からむこらむ
〜その215:栄光と引き換えに〜


まず最初に......

 こんにちは。8月も後少しですが、皆様如何お過ごしでしょうか?
 暑さも大分収まって来つつありますが。生徒諸氏にとっては宿題との格闘の季節でしょうかねぇ?

 さて、今回のお話ですが。
 ひとまず、前回の続きといきたいと思います。ま、前回は主に分類などに注力しましたが、今回はもっと内容について、特に現在よ靴買われる薬剤についてのメリット・デメリットに触れていきたいと思います。ま、総合的な話になりますので、各論は今までの他の話、あるいは別に見ていって欲しいと思います。色々と考えさせられる話だと思いますがね、個人的には。
 それでは「栄光と引き換えに」の始まり始まり...........



 さて、前回まではドーピングの種類等について触れました。
 今回はその続きといきましょう。


 「ドーピング」と言う行為はどういう問題があるのか?
 前回でも簡単に触れましたが、皆さんは即答できますかね? ドーピングの問題点は、日本オリンピック委員会によれば次のようになっています。
  1. スポーツのフェアプレーの精神に反する:公正な競技を阻害する
  2. ドーピングは社会悪になる:社会的なルール違反の容認に繋がる
  3. ドーピングは選手の健康を害する
 となっています。問題なく最初と二番目の用件は容易に理解できるでしょう。しかし、3番目の用件は残念ながらあまり、一般に伝わっていないようです。
 何度も「からむこらむ」で触れていますが、人体と言うものはバランスの上になり立っているものです(ホメオスタシスなどやりましたが)。促進するものがあれば、抑制するものがある。それらが適度なバランスの上に立って健康と言うものが保たれています。これはかなり複雑なものであり、このバランスが崩れる事でいわゆる「病気状態」と言う事になります。
 薬物はこのバランスを変更する、と言う事になります。もちろん薬として市販されているものもあるわけですが、しかしドーピングの際に用いられる量は「薬」としての度合いを超えるほどの多量になります。過去に何度も「からむこらむ」で触れている通り、「毒」と「薬」と言うのは本質的には同じものですので、いくら「薬」であっても過ぎれば毒となります。

 では、どのような問題が起こるのか?
 興奮薬などは過去に触れていますし、鎮痛剤なども過去に触れていますので詳細は省きます。基本的にはこの中毒症状と全く同じ事が競技者に起こると考えれば問題ないでしょう。
 ここで本格的に扱うものとしては、現在主流のたんぱく質同化剤と増加中のペプチドホルモンにしておきましょう。

 たんぱく質同化剤は基本的には筋肉の増強に主眼が置かれています。
 これらホルモンはステロイドホルモンであり、基本的には男性ホルモンの作用をするものとなります。ま、小中学校の保健で触れるような二次性徴に関連したものになりますが、男女ともに男性ホルモン、女性ホルモン(エストロン、エストリオール、エストラジオールを主に指す)といった性ホルモンが存在し、その比率の違いで身体に影響を与える事は特に説明は不要でしょう。
#同化ステロイド、と言う事で「アナボリックステロイド(anabolic steroid)」と書くメディアもあります。
 いわゆる「男性は男性らしく」「女性は女性らしく」と言う物を支配するのがこの性ホルモンと言うものになります。ついでに、細かい事を書くとキリがないので専門書に任せますが、女性ホルモンは基本的に男性ホルモンから作られています。


 男性ホルモンの主な働きは色々とありますが、ドーピングに期待されているものは主に二つです。その一つは名の如く「身体の男性化」、そして「たんぱく質同化」=「筋肉の増加」と言ったものがあります。いずれも男性の特徴を作る為のものでして、基本的に「薬」として使う場合には、何らかの要因(精巣に障害、あるいはテストステロンの分泌を抑制する下垂体や視床下部の障害)で男性ホルモンの生産が減った場合に男性ホルモン補充療法、と言う形で行われています。

