からむこらむ
〜その37:『買ってはいけない』検証(3)〜


まず最初に......

 こんにちは。いよいよ本格的な秋気配を感じるこの頃、皆様は如何お過ごしでしょうか? もっとも、日中は暑いですけどね(^^;;
#バス、電車でおねーチャンが冷房がきつくって震える震える(^^;;

 さて、今回も一連のシリーズの続き、『買ってはいけない』の中身について、管理人の視点からの検証をしてみたいと思います。
 今回は、いよいよ「具体的」。本の中に挙げられている物質についてと、それに関するデータ等を挙げてみようと思います。色々と調べてみた結果は............?
 それでは「『買ってはいけない』検証(3)」の始まり始まり...........



 それでは前回の続きから............の前に。
 今回はいよいよ具体的なデータを出すのですが、一応、現在のところ「その35」、「その36」(そして、「その35」では「その1」、「その2」)を読んでいただいた事を前提の上でこの文章を公開しています。 特にこれから出てくる一部の用語はすでにこれらの中にその解説を済ませていますので、ここでは再度解説を行いませんので、御了承下さい。
 また、内容に対する誤解を招かないためにも、これらは読んでおいてください。よろしくお願いしますm(__)m

 さて、今回はいよいよ『買ってはいけない』に挙げられている物質についてです。が、全物質について検証できるほどの知識、体力、スペース、資金が無いために絞らせて頂きます(^^;; 基本的には食品と農薬に関してになるかと思います。
#ま、それでもある意味十分なんですけどね(^^;;


●ソルビン酸カリウム

 さぁ、ではまず一番手、ソルビン酸カリウムです。
 この本の中では「細胞の遺伝子を破壊する」とか、「最近のDNA(遺伝子)修復能力が失われた」、「5%を含むえさをラットに3ヶ月食べさせた実験では体重の増加が抑制された」という表記です。それに「+α」としては保存料として使われているから、いけないという様な結論になっていますか。
 さて、ここで注目なのですが、まず本の中ではいくらかの問題がでています。例えば、遺伝子に関する表記が見られますが、どれだけの「濃度のものを与えた」とかいう実験に関するデータが一切出ていません。 そして、(これは全部に共通していますが)実際に使われる際の規制値には全然触れていませんね。では、実際にどうなのでしょうか?

 まず、ソルビン酸の構造を表記しておきましょう。

 この物質は構造を見ると不飽和脂肪酸の一種になります。炭素数6で2価(二重結合の数)の不飽和脂肪酸です。1930年代に日本の研究者によって「静菌作用」が報告されています(「殺菌」ではありません!)。ナナカマドの未成熟果汁に含まれている(つまり、天然に存在する........「=安全」ではないですが)もので、現在は工業的に製造されて「保存料として」使用されています。 LD50はソルビン酸が10.5g/kg(ラット、経口)、ソルビン酸カリウムが4.2g/kg(ラット、経口)となっています。腐敗菌、カビ、酵母に対して1000倍以上の発育阻止作用を持ちます。が、少量ではこれら菌に取り込まれて代謝されてしまうために、一定濃度以上無いと静菌作用は出てきません。作用は微生物の脱水素酵素系の作用の阻害とされています。 また、pHが酸性よりになると静菌作用は高まり、pHが3.0でカビ、酵母に対して4000〜16000倍の坑微生物作用を持っています。が、汚染度の高い食品に添加しても効果はないです(^^;; 

 さて、この物質に対する実験報告は手持ちの資料によりますと5%ソルビン酸を含む食餌で2世代に渡るラット飼育試験で異常を認めず、ソルビン酸を飲水(10mg/100ml)で64週間、ソルビン酸塩を飲水(0.3%)若しくは飼料(0.1%)で100週間与えても腫瘍は生じなかったとあります。

 ではこの物質、体の中ではどうなるかと言いますと、はっきり言って毒性はさほどあるとは言い難いです。というか、大学行って生物化学で脂肪酸について講義があれば、こういう物質がどう代謝されるかぐらいはやっていて当然であり(まぁ、「試験問題におあつらえ」といえばどれぐらいのものかわかるかと思いますが)、ましてや研究が結構進んでいてある程度(まぁ、謎もあるんでしょうけど)は脂肪酸の代謝はかなり解明がなされています。
 さて、ではどうなるかと言いますと...........脂肪酸は体内で代謝を受けると、基本的にはアシルCoAという物質に変換された後、β酸化という反応を受けて「細切れ」にされてアセチルCoAという物質に変換され、その後にはTCA回路(クエン酸回路ともいわれる)という代謝経路に入ってエネルギーを生産して、最終的には二酸化炭素と水になって呼気や尿中から排泄されておしまいです(クス)

