からむこらむ
〜その32:たった20種〜


まず最初に......

 こんにちは。立秋を迎えながら残暑に苦しむ管理人です。 皆様、残暑お見舞い申し上げますm(__)m

 さて、今回はすっからかんに「からむこらむ」の事を忘れていたのですが、えぇ、大丈夫。ネタはちゃんとあります(^^;; 今回はこの間やった5大栄養素の一つ「たんぱく質」を構成する物質についてのお話。
 実はこれが重要な物だったりするのですが................
 それでは「たった20種」の始まり始まり...........



 この間、その28では、人が生きていく上で必要な「栄養」の話をしたのを覚えていらっしゃるでしょうか? その「栄養」の中で、特に「五大栄養素」という話をしました。 そう、「炭水化物」「脂質」「無機質」「ビタミン」.........そして、「たんぱく質」です。
 さて、今回はその「たんぱく質」についてのお話をする.............前に肝心なことがあります。 それは何か? それは「たんぱく質」は別の物質から構成されている、という事であります。
 では、たんぱく質は何から出来ているか? 実はこれは皆さんが良く聞く物質、「アミノ酸」から出来ているのです。 今回はそれについて色々とお話してみたいと思います。


 では、最初に恒例ですが、お聞きしましょう(^^;;

「アミノ酸」って何ですか?

 えぇ、普段生活していればちょくちょく聞くと思うんですよ、「アミノ酸」って単語は。 しかしながら、これについて何を知っているかと言われると...........これが非常に怪しいかと思います。 どんな種類があるのか、どういった物がアミノ酸なのか................ 名前を挙げられても案外それが「アミノ酸」かどうかはわからないかと思います。
 もし、あなたに少し化学の記憶を持っているのならば.............「アミン」という言葉と「酸」という言葉が思い浮かぶかも知れませんが............
 では、解答でも。
 「アミノ酸」とは、その20でやった「官能基」の中で、「アミノ基」と「カルボキシル基」(=酸)の二つの官能基を持った化合物を指します。
 御存じだったでしょうか?

 では、「アミノ酸」は何でもかんでも生体に関して有効かというと............実はそうではないんです。
 まず、生体を構成するたんぱく質を更に構成するのは「アミノ酸」だと言いました。自然界に存在するアミノ酸はおおよそ300種類あると言われていますが............... では、この中でたんぱく質を構成するアミノ酸は大体何種類あるか御存じでしょうか? ちょっと考えてみて下さい............10?、15?、20?、30?、40? いや、もっと? 100とか? 200? 無駄なく300種類ですか? ...................実はこれ、おおよそ20種類しか無いのです。 しかも驚くことに(いや、当然かも知れませんが)これは地球上の知られているかぎりのあらゆる生物について共通している事となっています。
 そして.........この20種類のアミノ酸には更に共通した事項があります。 それは、各種アミノ酸の構造がある一つの「ルール」に基づいているという事にあります。

 この20種類のアミノ酸の基本構造..........何が共通しているのでしょうか? これは分子の向きとアミノ基・カルボキシル基の位置が共通してます。 その構造は........一般に「L-α-(α-L-)アミノ酸」と呼ばれる構造のものとなっています。 もちろん文書にしてはわかりませんので、その構造を以下に示しておきます。


 構造中の「R」と言うのは、ここにさまざまな「基」.......特に炭素鎖(メチル基や、ベンゼン環など)が入ります。ここに入る「基」によってアミノ酸の種類が分かれていきます(たんぱく質を構成するものなら20種類、ここに入ります)。
 名称中の「L」とか「D」と言うのは、その23その24でお話したように、構成している物が同じであっても構造が違う物を示すものとなります。
 名称中の「α」と言うのは初めて出ますので解説しておきますと、図の右下をご覧ください。これは一般に生化学で出てくる表記なのですが、カルボキシル基(-COOH)を基準に、その隣の炭素を「α」、その隣を「β」、その隣を「γ」..........となっています。で、この炭素..........例えば「α」の炭素にアミノ基(-NH2)がつけば「α-アミノ酸」、「β」の炭素につけば「「β-アミノ酸」という事になっています。

 さて、先程も書いたように、たんぱく質を構成するアミノ酸は上図の一番上の.........「L-α-アミノ酸」(または「α-L-アミノ酸」)..........しかありません。これは........本当でしょうか? これを研究した人達がいるのですが.............これ、本当なんです。 α位をβ、γ、δ、ε..........と変えていったり、D型の物を使ってみたりと色々とこれで「たんぱく質」を作ってみたのですが............ほとんど効果が無い..........というか、生体はこれらを使えないという事が判明しました。
#これはつまり..........生物は「選択的に」物質を選ぶという事を意味するのですが.................


