からむこらむ
〜その197:魔女と死に神と美しき婦人〜


まず最初に......

 こんにちは。2月も今週で終わりですが、皆様如何お過ごしでしょうか?
 あっという間に今月も終わり。個人的にはかなり早く感じていますが.......皆さんはどうでしょうかね?

 さて、今回のお話ですが。
 今回は前回の続きと行きましょう。前回はナス科の植物の出発点としてマンドレークの伝説について触れましたが、今回は「魔女」に関連し、毒として薬として活躍した植物がテーマです。
 ま、大分歴史的な要因も多いので、そう言うのが多くなる話にはなるかと思いますが.......これが科学と結びつくと? これは結構興味深い話となっています。
 それでは「魔女と死に神と美しき婦人」の始まり始まり...........



 さて、前回はマンドレークの話をしました。
 前回は大分「どうだか」という物が多かったですが........ところで、皆さんは「魔女」と言う存在をどう思われるでしょうか?

 ........などといきなり「魔女」とか言われても「???」と思われるかもしれませんけどね.......一応歴史上に出てくる、特に最もイメージされやすい中世ヨーロッパに登場する「魔女」と言う事にしておきましょう。皆さんはこの存在について問われた際、何をイメージしますかね?
 一般的なイメージで問われた場合、大体は「ほうきで空を飛ぶ」「魔術を使う」、さらに知っていればサバト(夜に行われる悪魔や魔女の集会:元はユダヤ教・キリスト教の安息日を意味)と言った物も出てくるかと思います。一応、中世で一般的だった「悪魔と契約をした者」と言う本来的な意味で問えばこういうのが普通かと思いますが。
#現在は多種のメディアの影響のおかげで別物と化している部分がありますけどね。
 こういったヨーロッパ圏における「魔女」と言うのは色々とありまして、これがまた文化的には非常に興味深いものです。が、詳しく書くにはスペースが無いので省きますが、基本的には中世ヨーロッパ圏におけるキリスト教の影響が大きいと考えられています。

 中世では「悪魔」に関係するイメージの強い「魔女」ですが、その原形についての見解は一致されているようです。
 つまり、キリスト教以前からある程度医療的な技術、薬草、占いなどに関する深い知識を持っている職業を持つ女性がいました。つまり、占い師や薬剤師といった人たちがおり、更にはキリスト教以前の信仰(主に豊饒神信仰)に絡んで(やがて「異教」「邪教」扱いされる)シャーマンなどもいました。そういった人たちは、患者や助けを求める人から「人知を超えた力を持っている」と言う様な見方をされることもありました。
 と、「そんなので?」と思われる人もいるでしょうが、当時は情報量が圧倒的に少なく、医療技術も今からすれば原始的で低水準。今ならあっさり治る病気も治らない。そんな時代だった訳で、豊富な知識や難病を治すことが出来る存在は非常に「不思議」な何かを感じた、と言うのは想像できるかと思います。そして、そういうものは多分に宗教的な要因を含むものとなりました。
 こういった人たちはヨーロッパには広く各地にいまして、その地域の権力者と結んだり、あるいは必要に応じて力を貸し、援助してもらうなど、大分穏健な繋がりがあったようです。
#余談ながら、ドイツ語の「魔女」はHexeで、この魔女のゲルマン語の原義ではhag(垣根)+zussa(女)の合成語で「女庭師」という意味があったようで、ある種の技術・技能を持った人であることが指摘されています。
#他にも古代エジプトの豊饒信仰の女祭司に起源を求めるといった説もあるようです。

 ところで、中世から近世にかけてののヨーロッパは色々と不安定な時代でした。
 十字軍やペスト、世情の不安定、教皇権の拡大と衰退などさまざまなありまして、同時にキリスト教内でも異端審問などが確立されます。もっとも、当初はまだおとなしかったのですが、徐々にカトリックの影響が弱まり始めると異端審問なども先鋭化しまして、宗教改革の頃からは特に先鋭化します。もちろん、これはカトリックの権威が揺らいだのが原因でして......この流れはちょうど14世紀以降の頃から始まることとなります。
 もともとキリスト教は多分に「魔術」と言ったものを排除する要素が強いようで、この先鋭化、つまり「魔女」の統一的な見解の成立と異端認定が進むとともに、先程挙げた様な技術や知識・能力を持っていた人達が「魔女」とされ、同時に異端と言うことで厳しく取り締まられる  いわゆる「魔女狩り」が行われるようになります。
 つまり「魔女」とは教会権力によって「作られた」存在でした。
#ワーグナーの『ローエングリン』などを見ても参考になるかもしれません。