 ドーピングにおいては男性ホルモンの使用と言うものは、つまりは男性化・筋肉の増強を促進させる事となります。
 この効果は凄まじく、前回でも触れましたが東ドイツの元女性水泳選手が1年間で10〜15kg体重が増加し、そのほとんどが筋肉であった等と言う事があります。筋肉の増強はつまりは力が関連する競技においては結果に直結するわけでして、事実男性ホルモンの服用によって(男女関係なく)記録が伸び、驚異的な記録を出す事が可能になります。
 その代表的な話はおそらく20代後半の方なら覚えているでしょうか?
 1988年ソウルオリンピックで、9月24日に行われた陸上100mの争い。当時のトップを競ったのは米国代表のカール・ルイス、そして同年齢のカナダ代表のベン・ジョンソンでした。ジョンソンは当時世界記録保持者(9秒83)でして、この大会でもこの二人の争いが期待されていました。その結果はジョンソンがルイスに0秒15と言う大差をつけて9秒79と言う驚異的な世界記録で勝利をします。
 ジョンソンは会見で「この記録は100年は破られないだろう」と言い残していますが.......ま、現在の世界記録は2002年に米国のティム・モンゴメリが記録した9秒78でして既に破られていると言えば破られていますが。
#余談ながらモンゴメリもドーピング疑惑がつきまとっています。
 話を戻しましょう。ソウルオリンピックの陸上100m勝者はこうしてベン・ジョンソンとなったのですが、3日後にジョンソンの尿から禁止薬物である「スタノゾロール」が発見されます。これはたんぱく質同化剤でして、筋肉増強のために用いられる薬剤でした。その結果IOCはジョンソンの金メダルを剥奪と記録抹消、更に二年間の資格停止処分を下し、そして繰り上げでルイスの金メダルを獲得を発表します。
 100m走のトップにおける0秒01の時間、と言うのはとてつもなく巨大な壁である事は容易に想像がつくでしょう。それをあっさりと薬剤を使えば超える事が出来る.......確かに、効果は大きいと言えます。実際、ジョンソンは1981年頃から薬物を使用し、1985年頃にスタノゾロールの使用を始めて記録が伸びたと言います。

 このような絶大な効果をもたらすたんぱく質同化剤ですが、やはりホメオスタシスを崩していくために多大なデメリット、つまり「副作用」を呈します。
 どのような物があるか?
 男性ホルモンの増加、と言う事は「身体の男性化を促進」する事になります。その為、男性型の脱毛、性欲の異常なまでの亢進、勃起の持続、更に攻撃的な性格になり、いらいらし続ける事となります(動物のオスが去勢で大人しくなるのは、男性ホルモンが減る事で攻撃性が減少するため)。更には多毛になる上、男性ホルモンの過剰によって関連する臓器である前立腺や精嚢が肥大化して場合によってはガン化する事となります(前立腺癌と男性ホルモンの関連は有名です)。特に男性ホルモンの増加は女性にとっては更に深刻な事態になりまして、性器であるクリトリスの肥大、変声、生理不順、不妊と言った作用をもたらします。
 一方、こんな作用もあります。
 管理人などはアトピー性皮膚炎などを経験していまして、ステロイド剤の使用経験があるのですが、同じような経験を持つ方もいらっしゃるでしょう。そういう方は分かると思いますが、ステロイド剤と言うものは非常に効果がある薬剤です。ですが、連続の長期にわたる投与は諸刃の剣でして、「外部から必要なステロイド剤が入ってくる」事によって体内に過剰なステロイドが存在すると、人体はそのステロイドに対応する受容体を減らしたり、あるいはそのステロイドの生産・分泌を減らし、あるいは止めてしまいます(ダウンレギュレーション)。ですので、ステロイド剤の使用の基本は「短期間で一気に」と言うのが基本で、これを守らなずにだらだらと使用すると上記の理由により、ステロイド剤の使用をやめた直後により悪化する事がある。
 男性ホルモンもステロイドホルモンですので、これと全く同じ事が起こります。
 男性ホルモンの投与は効果を上げる一方、身体の方も「過剰なホルモン」に対して抵抗すべく、男性ホルモンの過剰な摂取が続くと、その受容体を減らしたり、あるいは分泌能が低下します。この結果、男性ホルモンの投与をやめると身体の性ホルモンのバランスが崩れ、男性ホルモンが生産されない為に女性ホルモンが相対的に多くなり、その結果、本来の目的とは逆に女性化を引き起こすと言う現象を引き起こします。
 これは特に男性にとってかなり深刻で、動物実験ではテストステロンを分泌する精巣の間細胞が脱落するなどと言う結果があります。実際、睾丸の縮小やペニスの縮小を伴う事も有り、性欲低下、勃起不全、精液量も減る事となります。また男性の乳房が女性化の様になり、深刻な場合には女性よりもバストがある、と言う事例があります
 対処法は男性ホルモンの充填療法と言う事になります。ま、端から見れば「男性ホルモンだから男性化だけ」と思われるでしょうが、ステロイド剤の特徴故に逆の症状も起こってしまう。なかなか難しいものがありますが。
 この男女ホルモンの比率は重要でして、これを使う事で性同一性障害に悩む人や流産を繰り返すなど苦しむ人がいます。