 さて、それでは........化学的特性はここでは触れずに(面白いのですが、知識が要求されるのと、大学レベルになるためです)、20種類のアミノ酸にはどのようなものがあるか、触れてみましょう。
 皆さんは、どれほどアミノ酸を御存じでしょうか? 構造では無く、名前でですが...............ちょっと考えてみて下さい。 どういった名前が出てくるでしょうか..............「リノール酸」とか?いや、これは脂質ですね............... う〜ん.......そうですね、皆さんの身近なもので考えてみると..........化学調味料などの成分(というか、生物は持っているわけですけど(^^;)で有名なのがあるかと思いますが、この成分、「グルタミン酸」はアミノ酸の一種ですね。 後は..........そうそう。女性陣は特に気にされているかも知れませんが「アスパルテーム」っていう甘味料を聞いたことがあるかと思います。そう、「ダイエット用のなんちゃら」って感じで。で、これの入っているお菓子などの箱をよ〜〜く見てみると..........アスパルテームの表示の後に「L-フェニルアラニン含有」とかなんとか書いてあると思います。この「フェニルアラニン」はアミノ酸の一つになります。そして、これを構成するもう片方の物質「アスパラギン酸」もアミノ酸であります。
#「アスパルテーム」:アスパラギン酸とフェニルアラニンの化合物です。

 では、まぁざっと20種類の名前を列挙しておきましょう。これらが生体内のたんぱく質を構成できるアミノ酸になります(一応、化学的な分類をしておきます)。
 以上になります。結構聞いたことがある名前が多いのではないでしょうか? まぁ、あんまり分類は気にしないで下さい(^^;;
 名称の後に3文字のアルファベットが並んでいますが、実はこれは略号を意味します。 案外見たことがあるかと思うのですが.............例えば、たんぱく質はアミノ酸で構成されている訳ですが、その「配列」を表記するときにいちいち名前を書いていては面倒になりますので、このような略号をつかって、

Val-Leu-Ser-Pro-Ala-Asp-Lys-Thr-Asn-Val-Lys-Ala-Ala-Trp-Gly-Lys-Val-Gly-Ala-His..............
(ヘモグロビンのα鎖の最初の20のアミノ酸鎖より)

 と言ったような表記をすることがあります。
 それぞれの物質ですが...........例えば肌の「コラーゲン」っていうたんぱく質ではグリシン、プロリンなどが多く入っています。髪の毛を燃やすと臭いのは硫黄原子を持つシステインとかが含まれているからで、その硫黄のにおいがきついわけです。その他、「うま味」の元のグルタミン酸は神経伝達物質になりますし、チロシンなどは脳内伝達物質の一つである「ドーパミン」などの元になったりします。


 さて、ここでちょっと「栄養学」ですが、「必須アミノ酸」ていう言葉を聞いたことがあるでしょうか?
 必須アミノ酸というのは、早い話「人体で作れないから、食事から取らねばならないアミノ酸」の事になります。ここで注意しないといけないのは、「生物化学的必須アミノ酸」は先程あげた20種類のアミノ酸になります。が、ここでは「栄養学的」な側面からみます。 そう、自分で作れないので他の生命から奪ってくる必要のあるものです。
 この必須アミノ酸は「アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン」の10種類が該当します。これらが子供の時に不足すると、成長の遅延や障害などが発生します。
 この栄養学的必須アミノ酸ですが、非常に重要なことがありまして、1種類でもその量が不足すると..............全体にその影響を及ぼすという事が知られています。 つまり.............長さの違う10本の板で出来た「バケツ」をイメージしてみて下さい。ここに水を満たそうとすると、最大でも「一番短い板」の高さまでしか入りませんよね? そう言ったことがこの必須アミノ酸では言えてきます。 つまり、他のものがいくら長い板で出来ていても、一本でも短ければ意味が無くなってしまいます。
 尚、日本の食生活から見た場合、「リシン」がよく不足しやすいと言われています。
#余談ですが、子供の成長にはこの「栄養学的」必須アミノ酸は重要は重要になるのですが、子供の給食のパンにこれを混ぜた所、親から「添加物を給食に入れるのは何事か!」という圧力がかかり中止になったという、非常に...........複雑(?)な問題が発生したことがあります。