 では、この「作られた魔女」はどういう要素をもっていたのか?
 もともと「悪魔的ではなかった」魔女に「悪魔的」な意味を持たせ、決定づけたのは『魔女の槌』と言う有名な本でして、1486年頃にドミニコ会の修道僧二名によって書かれたと言われています。この本は出版されると、やがて教皇の推薦を受けるなどして17世紀頃までベストセラーとして売れ続け、そして魔女狩りのバイブル的存在となります。この本は魔女の特徴からその拷問法まで詳しく書かれたものでした。
 この本以降、特に魔女についての議論が活発になりまして、やがて魔女の特徴が以下のようにまとめられます。
 等です。更に細かく言えば「涙を流さない」「悪魔によって幻を見る」「毒薬を作る」等たくさんあるのですが、大体は上に挙げたものが共通し、実際にこれが「魔女」のイメージとなって当時の無数の絵の題材にもなります。そのいくつかはまさに童話に出てくるような魔女だったりしますが........
 もっとも、魔女について言われていることは聖女にも共通しました。
 つまり魔女は悪魔によって幻を見るとしても聖女も聖なる幻視を行いますし、両者とも預言を行い、また空を飛ぶかと思えば複数の場所に現れ、一方が魔術を使えば片方は奇蹟を行います。更に魔女に悪魔の印があるならば、聖女には聖痕があるわけで、非常にいい加減であると言わざるを得ない物はあります。
 実際、客観的に見るとどう見ても聖女と魔女と言うのは「紙一重」でして、純粋に体制側から見て「都合が良いか」「悪いか」で決まっていました。つまり異端と聖人の違いが紙一重であることが実際にあり、多分に教会権力側の都合で決められた部分は強くあります。そのために、例えば「オルレアンの処女」ことジャンヌ・ダルクは異端・魔女として(神の声の「疑惑」や男装した=魔女の変身に通じるとされた事が原因)処刑され、後に列聖されるという様に非常に曖昧なものがあるといえるでしょう。

 ところで、このような「魔女」は「魔女狩り」によって、「時代・地域によっては」厳しく取り締まられました。
 というのも地域によって行ったり行われなかったりなど、かなりいい加減。更に実行してもこれがまたいい加減で、基本的には他者からの申告で捕らえられました。他にも「魔女探索隊」なるものが組織されて魔女を探し出し、実際に「魔女を発見」することもありました。そういう場合、大体は熾烈極まる拷問(これが絵や実物が残っているから恐ろしい)で「自白」させられ、その後処刑されることが良くあったようです。実際、「被疑者」が容疑を否認した場合、行き着く先は拷問による死、あるいは「どう答えても魔女とされる」様な質問を受けたり、または試罪法によって殺されました。
 その試罪法の有名な例には「スイミング」というのがあります。これは早い話容疑者を「簀巻き」にして、「浮けば」魔女(洗礼を受けていない魔女は水をはじくと考えられた)ということで火あぶり。「沈めば」無罪というものなのですが、沈んでも溺死して判定されるので、どっちにしても待っているのは「死」でした(地域によっては「浮けば無罪」だそうですが)。
 これは大げさではなく、時代と地域によっては「魔女」と睨まれたらかなり高率で処刑となることもありました。
 その実態の例を挙げておきますと、ドイツのバンベルク司教領の市長の一人で、1628年に「魔女」として逮捕されたヨハネス・ユニウス(男)の手記には、「拷問係が『何でも良いから自白を作ってくれ。罪は無くとも逃れることは出来ないから』と言う」と残されています。
 こういった事もありまして、「あいつが気にくわない」「何となくうさんくさい(社会的弱者を含む)」と見れば虚偽の告発をして死に追いやるケースが多くあります。ひどいと「気にくわないが離婚できない女房を殺す」為、あるいは子供のいたずら、あるいは親から思い込ませる(洗脳)と言うケースも存在しています。他に魔女探索隊の中で功名のためだけに「魔女狩り」を行った輩もいまして、例えば「言い伝えによれば」900人以上も「摘発」した(この中で何人生き延びたか?)ケースもあったりします。
 そう言った探索隊の中でも、イギリスのマシュー・ホプキンスと言う男は特に悪名を残しています。
 ホプキンスの場合、彼はあらゆる汚いテクニックで告発を行い、更には「スイミング」のテクニックが上手だったこともあって、3年間で130人もの「魔女」を摘発しています。もっとも、後にある地域の名士の告発に失敗してから各地で恨みが噴出して、やがて彼自身が「魔女」として告発されて「スイミング」で浮いて殺された(裁判前にリンチで撲殺されたらしい)と言う経歴を持っていますが........