 更にたんぱく質同化作用の問題もあります。
 人体で直接的に運動と言う力を生み出すのは筋肉、と言う事でこの薬剤でその筋肉の量を増やしますが、これが異常に増えるとどうなるか? 生体のホルモンバランスの問題さえクリアーすれば問題はない、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外と認知がないのは筋肉と骨のバランスと言う問題です。
 たんぱく質同化作用のある薬剤は、確かに筋肉は増やす。しかし増える筋肉は全身にいたり、「特定の部分だけ」ではありません。更に筋肉を支えるべき骨について特に強化をしてくれません。その結果、筋肉と骨のバランスがいびつなものになり、ついには増え過ぎた筋肉は骨を圧迫するようになります。
 その結果は恐ろしい実例を生み出します。
 旧東ドイツではこのドーピングが極めて盛んに行われていたのですが、ある女子競泳選手は発達し過ぎた筋肉によって脊椎が圧迫されて痛め、ついにはコルセットを使用しないと腰が曲がる様になります。骨格が筋肉を支えきれない、と言う事から来る悲劇でして、相当な苦痛となっています。
 他にも筋肉の増強を行う一方、腱の方は萎縮し、断裂が多くなる事もまた知られています。

 他の作用も含め、表にまとめると以下のようになります。

たんぱく質同化剤(男性ホルモン)による主な副作用
副作用の分類理由症状例
男性化の促進男性ホルモンの過剰身体の男性化 性欲亢進 攻撃性の高まり 前立腺・精嚢肥大化 多毛 前立腺ガンなど
(女性では)生理不順 不妊 性器の男性化 など
女性化連続投与による男性ホルモンの分泌能低下・停止乳房の女性化 抑鬱 性欲低下
精液・精子量減少男性不妊
筋肉の異常発達たんぱく質同化作用の促進筋・腱の断裂 悪性腫瘍 異常たんぱく質の増加 骨・関節などへの負荷増大
脂質代謝異常コレステロール増加
(男性ホルモンの一般的な作用)
動脈硬化 コレステロール値上昇(悪玉コレステロールの増加)
肝機能障害過剰な薬剤の投与
(ステロイドが脂質であるため)
肝機能低下全般
その他骨髄関係
塩類への影響
赤血球・白血球・血小板増加 白血病 免疫系への悪影響
血圧上昇