 さて、このアミノ酸ですが単体でも働きがあるほかに、連なってもいます。このつながり.......結合したものを「ペプチド」と呼んでいます。
 このペプチドですが、数個〜10個程度のものを「オリゴペプチド」、それ以上のものを「ポリペプチド」と呼んでいます。 大体、結合しているのが数十〜100程度、または分子量が1万を境にそれ以下を「ポリペプチド」、それ以上を「たんぱく質」と呼ぶことが多いです。
 ペプチドの代表例としては糖尿病に関連して有名な、すい臓のランゲルハンス島のβ細胞で作られる「インシュリン」が特に有名でしょうか。タンパクでは肌の「コラーゲン」、絹の「フィブロイン」、血中で酸素を運ぶ赤血球の「ヘモグロビン」、筋肉の「ミオシン」「アクチン」、他レセプター等.............が有名どころでしょうか(もちろん、多量に、本当に一杯ありますが(^^;)


 あ、長くなりましたね。
 それでは最後にちょこっと病気とアミノ酸に関するお話を。
 ここでひたすら、繰り返し述べているように、たんぱく質はアミノ酸から構成されていますが...............もし、このたんぱく質の中のアミノ酸が「ちょっと」違ったら? これは時として重大な病気を引き起こすことがあります。
 例えば、ヘモグロビン。この中のある1個のアミノ酸が突然変異的に別の物に変わってしまうだけでヘモグロビン異常症...........代表的なものとしては赤血球の形(ドーナッツの穴を塞いだ様な)が鎌状に変化する「鎌状赤血球」と言ったような障害を引き起こすことが知られています(たった1カ所違うだけです!)

 そうそう。ついでにこれも触れておきましょうか。
 先ほど挙げたアスパルテームですが、なぜここには「L-フェニルアラニン含有」と書いてあるか御存じでしょうか? これは、代謝が未熟な子供に多量に与えることで「フェニルケトン尿症」という病気を引き起こすことが知られています。 この病気は本来は遺伝子の欠損などから起こる病気で、フェニルアラニンを別のアミノ酸であるチロシンに変換する酵素が無い、または少ない場合に起こることが知られています。この病気の症状は特に脳に対しての影響があることが知られており、対処が遅れると(対策がとれるので)精神遅滞や脳障害、または若年死することが知られています。
 まぁ、成人ならそうそう問題はないですけどね(^^;;(1982年に、ビーグル犬に体重1kg辺り4グラムを毎日与えて様子を見たところ、特に重要な問題は起きなかったという報告があります。 もっとも..........まぁ、過剰摂取による弊害はあるようなんですけど.............)


 さぁ、長くなりました。
 取りあえず今回は以上です。




 さて.......終わった.........(^^;;

 さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか?
 今回はちょっと焦りましたね(^^;; いやぁ、完全に忘れていましたから(爆) もっとも、ある程度は考えてあったので、すぐにかかれはしましたけど(^^;;
 ま、それは良いとして、今回はアミノ酸について触れてみましたが如何だったでしょうか? 身近で良く見聞きする割には意外と知らない物質であったかと思いますが..............どうでしょう。本当はもっと色々とあるんですが、スペースと時間の問題もありますので結構はしょったのですが、結構面白かった..........と思います。自然の奥深さもまた、感じていただければ嬉しいですね............

 御感想、お待ちしていますm(__)m

 さて、それでは今回はこれまでです。次回は...........全然考えていません(^^;; リクエスト等、ございましたらお知らせ下さい。
 夏風邪を引いている人が多いそうです。気をつけてお過ごし下さいませ.............

(1999/08/10記述)


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