 ただ、このように暗い、人間性を失った話だけではありません。
 オランダのある村では、このような「魔女狩り」にうんざりした役人が秤を作り、これに「魔女」の容疑者を乗せ、全員を「空を飛ぶには重すぎる」と無罪にした、とした話も残っています。他にも教会側でもサバトやらそう言う物を信じず、「馬鹿らしい」と一蹴した例もあります。
 いつの時代も「常識的な人がいる」ということかもしれません。
 また、時代・地域によっては「魔女」の判定にはかなり慎重で、例えば上に書いた技術を持った人達(占い師などもすべて含む)が告発されても、「魔術・魔法を使った」事によって魔女とされる、という事はそうなかったようです。実際にはそういうケースが多かったようですが.......
#無罪放免、あるいは禁固刑を言い渡しても実施せず、とか。


 さて、長々と魔女にまつわる話をしていますが。
 興味のある方は魔女について、あるいは魔女狩りについて、異端審問や心理学、ワーグナーなど、関連する書物は大量に出ていますので、興味があればそちらを、と言うことになります(変遷など詳しくやると時代背景の理解が必須です)。調べれば上に書いたものは「一部」である事が良くわかると思います。同時に、結局キリスト教は、土着の民間伝承や古来の信仰の影響を排すことが出来ず、欧州の「キリスト教」が一神教がちがちになりえない事などもわかります。
#伝承・民話・風習が好きな方はわかるかと思いますが。
 とりあえず、現在では「魔女狩り」については集団ヒステリーの一種として考えられており、それを証明する事例が多く出ています。事実、時代が下ると民間よりも修道院といったところで局所的に起こるようになるのを見れば良くわかります。
 もっとも、形を変えて「魔女狩り」は今でも存在していますがね。

 ところで、この「悪魔と契約した」魔女像の話にはいくつか科学的な見地で興味深いものがあります。
 何が興味深いか?
 実は二点ありまして.......魔女の特徴に「膏薬を塗る」、「空を飛ぶ」という物があります。実はこれ、膏薬を塗る位置も大体決まっていて、箒に塗ることもあれば、人体の腋の下や毛のあるところ、あるいは粘膜、あるいは全身に塗られていました。その様子が絵になっていたりもしていますので(魔女に関する絵は極めて多い)、調べればおそらく容易に見つかることでしょう。
 では、この二つと科学とは何かつながりがあるのか?
 答えは「ある」となります。

 魔女の膏薬は製法が色々とあるのですが、その代表的なものは決まっています。
 例えば、魔術的な薬草や毒草の類いでして、ハッカ系の物やドクニンジン(猛毒:ソクラテスの飲んだ毒として有名)、トリカブトと言った物。そして、前に挙げたマンドレーク、あるいはヒヨスやベラドンナといった植物が用いられていました。
 この中の注目すべき点には最後に挙げたヒヨス、ベラドンナという植物があります。
 実はこれらはナス科の植物だったりします。


 ベラドンナ、と言うのは実はその5である程度簡単に触れていますが、改めて触れることとしましょう。
 ベラドンナは学名をAtropa belladonna(アトロパ・ベラドンナ)と言いまして、英名はbelladonnaですが通称"Deadly Nightshade"と呼ばれる多年草です。ヨーロッパやアジアの平地に生育しまして、葉は約10cmの楕円形、互生で鋸葉がなく、花は下垂します。花は約2.5cmで紫がかった赤で、やがて黒みがかった赤い液果をもつようになります。
 一方、ヒヨスは学名はHyoscyamus niger(ヒヨスチアムス・ニガー)と言いまして、英名はhenbane。ヨーロッパ中南部およびアジア西部に野生する、30〜150cmの1年または2年草です。いわゆる「雑草」ですが、悪臭を放つのが特徴です。
 両者とも古くから知られていまして、ベラドンナはすでに紀元前一世紀にディオスコリデスによって記録され、ヒヨスも紀元60年頃には記録が残されています。ただ、その本格的な登場(というか悪用というか)は大体中世ヨーロッパ以降でして、ベラドンナは広くヨーロッパで知られ、ヒヨスはヨーロッパだけでなく中国などでも用いられるなど(これは次回に少し関与)、さまざまに使用されていました。
 その効果は非常に興味深いものでして、両者とも実は前回挙げたマンドレークと共通するものがあります。
 つまり、催眠作用があり、鎮痛・麻酔作用、そして幻覚を見たり量が過ぎれば死に至る、と言う特徴がありました。

