン類も関与しているだろうと現在では考えられているようです。つまり、実際にはかなり幅が広い物ではないか、と考えられています。ま、GABAは単に「抑制」を行うだけですから、実際にはそれに関係している他の神経 「賦活」させる部分とその部位の司るもの、といった非常に複雑な関係が当然あるといえますが。
しかし、最近は特にセロトニンの関連が注目がされています。
非常に興味深い事に、抗うつ薬イミプラミンの構造によく似た(というか塩素を一つ加えただけですが)ノルアドレナリン・セロトニン再取り込み阻害薬クロミプラミン(clomipramine)(その159に構造あり)が不安障害の一つである脅迫障害やパニック障害に有効であることが知られ、この事もセロトニンの関与を支持する要因の一つとなっています。そして、こういった事からその159でも触れたSSRIが一部の不安障害の治療薬として認可され始めています。
#脅迫障害にフルボキサミン(その159に構造あり)、パニック障害にパロキセチンといった物が認可されているようです。
もちろん、この薬剤は全ての不安障害ではなく、特定の不安障害のみに関連しているのかも知れません(そうならば、不安障害毎に脳内で関与する部位が異なる可能性がありますが)。ただ、どちらにしてもセロトニンの関与が注目されているのは間違いありません。
ま、もちろんGABAの関連もありますので、セロトニン作動性神経とGABAの相互作用、というものがこれから調べられるものと思われます。
ここら辺は将来的にどうなるか、という事になると思いますが.......おそらく、さまざまな「不安障害」の脳内の部位などと絡みながら発展すると思われますが。
そうそう、ノルアドレナリンも不安には関与しています。
これは、不安の症状が「逃走」などに関した症状に似ていまして、実際、緊張やストレスに関わるノルアドレナリンが不安に関与するというのは自然なものといえます。
どちらにしても、かなり「不安」は複雑な機構が絡んでいると言えるでしょうか?
今後は、こういった部分の関連を調べていくと思われます。ただ、上述の通り関連するものがかなり多い上、他の病気(うつ病等)との複合もあり、シンプルに「これが原因」と一つに言えるものはないようですので、かなり大変な作業にはなると思われますが.......いずれ解決はすることを期待しましょう。
- GABA受容体とベンゾジアゼピン受容体
現在、GABA受容体は大体3種のサブタイプが存在する事が知られています。それぞれGABAA、GABAB、GABACと分かれまして、GABAAとGABACがCl-チャンネルに、GABABは別の機構(専門的にはGタンパク質に関与:二次メッセンジャー絡み)に関与しています。
現在のところ、今まで紹介した抗不安、鎮静催眠薬はこのGABAA受容体複合体に関連していると考えられています。いずれのサブタイプも遺伝子なども含め研究が為されていますが、A型はα、β、γ、δ、εの5つのサブユニットで構成されている事が知られています。
また、この受容体に選択的に働く薬剤の開発などがされ、既に市場に出ています。
尚、ベンゾジアゼピン受容体もサブタイプがある事が知られていまして、ω-1、ω-2などが知られています。ω-1は小脳に主に位置して抗不安に関与し、ω-2は主に脊髄と線条体に位置して筋弛緩に関与しているようです(ベンゾジアゼピンにも筋弛緩作用がありますから)。
- 耐性のメカニズム
前々回に交差耐性の話をしましたが、抗不安・鎮静催眠薬などの薬剤は、肝臓の解毒代謝酵素でもあるミクロソーム酸化酵素系(mfo)の強化により耐性が発生する事が知られています。これを考慮すると、作用機構も一緒である事から、バルビツール酸系、メプロバメート、アルコール、ベンゾジアゼピンのどれかの耐性を持つ人は酒に酔いにくい、あるいは催眠薬・抗不安薬が効きにくい、という事になります。
同時に、別の薬剤も解毒されやすくなりますから、結構そういう点では厄介といえるでしょうか。
こういう事もあり、より耐性や依存の少ない薬剤の研究・開発が行われています。薬剤の試験ではこの分野も結構重要ですので、この点は記載される事は多い様です。
- 新規薬剤の開発
安全性が高い事などから、ベンゾジアゼピンは現在の抗不安・鎮静催眠薬の主力ですが、より効果的で安全性を、という事で非ベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬剤の開発が進んでいます。これは、ベンゾジアゼピンとは異なる構造を持つものです。が、色々とあるようで、ベンゾジアゼピン受容体に結合してGABAの抑制機構の強化を行うものや、上述の通り、セロトニンの関与からその強化を行うものがあります。
それぞれ一例ずつ挙げておきます。
ゾルピデム(zolpidem)は入眠剤でして不眠症の治療に(ただし、統合失調症やうつ病は除くようです)用いられ、ベンゾジアゼピン受容体に作用してGABAA抑制機構を増強します。タンドスピロン(tandospirone)はセロトニン受容体である5‐HT1Aに選択的に作用して作用を増強させ、ジアゼパムと同程度の抗不安作用を持つとされています。これは、セロトニンと抗不安の関係を示すものといえます。実際、この薬剤の分類は「セロトニン作動性抗不安薬」となっています。もっとも、ベンゾジアゼピン類で効果が上がっていない人や重症の人には有効ではない、とされています。
#学生さんはセロトニンとの構造の類似性に注目してみましょう。
ゾルピデムは興味深いことに、既存の催眠薬による「睡眠の質」が異なり、かなり自然に近い睡眠パターンを作り出す様です(既存のものは、たとえば鳥に与えると枝から落ちてしまうなど「睡眠の質」が自然と異なる)。
タンドスピロンは抗痙攣作用など無く、ベンゾジアゼピン類と競合しないことからGABA受容体複合体には作用しないようです。そして、ベンゾジアゼピンと併用でこの作用は増強します。もっとも、以前書いたように、併用は危険性はあるといえますが.........