 では次に使用基準について検討を行ってみましょうか?
 ソルビン酸とソルビン酸カリウムは使用される際、対象となる食品によってその使用量が変わってきます。基本的にはソルビン酸カリウムは「ソルビン酸として」の量に変換され(単に分子量から計算するだけと思われます)て使用されます。基準はチーズにはソルビン酸として3.0g/kg以下、練り製品には2.0g/kg以下、薫製や漬物、マーガリンやジャムなどには1.0g/kg以下で、ケチャップやスープには0.5g/kg以下、果実酒には0.2g/kg以下、乳酸菌飲料(殺菌していないもの)には0.05g/kg以下............といった具合になります(他にも、他の保存料と併用の際には使用制限がかかったりします)。 ここで注意していただきたいのは、この数字が規制値であり、実際には「以下」という事です。
 さて、これを基準にちょっと考えてみましょうか。
 ラットの数値を人間に直接当てはめるのはある意味ナンセンスなのですが、仮にこれが人間に当てはまった場合、LD50は10.5g/kgです。体重60kgの人が100人いる場合、603gを投与すると一週間に50人が死亡するということになります。 さぁ、ここで考えましょう。この数値を達成するためには、規制値ぎりぎり一杯ソルビン酸を使用しているチーズ(取りあえず、3.0g/kgと一番多いですから........って、これだけというのもナンセンスですけど(^^;;)は何キログラム必要でしょうか!? というと、603を3で割ると出てきますね、201kg!! そんなに食えるか!!! そりゃ、もちろん他のものも入っていますから、これだけでの単純計算というのは全然意味がないんですけど............(^^;;
 少なくとも、ソルビン酸で死ぬ前に別の要因で死ぬ様な気がしますが?

 で、さらに著者は5%のソルビン酸カリウムを与えた食事を挙げていますけど、規制値でも最大で0.3%(3.0g/1kg=3.0g/1000g=0.3%)、実際にはそれ以下(まさか、チーズばっかり食べるわけにもいかないでしょう?)の使用となっています。だいたい、100g中に5g(=1kg中に50g)も食品添加物を加えた食品を食べさせたデータを挙げて「毒」を語るナンセンスさを感じざるを得ないのですが(だって、そこらのスナック菓子のタンパク含有率よりも多い事も(^^;;)................って言うよりも。「食品添加物を5%入れた食事をさせてはじめて成長が抑制された」という表記の方がこの場合は正しいと思うんですけど? 大体、一日の食事を考えてみた場合、仮に一日ソルビン酸の規制値一杯使用した(仮に3g/kgとして)の食事を2kg(この数字は多いのでしょうけど)食べた場合、一日の摂取量は6gでしかありません。しかも、3食で分担すると平均すれば1食につき2g。しかも、実際にはそれ以下になっているわけで...........(上の「仮」の例えで言えば)60kgの人100人集めて半分殺すには、更に約600gも必要ですね(^^;; ましてや、食事があと何キログラム必要か.............(^^;;
#あほらし...............
#いや、逆に規制値の認識には良いかもしれませんが(^^;

 まぁ、こう見ると、「この程度の量で食中毒を抑えられる」って見たほうが正しいような感じもあるんですけどねぇ?(^^;


 まぁ、ここから推測するに、筆者達は一体何の資料を調べ、量の概念についてどれほどの理解があり、そしてそれらを扱うのにちゃんとしたバックボーンとなる知識がどれほどあるのか................?
 謎ですねぇ?



●アスパルテーム

 はい、この物質です。
 本の中ではまるで「悪魔の物質」の如き表記が片っ端から表記されており、論文では会社が金を出している所では毒性の指摘がなく、他の所では毒性の指摘が余りにも多い、と、そんな感じで書かれ、更に不要論を上げています。
 が.........論点が違いすぎ(^^;;
 この物質も「論文では」を大量に出している割にはその実験内容に触れているケースがほとんど無く(一部はある)、またこの物質もどれだけが使われているかについてもほとんど記述が無く、どういった局面で使用されるべきかについては全く無し..............
 一応、この物質においては問題点もあるんですけど、それにはどこにも触れていなかったのですが...............