 もう少し例を挙げておきましょう。
 ヒヨスはギリシア時代には使われていたようで、デルフィの神殿において巫女がヒヨスをくゆらした煙を吸うことでトランス状態になり、その状態で神のお告げを聞く、と言うことがされていたようです。また古くは「ヒヨスの葉を4枚以上飲み物に入れて飲めば忘我の境地になる」と言う記録もあるようで、両方の情報をあわせるとどういう性質があったか、と言うのは理解できるでしょう。
 もちろん、ヒヨスはそういうものですから安全、とは言い切れるものではなく、量が過ぎれば死に至りました。よって、暗殺などに用いられることとなります。
 一方のベラドンナは先程書いたようにヨーロッパでは良く使われることとなりました。それも医薬から暗殺までさまざま、でして.......そういった知名度は非常に高い植物となっています。

 ここで魔女の膏薬の話に戻りましょう。
 ベラドンナやヒヨスといったナス科の植物が入ったこの膏薬はどういう効果をもたらすか? 実はこれは未検証の怪しいものではなく実際に検証がされています。しかも16世紀の中ごろと言う、比較的早い時期に。
 1545年に法王ユリウス3世の侍医であったアンレス・ラグーナはこの膏薬に関する実験を行いまして、それを詳細に記録・報告しています。その内容は膏薬の中身について先程挙げた植物などが入っており、更にそれを死刑執行人の妻を用いて頭のてっぺんからつま先まで塗ってみる(この女性は不眠症だったらしい)と、そのまま深い眠りに陥ったと言うものでした。しかも眠りに落ちてから36時間経過するまで、さまざまな努力したものの目を覚まさず、どうにか起こしてみると「何で間の悪い時に起こしたんだ!」と怒鳴られたと言う記録が残っているようです。彼女によれば、ちょうど「素敵に楽しい喜びの世界に浸っていた」時だったそうですが.......
 こういった検証は他にも行われたようで、実際に現代でもゲッチンゲン大学のW.E.ポカートなどが16世紀の「魔女の膏薬」を処方通りに復元し、自らも体験をしています。いずれも共通するのは「快楽と歓喜」といった経験をし、更には空を飛んだり騒いだりした、と被験者の「体験」で、記録が詳細に残っています。
 こういった事から、現代において「植物より得られる幻覚剤」について触れたシュルテスとホフマン(LSD発見者)による著書『Plants of the Gods』においてマンドレーク、ベラドンナ、ヒヨスは"The Hexing Herbs"(魔女の薬草)として分類されていたりします。
#そして魔女狩りの拷問ではこの「体験」を強引に言わせた、と言う事もありましたが。

 しかし、この体験談および、ヒヨスやベラドンナのもたらす効果を総合すると非常に興味深い事が推測されます。
 つまり、「魔女の条件」とされる飛行、そしてサバトの騒ぎと言ったものはすべてこの膏薬のもたらす効果ではないか、と言うことが十分に考えられます。事実、ヒヨスやベラドンナは深い眠りをもたらし、そして精神活動に深く影響を与え、幻覚を見せたりする........
 これは現代でもちゃんと検証されまして、こういったナス科の植物の種子などを使って実験して見た結果、被験者は高揚して幻覚を見、その中で空を飛ぶなどさまざまな精神作用を体験した事が記録されています。ある種の「幻覚剤」として使える、と言うことになるということですが.......もちろん、量が過ぎた時は言うまでも無い結果になりますけどね。
 ではこの膏薬は実際に「魔女」が作っていたのか?
 ま、中には本当に魔女になりたがった人は作ったかもしれませんが、最初の方で触れたように、もともと「魔女」とされた人たちは薬草などに通じていた人が多かったわけですので、そういった人たちが例えば占いや預言を聞く際に用いた、と言うことは十分考えられますし、何らかの例えば不眠症の人への薬、または鎮痛薬として作っていた可能性もあります。
 ですので、十分に「魔女」とされた人たちがもともと作っていたと考えるのは自然でしょう。そして、そういう物を使って体験した人たちなどの話などと「魔女」観の確立が相まって一般的な「魔女」の姿が出来上がったといえるのかもしれません。同時に、大きな悲劇も起きたといわざるを得ないですが..........