 一方、ペプチドホルモンもまたヒトのホメオスタシスを崩すと言う点でたんぱく質同化作用と似ている部分があります。
 ペプチドホルモンはいくつかありますが、代表的なものとしてはヒトの成長を促すヒト成長ホルモン(hGH)とIGF-Iと言うものがあるでしょうか。これはいずれもヒトの各種成長因子の発達を促すものです。その為に筋肉などの増強を促すと言う物になります。
 但しこれらはデメリットも当然ありまして、たんぱく質同化剤よりは副作用は少ないものの、このようなホルモンの分泌過剰によって病気になる事が知られています。代表的なものは巨人症や末端肥大症で、骨の成長が前者は終わっておらず、後者は終わった後で終わります(骨の成長点である骨端線が開いた状態、後者は閉じた状態)。ドーピングでは末端肥大症が問題になりまして、身体の末端部、つまり指などが大きくなり、内臓筋が肥大、更に額が突出して顔も変化し、咽頭も肥大して声が野太くなると言う特徴があります。これらの症状は不可逆的である事が知られ、基本的には治りません。
 更には副作用としては血糖値の上昇の為に糖尿病に、またヒト成長ホルモンを分泌する甲状腺での分泌能が低下。他にもガンの発生も促進し、白血病にもかかりやすくなります。
 また、最近非常に問題になっているのが造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)です。
 赤血球の増加によって持久力を向上させる、と言うホルモンで最近はかなり使われていると言われています。医療面でもかなり使われており、貧血対策などで活躍をしています(輸血回数を減らすなどの効果があるらしい)。かなり苦労の末にひとまずン生体由来でない物の識別は出来るようになったようですが.......それはともかく、EPOは血液の粘性をますと言う副作用があります。。この結果、高血圧になる上、血栓が出来やすくなり脳梗塞や心筋梗塞と言った症状を引き起こしやすくなります。増してや運動中は水分の損失が多い為に、この症状をより促進させてしまう事となります。
 1990年代に欧州の自転車競技の選手がこれにより死亡したのではないか、というケースが報告されているようです。

 なお、排卵誘発剤などもペプチドホルモンに入ってありますが。
 これはどういう事かと言うと、排卵誘発剤の効果としては女性ホルモンの増加に繋がりまして、その結果バランスをとる為に男性ホルモンが増え、その結果たんぱく質同化作用の促進を期待すると言うものです。その結果、たんぱく質同化剤と同じ効果と副作用を持ち、そして女性化と言う副作用も持つ事となります。
#なお、ボディビルディングを行う人でも薬剤を利用して同じように副作用に悩む例が多くある様です。


 こう言った薬物の使用に対し、当然ドーピング検査の方にも力が入れられています。
 興奮剤などといった薬物は、その検出方法は容易です。ですがたんぱく質同化剤などといった、生体由来に関わる物の検出は極めて困難を極め、現在でも非常に問題になっています。
 例えば、当初たんぱく質同化剤などは判別が難しく、またテストステロンとエピテストステロンの比率(T/ET比)が6:1以上でドーピングと判定されるのですが、ヒトによっては特に何もやっていないのにこの比率を超えてしまうケースがある一方、代謝の関係からドーピングをかくす為に別の薬剤を使ってこの比率を変えると言う手法をとる選手もいます。
 ではどうするか?
 ドーピングの場合は植物由来の物から作る事が多いとされます。一方、ヒトの場合は当然「動物由来」となる。実はこの植物由来か動物由来かで、構造中の炭素の同位体が違う為、これを調べる事でドーピングを発見すると言う方法があります。
 また、EPO等のペプチドホルモンは現在かなり検出が難しく、大分「裏で」は平気で使われているとされています。実際、これらの検出は大分難しいようで大分野放しになっている状態であるとも言われています。実際、1998年の「ツール・ド・フランス」において伴走していた監督の車から大量のEPOアンプルが見つかって逮捕される事件なども発生しているなど、検出による云々、と言うものが少ないのが現状でしょう。一応、ヘモグロビン濃度を調べると言う方法があったのですが、採血と言う問題から難しかったようです。
 しかし、2002年のソルトレーク冬季五輪からEPOの検出が始まっています。これは人工的に作ったEPOは特許取得の為に人体のものとは構造を若干変えてある為で、それを利用した検出法となっています。また、電子の挙動が人工物とは異なると言うフランスの研究があり、完全に隠ぺいできるものではないものと考えられています。
 もっとも大分使われているようですがね........
 現状としては、ドーピング検査を発達させると、その裏をかいて新しくドーピング薬剤・方法を開発する、と言う様なイタチごっこが現状としてあるようです。使う側も検出を防ぐ為に「計画的」にドーピングをしていまして、例えばたんぱく質同化剤なら大量投与で薬剤の効果が落ちる(ダウンレギュレーション)を起こすのを防ぐ為、一定期間与えてはやめ、またやると言う方法をとる。同じ薬剤だけでなく、別の薬剤を併用、あるいは量の増減を行う。そして大会が近づくにつれ、検査で残留した薬剤が検出するのを防ぐ為(ステロイドような脂溶性の物だと、体内の脂肪に溶けて長く残るから)、一定の期間前に使用をやめる、と言った事をしています。