 では、アスパルテームの構造を表記しておきましょう。

 この物質は『買ってはいけない』の中にもあるように、アスパラギン酸とフェニルアラニンという二種類のアミノ酸と、メタノールから合成が可能です。取りあえず、アミノ酸と結合に関しては「その32」と「その33」でやった通りでして、構造中にもそれがちゃんと反映されています。尚、構造中の赤の部分はアスパラギン酸、青はフェニルアラニン、ピンク色のメチル基(その20参照)はメタノールを付加した部分になります。
 特徴は無臭で、砂糖の200倍の甘味をもっています。日本では1983年に使用が許可された物質で、1g辺り4kcalという低カロリー甘味料としての用途を持ちます。 卓上甘味料、嗜好飲料、菓子類、漬物類、穀物加工品、乳飲料等に使用され、ショ糖、ブドウ糖、果糖、ソルビットといった糖との組み合わせで相加作用、サッカリンナトリウムとの併用で相乗作用、食塩などの共存で甘味が増強されるとされています。 毒性は、LD50≧5g/kg(マウス、ラット、経口)となっており、ラットに2g/kg、および4g/kgずつ104週間投与の後剖検(解剖して調べる)で押すで体重増加の抑制、4g/kg投与したものでは104週で血清コレステロールの低下、2g/kg群以上で104週で石灰沈着がみられたとあります。が、ビーグル犬に4g/kg/day(「1日に体重1kg辺り4g」与えたという意味)で106週間投与したところ有意な変化はなかった、とあります。

 さて、この物質ですが........管理人の知識で考えてみた場合、この物質は体内に入って加水分解などの代謝を受けた後にアスパラギン酸とフェニルアラニンに........つまりアミノ酸に分解されて、後はアミノ酸の代謝を受けて終り............と考えられます(^^;; えぇ、原料に分解すると思われます。 ただし、構造中にピンクで描いたメチル基の部分はおそらくはメタノールになるものもあるのでしょうけど、基本的にはメタノールはそれほど出来るとは思いません(専門的注:GSTなどの酵素による脱メチル化反応により、グルタチオンと抱合化という可能性など)。まぁ、メタノールが出来ても元の量が少ないですし、その分よりも更に少ない量しかできませんし........問題にはならないと思われます(他の食品成分にも似たような部分がありますので、全然気にする必要はありません)。
#ここはちょっと難しいか...........
 ただ、この物質には少し難点があります。と言うのは、アミノ酸のフェニルアラニンを含む場合、一部のケースにおいて「フェニルケトン尿症(PKU)」という症状を引き起こすことがあります。これは、体内に入ったフェニルアラニンを、チロシンというアミノ酸にに変換する酵素があるのですが、この酵素が少なかったり全く無かったりするとこの代謝がうまくいかず、フェニルアラニンが蓄積する為に引き起こされる病気です。この病気は、未治療で進むと結果は精神遅滞を引き起こし、臨床的にはてんかん発作、精神障害、「マウス様」臭気などが見られる病気です。 以下に、フェニルアラニンとチロシンの構造を示します。

 一般にフェニルアラニンは酵素による代謝を受けて、上記構造中のチロシンの左のベンゼン環にある水酸基(-OH)が付加されます。しかし、フェニルケトン尿症の患者はこのための酵素が不足、これによりフェニルケトン尿症が起きます。
 この酵素が不足するのは代謝が不完全な乳幼児や、遺伝子的に問題がある場合に引き起こされます(フェニルアラニンが蓄積することによって発育時の神経を損傷させることによって精神遅滞を引き起こします)。 しかし、もともとわかっていれば対処がとれるのと、出生児にPKUの検査を行うことで最近ではその早期治療が可能となっているようです。