#ついでに、タンドスピロンには抗うつ作用もあります。実際、セロトニン受容体のサブタイプ5‐HT2の密度低下(抗うつ薬の話で触れていますが)が抗うつ作用と関連する為、これに関わるようです。
現在は他にも中枢神経に作用する抗不安薬が登場しています。
- 催眠作用について
一度も触れていないので、簡単に。
睡眠のメカニズムは、それ単体でかなりの規模になるので詳しく触れる事が出来ないのですが、鎮静催眠薬によるGABAの抑制作用の増強は睡眠と深く関連しています。大体はGABA受容体複合体が存在する大脳辺縁系および視床下部の抑制、更に大脳辺縁系の賦活機構の抑制、と説明されています。
広く言えばそうですが、もう少し具体的な場所の例を挙げますと......中脳に背側縫線核(背側にあるからこの名称)という睡眠に関与する部位があるのですが、ここは活動が活発だと覚醒し、抑制すると睡眠に動く事となります。この部位の神経はセロトニン作動性で、睡眠中はセロトニンが減少します。GABAはこの部位の抑制に働く為、セロトニン作動性神経の抑制を行い、結果として睡眠をもたらすと考えられます。
ま、GABAの「抑制」がやはり「賦活」というものに影響を与えていると言えるでしょうか。
ただ、催眠作用と抗不安にGABAが関連しているのは書きましたが、両者の「違い」がどこで生じているかはまだ不明な点が多い様ですです。これがはっきり分かれば、様々な発展が見込めると思いますが.......
と、以上が簡単ながら現状となります。
躁鬱病などで触れた様に、こういうものは現在も不明な点は多くありまして、今後の脳の機構解明が待たれています。ただ、先程書いたように、実際には不安障害は機構の複雑さや社会的な問題もあるようで、統合失調症や躁鬱病ほど余り良く分かっていない、という所感を受けるものはあります。しかし、現在脳と神経の研究から急速にこの分野は発達していますし、昨今の「不安障害」を訴える人の増加から、必然的に不安に関する研究が注目され、進むと思われます。
ま、もっともこういう「不安」が増える社会、というのも問題になる気もしますけどね。それを防ぐのが最も不安に悩む人を減らすのではないか、とも思えますが。
科学も社会も関連が深い、という事はお忘れなく.........
#人間が両者とも関係しますからね。
さて、以上が「不安」とその薬、そして関連機構の研究の話と現状となっています。
統合失調症や躁鬱病と違い、この障害は比較的かなり複雑で未知の部分が多い分野といえる物はあります。その為に、他の物と比べるとまだ「不明な点が多い」というのが現状です。もちろん、それに悩む人にそのようなものは関係はありませんが。ただ、今までに登場した薬剤は現在も使われているものがありますし、そして実際に活躍をしています。また、そこから得られた物から現在に繋がっているのは確かです。ですので、こういう部分の理解も「不安」をより深く理解するのには必要だと思われます。
そして、今は新しい知見から色々と研究が進んでいます。
そう遠くない将来に、おそらくかなりの不明な点は解決するものと思われますが........しかし、個人的な意見ですが。機構の解明や新薬の開発は重要です。ただ、最も重要なのは、先程書いたように「社会情勢」が少なからず関連するわけですから、そういう方面からの「解決」も十分に必要ではないかと思いますがね。
そして、困った事にこういう点で統合失調症や躁鬱病ほどこの分野は整備がされているように見えません。一つの説明だけで一通り解決が出来るほど単純ではない、多種の要因(複雑な神経の関係、他の精神障害との関係)が関与することも原因だとは思いますが.........
今後は、そういう面からの解決も十分に整備される必要があるのでしょうね。
ということで長くなりましたがこれで不安についてのキャンペーンは終わりとすることにしましょう。
それでは、今回は以上ということで。
・2003/01/12追記
余談ながら。
ベンゾジアゼピン類は抗不安薬・催眠薬としてここでは触れていますが、実際にはベンゾジアゼピンの類縁化合物は凝結に関する因子の阻害薬や、HIVの逆転写酵素(HIVの増殖に関連)の阻害薬にも用いられており、実際には幅広く活躍している薬剤となっています。
一応、幅広く使われている、と言うことは覚えておいてもらえれば、と思います。
これで終わりですな。
さて、今回の「からむこらむ」は如何だったでしょうか?
え〜、ちょっと半端に感じるかも知れませんが、以上が「不安」とそれに対する主な薬剤と機構、そして現状についての話です。ま、GABAに関してはこの研究がかなり貢献したりしたので、そういった部分まで詳しく触れておきましたが........ただ、それ以上という部分は結構「不明な点が多い」という物で、残念ながら「途上である」感が強いものとなっています。ですので、「明確な」物を期待された方には申し訳がないですが.......でも、どの医者も「これが」というのは言えないです。もちろん、専門では大分進んでいるとは思いますが、おそらくそれでも「決定的な何か」を出せるほどではないでしょう。理由は上に書いたように「関連する範囲が広い」というものですので........
ま、これから大分発展するとは思いますけどね.........
さて、そういうことで一つ終わりです。次回は今年最後の「からむこらむ」ですね。
まぁ、とり合えず定番ですので。与太話でもしましょうか?
そう言うことで、今回は以上です。
御感想、お待ちしていますm(__)m
次回をお楽しみに.......
(2002/12/24記述 2003/01/12追記)
前回分 次回分
からむこらむトップへ