 こう言った現状をふまえ、最近では競技前後の検査に加えて抜き打ち検査をするケースが増えています。
 これはどういうものかと言うと、トレーニングの期間中にいきなり検査を行わせると言う方法です。基本的にトレーニング中にドーピング薬物を使うわけですので、大会の数カ月前などに突然通告して、検査をさせると言う手法をとります。これはかなり効果的な方法のようで、実際にこれによって出場停止、あるいは永久追放と言う処分が下された選手がいるようです。
 この方法をとっている国際陸連では、世界ランキング20位前後までの選手に対して「確実な検査の実施」の為、3カ月毎に連絡のとれる住所・電話番号、練習場所を連絡する事を義務づけています。練習場所から3日以上離れる場合も知らせる義務があり、定期的な情報提供を行わせています。もし情報提供を怠ったり、あるいは検査官が選手に会えない場合では「検査逃れ」と言う事で書面で通告。1年半の間に3回これがあるとドーピング違反の処分を下すと言う処置をしています。
 現在のオリンピックでも、開催前に既にかなりの選手がドーピングで処分が下されています。著名選手が一気に消え去ると言う事も起きており、「薬物汚染」と言う観点から見てもかなり深刻なものであると言えます。
#新聞などで調べられるでしょう。

 なお、ドーピング違反した場合、一応世界反ドーピング機関(WADA)の規定に従うケースが多いようです。
 その内容は「一回目は2年間の資格停止、二回目は永久資格停止処分」と言うもので、実際にベン・ジョンソンはソウルで2年間の出場停止、そして復活を賭けた1993年モントリオール室内陸上競技大会で再度ドーピング違反をして永久追放処分となっています。
 今回のアテネオリンピックでも既にこれらの処分を受けそうな選手がかなりいるようですが.......
 なお、今後罰則の強化が考えられているようで、コーチや医師も処分対象とする方向になるようです。つまり「使った側」だけでなく、処方した側、使わせた側にも責任を負わせようと言う事のようですが.......

 ところで、このような薬物の危険性およびドーピング検査でのリスクにも関わらず、実際にはドーピングをする選手は後を絶ちません。
 ここら辺は選手達の追いつめられた心理とも言える物に関連するようですが......事実、アンケートなどでは選手として「ドーピングに頼る気持ちが理解できる」と言う人は結構多いようです。どれくらいそれを求めるのか? と言うとかつて米国でオリンピック選手にこのようなアンケートを実施したと言います。
 これは「金メダルが取れるなら、5年後に死ぬと分かっていても薬を使うと思うか?」と言うもので、これに対し「Yes」と答えた人が52%にも上ったとか。金メダルの栄誉、と言うものは選手にばく大な名声と、そして富(ベン・ジョンソンは数億円を稼いだと言われています)をもたらします。その価値は命を賭してでも得るに値するもの.......そう考える選手は多いと言う事なのでしょう。
 そう考えている人が多い限りは減らないと思われますが。
 また一方で国威発揚の手段としてオリンピックでの名誉を求める、と言う事で過去に国家ぐるみでのドーピングを行っていたところがあります。その代表格は旧東ドイツでして、たくさんの名選手を生み出した一方、東西ドイツ合併後にドーピングの実態が発覚。そして、副作用に苦しんだ選手達が元コーチや医師を相手に訴訟を起こすケースがあります。
 人生を狂わされた、と言うのがその理由ですが、性同一性障害や不妊、その他身体への障害を考えれば当然かもしれません。