 さて、魔女の話はこの程度にしまして。
 この二種のナス科の植物は中世以降非常に良く使われました。用途は幅広く、薬用から毒殺まで様々です。中でもベラドンナにまつわる話は多く残っています。
 ベラドンナについて特筆すべきは、抽出した液を薄めたものはイタリアで婦人に愛用されました。これはこの液が瞳孔を拡大させる効果を持っていたためでして、これによって「目が大きい」→「美人に見える」と言う事で、婦人達には非常に良く使われたと言われています。もっとも、まぶしく感じるなど不便はあるのではないかと思いますが........ただ、この性質は眼科で注目されまして、実際に眼科医はベラドンナを用いるようになります。
 他にもベラドンナ・ヒヨスとも鎮痛・鎮痙から胃腸薬といった腸の薬にも用いられています。
 一方、ベラドンナの毒性もまた強烈であることが知られていまして、しかもベラドンナの各部位に毒があり、液果を一粒食べただけで死に至ることもあるなどかなり強い毒をもっていると言えます。それゆえに子供が食して、と言った事故は結構あったようです。とは言ってもその毒成分で目を大きくもしているわけで.......もっとも、美の追及は命を削ってでも、と言う人は多かったわけですので、そう問題にはならなかったかもしれませんが。
 また、他にも魔女の話で挙げたような「睡眠薬」的な物もあった可能性はあります。
 例えば有名な話に『ロミオとジュリエット』があります。知らない方はまずい無いと思いますし、内容は探せば容易に見つかるとは思いますけど、ジュリエットは修道士より薬をもらい受け、そして仮死状態に陥る、と言うシーンがあります。そのおかげで色々と問題が起きて、最後に悲劇が待ち受けているわけですが.........
 この薬、仮死状態にも似た深い眠り、と言う部分がありますけど、おそらく時代的な要素から見てもこれは魔女の膏薬的な物、つまりベラドンナやヒヨスと言ったものの薬があって、これを利用していたのではないかと推測できます。しかも与えたのは修道士でしたから、比較的魔女がどうこうではなく、もしかしたら民間でも比較的良く使われていた可能性は否定できないと思います。
 ただ、量を間違っていたらジュリエットは薬の中毒で十中八九死んでいたでしょうけどね........まぁ、そうなったらなったで話は成立してしまいますが、悲劇の度合いはまた違うものにはなりそうですけど。
#当時は毒は「百花繚乱」の時代でしたので、また色々とあるとは思いますけどね。

 このような性質はベラドンナの学名に反映されているというのはなかなか興味深いでしょうか。
 つまり、ベラドンナ(belladonna)とは「美しき婦人」を意味し、一方でアトロパ(Atropa)は麻の話で触れた通り、ギリシア神話の運命の女神、しかも「運命の糸を断ち切る」役割を持った女神アトロポスに由来します。更に言えば、アトロポスはギリシア神話では「醜い老婆」として描かれている(とは言っても、そんなに登場する話はないですけど)訳でして........
 相反する性質をもったこの植物の姿を反映した学名だと思いますけどね。


 さて、本当はもっと触れたいのですが、とりあえず長くなりました。
 以上でベラドンナ、ヒヨスの話をひとまず区切ろうと思いますが、実はまだこの話は続きます。それは、今まではヨーロッパの話が中心でしたが、実は日本でも重要な話があります。
 それは次回に触れることとしましょう。


 では、今回は以上ということで。




 ふぅ...........

 さて、今回の「からむこらむ」は如何だったでしょうか?
 まぁ、以上が「魔女」の話ですけど。一応、「その5」などで触れた部分と重複しますが。こっちがかなり深いものとなっています。
 とりあえず、「魔女」だけに関しては時代と地域で本格的に違いますので、興味があればそちらを調べて欲しいですが。まぁ、少なくともこういう背景があった、というのは覚えておいても損はしないでしょう。そして、それに関した植物「ベラドンナ」の使われ方もまた強烈で有名なものとなっています。
 おそらく一般の方が思っている以上には色々と研究はされていると思いますので........興味持ってもらえれば何よりです。

 さて、そういうことで一つ終わりですが。
 次回は視点を東洋に移してナス科の植物の話をして見ようかと思います。これがまた歴史的な事件に絡んでいるのですが.......

 そう言うことで、今回は以上です。
 御感想、お待ちしていますm(__)m

 次回をお楽しみに.......

(2002/02/25記述)


前回分      次回分

からむこらむトップへ