 で、この本の中で代謝に関してみてみると..............21ページ、中段にフェニルケトン尿症について「患者は先天的にフェニルアラニンの分解酵素を持たない」って書いてあります............は?どこが「分解」なの? 「分解」って、要は「大きいものを細かくする」んでしょ? このケースでは、フェニルアラニンに水酸基がくっついてチロシンになるんでしょ? ひょっとして、付加反応と分解反応がわかっていない?............(^^;;
 ついでに言うなれば、データではひたすら妊婦や量の書いていないデータを並べていますが、実際にはどの程度摂取しているかとか、健常な人の場合はどうなるかとかには触れていないというのが相も変わらずです。 上記のソルビン酸の例を考えてみると...........またトンデモない量を入れているような論文ばかり指摘しているようなきがしないわけでもないんですけど............(^^;;
 そんなんで信用できないんですけど...........
 ついでに、分解物の毒と唱えていますがどんな分解物が出ているのかには全く表記せず、出来ても単にアミノ酸が2個じゃないんですか? その時点でもデータ不足であったりします。

 さて、では規制値についてですが............
 実は、この物質は規制値についての問題があります。それは、この物質には規制値は無いという事です。つまり、この物質は法的には好きなだけ使用が可能となっています。 本来ならば、こういうことを指摘するのがこの『買ってはいけない』という本の意義じゃないんですかい? えぇ、こう見ると、こういう点が「全然書かれていない」という点でおかしいんですよ、本来は。 そういう事をまともに書いていればもうちょっとマシになっていたんでしょうけど..........(^^;;
 取りあえず、これがこの物質の大きな問題点とするべき部分です。
 で、実際に使用量について調べてみますと...........卓上甘味料、具体的には「パルスイート」という商品をちょっくら見てみますと、成分表に含まれるアスパルテームは..........0.95%? 甘味料100g中に1g無いんですか? もちろん通常は100グラムも使用しませんね。数グラムがせいぜいでしょうか? そう考えると..........3g使用した時に1%として、0.03g=30mg(1g=1000mg)? ちなみに、某レストランに置いてあったレストラン用のパルスイートは2.5g(だったように記憶)に1.7%...........一袋に42mgぐらいですか? よろしい、例えば仮に1日に2gアスパルテームが入ったものを摂取したとしましょう。LD50はラットやマウスで5g/kg以上ですよね? 仮に直接人間に換算すると体重60kgで300g以上ですか?
 ........後はソルビン酸の例と一緒ですね。省略します。

 さて、このようなアスパルテームですが、もちろん過剰摂取は奨められません。が、通常の摂取程度ならばさほどの問題が生じるとはとても思えません(もちろん、その飲料だけをばかばか飲めば別ですけど.......って、それは過剰摂取ですか)。 もちろん、乳幼児にもあんまり奨めませんが...........(^^;;
#しかし、栄養が必要な乳幼児にこのような食品を食べさせるのも問題があると思いますが(^^;;

 あ、長くなってきたので、取りあえず次の事だけは書いておきましょうか。
 取りあえず最近では「ダイエット」的な宣伝文句が目立つ人工甘味料ですが、これはそのような目的以外にも非常に重大な使用法が存在します。それは、特に糖尿病患者の様に、炭水化物(糖とか)の摂取が制限された人達。このような人達の「甘さ」への欲求を満たすのに非常に重要なものとなります!!
 こう言った部分も、ちゃんと指摘した上でものを書いて欲しいものです。 ひょっとして、彼らはそういう人達には「甘いものなんか取るな」とでも言いたいのでしょうか?



 あぁ.........長くなってしまいました(^^;; もうちょっと書けるかと思ったのですが、もう16K近くにファイルが膨れてきました。 取りあえず今回はここまでにしましょう。

 次回はまた続きを..........




 あぁ.........長い、止まらない...........(^^;;

 さて、今回の「からこら」は如何だったでしょうか? 段々書いているうちたった2種類でここまで膨れてしまったのですが...........
 今回は、『買ってはいけない』で取り上げられている物質について「実際のところ」という感じで触れてみました。如何だったでしょうか?って、なんか書いているうちにどんどん長くなっちゃったんですけどね............(~_~;; いや、意外でした。本当はもっとやりたかったんですけど...............
 いや、まぁ、取りあえず今回は2種類という事で(^^;; まぁ、今後はもうちょっと考えて書く事としましょう(^^;;
 そういうことで、来週も続きになります。 亜硝酸ナトリウムとニトロソアミンなどについて突っ込んでみたいと思っています(本当は今日やりたかったんですけど(^^;;)

 あ、御感想、お待ちしていますm(__)m

 さて、それでは今回は以上です。来週をお楽しみに...........m(__)m

(1999/09/28記述)


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