 ドーピング問題の今後はどうなっているのか?
 これはかなり厳しい現状と言わざるを得ないようです。例えば昨今はたんぱく質同化剤でも非ステロイド系があり、そういったものがまだ検査に引っ掛かるようにはなっていない、と言う問題があります。その一例としては前立腺癌に使う薬である「ビカルタミド(Bicalutamide)」などが知られており(アストラゼネカ社より「カソデックス(Casodex)として売られている)、これはホルモンの受容体のアゴニストでありアンタゴニストにもなる物です(その73その188参照)。



 これは比較的簡単に入手できるため、問題になっています。また同じような薬剤が他にも知られています。
 更にはヒト成長ホルモンの使用も最近は増加傾向であり、実際筋肉の衰える病気に対して使われていますが、闇市場であっさり入手できると言われています。
 しかし、今後本当に問題になるのは「遺伝子ドーピング(Gene doping)」であると考えられています。
 筋肉を増強するよう促す遺伝子を注射すると言う方法がとられるのが普通になると思われますが、現在はまだ実際には研究分野を含めて行われていません。が、もしこれが行えるようになると、ヒト成長ホルモンの注射などよりも直接的かつ効率的に筋肉の増強をする事が可能となります。実際、2001年にマウスで行った実験によると、筋肉成長因子(muscle growth factor)の遺伝子を注射したところ、大体一週間で25%の筋肉の増量が出来たと言う報告があります。
 このような結果は医療分野においてはかなり期待がかけられると同時に、ドーピングの世界でも全く同じ事となります。ヒトではまだ行われていませんが、技術の発展によって遺伝子ドーピングは間違いないでしょう。一応、遺伝子ドーピングも見抜けるのではないかと期待はされていますが......
 ただ、確実にイタチごっこは続く、と言うのは間違いないようです。
 そして、それは反ドーピングに携わる人からすればため息の連続となるのは間違いないようですが........果たして撲滅する日は来るのか? 個人的には「No」という事になるでしょう。選手達がドーピングを求める限りは延々とこのイタチごっこは続くと思われます。
 スポーツの意義は何なのでしょうかね?


 さて、以上ドーピングについての話を二回にわたって行いました。
 本当はもっとあれこれと触れてみたいところがあったのですが、それをやると限りがありませんので、ある程度限ったものにしましたけど。これでこの問題について多少の理解があれば、と思いますが。
 ま、本当は医薬品なんだけど、使い方で、と言うケースはかなり多いようです。もしかしたら純粋に医療目的よりも消費量が多い、などと言う薬品があるのかもしれないと思う事もありますが。
 どうなるのでしょうかね.......


 それではこの話はこれで以上、と言う事で......




 さて、今回の「からむこらむ」は如何だったでしょうか?
 取りあえず、前回の話の続きと言うことでしたけど。特にたんぱく質同化剤に注力しての説明になりましたが.......ま、強烈なデメリットがある、と言うのは理解してもらえるかと思いますし、また将来的にもどうなるのか、と言うのは何となくでも理解はしてもらえるかと思います。
 深くやるとそれなりにまた色々と興味深くも厄介な話があるんですがね。まぁ、そこまでやると切りがありませんので。ただ、スポーツの意義、と言うものに関しては本当に考えさせられるものはあると思います。
 スポーツの意義、と言うのは本当に何なのでしょうか?

 そういう事で、今回は以上ですが。
 次回は......何にしましょうかね(^^; それ以前にいつになるかが分からないのですけど(^^; ま、仕事の合間を塗りつつ、になるとおもいますけどね。御感想でも戴ければと思います、色々と。

 そう言うことで、今回は以上です。
 御感想、お待ちしていますm(__)m

 次回をお楽しみに.......

(2004/08/23公開)



前回分      次回分

からむこらむトップへ